乙女の誕生
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少年と妖精の邂逅
寮の憩いの場である談話室は閑散として居心地悪かった。ここまで居心地の悪い談話室なんて今まで――いや何回かあった。盗み食いしてここで怒られて首はねられていた。でも、それのほうがよっぽどいい。チラリと目の前の寮長を見て出かけた溜息を何とか堪えると深刻な顔をしたリドル寮長の口が慎重に動き出す。
「いいかい。エース正直に答えるんだよ」
「いや、だから、本当に誤解ですって!」
深刻な顔で手を組むリドル寮長に訴える。ついでに、その斜め後ろに控えているトレイ副寮長にも違うんですと言えば「わかった、わかった」といなされた。
いや、そう言うなら深刻な顔をするリドル寮長をどうにかしてくれ。これはもうケイト先輩しか――いないと思ったけれど相変わらずスマホを弄っていた。これで頼みの綱がなくなってしまった。
オレは溜息をつきながら誤解の弁明にかかる。
「リドル寮長。誤解です。オレにはそういう趣味はないです!」
今日の昼間、ある女子を助けたところをハーツラビュル寮の寮生に見られてしまっていた。本来であれば恋人かと茶化されて終わった。だが、オレが助けた女子ルルの見た目は小学生のように幼く見えた。そこからあらぬ噂が生まれリドル寮長にまで届いてしまいこの面談である。
あ~と頭をかかえる。確かに、オレも小学生だと思って間違えた。つか、やっぱり傍から見ても小学生に見えるんだな。でも、だからって、こんな誤解が生まれるとは全然考えてもみなかった。
だが、自分も間違えたんだから他の人間も間違えるのになんら不思議はない。けど、どうしてあらぬ誤解が生まれるのか甚だ想像がつかない。
でも、違う。そんな趣味はないことはにわかってほしいと寮長と目を合わせる。寮長は深刻な顔をして「本当に違うのかい」と訊ねてきた。首を縦に必死に動かして答える。
「本当っす。つか、そもそも女児じゃないんですよ。その写真の女子はオレと同い年でブルームノヴァカレッジの一年生なんですよ」
「待て、ブルームノヴァカレッジだって?」
すかさず質問してきたトレイ副寮長に頷く。すると、寮長と副寮長は顔を見合わせ驚いた反応を見せた。二人のその反応からどうやらここに自由に行き来できることは知らなかったようだ。つまり、ブルームノヴァカレッジの生徒が賢者の島にいることはナイトレイブンカレッジの生徒が持つ常識ではないようだ。
ただ、ケイト先輩は知っているみたいだ。一人だけ何も反応のなかった先輩をみやる。どうやら、知っている生徒は知っているらしい。何故、それで広まらないかはよくわからないが、と掘り起こしても意味の無さそうなことはやめる。
すると、リドル寮長が頭の中にある参考書を引っ張り出すように話し出した。
「そういえば……ナイトレイブンカレッジの歴史を調べていたときにブルームノヴァカレッジと交流があったと書かれている文章があったな。その本には確かここよりさらに辺境の地にある生徒のためにゲートがあるとも……」
「……うわぁ。流石寮長、その通りっす。あと、うちとはもう交流はないっすけど、ロイヤルソードアカデミーとはまだ交流があるみたい」
「うん。なるほど。なら、ゲートがあるのは確実だね」
リドル寮長はなるほど、と頷き納得している様子だ。けど、その後ろのトレイ先輩は眉を寄せていたのに首を傾げていた。
「トレイ先輩どうしたんすか?」
「あ……いや、何でもない」
すぐに険しい顔から爽やかに見える笑みに変わった。本当に腹の内が読めない人だ。
それと同じくらい読めないケイト先輩を見ると丁度画面から顔を上げたのか目があった。垂れた目がさらに下がって口角が上がって八重歯が見えた。
ケイト先輩はこちらに身体を向けるとスマホを振りながら話し出した。
「エースちゃんの潔白を晴らす証拠発見したよぉ~。マジカメでブルームノヴァに通っている子のアカウントにその女の子発見したよ」
ほら、といってケイト先輩がスマホをトレイ先輩のスマホの横に置いた。
そこには上品で真っ白な服を着たルルが映っていた。他にも同じような服を着た女子が何人か映っていた。その写真の下を見ればハッシュタグに式典や行事など貼られていた。
「これでエースちゃんの疑惑は誤解と証明されました~よかったね」
「だから、言ったじゃないっすか。もう」
口角を下げて先輩三人を睨む。リドル寮長はコホンとわざとらしい空咳をしてからまた真っ直ぐオレを見た。先ほどの深刻さはないけれどとても真剣な瞳に思わず背筋が伸びる。
