おだやかな光になりたい
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おだやかな光になりたい・1
久々に幼馴染が所属しているサッカーのクラブチームに見に来た。私と同じように何人かの大人と同い年の女の子と男の子がいる。その人たちに紛れて私は網の向こうでサッカーをしている幼馴染を見る。
そこにはかつて溌剌とした彼はいなかった。
――苦しそう。
一人藻掻くように彼はサッカーをしていた。団体競技であり個人競技であるサッカー。その中、独りで藻掻いてプレーする人を私は今まで見たことがない。もし一人でプレーしているような場合は圧倒的な個の力を持っていることが多い。子どものチームとか、弱小校で圧倒的なプレイヤーが入ったときいはそうなることがある。
だけれど、ここはプロサッカークラブのユース。同じように実力のある選手が集まっているはず。とはいえ、このチームの実力はほとんどある兄弟選手によるものだという印象が強い。だが、その兄は半年前にスペインへと旅立ってしまった。だが、弟がいれば大丈夫と思うだろうけれど、その弟は今独り藻掻いている。
半年前の彼は兄と共に溌剌と楽しそうにサッカーをしていた姿は見る影もない。本人も苛立ちを隠している様子がない。
――誰も分かっていない。
明らかに苦しんでいる。だのに、誰も彼のプレーを我が儘で自分勝手なものだと思っている。未熟な選手はもちろん監督やコーチまでも同じ考えのようにも見える。
「見てられない」
誰も分かってあげようとしない。とはいえ、彼自身が誰かに分かってほしいとも思っていないんだろう。
それはそうか。彼の世界はとても狭い。サッカーになるとさらにその世界が狭くなっている。それがいいのか。悪いのか。きっと続けていく上ではいけないことなんだろう。でも、それを指摘できるほど私は彼にとってそういう存在じゃないし、サッカーはたまに見るだけのにわか。お姉ちゃんよりはルールなどは分かるけれど彼からしたらそう変わらない。どんぐりの背比べ。
「凛くん……」
ボールが離れ苛立った雰囲気でまた走り出す姿。その姿を見ていることができず私はクラブ活動が終わるまで待つことなく一人家に帰った。
次の日、いつも学校に行く時間になった。お姉ちゃんは中学生になってから少しだけ早く家を出るようになった。だから必然的に私と凛くんと二人きりで学校に行くことになる。
別に待ち合わせしているわけじゃない。1年生の頃から自然と同じ時間に家を出て自然と合流して一緒に学校に行っている。
お姉ちゃんや冴くんがいるとき、私はお姉ちゃんと喋ったり、凛くんはお兄ちゃんの冴くんと喋ったりしていた。たまに4人で喋ったりしていた。けれど、二人きりになるとお互い口数が少なくなる。
無言の時間は辛くないし苦手でもない。凛くんもとくに無理に話すことないし、無言の空気を苦痛に思っている気配はない。
でも、今日はどうだろうか。私はまだ昨日の見た凛くんの姿が忘れられなかった。
私が気にすることじゃないし、サッカーもできないからどうすることもできない。うじうじ考えて意味ない。こうして勝手に考え込んでいるのもバカなこと。
恋愛漫画とかなら幼馴染の言葉の魔法で解決するだろうけれど現実は甘くない。
――無力ってこういうこと言うんだろうなぁ。
こうして言葉の意味を知っていくらしい。ハァ、とため息をついて玄関を出ると艶やかな綺麗な黒髪が見えた。綺麗な丸い形をした頭に私を慌てて階段を駆け下りて扉を開く。
慌てて開いた扉はガシャンと大きい音を立てた。それにすぐ傍に立っていた凛くんがビクと大きく跳ねた。
「ぁ、ごめん、驚かせちゃったね」
「別に……」
