乙女の誕生
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少年は妖精に恋をした
最近様子が少しおかしかったルルからの突然の告白に心臓がまだ騒がしい。横を歩く小さなルルを見下ろす。
「ん? なぁに、エースくん」
オレの視線に気づいたルルが顔を上げて大きな瞳を向けて来る。大きな瞳に映る自分が見えて慌てて視線を前に戻して「なんでもねぇよ」と素気無く返す。
感じの悪い返事だった。でも、そうしないとオレの内情が漏れだしてさっきのちょっとカッコつけた自分が成立しなくなる方が嫌だった。
ルルの告白はめちゃくちゃ嬉しい。オレ自身が想像していた以上に嬉しかった。でも、すぐに応えられなかった。あいつの告白はあまりにも綺麗過ぎた。オレは自分で言うのもなんだけどあいつみたいに見たもの全て綺麗に捉えられない。穿った見方をたくさんする。ナイトレイブンカレッジでは大体そうだ。いや、ウソ。デュースみたいな元不良なくせに物事を真っ直ぐ見る奴もいるし、オレが知らないだけでひねくれてない奴もいるかもしれない。
とりあず、あんな澄んだ告白にオレのごちゃごちゃした気持ちで応えてはいけない気がした。何より、彼女の思い違いもあるかもしれない。
オレはルルにとって初めての男友達。きっと今までオレとしてきたことを他の男ともしたことがない。だから、ルルは勘違いしているのかもしれないと意気地なしの考えが浮かんだ。それでも嬉しい、あいつの告白は嬉しかった。
だって、最近幼い愛らしさから確実に女として愛らしく可愛らしくなっていた。それがオレに恋をしたからなら嬉しすぎる。誰かの誰かが自分自身だったなんて嬉しい以外他に抱く感情が見つからなかったほど嬉しい。
オレも好きだ――と答えたい。でも、純粋で綺麗で愛らしいルルの知らない情けないオレの姿を知って幻滅しないだろうか。ダサいところは見せたくはないけれどもし見たときに失望しないだろうか。たかがこの時期の恋人に求めるにしては重い感情な気がした。
ミドルスクールのときくらい気軽に付き合えばいい。でもそのときの女子と同じようにルルを気軽に扱いたくなかった。だから、すぐに答えられなくてカッコつけて明日とか言ってしまった。
本当はいますぐ受け入れて恋人にしたい。だのに、どうしても躊躇してしまう。二の足を踏んでしまう。だから、その一歩を踏み出すために心の準備をする時間が欲しい。情けないけれどカッコつけて明日なんて言ったけれど用は時間がほしかっただけ。
ダセェなオレ、なんて考えていると――。
「ルル!」
聞き覚えのないようである声がした。それにオレより早く反応したのはやっぱりルルだった。
「あ、ルイくん」
「ルル。どこに行っていたんだい」
柔い髪をなびかせて振り返るルルにつられて振り返る。そこにはやはりあの残念な勘違いロイヤルソードアカデミーの生徒がいた。
相変わらず好青年風な男に内心で「しつけぇな」と思いながら二人のやり取りを見る。途端に自分の中で改めてこの男に対して苛立ちが込み上げる。
この男はまだルルのことを好きだというのが空気で伝わってくる。気に入らない。ルルからは友人以上の好意などないのに。何故気づかない。鈍感なのか口説き落とす自信があるのか。苛々する。
その男はオレを無視してルルに心配げに話を続ける。
「キミの先輩が随分探していたよ。メッセージも見ていないのかい?」
「え。メッセージ?」
ルルは首を傾げてスマホを取り出して見てみると「ぁ」と小さな声を上げる。どうやら全く気付いていなかったようだ。男はルルの様子に溜息をついた。
「ここはロイヤルソードアカデミーじゃないんだからこまめに確認をした方がいいよ」
「そうね。それに鏡の時間もあるし」
「うん。じゃ、行こうか――って、あれ? キミはあのときの」
「どーも」
ようやくオレに気づいた男に引き攣りそうな唇を動かして返事をする。男は若干眉間に皺を寄せて怪訝そうに見てスッと顔を取り繕った。
「ルルはここから僕が送るよ。キミはVDCも出ていたし寮に戻って構わないよ」
「へぇ。オレが出てたの知ってんの?」
「ああ。ボクの学校が優勝したがキミたちのチームも良かったよ」
自分が出ていないくせにいけしゃあしゃあと。それにしても今回この男はオレに対して敵意を隠しもしない。どうやら前回のことを覚えているらしいというか学んだらしい。だが、どうにも腹立たしいし何よりルルの意思も確認していないところが相変わらず腹が立つ。
