トレイ × ジャック
ケーキの意味を知ることは
「どうすっかな」
ケーキボックスを片手にジャックは鏡舎に向かって歩いていた。
このケーキボックスは先ほどパーティーで多く作りすぎたからとハーツラビュル寮の副寮長のトレイから貰ったものだ。これから夕食だし断ろうと思ったけれど――何故か受け取ってしまった。
「ハァ」
魔法の言葉「余ったから貰ってくれ」。それを聞いて困ったように微笑むトレイからケーキをいつの間にか受け取っていた。とはいて、自分が断れば別の人に聞きに行ったはずだ。そして、別の人、余程甘味が苦手でなければトレイのケーキを断る奴はいない。それほどの腕前を彼は持っている。
だのに、ジャックは何故かいつもケーキを受け取ってしまう。特別ケーキが好きなわけでもない。洋ナシのコンポートは好きだけれど甘味がすごく好きなわけではい。けど、あの人に差し出されるとどうにも断れない。
「チッ。これで何度目だよ」
貰う度に「餌付けかよ」レオナをはじめとした先輩らにからかわれる。とはいえ、それくらいの頻度で貰うのも流石にジャックもどうかと思う。最近では一緒に食べてくれていたラギーも「遠慮しとくッス」とケーキを食べてくれない。同室の奴らも「流石に、もぅ」と首を横に振る始末だ。
つまり、ついにこのケーキを一人で食べきることになる。
「頑張るか」
部屋では甘い匂いに耐えられないという寮生がいたので談話室に来ている。用意したフォークを落とさぬようにケーキボックスを開けると。
「お! ジャック、またクローバーの奴に餌付けされてんのか?」
同じ陸上部でデュースと揃って構ってくれるチーターの獣人属の先輩であった。強面の顔でニヤニヤ笑うものだから本当に柄が悪い。この寮の中では良心の一人とか言われているのに。
からかう気満々の先輩にムッとしながら「餌付けじゃねぇっす」と答えて箱を見下ろすと。
「あれ?」
「あ? あぁ? んだ、これ?」
先輩も怪訝な声を上げた。ジャックもその声に「これ余りっすかね?」と思わず訊ねてしまう。それに先輩は「……バカ犬」と返して来た。
「俺はオオカミっす!」
ケーキボックスから顔を上げれば憐みを含んだ眼差しを向けられた。何だ、その目はと訊ねる前にぐりぐりと頭を撫でられた。
「ま。ガンバレや」
「は? な、なんだよ」
「タメ口は禁止だかんな。まぁ、うん、狩られねぇようにな」
パッと頭を離した先輩はそそくさとこの場を離れていった。
何が狩られないようになのかわからない。けれど、このケーキボックスの中に入っているケーキが余りではないことは理解した。
「なんの意味があるんだ?」
すみれの花を模したデコレーションが施されたケーキにフォークを突き刺した。
「どうすっかな」
ケーキボックスを片手にジャックは鏡舎に向かって歩いていた。
このケーキボックスは先ほどパーティーで多く作りすぎたからとハーツラビュル寮の副寮長のトレイから貰ったものだ。これから夕食だし断ろうと思ったけれど――何故か受け取ってしまった。
「ハァ」
魔法の言葉「余ったから貰ってくれ」。それを聞いて困ったように微笑むトレイからケーキをいつの間にか受け取っていた。とはいて、自分が断れば別の人に聞きに行ったはずだ。そして、別の人、余程甘味が苦手でなければトレイのケーキを断る奴はいない。それほどの腕前を彼は持っている。
だのに、ジャックは何故かいつもケーキを受け取ってしまう。特別ケーキが好きなわけでもない。洋ナシのコンポートは好きだけれど甘味がすごく好きなわけではい。けど、あの人に差し出されるとどうにも断れない。
「チッ。これで何度目だよ」
貰う度に「餌付けかよ」レオナをはじめとした先輩らにからかわれる。とはいえ、それくらいの頻度で貰うのも流石にジャックもどうかと思う。最近では一緒に食べてくれていたラギーも「遠慮しとくッス」とケーキを食べてくれない。同室の奴らも「流石に、もぅ」と首を横に振る始末だ。
つまり、ついにこのケーキを一人で食べきることになる。
「頑張るか」
部屋では甘い匂いに耐えられないという寮生がいたので談話室に来ている。用意したフォークを落とさぬようにケーキボックスを開けると。
「お! ジャック、またクローバーの奴に餌付けされてんのか?」
同じ陸上部でデュースと揃って構ってくれるチーターの獣人属の先輩であった。強面の顔でニヤニヤ笑うものだから本当に柄が悪い。この寮の中では良心の一人とか言われているのに。
からかう気満々の先輩にムッとしながら「餌付けじゃねぇっす」と答えて箱を見下ろすと。
「あれ?」
「あ? あぁ? んだ、これ?」
先輩も怪訝な声を上げた。ジャックもその声に「これ余りっすかね?」と思わず訊ねてしまう。それに先輩は「……バカ犬」と返して来た。
「俺はオオカミっす!」
ケーキボックスから顔を上げれば憐みを含んだ眼差しを向けられた。何だ、その目はと訊ねる前にぐりぐりと頭を撫でられた。
「ま。ガンバレや」
「は? な、なんだよ」
「タメ口は禁止だかんな。まぁ、うん、狩られねぇようにな」
パッと頭を離した先輩はそそくさとこの場を離れていった。
何が狩られないようになのかわからない。けれど、このケーキボックスの中に入っているケーキが余りではないことは理解した。
「なんの意味があるんだ?」
すみれの花を模したデコレーションが施されたケーキにフォークを突き刺した。
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