ジェイド編
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いとしい輝き
ジェイドは久々に珊瑚の海の自宅に帰ることができた。ほんとうはもっと頻繁に帰ってきたいのだがなんせ仕事の多くが陸。本社も利便性を考えて陸に創った。とはいえ、社長のアズールをはじめとしたジェイド、フロイドの現在の本宅は珊瑚の海。ナイトレイブンカレッジの鏡のような便利なものはない。作れないわけではないがなにせ申請諸々が大変であり、アズールは各国にモストロ・ラウンジの支店を作った際に悩んだ結果見送りになった。
そんな経緯から現在の本社は珊瑚の海とも繋がりが深い陽光の国に決めた。おかげで他の国よりは帰りやすい。おまけに本宅もジェイドたちの故郷のような北部ではなく王都にしたのも帰りやすい要因だ。
とはいえ、ここ1か月半は仕事が立て込んでいて帰ることもできなかった。ようやく仕事の終わりが見え帰る準備をしたときだった。
「チビちゃんに顔、忘れられてないといいねぇ~」
目の下に隈を作っているフロイドが笑顔で恐ろしいことを言って来た。フロイドは仕事に終わりが見えたジェイドと違ってあと少しだけ残っている。それでも二、三日もしたら終わる量。だから、手伝ってほしいという願いを断った。その腹いせだろうが何とも恐ろしい言葉を言い放ってくれたものだ。
「半年も離れていたわけではないんですから忘れませんよ」
くたびれたアズールの先輩父親としての言葉はありがたいような逆に不安が募るようなものだった。というのも、アズールは実際「だれだっけ?」と子どもに忘れかけられた経験がある。すぐに思い出したから平気だ、と言っていたがそれなりに応えたようですぐにタスク整理が行われていたくらいだ。
「とはいえ、まだ貴方のところは小さいですからね……気を付けてください」
アズールの重々しい言葉に「はい」としかジェイドは答えられなかった。
心配がより募り、さっさと帰宅準備を終えて執務室を後にした。背後で「オレだって忘れられちゃうってぇ~」という兄弟の嘆きを無視した。
陽光の国と珊瑚の海は事前に準備していれば他の国を移動するときより楽に移動できる。おかげで夜の時間でも楽に珊瑚の海に行ける。
王都の中心街。王族の邸宅もあることから治安が他と比べると段違いにいい。ジェイドたちの故郷は少々物騒なところがあるがそういうところが嫌いではなかった。なにせそういうところに愉しいことが溢れていたから。
だから、こうした治安のいい場所は何だかつまらなくて退屈だが。利便性を考えると王都になる。他にも、レティシアの出身は王都で彼女の両親も王都に本宅を構えている。親戚も多いとなると王都になる。彼女はジェイドの故郷でもいいと言うが北部は冬になれば流氷で戻れないし、そのタイミングで仕事が重なれば最悪だ。その最悪な事案を考えると王都が最善策になる。
夜も遅い時間。故郷よりも物騒な気配はなく穏やかなものだった。気が緩みそうになるのを堪えながら治安のいい街中をジェイドは泳ぎ続けた。
しばらく泳ぐと本宅に辿り着いた。家の中の気配はあるがとても静かなものだった。1か月半前は夜泣きがあったがもう落ち着いたのだろうが。
音もなくするりと家に入る。夜光虫で淡く照らされた部屋をするり、するり、と抜けて奥の、奥。家族が眠る最深部へと泳ぎ続ける。
最奥に近づくと夜光虫の数も少なくなり、ジェイドの身体が淡く輝きだすと、最奥にもまた小さな明かりが見えた。その明かりはジェイドと同じものだった。
それが何だかくすぐったくなりながら〝家族〟に近づくと――淡い光の横で二つの光がパッと現れた。続いて「ジェイド……?」と小声で名前を呼ばれた。
「はい……起こしてすいません」
「平気よ……」