「な、なんすか」
「エース。相手方のお嬢さんとは真剣な交際なのかい」
「あんたはいつの間にオレの親父になったんだよ。つか、なんでそうなるんすか」
思わず失礼な口を聞いてしまったが伸ばした背筋が緩む。
「あ~ッ! 別にその女子とは付き合っていないです!」
「そ、そうなのかい」
髪の毛を掻き乱しながら叫ぶ。これで満足かと思えばリドル寮長は大きな目を瞬かせた。ちなみに、後ろ二人の先輩はにやけた口をしている。その顔が兄貴に似て苛立ちが募る。
「違いますんで」
「何も言ってないぞ」
「言ってないよぉ~」
チッと心の中で舌を打ち鳴らす。これは後でからかわれる。いや、この先輩だけではない。ハーツラビュル寮の寮生には確実に弄られる。下手をしたらもう学園中に広まっているかもしれない。つまり、部活でもからかわれる未来の可能性もある。
面倒くさいことになったな。これなら声なんてかけなければ――と何度も考えて消えていく。だって、あの時道端で佇んでいたルルは放っておけない雰囲気があった。きっと、オレが声をかけなければ声をかける人間はいたに違いない。でも、あの雰囲気が悪い人間を引き寄せたと思うルルを知った今は自分が声をかけてよかったとさえ思う。何せ蓋を開けたら世間知らずな天然ポワポワ女子だったのだから。
「で、どうして声かけたの?」
ナンパしたのなんてスマホを取りながら言うケイト先輩を睨みながら答える。
「迷子だったんすよ。それにロイヤルソードアカデミーの奴に無理矢理連れ回されている感じだったんで……つい、っていうか」
とはいっても、最後の最後はキザったらしいロイヤルソードアカデミーの生徒の鼻っ柱を折ってやりたいだけったけれど。でも、あれくらいすればもうルルには近寄らないと思うけれど……彼女自身があの男の好意わかっているかどうか。
大丈夫かよ、と今ここで心配してしまう。けど同時にそういう心配をしてしまう自分に苛立つ。元カノの顔だってもうはっきりと覚えていないのにルルの顔も、声もはっきりと記憶に残っている。今までになかったのにどうして考えれば――。
「あ、あの、エースくん。ワタシと友達になってくれる」
普段だったら絶対にそんなことで連絡先など交換しない。だのに、自分はしてしまった。ついでに、別れ際に「男の子のお友達初めて」なんて可愛らしく言われたから――。
可愛らしいってなんだ。いや、あの可愛らしさは小さい子特有のものに似ているだけであって、え、そうなるとオレはそういう趣味なのか。違う。違う。ルルは小さな子じゃなくてオレと同い年の女の子で――つまり、彼女は女の子として可愛くて。あ~わからなくなってきた。あ~わからねぇ。
「おーい。エースちゃん、どしたの?」
「うっぇ、っと、ぁ~何でもないっす」
思考の深みにはまりかけていたところをケイト先輩の声で引き戻される。もうこの際このことは忘れよう。うん、忘れてしまおう。
「ま、エースちゃんは困っている女の子助けてあげたヒーローってことだね」
「うげ、やめてくださいよ」
あ~もう完全にからかわれる対象になってしまった。だけど、寮長は微笑ましいというようないいことをしたねと褒めているような顔をしていた。
高校生というよりも子どものような扱いに背中が痒くなって来る。
「で、話し終わりならもう部屋に戻っていいっすよね」
「ああ。ボクらも誤解して悪かったね」
「ほんとヒドイ誤解っすよ」
フン、と鼻を鳴らすけれど一応頭を下げながら部屋を出る。だけど、ここからも地獄だった。
* * *
談話室から出るとまず寮生の上級生に絡まれ説明をする羽目になった。さらに、どこから高嶺の花と名高い魔法士養成学校のブルームノヴァカレッジの生徒が賢者の島にいることを根掘り葉掘り質問された。
男所帯だからってここまで女に飢えのだろうか。オレなんか恋人は当分要らないと考えているのに。皆あのめんどうくささを知らないんじゃないか。恋人いないイコール年齢って大変なんだな。
オレはひとり一段階上にいる気持ちでいればスマホの着信が光っているのが見えた。
こんな時間にもしかして部活の連絡網かもしれない。なら、早く見なければとスマホの画面を見て瞬きを繰り返した。
「ルル?」
連絡先を交換するときにあまり弄らないからわからないと言っていた。確かに操作する手はおぼつかないから得意じゃないのはすぐにわかった。本当に同世代の女の子と違うんだなと新鮮な気持ちで見てしまった。
「あ~だからかな」
トンと画面を押す。そして、画面に出てきたメッセージと星空の写真に唇がにやけた。そして、それをデュースに見つかり、他のルームメイトにバレまたからかわれたのだった。
