金吾受

年ごろ故いたしかたない?



「ん、んぅっ、も、だっめ、だ!」

 ぐいっと胸を押された平太は金吾と少しだけ距離ができた。お互いの唇が深く繋がっていた証拠の透明な糸がプツリと切れる。
 平太は濡れた唇を親指で拭いながら顔を真っ赤にさせている金吾を見下ろす。

「なんで?」
「も、時間だろ!」
「まだ、平気だよ」

 再び屈んで顔を傾けるも金吾が両手を突っぱねる。
 拒否の体勢を取る金吾に平太の眉間に皺が数本刻まれた。

「どうして?」
「だ、だから時間だって!」

 確かに昼休みもあと暫くしたら終わるだろう。だが、まだ時間はある。六年生の足ならすぐに戻れる距離だ。
 だのに、金吾は顔を真っ赤にさせて平太との口吸いを拒否する。

「時間ならまだ間に合うだろ?」
「け、けど、だ、だめだ」

 平太は金吾の両手を取って屈んで顔を近づかせる。すると、金吾の首や耳まで真っ赤に染まってしまった。まるで、触れたら火傷しそうなほど赤い。

「あ、もしかして……」
「な、なんだよ」

 付き合い始めてもう二年目だ。奥手で初心な金吾でも口吸いを恥じらうことは減って来た。この反応は付き合い始めた当初に似ている。しかし、これは、それとは違う。
 平太の口角がゆっくりとつり上がる。それに反して金吾の顔は強張っていく。

「もしかして、金吾……したくなった?」
「なっ、そ、そんなことあるわけないだろ!」

 握った手まで熱い。そして、荒げる声に金吾はどうやら図星であったようだ。
 平太は喉を震わせて笑う。

「くっくく。わかりやすいというかなんというか……金吾らしいよ」
「……平太は可愛気がなくなったな!」
「そう? ろ組の中なら残っているほうだと思うけど」
「怪士丸の方が可愛気あるよ」

 ふん、と顔を逸らすと金吾の真っ赤に染まった首筋が見える。細いわけでもなく太いわけでもないすっきりとした首筋に髪がかかるのはなんとも色っぽい。
 平太の中が刺激され頭の中でカチリと音が鳴った気がする。

「ねぇ。金吾、今日はさぼってしまおうか?」
「は? な、なにい――ぁ」

 切なげな声が金吾の口から零れる。
 平太はそのまま首筋に顔を寄せて舌を這わそうとすると――。

「ふ、ふざけるな!」
「ぐっ」

 金吾から見事な反撃を喰らった平太は鳩尾を抑えてたたらを踏む。
 痛む鳩尾を抑えながら平太は金吾を見る。そこには憤慨した様子の彼が肩で息をしながら立っていた。

「さ、サボるのは厳禁! 忍者の三禁を忘れるな!」
「……誘ったのはそっちなのに」
「誘ってなんかない!」

 涙を浮かべながら金吾は乱れた衣を直しながら歩きはじめる。

「あ、金吾。待ってよ」
「煩い! も、もう平太と暫くしない!」
「え? それはちょっと、」
「しないからな!」

 ふん、と青筋を浮かべながら金吾は去っていってしまった。
 その様子にやりすぎたと反省しながらもしばらくしたらおさまるだろう。しかし、このときの平太の考えは甘かった。
 数日後、は組の長期実習が入り、続いてろ組の実習も入ってしまった。帰って来たあとには怒りも納まっていたかと思えたがそうではなく実習明けも平太は暫くお預けを喰らう羽目となったのだった。



2025.08.02 サイト再掲に伴い改題
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