少しばつの悪そうな顔をしてから凛くんは「おはよう」と言ってくれた。私も「おはよう」と挨拶を返す。凛くんはゆっくりと歩き出した。
私もすぐに凛くんの隣で歩き出す。並んでみると改めて身長が伸びた気がする。お兄ちゃんの冴くんも高かったけれど凛くんはもしかしたらもっと伸びるかもしれない。実際、もう身長順だいぶ後ろの方に移動している。
いいなぁ、と思いながら私は昨日の光景をまた思い出してしまった。このまま暢気に身長のことを考えていればよかったのに。
とりあえず口を出さない方がいい。私はそう決めていつも通り静かにしてようとしたときだった。
「昨日さ、練習見に来てた?」
「え」
予想外の問いかけにパッと隣の凛くんを見上げるとこっちを見下ろしていた。
お兄ちゃんの冴くんと似ているけれど凛くんの方がちょっとつっている感じがする。あと、冴くんの方がちょっと眠そうな印象。
「麗?」
「あ、っと、うん。おばあちゃん家にちょっと用事があってその帰りにちょっと」
「そういえば、クラブの近くって言ってたな」
「うん」
「そっか」
聞いてきた割には気に留めることなく凛くんはぼうっと歩き出す。整った横顔はやっぱり元気がない。
――冴くんがスペインに行ってからもう半年経っている。
サッカーはもちろんだけれど私生活にも冴くんはいない。二人は本当にずっと一緒にいた。冴くんが中学生になって学校が別々になっても他の〝きょうだい〟よりもたくさんの時間を一緒に過ごしていた。小さい頃からの習慣が突然切れたのも不調の原因かもしれない。ぐっと唇を一度噛んで私は思い切って切り出した。
「凛くん……ちょっと元気ないね」
「ぇ」
パッと私を見た凛くんは目を丸くしていた。最近はちょっと中学生のお兄ちゃんみたいな感じだった。けど、今目を丸くしている凛くんは私たちと同年代の男の子だった。それに何だか安心しながら私は言葉を慎重に選んだ。
「えっと、最初は練習で疲れちゃったのかなって思ったけど凛くん滅多にないでしょ」
兄弟揃ってまるでプロの選手のように体調には気を使っている。だから、疲れたということはないとは思う。だから多分凛くんはちょっと心の方が疲れているんじゃないかな。
凛くんを見れば首を傾げて「うーん。疲れてないけど」と言った。
「そっか。じゃあ、ちょっと元気がないのかな……ほら冴くんスペイン行っちゃったし」
サッカーにはなるべく触れないように話す。
チラと凛くんを見ると目を伏せて視線が下に向いている。その姿は寂しいというよりもちょっと違う気がする。
「ごめん。違ったかな?」
「寂しくはないよ。むしろ、兄ちゃんに追いつくためにやることたくさんあるし。そんな時間はないかな……」
やることはたくさんあると言うけれど最後の方は少しだけ声が小さい。もしかしたら漠然とした寂しさとか、物足りなさはあるのかな。
――そっか。物足りないのか。
凛くんは物足りなさを感じてるんだ。だって、凛くんのサッカーにはいつも冴くんがいたから。この物足りなさに凛くんはまだ気づいていないのかもしれない。でも、ほとんど毎日サッカーをしている凛くんが気づかないわけがない。
――私が言わなくてもいいよね。
そう思って言わないでおこうかと思ったときだった。凛くんが「昨日のおれ、どう?」と聞いてきた。心臓が一度跳ねて身体に緊張が走る。
ドキドキしながら「昨日?」と聞き返す。凛くんは「うん。どうだった?」と伺うように聞いて「あと」と言葉を続けた。
「……兄ちゃんといたときとはちょっと変わったと思うから」
凛くんは「ちょっと」と言うけれど、私には「ちょっと」になんて見えなかった。もしかしてまだ冴くんがいない物足りないサッカーに気づいていないのかもしれない。でも、凛くんの言い方だと確証が持てなかった。