寮の憩いの場である談話室は閑散として居心地悪かった。ここまで居心地の悪い談話室なんて今まで――いや何回かあった。盗み食いしてここで怒られて首はねられていた。でも、それのほうがよっぽどいい。チラリと目の前の寮長を見て出かけた溜息を何とか堪えると深刻な顔をしたリドル寮長の口が慎重に動き出す。
「いいかい。エース正直に答えるんだよ」
「いや、だから、本当に誤解ですって!」
深刻な顔で手を組むリドル寮長に訴える。ついでに、その斜め後ろに控えているトレイ副寮長にも違うんですと言えば「わかった、わかった」といなされた。
いや、そう言うなら深刻な顔をするリドル寮長をどうにかしてくれ。これはもうケイト先輩しか――いないと思ったけれど相変わらずスマホを弄っていた。これで頼みの綱がなくなってしまった。
オレは溜息をつきながら誤解の弁明にかかる。
「リドル寮長。誤解です。オレにはそういう趣味はないです!」
今日の昼間、ある女子を助けたところをハーツラビュル寮の寮生に見られてしまっていた。本来であれば恋人かと茶化されて終わった。だが、オレが助けた女子ルルの見た目は小学生のように幼く見えた。そこからあらぬ噂が生まれリドル寮長にまで届いてしまいこの面談である。
あ~と頭をかかえる。確かに、オレも小学生だと思って間違えた。つか、やっぱり傍から見ても小学生に見えるんだな。でも、だからって、こんな誤解が生まれるとは全然考えてもみなかった。
だが、自分も間違えたんだから他の人間も間違えるのになんら不思議はない。けど、どうしてあらぬ誤解が生まれるのか甚だ想像がつかない。
でも、違う。そんな趣味はないことはにわかってほしいと寮長と目を合わせる。寮長は深刻な顔をして「本当に違うのかい」と訊ねてきた。首を縦に必死に動かして答える。
「本当っす。つか、そもそも女児じゃないんですよ。その写真の女子はオレと同い年でブルームノヴァカレッジの一年生なんですよ」
「待て、ブルームノヴァカレッジだって?」
すかさず質問してきたトレイ副寮長に頷く。すると、寮長と副寮長は顔を見合わせ驚いた反応を見せた。二人のその反応からどうやらここに自由に行き来できることは知らなかったようだ。つまり、ブルームノヴァカレッジの生徒が賢者の島にいることはナイトレイブンカレッジの生徒が持つ常識ではないようだ。
ただ、ケイト先輩は知っているみたいだ。一人だけ何も反応のなかった先輩をみやる。どうやら、知っている生徒は知っているらしい。何故、それで広まらないかはよくわからないが、と掘り起こしても意味の無さそうなことはやめる。
すると、リドル寮長が頭の中にある参考書を引っ張り出すように話し出した。
「そういえば……ナイトレイブンカレッジの歴史を調べていたときにブルームノヴァカレッジと交流があったと書かれている文章があったな。その本には確かここよりさらに辺境の地にある生徒のためにゲートがあるとも……」
「……うわぁ。流石寮長、その通りっす。あと、うちとはもう交流はないっすけど、ロイヤルソードアカデミーとはまだ交流があるみたい」
「うん。なるほど。なら、ゲートがあるのは確実だね」
リドル寮長はなるほど、と頷き納得している様子だ。けど、その後ろのトレイ先輩は眉を寄せていたのに首を傾げていた。
「トレイ先輩どうしたんすか?」
「あ……いや、何でもない」
すぐに険しい顔から爽やかに見える笑みに変わった。本当に腹の内が読めない人だ。
それと同じくらい読めないケイト先輩を見ると丁度画面から顔を上げたのか目があった。垂れた目がさらに下がって口角が上がって八重歯が見えた。
ケイト先輩はこちらに身体を向けるとスマホを振りながら話し出した。
「エースちゃんの潔白を晴らす証拠発見したよぉ~。マジカメでブルームノヴァに通っている子のアカウントにその女の子発見したよ」
ほら、といってケイト先輩がスマホをトレイ先輩のスマホの横に置いた。
そこには上品で真っ白な服を着たルルが映っていた。他にも同じような服を着た女子が何人か映っていた。その写真の下を見ればハッシュタグに式典や行事など貼られていた。
「これでエースちゃんの疑惑は誤解と証明されました~よかったね」
「だから、言ったじゃないっすか。もう」
口角を下げて先輩三人を睨む。リドル寮長はコホンとわざとらしい空咳をしてからまた真っ直ぐオレを見た。先ほどの深刻さはないけれどとても真剣な瞳に思わず背筋が伸びる。
「な、なんすか」
「エース。相手方のお嬢さんとは真剣な交際なのかい」
