限りなく普通の恋
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男の子は甘い女の子が食べたい
もう少し味わいたいなと思った唇から離れる。はぁ、と吐息が零れる程度の自分と違って浅く呼吸を繰り返すアンジェリーナはくたりと力なくこちらにしなだれ込んでいる。
その身体をしっかりと抱き留める。ふと、腕に抱いたアンジェリーナの香りがいつにも増して甘い気がした。彼女の香りはいつも花の甘さなのに今日に限って砂糖菓子のような甘い香り。
よく見れば今の彼女自身砂糖菓子のようだ。現に白くて柔らかい頬は飴でコーティングされる前の林檎のように染まっている。ならその頬は林檎飴みたいに甘いのだろうかと馬鹿馬鹿しいことを考えながら柔らかな髪を梳くように撫でる。すると、こそばゆかったのか身じろいでゆっくりと顔を上げた。
「んっ、とれい?」
とろり溶けた瞳に夕陽が差しこみまるで蜂蜜みたいだった。こっちも舐めたら美味いんだろうか。そんなこともないのに、それでも甘そうな瞳の彼女を見つめる。
まるで林檎のように赤く染まる頬、蜂蜜のように艶やかな瞳、飴細工のように輝く唇、綿菓子のように柔らかな髪、すべてが甘いもので構成されているような柔らかい身体。
やっぱり、全部食べたい。唇だけじゃなくて身体すべて食べつくしたい。可愛らしい制服に包まれたこの柔らかい身体は一体どんな味がするんだろうか。
味見がしたい。この柔らかくて甘い香りがする身体を少しだけ――食べたい。
「ぇ? とれ、トレイっ」
戸惑うアンジェリーナの声を無視して身を屈め首筋に顔を埋める。細い首からゆるりと立ち上る甘い香り。一体招待は何なのか。
いつも身に纏う花の匂いなのか、それとも菓子の匂いなのか、彼女が身に着けるコロンの香りなのか。はたまた彼女が本来持つ香りなのか。確かに甘い。同時に食欲を誘う匂いに口の中に唾液が溢れそうになる。
「あの、トレイ、トレイ……恥ずかしいわ」
か細い声は本当に恥じらっているのだろう。身じろいで腕の中から逃げ出そうとしている身体を抑えて顔を動かす。すると邪魔なモノがあると気づく。ブラウスの襟だ。
邪魔だ、邪魔だ。念じながらフリルの着いた襟を退かし唇が柔く甘い肌に触れたときだった。
「まっ、トレイッ!」
悲鳴じみた声に我に返る。顔を上げれば顔だけじゃなくて首筋まで真っ赤なアンジェリーナがいた。首筋という視界に冷静になった頭で見てサァと血の気が引く。
綺麗に整えられていた襟元が乱されていた。誰がやったのかなんて一目瞭然というか自分自身以外他ならない。
「わ、悪かった!」
身体を離すと真っ赤な彼女は襟元を手繰り寄せて露出した肌を隠す。そして、悲しいかな僅かに距離を取られた。いや、俺自身が悪いから仕方なし女性の本能を考えればそういう行動をとっても問題じゃない。
とはいえ俺の行動は男の本能で動いてしまったわけだが――最低な行動だったと思う。アンジェリーナが怖がるのもわかる。とても悪いことをした。
「……アンジェリーナ、ごめん。俺が悪かった。怖かっただろう、ごめん」
こちらからも距離をとって謝る。ほんとうにごめん、だから嫌わないでほしい。お願いだと懇願にも似た気持ちで言えばアンジェリーナの眉が下る。
襟を掻き抱いたままの手に僅かに力が入るのが見える。やっぱりイヤだっただろう。怖かっただろうに。悪いことをした。
「ごめんな」
「ぃ、いいよ。もう、そんな謝らないで」
離れた距離を彼女が縮めた。顔を赤らめたまま困ったように眉を下げて小さく笑みを作る。それが今まで見たことのない大人のような姿でこっちが戸惑う番だった。
「ぁ、えっと」
「ふふ。どうしたの?」
微笑んで俺が乱した襟元を直す姿に改めて鼓動が早くなる。
小さな手が、細い指が釦を絞めてリボンを締め直していく。あ~せっかく納まった激情のようなものが盛り返しそうになる。それを今度こそ理性で留めて何とか抑え込む。
「あ~怖くなかった?」
「……怖かったわ」
「っ」
「だよなぁ」と言いながら俺は首に手を当てて項垂れる。それでも彼女はクスクスと笑う声に首を傾げる。
一体彼女の中でどんな変化が起きたのか。先ほどの俺の行動に怖いと答える姿は確かにそうだった。でも、何だろうか。この違和感は。
