雌の生態
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◆ 竜胆視点
『あ、竜胆? オレ、橙子に告っちまったわ』
「あ゛?」
面倒くさい中国マフィアとの相手が終わり報告に本部へと向かっていると時だった。兄貴からの電話で気の甘さをたっぷり含んだ声でかかってきたのは。
しかもその内容に知らずに唸るような低い声がしてしまった。
え、つか、兄貴今さ、あいつに告ったつったよな……。
「はぁ゛? え、何勝手にしてんの?」
『まぁ状況が状況だったからなぁ。あ、橙子今日からホテルに住むから』
「ぇ、は? ちょ、兄貴何言ってんだよ」
ポンポン変わっていく会話に疲れた頭が追い付かない。やめてくれ、やめてくれ。もう少し落ち着いてからにしてくれ。
『オマエ、今から本部に来るんだろ? そんときに話すよ』
「え、兄貴、今日は橙子のところで泊まりだろ?」
朝から煽って来たから覚えてるし、それがどうして本部に行くことになってんだ。
『急遽予定変更になった。それも話すから早く来いよ』
「あ、ちょ」
そのままプツンと途切れたスマホを見てオレは目頭を揉む。
マジで疲れた。なに、なに、何が起きたんだ。疲れた頭と少ない情報量で何とか状況整理をする。
「兄貴が告って、あいつがホテル住まいになって、本部にいるだっけ?」
告るからどうしてホテル住まいになんだ。つか、そもそも予定変更で本部に兄貴がいるんだ。全然分からない。
「兄貴マジで勝手すぎだろ」
そういうところ嫌い。とりあえず本部に行くしかねぇじゃん。
これからまた頭使うのかと思うとうんざりしたし、橙子のいるというホテルに行きたくなる。何だが無性に温もりという癒しが欲しくなった。けれどそれもまだお預けとなると溜息しかでなかった。
本部について鶴蝶に報告すると兄貴に捕まった。そのまま引きずられるようにオフィスに連れていかれた。
「コーヒー入れてやるから座ってろよ」
神経を使う会合の後にもう勘弁してくれとソファで深く座り込む。
疲れた頭でぼんやりと天井を見ているとすぐに兄貴が戻って来た。
「竜胆。お疲れ様」
「ぁ゛ー。さんきゅ」
横目で兄貴を見ればコーヒーを両手に持っていた。どうやら兄貴も飲むらしい。だよな。そうじゃなきゃ入れてくれねぇよな。深く寄り掛かっていた身体を起して受け取る。そのまま口を着けようとしたけれど少し熱くて無理だった。
「で、なんで橙子がホテルに住むことになったんだよ」
「なんかあいつの周りにきな臭い男がいるみてぇなんだよ」
「おとこ……?」
男ということばに思わず反応して兄貴を見ると目が笑っていなかった。あ、これそうとう苛立ってんな。でも、あんまり表面に出てないってことは橙子で機嫌直したな。
ずりぃなと思いながら兄貴の薄い唇から零れる話に耳を傾けた。
「確かに橙子はホテルに移動した方がいいな」
「だろぉ」
にっこりと満足げな顔をする兄貴にちょっとうんざりする。けど、兄貴が苛立ったことにも十分理解できる。だって、そこにいたのがオレでも同じ行動するし。いや、ホテルじゃなくて自分の家に連れて行くかも。ああ、そうか。兄貴は最近引っ越したばかりだからそこにいけなかったか。
「そういうこと」
まるでオレの思考を読んだような返事に小さく息をつく。にしても、このタイミングに怪しい男はやっぱり調べた方がいいな。
「もう指示出した?」
「出した。あと、今日の役立たずの再教育も」
「再教育? 処分でいーいんじゃねぇの?」
「今は人手がねぇからな」
「あぁ。なるほど」
じゃ、リサイクルするしかねぇな。それでもあんまりにも役立たずだから会ったら殴って置こう。絶対、兄貴も同じことすんだろうけど。
さて、橙子がホテルに移った話が終わったところで――。
「告ったってなに?」
兄貴を半眼で見る。目を細め薄く微笑んだ兄貴は「そのまんまの意味だけど」と答えた。その要領が得ない。飲みほしたコーヒーカップをテーブルに置いて身体ごと向き直す。