「あんたはいつの間にオレの親父になったんだよ。つか、なんでそうなるんすか」
思わず失礼な口を聞いてしまったが伸ばした背筋が緩む。
「あ~ッ! 別にその女子とは付き合っていないです!」
「そ、そうなのかい」
髪の毛を掻き乱しながら叫ぶ。これで満足かと思えばリドル寮長は大きな目を瞬かせた。ちなみに、後ろ二人の先輩はにやけた口をしている。その顔が兄貴に似て苛立ちが募る。
「違いますんで」
「何も言ってないぞ」
「言ってないよぉ~」
チッと心の中で舌を打ち鳴らす。これは後でからかわれる。いや、この先輩だけではない。ハーツラビュル寮の寮生には確実に弄られる。下手をしたらもう学園中に広まっているかもしれない。つまり、部活でもからかわれる未来の可能性もある。
面倒くさいことになったな。これなら声なんてかけなければ――と何度も考えて消えていく。だって、あの時道端で佇んでいたルルは放っておけない雰囲気があった。きっと、オレが声をかけなければ声をかける人間はいたに違いない。でも、あの雰囲気が悪い人間を引き寄せたと思うルルを知った今は自分が声をかけてよかったとさえ思う。何せ蓋を開けたら世間知らずな天然ポワポワ女子だったのだから。
「で、どうして声かけたの?」
ナンパしたのなんてスマホを取りながら言うケイト先輩を睨みながら答える。
「迷子だったんすよ。それにロイヤルソードアカデミーの奴に無理矢理連れ回されている感じだったんで……つい、っていうか」
とはいっても、最後の最後はキザったらしいロイヤルソードアカデミーの生徒の鼻っ柱を折ってやりたいだけったけれど。でも、あれくらいすればもうルルには近寄らないと思うけれど……彼女自身があの男の好意わかっているかどうか。
大丈夫かよ、と今ここで心配してしまう。けど同時にそういう心配をしてしまう自分に苛立つ。元カノの顔だってもうはっきりと覚えていないのにルルの顔も、声もはっきりと記憶に残っている。今までになかったのにどうして考えれば――。
「あ、あの、エースくん。ワタシと友達になってくれる」
普段だったら絶対にそんなことで連絡先など交換しない。だのに、自分はしてしまった。ついでに、別れ際に「男の子のお友達初めて」なんて可愛らしく言われたから――。
可愛らしいってなんだ。いや、あの可愛らしさは小さい子特有のものに似ているだけであって、え、そうなるとオレはそういう趣味なのか。違う。違う。ルルは小さな子じゃなくてオレと同い年の女の子で――つまり、彼女は女の子として可愛くて。あ~わからなくなってきた。あ~わからねぇ。
「おーい。エースちゃん、どしたの?」
「うっぇ、っと、ぁ~何でもないっす」
思考の深みにはまりかけていたところをケイト先輩の声で引き戻される。もうこの際このことは忘れよう。うん、忘れてしまおう。
「ま、エースちゃんは困っている女の子助けてあげたヒーローってことだね」
「うげ、やめてくださいよ」
あ~もう完全にからかわれる対象になってしまった。だけど、寮長は微笑ましいというようないいことをしたねと褒めているような顔をしていた。
高校生というよりも子どものような扱いに背中が痒くなって来る。
「で、話し終わりならもう部屋に戻っていいっすよね」
「ああ。ボクらも誤解して悪かったね」
「ほんとヒドイ誤解っすよ」
フン、と鼻を鳴らすけれど一応頭を下げながら部屋を出る。だけど、ここからも地獄だった。
* * *
談話室から出るとまず寮生の上級生に絡まれ説明をする羽目になった。さらに、どこから高嶺の花と名高い魔法士養成学校のブルームノヴァカレッジの生徒が賢者の島にいることを根掘り葉掘り質問された。
男所帯だからってここまで女に飢えのだろうか。オレなんか恋人は当分要らないと考えているのに。皆あのめんどうくささを知らないんじゃないか。恋人いないイコール年齢って大変なんだな。
オレはひとり一段階上にいる気持ちでいればスマホの着信が光っているのが見えた。
こんな時間にもしかして部活の連絡網かもしれない。なら、早く見なければとスマホの画面を見て瞬きを繰り返した。
「ルル?」
連絡先を交換するときにあまり弄らないからわからないと言っていた。確かに操作する手はおぼつかないから得意じゃないのはすぐにわかった。本当に同世代の女の子と違うんだなと新鮮な気持ちで見てしまった。
「あ~だからかな」
トンと画面を押す。そして、画面に出てきたメッセージと星空の写真に唇がにやけた。そして、それをデュースに見つかり、他のルームメイトにバレまたからかわれたのだった。