あたしと、小さい王子さま
小さくても男の子アタック!
「おじたん、すぅごくカッコよかったんだよぉ~!」
あたしは目の前の赤毛の男の子の言う〝おじたん〟に気分がすごく悪くなる。お母さまにはその気持ちを人や、物にぶつけてはいけないと何度も言われている。だけど、どうしたって目の前の男の子から聞かされる〝おじたん〟のお話に我慢ができない。それでもなんとか我慢している。
「そうなんですね」
「うん! あ、でね! でね! 今度、おじたんね、ホリデーには帰って来るって!」
「僕すごく楽しみ~」と女の子の自分から見ても可愛い顔をする男の子。目の前でほわほわとしている子が次のあたしたちの王さま。そして、あたしの将来のダンナさまになる男の子。
だから、あたしは毎日毎日大きくなったときのためのお稽古で忙しい。なのに、目の前の子はあたしの話しを聞くより前にこの前学校まで行って会った〝レオナおじたん〟だ。もうずっとここ数日おじたん、おじたん、だ。
――あたしの話しぜんぜん聞かないのに。
男の子は王子さま、あたしは貴族の娘。偉いのは男の子なのは分かる。だから、あたしは「はい、そうですか」とお母さまに教わった言葉を繰り返すだけ。ひどい言葉をぶつけてはいけないことはすごく、すごく分かっているけど――。
「でねぇ! レオナおじたんねぇ~」
この会話もう数えきれないほどしている。両手も両足の指すら足りないほどされた話にあたしの中の何かが爆発した。
「もーーいや! チェカさまは、レオナおじたんと結婚すればいいのよ!」
ドドンとあたしの叫び声が広い部屋に響いた。叫んだらすっきりした。でも、まだ言い足りない。
ほうけた顔をしているチェカさまを睨みつけてもう一度大きく口を開ける。
「そんなにレオナさまが好きなら結婚すればいいのよ! あたしはべつの人と結婚するから! もう、もうチェカさまなんて知らないから!」
「っ! 姫様!」
ふんふん、と鼻息荒く言い募るとどこからか侍女が飛んできた。そして、何か彼女が言っているがあたしは耳を自分の手で伏せてそっぽ向く。
「姫さっ! チェカ殿下!」
ぎょっとした侍女の声になにとチェカさまを見れば――泣いていた。
あたしよりも大きな瞳からぽろぽろ涙を流していた。その姿にすごく嫌な気分になる。あたしが全部悪いのだけど、悪いのだけどすごく分かりたくない。
「チェカ殿下。姫様はですね」
「うぇええ~。やだぁああ! なんで、なんでぇ!」
「きゃぁっ!」
泣き声をあげながらチェカさまはあたしに抱き着いて来た。抱き着かれたことは何度もあるけれどいつもふわふわしていた。なのに、今日に限って力いっぱい抱き着いてくる。とても痛い。
ぎゅぅ~~と抱き着いてくるチェカさまは「僕のこと嫌いになったのぉ?」と鼻を鳴らしながら聞いてくる。あたしはそれが聞こえてきたけどそれ以上に身体が痛くてたまらない。
「ぃった、いたい!」
ぐっとチェカさまの身体を押すと驚いたのか離れてくれた。腕を擦って痛みで涙が出た目で睨む。
「いたいの!」
「ご、ごめんなさい……でも、だってぇ」
べそっとまた泣くチェカさまにぐちゃぐちゃになる。このまま部屋を飛び出していこうかと考えるけれど周りの侍女たちがじぃっとあたしを見て来る。
――も~! いや! ほんとに!