「ここの生徒だしオレが送る。あんたこそ早く帰ったら?」
向い側とはいえ遠いだろ。さっさといけやとこちらも敵意を隠さずに伝える。それに男は眉を顰めて口を開こうとする。こいつどうにもしつこい。だから、オレも先回りしようと口を開こうとしたけれど――。
「ルイくん。ワタシ、エースくんに送ってもらうから大丈夫だよ」
声を上げたのは静観していたルルだった。ルルはオレと男の視線を一身に受けながら小さな手を組みもじもじする。なんだ、その可愛い姿はとオレが考えているのと同じくして向かいで見ている男もだらしない顔をしている。見るな、減るだろクソ野郎なんて悪態をついていると頬を緩めてルルは爆弾を落とした。
「好きな人ともう少し一緒に居たいから」
「あ、エースくんがいいならだけど」と付け足すルルの天然ぶりに感謝する日が来るとは。
嬉しさと恥ずかしさに身体が痒くなるなか男を見れば放心していた。それでもルルは気にしていないのか。
「ルイくん、態々ありがとう。ワタシは大丈夫だから門限もあるし学園に戻っても平気だよ」
気を付けて帰ってね、と容赦ない天然な追撃についに男は陥落した。
「ぁ、えっと、あ、じゃ、じゃあ、そうさせてもらうよ」
若干涙目のルイがそう言う。そして、ルルに背を向ける瞬間こっちを睨んだからベと舌を出すとさらに睨まれた。でも、オレも引かない。鼻で哂い返せば男は悔しげに顔を歪めて背を向けて去っていった。その男を見送ることなくオレはルルに向き合うことにした。
ここまで言われたらもう明日なんて言ってなんかいられない。それに、ここまでオープンなルルにくよくよ考えているのも馬鹿らしくなってきたし。
「で、えっと、エースくん。ここからだと鏡って――」
「ルル」
なに、と大きな瞳で見上げるルルはやはり可愛い。以前の幼い愛らしさではなく一人の女の子として今はとても可愛くて仕方がなかった。そして、独り占めしたいと思った。ならば、ぐだぐだ考えている暇はない。
無垢でも成長した彼女の瞳を見つめながら――。
「好きです。オレと付き合ってください」
オレの告白にルルが間抜けにぽかんと口を開く。それも可愛いなと思いながら柔らかい頬をふにっと掴む。
「おーい。返事は? あ、ちなみにお前の告白はOKだかんな」
「はい。次はルルな」と催促すればパチパチと瞬いてオレの手をタシタシと叩く。小動物だなと思いながら外すと頬を今度は自分でつねった。
「何がしたいんだよ」
「夢かなぁって」
「寝てんの?」
「ううん。起きてる」
「痛かったし」と言って頬を擦る。その頬がゆっくりと染まっていく。
「あの、夢じゃないの?」
「ちげぇけど」
「……ワタシ告白されたの?」
「そーね」
で、返事ともう一度促す。何せもう時間がない。だから、言質だけは取りたい。そしたら明日デートできるし。
「ルル、オレと恋人にならねぇの?」
「なる! なりたいです!」
食い気味の返事なルルの返事に笑いが込み上げる。ぶはっとやっぱり耐えられずに吹き出して腹を抱えて笑う。すると、ルルが怒り出す。
「か、からかったの! ヒドイ!」
涙目になり出す彼女に慌てて誤解だと伝える。
「ちが、ちげぇよ! あんまし食い気味だから! 面白くて! 告白は嘘じゃないし!」
うるうると涙を目頭に溜めるルルに罪悪感が募る。泣かすつもりはなかった。これは反省しなければいけない。
「あー。悪かった」
「……今度から間が悪いのはやめてね」
「善処しまーす」
宣誓みたいに言えばルルが笑った。その瞬間目尻の涙の粒が零れた。彼女の頬に触れて拭う。やっぱり柔らかいな。
「いきなり泣かせちまってごめんな」
「……ううん。平気、ワタシの勘違いだから」
そっと柔らかくて小さな手が頬に触れたままのオレの手に触れる。そこから徐々に熱が上がっていく気がした。
「ふふ。熱いね」
「緊張すっからな」
「ぇ?」と意外そうに目を見開く彼女の手を今度はオレが握る。そして、キザな男らしく唇に手を持っていき指先にキスをする。まさかオレがこんなことをするなんて天地がひっくり返ってもありえねぇと思っていたのによ。
それでも指先から唇を離してルルを見て満足した気分の方が大きくなる。
「んじゃ、これからよろしくな」
顔を真っ赤にさせる可愛い恋人にウィンクを送った。最後は流石にちょっと自分でも恥ずかしかった。