子育て中の人魚の性というのか。種族関係なく気配に敏くこうして起こしてしまう。案の定、レティシアも目を覚ましてしまったようだ。
すいっと最後にひと泳ぎで近づくと彼女の顔がはっきりとよく見え――同時に胸元で寝ている息子の姿が見えた。
まだ胸に埋まってしまうくらい小さい息子のレイ。小さい我が子はそれでもジェイドによく似た長い尾でしっかりと離れないように彼女の腕に絡みついていた。
「大きくなりました?」
「ふふ。よく食べて、よく寝て、よく遊ぶから」
ここで「1か月半経っているから」と責められないのがどうにも心苦しい。
「すいません」
「平気よ。この期間は母様も父様も来てくれているし、何より遠くからお義母様に、お義父様にお義祖母様まで来てくださったの。他にも――」
「は? え? 父さんたちが来たんですか?」
「あら聞いていないの?」
目を丸くさせるレティシアに思わず頷く。というか、両親、祖母とは春に新年諸々の挨拶を兼ねた食事会以来会っていないというのに。
「何か言ってました?」
「珊瑚の海に本社を建てればよかったのにって」
「それは何度も話したというのに……」
耳に痛いと言うか。頭が痛いというか。これはもはや仕事の疲れからだろうか。
「とりあえず、貴方も寝た……あら」
彼女の視線が下を向くと同時に「キュぅ」と鳴く声が聞こえた。パッ見ればレイの目が薄っすらと開いていた。けれど、眠いのか瞼が重そうに何度も半分くらいしか開いていない。
完全に覚醒しているわけではないのだろう。レティシアが丸い頭を撫でると小さく欠伸をして瞼を下ろした。そして、再び彼女の胸に埋まるように眠り始めた。
「最近は夜泣きも滅多になくなったのよ」
「そうでしたか……」
横目で彼女を見れば眦を緩めて息子を見ている。その横顔に1か月半中々帰れなかったことがやはり悔やまれる。
「もう少し仕事をセーブした方がいいかもしれませんね」
空いている場所に横になって長い尾で二人を囲う。それでようやく安心できた気がした。
「明日は休みでしょ。ゆっくり休んでね」
レティシアの穏やかな声に急激に眠気が襲い掛かって来る。まだ何か話しているようだったけれど、そのまま疲れが押し寄せるように意識が落ちていった。
「キュゥ、キュッ! キュッ!」
甲高い鳴き声に深く沈んでいた意識が揺さぶられた。いや、これは意識が揺さぶられたというよりも身体そのものが揺さぶられている。
寝起きにこれはキツイと思い瞼を何とか上げると――。
「レイ……」
「キュアアア♪」
目の前にご機嫌な息子がいた。ドアップになるほど近づいた息子は機嫌よく額を擦りつけてくる。ついでに「キュゥ、キュッ、キュゥ♪」と可愛く鳴く。
甲高い声は寝起きの耳には辛いが、息子の鳴き声はまぁ可愛いと思える。辛いが。
「起こしにきてくれたんですか」
「んキュ!」
息子の稚魚特有の丸まるとした身体を掴みながら起き上がる。息子はジェイドが起きたことがよっぽど嬉しいのか楽し気に鳴き続ける。
可愛いと思いながら尾ビレを揺らす息子を抱いたままレティシアのもとに向かう。
「あ。ジェイド、起きたの?」
「はぃ」
「ふふ。まだ眠そうだけど大丈夫?」
「なんとか……おや」
レイはてっきり母親である彼女が見えたらそっちに行くかと思ったら大人しく腕の中にいる。
なんかやたらにこにこして自分の小さな手を口に入れてしゃぶってる。
「お腹がすいているんですか?」
「さっき先に食べたからそうじゃないと思うけど」
「そうですか。にしても、貴方のところ行かないですね」
機嫌よさそうに尾ビレを揺らす息子。ご飯を食べたから機嫌がいいのかと思ったがレティシアの笑う声が聞こえた。
「なにか?」
「ふふ。私の方に来ないのはお父さんの貴方が一緒にいたいからじゃないの?」