その間にキュッとリボンを締め直したアンジェリーナが真っ直ぐ俺を見すえた。もう蜂蜜のように溶けていないけれどそれでもどこか甘そうな瞳。涙さえきっと甘いのだろうと思わせる瞳に魅入られていると目尻が下る。
「怖かったのは本当……だって、いきなりだったから」
柔らかな頬を染めながら恥じるように目を逸らす彼女。その含みのある言い方に俺の思考回路は勝手に動き出す。何だ、何だ、彼女は俺が持っていたよりは成長している。いや、もうずっと前にわかりきっていたことのはずなのに。なんて失態だ。
「あのね。今度は、その、あの……」
薄らと染まっていた頬が真っ赤に林檎のように染まっていく。これを言わせるのは酷だろうか。でも、その先も言ってほしいというよりも言わせたい。だから、俺は意地悪く微笑む。
「いつ、ならいいんだ?」
彼女の縮めた距離を今度は俺がもう一歩近づいて縮める。そして、言い澱む彼女に意地悪く言えば甘い瞳が俺を睨んで。
「ッ、もう意地悪!」
フンと顔を逸らした。いつもの可愛らしい反応にこちらの調子も戻って来た。
「ハハッ。悪かった、悪かった」
柔い髪を掻き混ぜるように撫でればさらに臍を曲げたような顔をする。今のはきっといけなかったんだろう。恋人に対する、女性に対する対応として。それでもアンジェリーナの柔い髪は以前よりも触りたいと欲を掻き立てられる。だから、子ども染みたような触れ方しかできない。でも、それを変えていかないといけない。
「悪かったよ、アンジェリーナ」
頭を撫でる手を滑らせて髪を梳く。本人は癖のある髪を嫌っているけれど俺は小さい頃からこの柔らかな髪が好きだった。でも、そうか、今度から触れるのか。さらりと指の隙間から抜ける感覚を楽しみながら離す。
「アンジェリーナ」
「なに、トレイ?」
不機嫌を残しながらもこちらを見つめる瞳に映る自分。
このとき自分が初めて彼女の幼馴染ではなく恋人になれたのだと実感した。
「好きだよ、アンジェリーナ」
溢れる想いを告げたときの彼女の愛おしさの滲んだ笑みを俺は生涯忘れない。
もう少し味わいたいなと思った唇から離れる。はぁ、と吐息が零れる程度の自分と違って浅く呼吸を繰り返すアンジェリーナはくたりと力なくこちらにしなだれ込んでいる。
その身体をしっかりと抱き留める。ふと、腕に抱いたアンジェリーナの香りがいつにも増して甘い気がした。彼女の香りはいつも花の甘さなのに今日に限って砂糖菓子のような甘い香り。
よく見れば今の彼女自身砂糖菓子のようだ。現に白くて柔らかい頬は飴でコーティングされる前の林檎のように染まっている。ならその頬は林檎飴みたいに甘いのだろうかと馬鹿馬鹿しいことを考えながら柔らかな髪を梳くように撫でる。すると、こそばゆかったのか身じろいでゆっくりと顔を上げた。
「んっ、とれい?」
とろり溶けた瞳に夕陽が差しこみまるで蜂蜜みたいだった。こっちも舐めたら美味いんだろうか。そんなこともないのに、それでも甘そうな瞳の彼女を見つめる。
まるで林檎のように赤く染まる頬、蜂蜜のように艶やかな瞳、飴細工のように輝く唇、綿菓子のように柔らかな髪、すべてが甘いもので構成されているような柔らかい身体。
やっぱり、全部食べたい。唇だけじゃなくて身体すべて食べつくしたい。可愛らしい制服に包まれたこの柔らかい身体は一体どんな味がするんだろうか。
味見がしたい。この柔らかくて甘い香りがする身体を少しだけ――食べたい。
「ぇ? とれ、トレイっ」
戸惑うアンジェリーナの声を無視して身を屈め首筋に顔を埋める。細い首からゆるりと立ち上る甘い香り。一体招待は何なのか。
いつも身に纏う花の匂いなのか、それとも菓子の匂いなのか、彼女が身に着けるコロンの香りなのか。はたまた彼女が本来持つ香りなのか。確かに甘い。同時に食欲を誘う匂いに口の中に唾液が溢れそうになる。
「あの、トレイ、トレイ……恥ずかしいわ」
か細い声は本当に恥じらっているのだろう。身じろいで腕の中から逃げ出そうとしている身体を抑えて顔を動かす。すると邪魔なモノがあると気づく。ブラウスの襟だ。
邪魔だ、邪魔だ。念じながらフリルの着いた襟を退かし唇が柔く甘い肌に触れたときだった。