最近様子が少しおかしかったルルからの突然の告白に心臓がまだ騒がしい。横を歩く小さなルルを見下ろす。
「ん? なぁに、エースくん」
オレの視線に気づいたルルが顔を上げて大きな瞳を向けて来る。大きな瞳に映る自分が見えて慌てて視線を前に戻して「なんでもねぇよ」と素気無く返す。
感じの悪い返事だった。でも、そうしないとオレの内情が漏れだしてさっきのちょっとカッコつけた自分が成立しなくなる方が嫌だった。
ルルの告白はめちゃくちゃ嬉しい。オレ自身が想像していた以上に嬉しかった。でも、すぐに応えられなかった。あいつの告白はあまりにも綺麗過ぎた。オレは自分で言うのもなんだけどあいつみたいに見たもの全て綺麗に捉えられない。穿った見方をたくさんする。ナイトレイブンカレッジでは大体そうだ。いや、ウソ。デュースみたいな元不良なくせに物事を真っ直ぐ見る奴もいるし、オレが知らないだけでひねくれてない奴もいるかもしれない。
とりあず、あんな澄んだ告白にオレのごちゃごちゃした気持ちで応えてはいけない気がした。何より、彼女の思い違いもあるかもしれない。
オレはルルにとって初めての男友達。きっと今までオレとしてきたことを他の男ともしたことがない。だから、ルルは勘違いしているのかもしれないと意気地なしの考えが浮かんだ。それでも嬉しい、あいつの告白は嬉しかった。
だって、最近幼い愛らしさから確実に女として愛らしく可愛らしくなっていた。それがオレに恋をしたからなら嬉しすぎる。誰かの誰かが自分自身だったなんて嬉しい以外他に抱く感情が見つからなかったほど嬉しい。
オレも好きだ――と答えたい。でも、純粋で綺麗で愛らしいルルの知らない情けないオレの姿を知って幻滅しないだろうか。ダサいところは見せたくはないけれどもし見たときに失望しないだろうか。たかがこの時期の恋人に求めるにしては重い感情な気がした。
ミドルスクールのときくらい気軽に付き合えばいい。でもそのときの女子と同じようにルルを気軽に扱いたくなかった。だから、すぐに答えられなくてカッコつけて明日とか言ってしまった。
本当はいますぐ受け入れて恋人にしたい。だのに、どうしても躊躇してしまう。二の足を踏んでしまう。だから、その一歩を踏み出すために心の準備をする時間が欲しい。情けないけれどカッコつけて明日なんて言ったけれど用は時間がほしかっただけ。
ダセェなオレ、なんて考えていると――。
「ルル!」
聞き覚えのないようである声がした。それにオレより早く反応したのはやっぱりルルだった。
「あ、ルイくん」
「ルル。どこに行っていたんだい」
柔い髪をなびかせて振り返るルルにつられて振り返る。そこにはやはりあの残念な勘違いロイヤルソードアカデミーの生徒がいた。
相変わらず好青年風な男に内心で「しつけぇな」と思いながら二人のやり取りを見る。途端に自分の中で改めてこの男に対して苛立ちが込み上げる。
この男はまだルルのことを好きだというのが空気で伝わってくる。気に入らない。ルルからは友人以上の好意などないのに。何故気づかない。鈍感なのか口説き落とす自信があるのか。苛々する。
その男はオレを無視してルルに心配げに話を続ける。
「キミの先輩が随分探していたよ。メッセージも見ていないのかい?」
「え。メッセージ?」
ルルは首を傾げてスマホを取り出して見てみると「ぁ」と小さな声を上げる。どうやら全く気付いていなかったようだ。男はルルの様子に溜息をついた。
「ここはロイヤルソードアカデミーじゃないんだからこまめに確認をした方がいいよ」
「そうね。それに鏡の時間もあるし」
「うん。じゃ、行こうか――って、あれ? キミはあのときの」
「どーも」
ようやくオレに気づいた男に引き攣りそうな唇を動かして返事をする。男は若干眉間に皺を寄せて怪訝そうに見てスッと顔を取り繕った。
「ルルはここから僕が送るよ。キミはVDCも出ていたし寮に戻って構わないよ」
「へぇ。オレが出てたの知ってんの?」
「ああ。ボクの学校が優勝したがキミたちのチームも良かったよ」
自分が出ていないくせにいけしゃあしゃあと。それにしても今回この男はオレに対して敵意を隠しもしない。どうやら前回のことを覚えているらしいというか学んだらしい。だが、どうにも腹立たしいし何よりルルの意思も確認していないところが相変わらず腹が立つ。
「ここの生徒だしオレが送る。あんたこそ早く帰ったら?」