「そう――ぁ」
言われてフロイドの言葉を思い出す。すぐにレイを顔まで持ち上げてこちらを向かせる。レティシアによく似た目がジェイドを見ると笑う。
「お父さんのこと覚えていたんですか」
「キュゥっ!」
返事なのか分からないがそういえばレイはジェイドのことをちゃんと覚えていたようだ。
よかった、と安心して息子をしっかりと胸に抱く。それに嬉しそうに尾ビレが揺れるのが見えた。
「なぁに。アズールたちに『忘れられている』って脅されたの?」
「厳密に言えばフロイドに、ですね」
「ふは。まぁ、アズールの前例があるからねぇ」
クスクス笑う彼女に他人事だと思って、と思うが言わない。なにせ今息子の面倒を四六時中見ているのは彼女なのだから。
「貴方もそろそろ仕事始めますか」
「うーん。どうしようかなぁ。まだ迷うわ。あぁ、でも、たまには一人の時間は欲しいかも」
「あ。ちなみに今じゃないから」と付け足すレティシアに分かっていると頷く。
「来週くらいなら一人で出かけてください。なんなら寝ていてもいいですよ」
「ありがとう。貴方も今日はゆっくり休んでちょうだい。ほら、レイおいで」
すぃっと泳いでやって来た彼女がレイに向かって腕を伸ばす。普段ならすぐに行くのだが――。
「キュゥ」
「あら。いやなの」
ぎゅっとジェイドに抱き着いて離れなかった。それにちょっと感動する。
「よかったわね、ジェイド」
「はい」
噛みしめながらしっかりと息子を抱き直した。
「なら、今日は一日離れないし遊んでってひっついてくるかもね」
「ぇ゛」
流石にそれはと思いながら息子を見ればにこぉっと笑いかけられた。
それに残業明けの自分は耐えられるか。いや、もしかしたらここが父親としての見どころなのかもしれない。
「善処しましょう」
「キュキュ!」
楽し気な息子の返事に自然と笑みが浮かんだ。
2024.10.07
ジェイドは久々に珊瑚の海の自宅に帰ることができた。ほんとうはもっと頻繁に帰ってきたいのだがなんせ仕事の多くが陸。本社も利便性を考えて陸に創った。とはいえ、社長のアズールをはじめとしたジェイド、フロイドの現在の本宅は珊瑚の海。ナイトレイブンカレッジの鏡のような便利なものはない。作れないわけではないがなにせ申請諸々が大変であり、アズールは各国にモストロ・ラウンジの支店を作った際に悩んだ結果見送りになった。
そんな経緯から現在の本社は珊瑚の海とも繋がりが深い陽光の国に決めた。おかげで他の国よりは帰りやすい。おまけに本宅もジェイドたちの故郷のような北部ではなく王都にしたのも帰りやすい要因だ。
とはいえ、ここ1か月半は仕事が立て込んでいて帰ることもできなかった。ようやく仕事の終わりが見え帰る準備をしたときだった。
「チビちゃんに顔、忘れられてないといいねぇ~」
目の下に隈を作っているフロイドが笑顔で恐ろしいことを言って来た。フロイドは仕事に終わりが見えたジェイドと違ってあと少しだけ残っている。それでも二、三日もしたら終わる量。だから、手伝ってほしいという願いを断った。その腹いせだろうが何とも恐ろしい言葉を言い放ってくれたものだ。
「半年も離れていたわけではないんですから忘れませんよ」
くたびれたアズールの先輩父親としての言葉はありがたいような逆に不安が募るようなものだった。というのも、アズールは実際「だれだっけ?」と子どもに忘れかけられた経験がある。すぐに思い出したから平気だ、と言っていたがそれなりに応えたようですぐにタスク整理が行われていたくらいだ。
「とはいえ、まだ貴方のところは小さいですからね……気を付けてください」
アズールの重々しい言葉に「はい」としかジェイドは答えられなかった。