むすっぅぅと頬を膨らましながらべそべそ泣くチェカさまに向く。
「チェカさま……あた――わたしがひどいこといいました。ごめんなさい」
すっと頭を下げて謝る。でも、やっぱりどうにも心が籠らない。だって、まだあたし悪いって思わない。言葉はひどいけどなんかすっきりしない。
「……僕と結婚してくれる?」
ぐずぐず鼻を鳴らしていた音がなくなる。あたしは顔を上げていいか分からないから下げたまま「……うん」と答える。
「そっか! ならもういいよ!」
とても明るい声が響いたと同時に「顔上げていいよ」と言われて顔を上げる。そこにはもう涙も何もないチェカさまがいる。先ほどの泣きっ面はどこへ行ったのか。
「じゃぁ、じゃぁ。お外に行こ~」
「わっ」
ぐいっと引っ張られる手に連れられるままあたしはチェカさまと外に出た。
* * *
それから暫くするとレオナさまがお休みで帰って来た。やはり、チェカさまはレオナさまと遊びたいのかずっとそわそわしている。あたしとしてはまた〝レオナおじたん〟が始まると思うと気分が暗くなる。
だけど、それは思っていたよりも少なかった。
「今日は何して遊ぶ?」
「え?」
チェカさまがレオナおじたんの話をしなければ、レオナさまと遊ぶことなくあたしと遊んでいる。しかも、あたしに何して遊ぶか聞いてくる。いつもは自分のしたいことを先に言うのに。
「チェカさま。おかぜですか?」
「え! 大丈夫だよ!」
全然元気、と太陽のような笑みを浮かべる。でも、あたしからしたらなんか可笑しい。
「ほんとうに? お医者さまに診てもらいましょ」
チェカさまの手を取って侍女を呼ぼうとする。けれど、チェカさまは「大丈夫だよ」と叫ぶ。
「ほんとうですか?」
「ほんとう! 大丈夫!」
にこっと笑うのでそれ以上何も言えない。
「で、で、今日はなにする?」
「チェカさまの好きなことでいいですよ」
「いつも僕の好きなことしているから今日はきみの好きなことしよう!」
何だかいつもと違うチェカさまに落ち着かない。いつもの自分、自分としたところはどうしたのか。だが、このままだと同じことを何度もくりかえすような気がする。
「なら、〝庭園〟にいってみたいです」
「ていえん? お花がいっぱいあるところ?」
「はい。そこのお花がみたいです」
実はずっと前から行きたかった王宮の庭園。この国は色とりどりのお花が育ちにくい。そんな、あるときから世界中の花々を集めて庭園を造る様になった。今も継続して新しいお花を増やしていると先生に聞いたことがある。
「チェカさまにはおもしろくないかもしれないですが」
「え! そんなことないよ! じゃ、まずは聞いてみよっか!」
それからチェカさまからのお願いはとんとん拍子に行き。あたしは憧れの庭園にいくことになった。
魔法で守られた庭園はすごく綺麗な場所だった。
「すごい……」
そんな言葉しか出ない。大人になったらもっと言葉を覚えて言えるのだろう。早く大人になってお花を褒めてあげたい気分になった。
「おべんきょう、がんばろう……」
そっと呟きながら傍にある花をしゃがんでみる。すると、隣にチェカさまも座って同じように見ている。
「きれいですね」
「そうだね……ほしい?」
「え!」
そんなに欲しそうな顔をしていたのか。さすがに恥ずかしい。顔が熱くなる。
「だいじょうぶです……」
「わかった。でも、何かほしいお花あったら言ってね!」
にこぉ~~としたチェカさまにお礼を述べるがやはり言えるわけがない。けど、チェカさまとこのやりとりを庭園にいる間にずっと同じことをくりかえされた。
いつも以上に何だか疲れた頃、別れる時間になった。
「チェカさま、またあし――」
「ねぇ! 今日の僕どうだった!」
言葉をかぶせるように顔を近づけて訊いて来た。
何が、としかなくて首を傾げるとチェカさまは指をもじつかせながら言う。
「おじたんがね。女の子はこうした方が喜ぶって話を聞いてね、やってみたんだ!」
再び襲来おじたんである。そして、今日のチェカさまっぽくないのがわかった。でも、少しだけ嬉しい。いつもレオナさまが帰ってきたら放っておかれるあたし。でも、まだレオナさまがいるのにあたしにかまってくれた。