「まっ、トレイッ!」
悲鳴じみた声に我に返る。顔を上げれば顔だけじゃなくて首筋まで真っ赤なアンジェリーナがいた。首筋という視界に冷静になった頭で見てサァと血の気が引く。
綺麗に整えられていた襟元が乱されていた。誰がやったのかなんて一目瞭然というか自分自身以外他ならない。
「わ、悪かった!」
身体を離すと真っ赤な彼女は襟元を手繰り寄せて露出した肌を隠す。そして、悲しいかな僅かに距離を取られた。いや、俺自身が悪いから仕方なし女性の本能を考えればそういう行動をとっても問題じゃない。
とはいえ俺の行動は男の本能で動いてしまったわけだが――最低な行動だったと思う。アンジェリーナが怖がるのもわかる。とても悪いことをした。
「……アンジェリーナ、ごめん。俺が悪かった。怖かっただろう、ごめん」
こちらからも距離をとって謝る。ほんとうにごめん、だから嫌わないでほしい。お願いだと懇願にも似た気持ちで言えばアンジェリーナの眉が下る。
襟を掻き抱いたままの手に僅かに力が入るのが見える。やっぱりイヤだっただろう。怖かっただろうに。悪いことをした。
「ごめんな」
「ぃ、いいよ。もう、そんな謝らないで」
離れた距離を彼女が縮めた。顔を赤らめたまま困ったように眉を下げて小さく笑みを作る。それが今まで見たことのない大人のような姿でこっちが戸惑う番だった。
「ぁ、えっと」
「ふふ。どうしたの?」
微笑んで俺が乱した襟元を直す姿に改めて鼓動が早くなる。
小さな手が、細い指が釦を絞めてリボンを締め直していく。あ~せっかく納まった激情のようなものが盛り返しそうになる。それを今度こそ理性で留めて何とか抑え込む。
「あ~怖くなかった?」
「……怖かったわ」
「っ」
「だよなぁ」と言いながら俺は首に手を当てて項垂れる。それでも彼女はクスクスと笑う声に首を傾げる。
一体彼女の中でどんな変化が起きたのか。先ほどの俺の行動に怖いと答える姿は確かにそうだった。でも、何だろうか。この違和感は。
その間にキュッとリボンを締め直したアンジェリーナが真っ直ぐ俺を見すえた。もう蜂蜜のように溶けていないけれどそれでもどこか甘そうな瞳。涙さえきっと甘いのだろうと思わせる瞳に魅入られていると目尻が下る。
「怖かったのは本当……だって、いきなりだったから」
柔らかな頬を染めながら恥じるように目を逸らす彼女。その含みのある言い方に俺の思考回路は勝手に動き出す。何だ、何だ、彼女は俺が持っていたよりは成長している。いや、もうずっと前にわかりきっていたことのはずなのに。なんて失態だ。
「あのね。今度は、その、あの……」
薄らと染まっていた頬が真っ赤に林檎のように染まっていく。これを言わせるのは酷だろうか。でも、その先も言ってほしいというよりも言わせたい。だから、俺は意地悪く微笑む。
「いつ、ならいいんだ?」
彼女の縮めた距離を今度は俺がもう一歩近づいて縮める。そして、言い澱む彼女に意地悪く言えば甘い瞳が俺を睨んで。
「ッ、もう意地悪!」
フンと顔を逸らした。いつもの可愛らしい反応にこちらの調子も戻って来た。
「ハハッ。悪かった、悪かった」
柔い髪を掻き混ぜるように撫でればさらに臍を曲げたような顔をする。今のはきっといけなかったんだろう。恋人に対する、女性に対する対応として。それでもアンジェリーナの柔い髪は以前よりも触りたいと欲を掻き立てられる。だから、子ども染みたような触れ方しかできない。でも、それを変えていかないといけない。
「悪かったよ、アンジェリーナ」
頭を撫でる手を滑らせて髪を梳く。本人は癖のある髪を嫌っているけれど俺は小さい頃からこの柔らかな髪が好きだった。でも、そうか、今度から触れるのか。さらりと指の隙間から抜ける感覚を楽しみながら離す。
「アンジェリーナ」
「なに、トレイ?」
不機嫌を残しながらもこちらを見つめる瞳に映る自分。
このとき自分が初めて彼女の幼馴染ではなく恋人になれたのだと実感した。
「好きだよ、アンジェリーナ」
溢れる想いを告げたときの彼女の愛おしさの滲んだ笑みを俺は生涯忘れない。
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