心配がより募り、さっさと帰宅準備を終えて執務室を後にした。背後で「オレだって忘れられちゃうってぇ~」という兄弟の嘆きを無視した。
陽光の国と珊瑚の海は事前に準備していれば他の国を移動するときより楽に移動できる。おかげで夜の時間でも楽に珊瑚の海に行ける。
王都の中心街。王族の邸宅もあることから治安が他と比べると段違いにいい。ジェイドたちの故郷は少々物騒なところがあるがそういうところが嫌いではなかった。なにせそういうところに愉しいことが溢れていたから。
だから、こうした治安のいい場所は何だかつまらなくて退屈だが。利便性を考えると王都になる。他にも、レティシアの出身は王都で彼女の両親も王都に本宅を構えている。親戚も多いとなると王都になる。彼女はジェイドの故郷でもいいと言うが北部は冬になれば流氷で戻れないし、そのタイミングで仕事が重なれば最悪だ。その最悪な事案を考えると王都が最善策になる。
夜も遅い時間。故郷よりも物騒な気配はなく穏やかなものだった。気が緩みそうになるのを堪えながら治安のいい街中をジェイドは泳ぎ続けた。
しばらく泳ぐと本宅に辿り着いた。家の中の気配はあるがとても静かなものだった。1か月半前は夜泣きがあったがもう落ち着いたのだろうが。
音もなくするりと家に入る。夜光虫で淡く照らされた部屋をするり、するり、と抜けて奥の、奥。家族が眠る最深部へと泳ぎ続ける。
最奥に近づくと夜光虫の数も少なくなり、ジェイドの身体が淡く輝きだすと、最奥にもまた小さな明かりが見えた。その明かりはジェイドと同じものだった。
それが何だかくすぐったくなりながら〝家族〟に近づくと――淡い光の横で二つの光がパッと現れた。続いて「ジェイド……?」と小声で名前を呼ばれた。
「はい……起こしてすいません」
「平気よ……」
子育て中の人魚の性というのか。種族関係なく気配に敏くこうして起こしてしまう。案の定、レティシアも目を覚ましてしまったようだ。
すいっと最後にひと泳ぎで近づくと彼女の顔がはっきりとよく見え――同時に胸元で寝ている息子の姿が見えた。
まだ胸に埋まってしまうくらい小さい息子のレイ。小さい我が子はそれでもジェイドによく似た長い尾でしっかりと離れないように彼女の腕に絡みついていた。
「大きくなりました?」
「ふふ。よく食べて、よく寝て、よく遊ぶから」
ここで「1か月半経っているから」と責められないのがどうにも心苦しい。
「すいません」
「平気よ。この期間は母様も父様も来てくれているし、何より遠くからお義母様に、お義父様にお義祖母様まで来てくださったの。他にも――」
「は? え? 父さんたちが来たんですか?」
「あら聞いていないの?」
目を丸くさせるレティシアに思わず頷く。というか、両親、祖母とは春に新年諸々の挨拶を兼ねた食事会以来会っていないというのに。
「何か言ってました?」
「珊瑚の海に本社を建てればよかったのにって」
「それは何度も話したというのに……」
耳に痛いと言うか。頭が痛いというか。これはもはや仕事の疲れからだろうか。
「とりあえず、貴方も寝た……あら」
彼女の視線が下を向くと同時に「キュぅ」と鳴く声が聞こえた。パッ見ればレイの目が薄っすらと開いていた。けれど、眠いのか瞼が重そうに何度も半分くらいしか開いていない。
完全に覚醒しているわけではないのだろう。レティシアが丸い頭を撫でると小さく欠伸をして瞼を下ろした。そして、再び彼女の胸に埋まるように眠り始めた。
「最近は夜泣きも滅多になくなったのよ」
「そうでしたか……」
横目で彼女を見れば眦を緩めて息子を見ている。その横顔に1か月半中々帰れなかったことがやはり悔やまれる。
「もう少し仕事をセーブした方がいいかもしれませんね」
空いている場所に横になって長い尾で二人を囲う。それでようやく安心できた気がした。