「……うれしかったです」
「ほんと! よかった! あ、じゃあ、待ってて!」
言うなりぴゅんとどこかへ駆け出した。そして、同じくらいの早さで戻って来て腕の中に大きな花束を持って。
「これプレゼント!」
「え、あ、ありがとうございます」
ぐっいと渡されたお花はすごくいい匂いがした。それにとても可愛い。
「えへへ。きみは大丈夫っていったけどすごくお花にあっていたから!」
僕からのプレゼント、と言われてほわほわしてくる。
「すごくうれしいです。チェカさまありがとうございます」
恥ずかしくて花に顔を埋めながら言えばチェカさまはふにゃっと可愛く笑った。それにあたしもつられて笑ってしまった。
この先、チェカさまは事ある事にあたしに花束を渡すことになる。ついでに、大きくなるにつれ「好き」という言葉まで贈られること幼いあたしはまだ知る由もない。
「おじたん、すぅごくカッコよかったんだよぉ~!」
あたしは目の前の赤毛の男の子の言う〝おじたん〟に気分がすごく悪くなる。お母さまにはその気持ちを人や、物にぶつけてはいけないと何度も言われている。だけど、どうしたって目の前の男の子から聞かされる〝おじたん〟のお話に我慢ができない。それでもなんとか我慢している。
「そうなんですね」
「うん! あ、でね! でね! 今度、おじたんね、ホリデーには帰って来るって!」
「僕すごく楽しみ~」と女の子の自分から見ても可愛い顔をする男の子。目の前でほわほわとしている子が次のあたしたちの王さま。そして、あたしの将来のダンナさまになる男の子。
だから、あたしは毎日毎日大きくなったときのためのお稽古で忙しい。なのに、目の前の子はあたしの話しを聞くより前にこの前学校まで行って会った〝レオナおじたん〟だ。もうずっとここ数日おじたん、おじたん、だ。
――あたしの話しぜんぜん聞かないのに。
男の子は王子さま、あたしは貴族の娘。偉いのは男の子なのは分かる。だから、あたしは「はい、そうですか」とお母さまに教わった言葉を繰り返すだけ。ひどい言葉をぶつけてはいけないことはすごく、すごく分かっているけど――。
「でねぇ! レオナおじたんねぇ~」
この会話もう数えきれないほどしている。両手も両足の指すら足りないほどされた話にあたしの中の何かが爆発した。
「もーーいや! チェカさまは、レオナおじたんと結婚すればいいのよ!」
ドドンとあたしの叫び声が広い部屋に響いた。叫んだらすっきりした。でも、まだ言い足りない。
ほうけた顔をしているチェカさまを睨みつけてもう一度大きく口を開ける。
「そんなにレオナさまが好きなら結婚すればいいのよ! あたしはべつの人と結婚するから! もう、もうチェカさまなんて知らないから!」
「っ! 姫様!」
ふんふん、と鼻息荒く言い募るとどこからか侍女が飛んできた。そして、何か彼女が言っているがあたしは耳を自分の手で伏せてそっぽ向く。
「姫さっ! チェカ殿下!」
ぎょっとした侍女の声になにとチェカさまを見れば――泣いていた。
あたしよりも大きな瞳からぽろぽろ涙を流していた。その姿にすごく嫌な気分になる。あたしが全部悪いのだけど、悪いのだけどすごく分かりたくない。
「チェカ殿下。姫様はですね」
「うぇええ~。やだぁああ! なんで、なんでぇ!」
「きゃぁっ!」
泣き声をあげながらチェカさまはあたしに抱き着いて来た。抱き着かれたことは何度もあるけれどいつもふわふわしていた。なのに、今日に限って力いっぱい抱き着いてくる。とても痛い。
ぎゅぅ~~と抱き着いてくるチェカさまは「僕のこと嫌いになったのぉ?」と鼻を鳴らしながら聞いてくる。あたしはそれが聞こえてきたけどそれ以上に身体が痛くてたまらない。
「ぃった、いたい!」
ぐっとチェカさまの身体を押すと驚いたのか離れてくれた。腕を擦って痛みで涙が出た目で睨む。
「いたいの!」
「ご、ごめんなさい……でも、だってぇ」
べそっとまた泣くチェカさまにぐちゃぐちゃになる。このまま部屋を飛び出していこうかと考えるけれど周りの侍女たちがじぃっとあたしを見て来る。
――も~! いや! ほんとに!
