最期を迎えるその日まで
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◆ 竜胆視点
「殺せば問題ねぇだろ」
さらりとなんてことのないように言う兄貴にすぐに「だよな」と理解する頭。やっぱりオレら兄弟って似ているな。笑みを浮かべる兄貴の横顔を見てオレも自然と口角が上がっていく。
そうだよな。殺しちまえばいいんだ。橙子は優しいから望んでもいない出産で誕生したガキでも愛すだろう。でも、悪いが殺す。絶対に殺す。泣いて喚いてオレらのこと怨もうが殺す。何が何でも殺す。
「殺しちまえばいいか」
「そうそう。それにガキが欲しいならオレらのどっちかの子ども孕ませてやればいいだろ」
「あ。そうか」
それいいな。兄貴でも、オレでも、どっちでもいい。似るならオレら兄弟じゃなくて橙子の方がいい。性格はオレらでもいいし、橙子でもいい。
「ふっ。随分楽しそうじゃねぇか」
「橙子に似ている子どもならいいなぁって思ってさ」
「あ、それはオレも思った」
オレらに似た男も女ももういらないからな。兄貴はさらっとまた言う。この分だと性格も橙子に似た方が良さそうだな。ま、いいか。でも、なら女はやだな。
「その場合だと男の方がいいのか?」
「あー。確かに橙子によく似た女になって他の野郎とくっつくのとか見たくねぇし」
眉を顰める兄貴に激しく同感だ。そうだな。なら男の方がいい。そうすると変な女が着かないようにしてやらなきゃな――ま、全部もしもの話だけどな。
「ガキは別にいらねぇし」
「そうだな。でも、橙子がもし戻って来たときに子どもが欲しいって言ったら考えてやろうぜ」
「賛成」
兄貴の提案に気軽に答えながら怒りとか苛立ちとか色々が納まると不安が過る。
本当に橙子を取り戻せるのだろうか。1年経ったがまだすべて譲渡が終わっていない。それにあの最後のときの橙子を思い出すと胃の居心地が悪くなる。
「最後のさ、橙子、勘違いしてねぇかな」
胃の辺りを擦りながら兄貴に聞いてみる。兄貴は「勘違い?」と聞き返して来た。そうか。兄貴は気づいていないのか。あの橙子を見て。
兄貴の方を見ながら「あいつさ、勘違いしてるよ」ともう一度告げる。オレの言葉を兄貴は咀嚼するように顎に手をかける。ポーズ取っているのか最早考えるときの癖なのか。どっちもか。分からないけれど、と待っている。兄貴がゆっくりとこっちを見て「ないだろ」と答えた。
「なくないって、兄貴」
「オレらがあいつのこと見放したって思うか?」
あれぐらいで、と信じられないという顔をする兄貴にオレは頭を左右に振る。兄貴はすっかりあいつの性格を忘れちまったな。怪訝な兄貴を見やりながら口を開く。
「あいつはこれまで碌に男と付き合ってこなかったんだぜ。あの時の兄貴の八つ当たりとか……オレのあの態度でもう戻る場所はねぇって思うかもしんねぇ」
オレの言葉に兄貴はまた考える。それから暫くして「……ありえんな」と呟いて吐息を零す。
「だろ。だから、あいつがちゃんと戻って来られるようにしてやらないと」
あの野郎の目をかいくぐって接触できたらいい。けれど、オレらはあっちの希望で橙子がこちらの幹部と情報交換する際の相手から外されている。まったくどこまで橙子に執着してんだあの野郎――つか。
「そうか。今日って橙子があいつと結婚して1年か」
「今さらかよ……」
「え」
兄貴気づいていたのって見たらすっごく呆れた目で見られた。いや、だって、そんなことより橙子とあの野郎の距離間とか色々気になっちまったし。
「ハァ。可愛い脳味噌だな」
「ぐっぬぅ」
兄貴にどうしたって言い返せなくてオレは悔しさに唇を噛んだ。だって、間抜けなのは事実だし。オレは兄貴の呆れた視線をから逃れるように窓の外を見る。
外はもうすっかり暗くなっていた。そりゃそうだ。もう11月になっているのだから。もう冬もすぐそこだ。
そういえばホテルのレストランということはそのまま泊まるのか。泊まると考えて消え去った苛立ちが込み上げてオレは無理矢理忘れることにしたのに。
「今日は泊まってセックスでもすんのかな」
