純潔の喪失
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◆ 竜胆視点
オレが選んだ紺色のニットワンピースを着た女は最高にいい女だ。
兄貴は知らないがオレは女に自分が選んだ服を着せるのが好きだ。セフレでも気に入れば服をプレゼンとするし、愛人はご機嫌取りに服を送る。それで何度か面倒くさいことにはなったから最近は慎重だが。
それでもいい女がいい服を着ているのは気分がいい。アクセサリーもついでに選んで身に着けさせたいが兄貴に「あとでな」と言われてしまった。
にしても、女はさっきの店で服選びを楽しんでいる様子はなかったが呉服屋は少しテンションが上がっている様子だった。やっぱり着物の方が好きなのかもしれない。
「蘭様、竜胆様、如何でしょうか?」
反物を当てながら先ほどよりも楽しい声にオレは少しムッとする。適当に答えようかとガキ臭いことを考えていれば先に兄貴が答えた。
「いいんじゃねぇの? な、竜胆」
先を越されたと思いながら煮え切らないような返事をする。オレのそんな返事を意に介さないのか女は選んだ反物を店主に渡す。それを選んで満足したのか艶々した様子で「終わりました」と言った。
「さっきより早ぇじゃん」
兄貴がオレを横目にしながら言う。まるでオレの所為でさっきの服選びに時間がかかったと言いたげな様子だ。ハイハイ、オレの所為ですよ、と心の中でガキみたく返えしておく。
「ふふ。洋服は普段殆ど着なかったので竜胆様のお蔭で助かりました」
「別にフォローなんか頼んでねぇよ」
一歳下の癖に年上みたくフォローするなよ。そう睨めば「すいません」と女は謝る。何だかこの女に謝られてばかりだな。何でこんなに腰が低いんだ。面白くねぇ女。
「竜胆。女に当たるなよ」
「別に当たってねぇし」
「ガキみてぇなこと言うじゃねぇ」
「なっ、だから別に」
思わず食って掛かるがすぐにガキ臭いとぐっと飲み込み。ったく、さっきの仕返しかと兄貴を睨めば鼻で笑われた。
「簪は如何なさいますか? うちは種類も豊富に置いておりますが」
「お、いいじゃねぇか」
オレは女より先に答えてしまった。さっきアクセサリーを選べなかった反動だ。兄貴に「竜胆」と名前で窘められた。だが口に出してしまえば終わり。女店主がキラキラした顔で「お待ちください」と言って引っ込んだ。
「時間は平気ですか?」
「ま、平気だろ」
兄貴に訊くだけに何となくオレたち兄弟間の関係を把握してきたような気がする。普段は兄貴だって時間にルーズなところがあるし、何ならオレがリードしているときだってある。今日は完全にオレは手のかかる弟のように見られているらしい。
拗ねるとさらにガキ臭いので何とか自分で自分の気分を上げる。まぁ、上げるとしたらもう女の簪選びだな。
「お待たせいたしました」
生き生きとした様子で現れた店主はキラキラした簪を「どうぞご覧ください」と見せて来た。
黒塗りのトレイの上には様々な簪を置かれていた。それは全て女に似合うような気さえしたが流石に目が可笑しくなったと思う。
「へぇ。すげぇあるな」
「すごいですね」
兄貴と女が感嘆の声を上げる。それを横目にしながらオレは気になる花の簪を手にした。
「これいいな」
花びらの部分が薄い紫色に透けている。それが針金みたいなものに何個も着いているのに派手に見えない。女の髪にも映えると思ってみていると店主がふふっと笑う。
「なんだよ」
「その簪は人気の高いものとなっております」
「ふぅん。で、なんの花なんだ?」
「オマエ、知ってる?」と女に簪を見せる。女は「えっと」と視線を彷徨わしてから小さく「竜胆の花です」と答えた。
「ぇ」と思わず簪を見るとそういえば昔調べた花に似ているような。マジマジ見ていると「へぇ。オマエと同じ名前の花か」と声がした。その声は言わずもがな兄貴だ。
兄貴の方を見ればにたぁと笑っていた。目は相変らず笑っていないが。
つか、これが竜胆の花ならダメだ。誤解されかねない案件だ。オレは冷や汗を流しながら「へぇ」と興味なさげに簪を戻す。
「お客様の御髪にもお似合いかと」
「ありがとうございます……」
何とも言えない女に流石に申し訳なくなる。もう適当に選んでくれとそっぽを向く。すると、兄貴が「じゃ、これと、あとこれでいいんじゃね?」と適当な様子で選び出す。それに女も断る気がないのか「では、それで」と話しを進めていく。
それでいいのかよ、と見れば黒いトレイに竜胆の簪がない。まさかと兄ちゃんを見ればにたぁっと笑っていた。しくった。やられた。
「いいじゃねぇか。どうせオレたちの〝女〟であることに変わりねえし」
「な、なら、兄ちゃんのも」
「おう。だから、蘭の花の簪も選んでやったぞ」
「え?」
あったの、と思わず兄ちゃんを見れば呆れた眼差しを向けられた。
「オマエ。蘭の花くらい分かるだろ。あんだけ事務所に贈られてくんだからよ」
「あ、いや」
「それとも竜胆の簪以外目に入らなかったって?」
また面白そうな兄貴にオレは思わず女を見る。女は何だか微笑ましい眼差しを向けて来たのが癪だったが「蘭の花の簪ありましたよ」と答えてくれた。くそ。グルか。
もう何も言い返すことも出来ずオレは先に店を出ることにした。後ろで兄貴が声を殺すように笑っていたがうるせぇよ。まったく。