むすっぅぅと頬を膨らましながらべそべそ泣くチェカさまに向く。
「チェカさま……あた――わたしがひどいこといいました。ごめんなさい」
すっと頭を下げて謝る。でも、やっぱりどうにも心が籠らない。だって、まだあたし悪いって思わない。言葉はひどいけどなんかすっきりしない。
「……僕と結婚してくれる?」
ぐずぐず鼻を鳴らしていた音がなくなる。あたしは顔を上げていいか分からないから下げたまま「……うん」と答える。
「そっか! ならもういいよ!」
とても明るい声が響いたと同時に「顔上げていいよ」と言われて顔を上げる。そこにはもう涙も何もないチェカさまがいる。先ほどの泣きっ面はどこへ行ったのか。
「じゃぁ、じゃぁ。お外に行こ~」
「わっ」
ぐいっと引っ張られる手に連れられるままあたしはチェカさまと外に出た。
* * *
それから暫くするとレオナさまがお休みで帰って来た。やはり、チェカさまはレオナさまと遊びたいのかずっとそわそわしている。あたしとしてはまた〝レオナおじたん〟が始まると思うと気分が暗くなる。
だけど、それは思っていたよりも少なかった。
「今日は何して遊ぶ?」
「え?」
チェカさまがレオナおじたんの話をしなければ、レオナさまと遊ぶことなくあたしと遊んでいる。しかも、あたしに何して遊ぶか聞いてくる。いつもは自分のしたいことを先に言うのに。
「チェカさま。おかぜですか?」
「え! 大丈夫だよ!」
全然元気、と太陽のような笑みを浮かべる。でも、あたしからしたらなんか可笑しい。
「ほんとうに? お医者さまに診てもらいましょ」
チェカさまの手を取って侍女を呼ぼうとする。けれど、チェカさまは「大丈夫だよ」と叫ぶ。
「ほんとうですか?」
「ほんとう! 大丈夫!」
にこっと笑うのでそれ以上何も言えない。
「で、で、今日はなにする?」
「チェカさまの好きなことでいいですよ」
「いつも僕の好きなことしているから今日はきみの好きなことしよう!」
何だかいつもと違うチェカさまに落ち着かない。いつもの自分、自分としたところはどうしたのか。だが、このままだと同じことを何度もくりかえすような気がする。
「なら、〝庭園〟にいってみたいです」
「ていえん? お花がいっぱいあるところ?」
「はい。そこのお花がみたいです」
実はずっと前から行きたかった王宮の庭園。この国は色とりどりのお花が育ちにくい。そんな、あるときから世界中の花々を集めて庭園を造る様になった。今も継続して新しいお花を増やしていると先生に聞いたことがある。
「チェカさまにはおもしろくないかもしれないですが」
「え! そんなことないよ! じゃ、まずは聞いてみよっか!」
それからチェカさまからのお願いはとんとん拍子に行き。あたしは憧れの庭園にいくことになった。
魔法で守られた庭園はすごく綺麗な場所だった。
「すごい……」
そんな言葉しか出ない。大人になったらもっと言葉を覚えて言えるのだろう。早く大人になってお花を褒めてあげたい気分になった。
「おべんきょう、がんばろう……」
そっと呟きながら傍にある花をしゃがんでみる。すると、隣にチェカさまも座って同じように見ている。
「きれいですね」
「そうだね……ほしい?」
「え!」
そんなに欲しそうな顔をしていたのか。さすがに恥ずかしい。顔が熱くなる。
「だいじょうぶです……」
「わかった。でも、何かほしいお花あったら言ってね!」
にこぉ~~としたチェカさまにお礼を述べるがやはり言えるわけがない。けど、チェカさまとこのやりとりを庭園にいる間にずっと同じことをくりかえされた。
いつも以上に何だか疲れた頃、別れる時間になった。
「チェカさま、またあし――」
「ねぇ! 今日の僕どうだった!」
言葉をかぶせるように顔を近づけて訊いて来た。
何が、としかなくて首を傾げるとチェカさまは指をもじつかせながら言う。
「おじたんがね。女の子はこうした方が喜ぶって話を聞いてね、やってみたんだ!」
再び襲来おじたんである。そして、今日のチェカさまっぽくないのがわかった。でも、少しだけ嬉しい。いつもレオナさまが帰ってきたら放っておかれるあたし。でも、まだレオナさまがいるのにあたしにかまってくれた。
「……うれしかったです」
「ほんと! よかった! あ、じゃあ、待ってて!」
言うなりぴゅんとどこかへ駆け出した。そして、同じくらいの早さで戻って来て腕の中に大きな花束を持って。
「これプレゼント!」
「え、あ、ありがとうございます」
ぐっいと渡されたお花はすごくいい匂いがした。それにとても可愛い。
「えへへ。きみは大丈夫っていったけどすごくお花にあっていたから!」
僕からのプレゼント、と言われてほわほわしてくる。
「すごくうれしいです。チェカさまありがとうございます」
恥ずかしくて花に顔を埋めながら言えばチェカさまはふにゃっと可愛く笑った。それにあたしもつられて笑ってしまった。
この先、チェカさまは事ある事にあたしに花束を渡すことになる。ついでに、大きくなるにつれ「好き」という言葉まで贈られること幼いあたしはまだ知る由もない。