兄貴の所為で結局事務所に着くまで苛立ちが消えることはなかった。
「殺せば問題ねぇだろ」
さらりとなんてことのないように言う兄貴にすぐに「だよな」と理解する頭。やっぱりオレら兄弟って似ているな。笑みを浮かべる兄貴の横顔を見てオレも自然と口角が上がっていく。
そうだよな。殺しちまえばいいんだ。橙子は優しいから望んでもいない出産で誕生したガキでも愛すだろう。でも、悪いが殺す。絶対に殺す。泣いて喚いてオレらのこと怨もうが殺す。何が何でも殺す。
「殺しちまえばいいか」
「そうそう。それにガキが欲しいならオレらのどっちかの子ども孕ませてやればいいだろ」
「あ。そうか」
それいいな。兄貴でも、オレでも、どっちでもいい。似るならオレら兄弟じゃなくて橙子の方がいい。性格はオレらでもいいし、橙子でもいい。
「ふっ。随分楽しそうじゃねぇか」
「橙子に似ている子どもならいいなぁって思ってさ」
「あ、それはオレも思った」
オレらに似た男も女ももういらないからな。兄貴はさらっとまた言う。この分だと性格も橙子に似た方が良さそうだな。ま、いいか。でも、なら女はやだな。
「その場合だと男の方がいいのか?」
「あー。確かに橙子によく似た女になって他の野郎とくっつくのとか見たくねぇし」
眉を顰める兄貴に激しく同感だ。そうだな。なら男の方がいい。そうすると変な女が着かないようにしてやらなきゃな――ま、全部もしもの話だけどな。
「ガキは別にいらねぇし」
「そうだな。でも、橙子がもし戻って来たときに子どもが欲しいって言ったら考えてやろうぜ」
「賛成」
兄貴の提案に気軽に答えながら怒りとか苛立ちとか色々が納まると不安が過る。
本当に橙子を取り戻せるのだろうか。1年経ったがまだすべて譲渡が終わっていない。それにあの最後のときの橙子を思い出すと胃の居心地が悪くなる。
「最後のさ、橙子、勘違いしてねぇかな」
胃の辺りを擦りながら兄貴に聞いてみる。兄貴は「勘違い?」と聞き返して来た。そうか。兄貴は気づいていないのか。あの橙子を見て。
兄貴の方を見ながら「あいつさ、勘違いしてるよ」ともう一度告げる。オレの言葉を兄貴は咀嚼するように顎に手をかける。ポーズ取っているのか最早考えるときの癖なのか。どっちもか。分からないけれど、と待っている。兄貴がゆっくりとこっちを見て「ないだろ」と答えた。
「なくないって、兄貴」
「オレらがあいつのこと見放したって思うか?」
あれぐらいで、と信じられないという顔をする兄貴にオレは頭を左右に振る。兄貴はすっかりあいつの性格を忘れちまったな。怪訝な兄貴を見やりながら口を開く。
「あいつはこれまで碌に男と付き合ってこなかったんだぜ。あの時の兄貴の八つ当たりとか……オレのあの態度でもう戻る場所はねぇって思うかもしんねぇ」
オレの言葉に兄貴はまた考える。それから暫くして「……ありえんな」と呟いて吐息を零す。
「だろ。だから、あいつがちゃんと戻って来られるようにしてやらないと」
あの野郎の目をかいくぐって接触できたらいい。けれど、オレらはあっちの希望で橙子がこちらの幹部と情報交換する際の相手から外されている。まったくどこまで橙子に執着してんだあの野郎――つか。
「そうか。今日って橙子があいつと結婚して1年か」
「今さらかよ……」
「え」
兄貴気づいていたのって見たらすっごく呆れた目で見られた。いや、だって、そんなことより橙子とあの野郎の距離間とか色々気になっちまったし。
「ハァ。可愛い脳味噌だな」
「ぐっぬぅ」
兄貴にどうしたって言い返せなくてオレは悔しさに唇を噛んだ。だって、間抜けなのは事実だし。オレは兄貴の呆れた視線をから逃れるように窓の外を見る。
外はもうすっかり暗くなっていた。そりゃそうだ。もう11月になっているのだから。もう冬もすぐそこだ。
そういえばホテルのレストランということはそのまま泊まるのか。泊まると考えて消え去った苛立ちが込み上げてオレは無理矢理忘れることにしたのに。
「今日は泊まってセックスでもすんのかな」
兄貴の所為で結局事務所に着くまで苛立ちが消えることはなかった。