私は言葉を間違えないようにしようと思ったけれど結局上手い言葉は見つからなかった。だから、思ったことをそのまま話すことにした。その前に、と私は凛くんを伺うように見て口を開く。
「私、素人だけどいいの?」
「んなの知ってるし」と呆れた顔をされた。聞く前でもなかったみたいだ。凛くんは私が素人であることを分かった上で聞いてくれた。それに安心していると「麗だから」と凛くんが付け足すようにいった。
「え?」
反射的に聞き返すと凛くんが眉を眉間に寄せた。不機嫌なときとか照れたときの反応だった。最近は不機嫌なときが多いけれど今はどっちだ。じっと思わず見ると凛くんがふいっと横を向く。
「麗は素人なりにずっとおれと兄ちゃんを見ていただろ。だから言っていいんだよ」
これ以上言わせるなと言いたげに歩き出したてしまった。私は慌てて凛くんを追いかけながら「麗だから」という言葉に少しだけ泣きそうになる。泣かないように唇を一度噛んで素直な感想を告げた。
「わた、私は、なんか苦しそうに見えた。凛くんが」
「おれが?」
ピタと足を止めて眉を寄せたまま凛くんが聞き返す。私は凛くんを見たまま続ける。
「うん。素人の私だから言葉に全然できないけれど……上手くできていないっていうのかな。あのよくサッカーって連携って言うでしょ。それが、繋がってない……みたいな。だから凛くんがシュート撃てないのかなって」
余計なことを次々と言ってしまった。私はすぐに後悔しながら窺うように凛くんを見る。すると、難しい顔をしていた。さっきよりもきゅっと眉間に皺を寄せて唇を尖らせている。
「そうだよな。やっぱ、麗から見てもそうか……」
「あ、その、素人的にね」
「わかってるよ」
ふはっと笑う凛くんを久々に見たかもしれない。
笑ってくれたことに安心する。
「でも、そうか。麗から見ても――そうか」
歩き出した凛くんの消えそうな声に私はハッとなって横を向く。そこにはやっぱり元気のない凛くんがいて瞬く間に安心を消していった。でも私にはどうすることもできなかった。
久々に幼馴染が所属しているサッカーのクラブチームに見に来た。私と同じように何人かの大人と同い年の女の子と男の子がいる。その人たちに紛れて私は網の向こうでサッカーをしている幼馴染を見る。
そこにはかつて溌剌とした彼はいなかった。
――苦しそう。
一人藻掻くように彼はサッカーをしていた。団体競技であり個人競技であるサッカー。その中、独りで藻掻いてプレーする人を私は今まで見たことがない。もし一人でプレーしているような場合は圧倒的な個の力を持っていることが多い。子どものチームとか、弱小校で圧倒的なプレイヤーが入ったときいはそうなることがある。
だけれど、ここはプロサッカークラブのユース。同じように実力のある選手が集まっているはず。とはいえ、このチームの実力はほとんどある兄弟選手によるものだという印象が強い。だが、その兄は半年前にスペインへと旅立ってしまった。だが、弟がいれば大丈夫と思うだろうけれど、その弟は今独り藻掻いている。
半年前の彼は兄と共に溌剌と楽しそうにサッカーをしていた姿は見る影もない。本人も苛立ちを隠している様子がない。
――誰も分かっていない。
明らかに苦しんでいる。だのに、誰も彼のプレーを我が儘で自分勝手なものだと思っている。未熟な選手はもちろん監督やコーチまでも同じ考えのようにも見える。
「見てられない」
誰も分かってあげようとしない。とはいえ、彼自身が誰かに分かってほしいとも思っていないんだろう。
それはそうか。彼の世界はとても狭い。サッカーになるとさらにその世界が狭くなっている。それがいいのか。悪いのか。きっと続けていく上ではいけないことなんだろう。でも、それを指摘できるほど私は彼にとってそういう存在じゃないし、サッカーはたまに見るだけのにわか。お姉ちゃんよりはルールなどは分かるけれど彼からしたらそう変わらない。どんぐりの背比べ。