「明日は休みでしょ。ゆっくり休んでね」
レティシアの穏やかな声に急激に眠気が襲い掛かって来る。まだ何か話しているようだったけれど、そのまま疲れが押し寄せるように意識が落ちていった。
「キュゥ、キュッ! キュッ!」
甲高い鳴き声に深く沈んでいた意識が揺さぶられた。いや、これは意識が揺さぶられたというよりも身体そのものが揺さぶられている。
寝起きにこれはキツイと思い瞼を何とか上げると――。
「レイ……」
「キュアアア♪」
目の前にご機嫌な息子がいた。ドアップになるほど近づいた息子は機嫌よく額を擦りつけてくる。ついでに「キュゥ、キュッ、キュゥ♪」と可愛く鳴く。
甲高い声は寝起きの耳には辛いが、息子の鳴き声はまぁ可愛いと思える。辛いが。
「起こしにきてくれたんですか」
「んキュ!」
息子の稚魚特有の丸まるとした身体を掴みながら起き上がる。息子はジェイドが起きたことがよっぽど嬉しいのか楽し気に鳴き続ける。
可愛いと思いながら尾ビレを揺らす息子を抱いたままレティシアのもとに向かう。
「あ。ジェイド、起きたの?」
「はぃ」
「ふふ。まだ眠そうだけど大丈夫?」
「なんとか……おや」
レイはてっきり母親である彼女が見えたらそっちに行くかと思ったら大人しく腕の中にいる。
なんかやたらにこにこして自分の小さな手を口に入れてしゃぶってる。
「お腹がすいているんですか?」
「さっき先に食べたからそうじゃないと思うけど」
「そうですか。にしても、貴方のところ行かないですね」
機嫌よさそうに尾ビレを揺らす息子。ご飯を食べたから機嫌がいいのかと思ったがレティシアの笑う声が聞こえた。
「なにか?」
「ふふ。私の方に来ないのはお父さんの貴方が一緒にいたいからじゃないの?」
「そう――ぁ」
言われてフロイドの言葉を思い出す。すぐにレイを顔まで持ち上げてこちらを向かせる。レティシアによく似た目がジェイドを見ると笑う。
「お父さんのこと覚えていたんですか」
「キュゥっ!」
返事なのか分からないがそういえばレイはジェイドのことをちゃんと覚えていたようだ。
よかった、と安心して息子をしっかりと胸に抱く。それに嬉しそうに尾ビレが揺れるのが見えた。
「なぁに。アズールたちに『忘れられている』って脅されたの?」
「厳密に言えばフロイドに、ですね」
「ふは。まぁ、アズールの前例があるからねぇ」
クスクス笑う彼女に他人事だと思って、と思うが言わない。なにせ今息子の面倒を四六時中見ているのは彼女なのだから。
「貴方もそろそろ仕事始めますか」
「うーん。どうしようかなぁ。まだ迷うわ。あぁ、でも、たまには一人の時間は欲しいかも」
「あ。ちなみに今じゃないから」と付け足すレティシアに分かっていると頷く。
「来週くらいなら一人で出かけてください。なんなら寝ていてもいいですよ」
「ありがとう。貴方も今日はゆっくり休んでちょうだい。ほら、レイおいで」
すぃっと泳いでやって来た彼女がレイに向かって腕を伸ばす。普段ならすぐに行くのだが――。
「キュゥ」
「あら。いやなの」
ぎゅっとジェイドに抱き着いて離れなかった。それにちょっと感動する。
「よかったわね、ジェイド」
「はい」
噛みしめながらしっかりと息子を抱き直した。
「なら、今日は一日離れないし遊んでってひっついてくるかもね」
「ぇ゛」
流石にそれはと思いながら息子を見ればにこぉっと笑いかけられた。
それに残業明けの自分は耐えられるか。いや、もしかしたらここが父親としての見どころなのかもしれない。
「善処しましょう」
「キュキュ!」
楽し気な息子の返事に自然と笑みが浮かんだ。
2024.10.07
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