向い側とはいえ遠いだろ。さっさといけやとこちらも敵意を隠さずに伝える。それに男は眉を顰めて口を開こうとする。こいつどうにもしつこい。だから、オレも先回りしようと口を開こうとしたけれど――。
「ルイくん。ワタシ、エースくんに送ってもらうから大丈夫だよ」
声を上げたのは静観していたルルだった。ルルはオレと男の視線を一身に受けながら小さな手を組みもじもじする。なんだ、その可愛い姿はとオレが考えているのと同じくして向かいで見ている男もだらしない顔をしている。見るな、減るだろクソ野郎なんて悪態をついていると頬を緩めてルルは爆弾を落とした。
「好きな人ともう少し一緒に居たいから」
「あ、エースくんがいいならだけど」と付け足すルルの天然ぶりに感謝する日が来るとは。
嬉しさと恥ずかしさに身体が痒くなるなか男を見れば放心していた。それでもルルは気にしていないのか。
「ルイくん、態々ありがとう。ワタシは大丈夫だから門限もあるし学園に戻っても平気だよ」
気を付けて帰ってね、と容赦ない天然な追撃についに男は陥落した。
「ぁ、えっと、あ、じゃ、じゃあ、そうさせてもらうよ」
若干涙目のルイがそう言う。そして、ルルに背を向ける瞬間こっちを睨んだからベと舌を出すとさらに睨まれた。でも、オレも引かない。鼻で哂い返せば男は悔しげに顔を歪めて背を向けて去っていった。その男を見送ることなくオレはルルに向き合うことにした。
ここまで言われたらもう明日なんて言ってなんかいられない。それに、ここまでオープンなルルにくよくよ考えているのも馬鹿らしくなってきたし。
「で、えっと、エースくん。ここからだと鏡って――」
「ルル」
なに、と大きな瞳で見上げるルルはやはり可愛い。以前の幼い愛らしさではなく一人の女の子として今はとても可愛くて仕方がなかった。そして、独り占めしたいと思った。ならば、ぐだぐだ考えている暇はない。
無垢でも成長した彼女の瞳を見つめながら――。
「好きです。オレと付き合ってください」
オレの告白にルルが間抜けにぽかんと口を開く。それも可愛いなと思いながら柔らかい頬をふにっと掴む。
「おーい。返事は? あ、ちなみにお前の告白はOKだかんな」
「はい。次はルルな」と催促すればパチパチと瞬いてオレの手をタシタシと叩く。小動物だなと思いながら外すと頬を今度は自分でつねった。
「何がしたいんだよ」
「夢かなぁって」
「寝てんの?」
「ううん。起きてる」
「痛かったし」と言って頬を擦る。その頬がゆっくりと染まっていく。
「あの、夢じゃないの?」
「ちげぇけど」
「……ワタシ告白されたの?」
「そーね」
で、返事ともう一度促す。何せもう時間がない。だから、言質だけは取りたい。そしたら明日デートできるし。
「ルル、オレと恋人にならねぇの?」
「なる! なりたいです!」
食い気味の返事なルルの返事に笑いが込み上げる。ぶはっとやっぱり耐えられずに吹き出して腹を抱えて笑う。すると、ルルが怒り出す。
「か、からかったの! ヒドイ!」
涙目になり出す彼女に慌てて誤解だと伝える。
「ちが、ちげぇよ! あんまし食い気味だから! 面白くて! 告白は嘘じゃないし!」
うるうると涙を目頭に溜めるルルに罪悪感が募る。泣かすつもりはなかった。これは反省しなければいけない。
「あー。悪かった」
「……今度から間が悪いのはやめてね」
「善処しまーす」
宣誓みたいに言えばルルが笑った。その瞬間目尻の涙の粒が零れた。彼女の頬に触れて拭う。やっぱり柔らかいな。
「いきなり泣かせちまってごめんな」
「……ううん。平気、ワタシの勘違いだから」
そっと柔らかくて小さな手が頬に触れたままのオレの手に触れる。そこから徐々に熱が上がっていく気がした。
「ふふ。熱いね」
「緊張すっからな」
「ぇ?」と意外そうに目を見開く彼女の手を今度はオレが握る。そして、キザな男らしく唇に手を持っていき指先にキスをする。まさかオレがこんなことをするなんて天地がひっくり返ってもありえねぇと思っていたのによ。
それでも指先から唇を離してルルを見て満足した気分の方が大きくなる。
「んじゃ、これからよろしくな」
顔を真っ赤にさせる可愛い恋人にウィンクを送った。最後は流石にちょっと自分でも恥ずかしかった。
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