女にも格好悪いところ見られたし踏んだり蹴ったりだ。
オレが選んだ紺色のニットワンピースを着た女は最高にいい女だ。
兄貴は知らないがオレは女に自分が選んだ服を着せるのが好きだ。セフレでも気に入れば服をプレゼンとするし、愛人はご機嫌取りに服を送る。それで何度か面倒くさいことにはなったから最近は慎重だが。
それでもいい女がいい服を着ているのは気分がいい。アクセサリーもついでに選んで身に着けさせたいが兄貴に「あとでな」と言われてしまった。
にしても、女はさっきの店で服選びを楽しんでいる様子はなかったが呉服屋は少しテンションが上がっている様子だった。やっぱり着物の方が好きなのかもしれない。
「蘭様、竜胆様、如何でしょうか?」
反物を当てながら先ほどよりも楽しい声にオレは少しムッとする。適当に答えようかとガキ臭いことを考えていれば先に兄貴が答えた。
「いいんじゃねぇの? な、竜胆」
先を越されたと思いながら煮え切らないような返事をする。オレのそんな返事を意に介さないのか女は選んだ反物を店主に渡す。それを選んで満足したのか艶々した様子で「終わりました」と言った。
「さっきより早ぇじゃん」
兄貴がオレを横目にしながら言う。まるでオレの所為でさっきの服選びに時間がかかったと言いたげな様子だ。ハイハイ、オレの所為ですよ、と心の中でガキみたく返えしておく。
「ふふ。洋服は普段殆ど着なかったので竜胆様のお蔭で助かりました」
「別にフォローなんか頼んでねぇよ」
一歳下の癖に年上みたくフォローするなよ。そう睨めば「すいません」と女は謝る。何だかこの女に謝られてばかりだな。何でこんなに腰が低いんだ。面白くねぇ女。
「竜胆。女に当たるなよ」
「別に当たってねぇし」
「ガキみてぇなこと言うじゃねぇ」
「なっ、だから別に」
思わず食って掛かるがすぐにガキ臭いとぐっと飲み込み。ったく、さっきの仕返しかと兄貴を睨めば鼻で笑われた。
「簪は如何なさいますか? うちは種類も豊富に置いておりますが」
「お、いいじゃねぇか」
オレは女より先に答えてしまった。さっきアクセサリーを選べなかった反動だ。兄貴に「竜胆」と名前で窘められた。だが口に出してしまえば終わり。女店主がキラキラした顔で「お待ちください」と言って引っ込んだ。
「時間は平気ですか?」
「ま、平気だろ」
兄貴に訊くだけに何となくオレたち兄弟間の関係を把握してきたような気がする。普段は兄貴だって時間にルーズなところがあるし、何ならオレがリードしているときだってある。今日は完全にオレは手のかかる弟のように見られているらしい。
拗ねるとさらにガキ臭いので何とか自分で自分の気分を上げる。まぁ、上げるとしたらもう女の簪選びだな。
「お待たせいたしました」
生き生きとした様子で現れた店主はキラキラした簪を「どうぞご覧ください」と見せて来た。
黒塗りのトレイの上には様々な簪を置かれていた。それは全て女に似合うような気さえしたが流石に目が可笑しくなったと思う。
「へぇ。すげぇあるな」
「すごいですね」
兄貴と女が感嘆の声を上げる。それを横目にしながらオレは気になる花の簪を手にした。
「これいいな」
花びらの部分が薄い紫色に透けている。それが針金みたいなものに何個も着いているのに派手に見えない。女の髪にも映えると思ってみていると店主がふふっと笑う。
「なんだよ」
「その簪は人気の高いものとなっております」
「ふぅん。で、なんの花なんだ?」
「オマエ、知ってる?」と女に簪を見せる。女は「えっと」と視線を彷徨わしてから小さく「竜胆の花です」と答えた。
「ぇ」と思わず簪を見るとそういえば昔調べた花に似ているような。マジマジ見ていると「へぇ。オマエと同じ名前の花か」と声がした。その声は言わずもがな兄貴だ。
兄貴の方を見ればにたぁと笑っていた。目は相変らず笑っていないが。
つか、これが竜胆の花ならダメだ。誤解されかねない案件だ。オレは冷や汗を流しながら「へぇ」と興味なさげに簪を戻す。
「お客様の御髪にもお似合いかと」
「ありがとうございます……」
何とも言えない女に流石に申し訳なくなる。もう適当に選んでくれとそっぽを向く。すると、兄貴が「じゃ、これと、あとこれでいいんじゃね?」と適当な様子で選び出す。それに女も断る気がないのか「では、それで」と話しを進めていく。
それでいいのかよ、と見れば黒いトレイに竜胆の簪がない。まさかと兄ちゃんを見ればにたぁっと笑っていた。しくった。やられた。
「いいじゃねぇか。どうせオレたちの〝女〟であることに変わりねえし」
「な、なら、兄ちゃんのも」
「おう。だから、蘭の花の簪も選んでやったぞ」
「え?」
あったの、と思わず兄ちゃんを見れば呆れた眼差しを向けられた。
「オマエ。蘭の花くらい分かるだろ。あんだけ事務所に贈られてくんだからよ」
「あ、いや」
「それとも竜胆の簪以外目に入らなかったって?」
また面白そうな兄貴にオレは思わず女を見る。女は何だか微笑ましい眼差しを向けて来たのが癪だったが「蘭の花の簪ありましたよ」と答えてくれた。くそ。グルか。
もう何も言い返すことも出来ずオレは先に店を出ることにした。後ろで兄貴が声を殺すように笑っていたがうるせぇよ。まったく。
女にも格好悪いところ見られたし踏んだり蹴ったりだ。