「凛くん……」
ボールが離れ苛立った雰囲気でまた走り出す姿。その姿を見ていることができず私はクラブ活動が終わるまで待つことなく一人家に帰った。
次の日、いつも学校に行く時間になった。お姉ちゃんは中学生になってから少しだけ早く家を出るようになった。だから必然的に私と凛くんと二人きりで学校に行くことになる。
別に待ち合わせしているわけじゃない。1年生の頃から自然と同じ時間に家を出て自然と合流して一緒に学校に行っている。
お姉ちゃんや冴くんがいるとき、私はお姉ちゃんと喋ったり、凛くんはお兄ちゃんの冴くんと喋ったりしていた。たまに4人で喋ったりしていた。けれど、二人きりになるとお互い口数が少なくなる。
無言の時間は辛くないし苦手でもない。凛くんもとくに無理に話すことないし、無言の空気を苦痛に思っている気配はない。
でも、今日はどうだろうか。私はまだ昨日の見た凛くんの姿が忘れられなかった。
私が気にすることじゃないし、サッカーもできないからどうすることもできない。うじうじ考えて意味ない。こうして勝手に考え込んでいるのもバカなこと。
恋愛漫画とかなら幼馴染の言葉の魔法で解決するだろうけれど現実は甘くない。
――無力ってこういうこと言うんだろうなぁ。
こうして言葉の意味を知っていくらしい。ハァ、とため息をついて玄関を出ると艶やかな綺麗な黒髪が見えた。綺麗な丸い形をした頭に私を慌てて階段を駆け下りて扉を開く。
慌てて開いた扉はガシャンと大きい音を立てた。それにすぐ傍に立っていた凛くんがビクと大きく跳ねた。
「ぁ、ごめん、驚かせちゃったね」
「別に……」
少しばつの悪そうな顔をしてから凛くんは「おはよう」と言ってくれた。私も「おはよう」と挨拶を返す。凛くんはゆっくりと歩き出した。
私もすぐに凛くんの隣で歩き出す。並んでみると改めて身長が伸びた気がする。お兄ちゃんの冴くんも高かったけれど凛くんはもしかしたらもっと伸びるかもしれない。実際、もう身長順だいぶ後ろの方に移動している。
いいなぁ、と思いながら私は昨日の光景をまた思い出してしまった。このまま暢気に身長のことを考えていればよかったのに。
とりあえず口を出さない方がいい。私はそう決めていつも通り静かにしてようとしたときだった。
「昨日さ、練習見に来てた?」
「え」
予想外の問いかけにパッと隣の凛くんを見上げるとこっちを見下ろしていた。
お兄ちゃんの冴くんと似ているけれど凛くんの方がちょっとつっている感じがする。あと、冴くんの方がちょっと眠そうな印象。
「麗?」
「あ、っと、うん。おばあちゃん家にちょっと用事があってその帰りにちょっと」
「そういえば、クラブの近くって言ってたな」
「うん」
「そっか」
聞いてきた割には気に留めることなく凛くんはぼうっと歩き出す。整った横顔はやっぱり元気がない。
――冴くんがスペインに行ってからもう半年経っている。
サッカーはもちろんだけれど私生活にも冴くんはいない。二人は本当にずっと一緒にいた。冴くんが中学生になって学校が別々になっても他の〝きょうだい〟よりもたくさんの時間を一緒に過ごしていた。小さい頃からの習慣が突然切れたのも不調の原因かもしれない。ぐっと唇を一度噛んで私は思い切って切り出した。
「凛くん……ちょっと元気ないね」
「ぇ」
パッと私を見た凛くんは目を丸くしていた。最近はちょっと中学生のお兄ちゃんみたいな感じだった。けど、今目を丸くしている凛くんは私たちと同年代の男の子だった。それに何だか安心しながら私は言葉を慎重に選んだ。
「えっと、最初は練習で疲れちゃったのかなって思ったけど凛くん滅多にないでしょ」
兄弟揃ってまるでプロの選手のように体調には気を使っている。だから、疲れたということはないとは思う。だから多分凛くんはちょっと心の方が疲れているんじゃないかな。
凛くんを見れば首を傾げて「うーん。疲れてないけど」と言った。
「そっか。じゃあ、ちょっと元気がないのかな……ほら冴くんスペイン行っちゃったし」
サッカーにはなるべく触れないように話す。
チラと凛くんを見ると目を伏せて視線が下に向いている。その姿は寂しいというよりもちょっと違う気がする。
「ごめん。違ったかな?」
「寂しくはないよ。むしろ、兄ちゃんに追いつくためにやることたくさんあるし。そんな時間はないかな……」
やることはたくさんあると言うけれど最後の方は少しだけ声が小さい。もしかしたら漠然とした寂しさとか、物足りなさはあるのかな。
――そっか。物足りないのか。
凛くんは物足りなさを感じてるんだ。だって、凛くんのサッカーにはいつも冴くんがいたから。この物足りなさに凛くんはまだ気づいていないのかもしれない。でも、ほとんど毎日サッカーをしている凛くんが気づかないわけがない。
――私が言わなくてもいいよね。
そう思って言わないでおこうかと思ったときだった。凛くんが「昨日のおれ、どう?」と聞いてきた。心臓が一度跳ねて身体に緊張が走る。
ドキドキしながら「昨日?」と聞き返す。凛くんは「うん。どうだった?」と伺うように聞いて「あと」と言葉を続けた。
「……兄ちゃんといたときとはちょっと変わったと思うから」
凛くんは「ちょっと」と言うけれど、私には「ちょっと」になんて見えなかった。もしかしてまだ冴くんがいない物足りないサッカーに気づいていないのかもしれない。でも、凛くんの言い方だと確証が持てなかった。
私は言葉を間違えないようにしようと思ったけれど結局上手い言葉は見つからなかった。だから、思ったことをそのまま話すことにした。その前に、と私は凛くんを伺うように見て口を開く。
「私、素人だけどいいの?」
「んなの知ってるし」と呆れた顔をされた。聞く前でもなかったみたいだ。凛くんは私が素人であることを分かった上で聞いてくれた。それに安心していると「麗だから」と凛くんが付け足すようにいった。
「え?」
反射的に聞き返すと凛くんが眉を眉間に寄せた。不機嫌なときとか照れたときの反応だった。最近は不機嫌なときが多いけれど今はどっちだ。じっと思わず見ると凛くんがふいっと横を向く。
「麗は素人なりにずっとおれと兄ちゃんを見ていただろ。だから言っていいんだよ」
これ以上言わせるなと言いたげに歩き出したてしまった。私は慌てて凛くんを追いかけながら「麗だから」という言葉に少しだけ泣きそうになる。泣かないように唇を一度噛んで素直な感想を告げた。
「わた、私は、なんか苦しそうに見えた。凛くんが」
「おれが?」
ピタと足を止めて眉を寄せたまま凛くんが聞き返す。私は凛くんを見たまま続ける。
「うん。素人の私だから言葉に全然できないけれど……上手くできていないっていうのかな。あのよくサッカーって連携って言うでしょ。それが、繋がってない……みたいな。だから凛くんがシュート撃てないのかなって」
余計なことを次々と言ってしまった。私はすぐに後悔しながら窺うように凛くんを見る。すると、難しい顔をしていた。さっきよりもきゅっと眉間に皺を寄せて唇を尖らせている。
「そうだよな。やっぱ、麗から見てもそうか……」
「あ、その、素人的にね」
「わかってるよ」
ふはっと笑う凛くんを久々に見たかもしれない。
笑ってくれたことに安心する。
「でも、そうか。麗から見ても――そうか」
歩き出した凛くんの消えそうな声に私はハッとなって横を向く。そこにはやっぱり元気のない凛くんがいて瞬く間に安心を消していった。でも私にはどうすることもできなかった。