「兄貴だけ告白したん?」
「オマエの分も」
あっけからんと答える兄貴。オレはその答えにひとつ「最悪」と零して髪を掻き乱す。
でも、そこまでしないと今回の橙子が駄目だったのも目に浮かぶ。仕方ねぇと割り切るしかねぇ、と自分の中で何とか折り合いを着けて立ち上がる。
「あいつのいるホテルどこ?」
「行くならオレも行っていい?」
「だめ」
「やだ」
口角を綺麗にあげて微笑む兄貴の美しさは兄弟贔屓だとしても異常だ。そして、その笑みは有無を言わせないものだった。
「ハァ。わかった。行こうぜ」
「そうこなくっちゃ」
機嫌良さそうに立ち上がる兄貴。オレはやっぱりそんな兄貴に溜息しか出ないし頭痛がしてきた。
けど、もうホテルに着いた頃は夜も遅い時間。流石の橙子も寝ていた。結局、オレからの告白は翌日に持ち越しになった。
『あ、竜胆? オレ、橙子に告っちまったわ』
「あ゛?」
面倒くさい中国マフィアとの相手が終わり報告に本部へと向かっていると時だった。兄貴からの電話で気の甘さをたっぷり含んだ声でかかってきたのは。
しかもその内容に知らずに唸るような低い声がしてしまった。
え、つか、兄貴今さ、あいつに告ったつったよな……。
「はぁ゛? え、何勝手にしてんの?」
『まぁ状況が状況だったからなぁ。あ、橙子今日からホテルに住むから』
「ぇ、は? ちょ、兄貴何言ってんだよ」
ポンポン変わっていく会話に疲れた頭が追い付かない。やめてくれ、やめてくれ。もう少し落ち着いてからにしてくれ。
『オマエ、今から本部に来るんだろ? そんときに話すよ』
「え、兄貴、今日は橙子のところで泊まりだろ?」
朝から煽って来たから覚えてるし、それがどうして本部に行くことになってんだ。
『急遽予定変更になった。それも話すから早く来いよ』
「あ、ちょ」
そのままプツンと途切れたスマホを見てオレは目頭を揉む。
マジで疲れた。なに、なに、何が起きたんだ。疲れた頭と少ない情報量で何とか状況整理をする。
「兄貴が告って、あいつがホテル住まいになって、本部にいるだっけ?」
告るからどうしてホテル住まいになんだ。つか、そもそも予定変更で本部に兄貴がいるんだ。全然分からない。
「兄貴マジで勝手すぎだろ」
そういうところ嫌い。とりあえず本部に行くしかねぇじゃん。
これからまた頭使うのかと思うとうんざりしたし、橙子のいるというホテルに行きたくなる。何だが無性に温もりという癒しが欲しくなった。けれどそれもまだお預けとなると溜息しかでなかった。
本部について鶴蝶に報告すると兄貴に捕まった。そのまま引きずられるようにオフィスに連れていかれた。
「コーヒー入れてやるから座ってろよ」
神経を使う会合の後にもう勘弁してくれとソファで深く座り込む。
疲れた頭でぼんやりと天井を見ているとすぐに兄貴が戻って来た。
「竜胆。お疲れ様」
「ぁ゛ー。さんきゅ」
横目で兄貴を見ればコーヒーを両手に持っていた。どうやら兄貴も飲むらしい。だよな。そうじゃなきゃ入れてくれねぇよな。深く寄り掛かっていた身体を起して受け取る。そのまま口を着けようとしたけれど少し熱くて無理だった。
「で、なんで橙子がホテルに住むことになったんだよ」
「なんかあいつの周りにきな臭い男がいるみてぇなんだよ」
「おとこ……?」
男ということばに思わず反応して兄貴を見ると目が笑っていなかった。あ、これそうとう苛立ってんな。でも、あんまり表面に出てないってことは橙子で機嫌直したな。
ずりぃなと思いながら兄貴の薄い唇から零れる話に耳を傾けた。
「確かに橙子はホテルに移動した方がいいな」
「だろぉ」
にっこりと満足げな顔をする兄貴にちょっとうんざりする。けど、兄貴が苛立ったことにも十分理解できる。だって、そこにいたのがオレでも同じ行動するし。いや、ホテルじゃなくて自分の家に連れて行くかも。ああ、そうか。兄貴は最近引っ越したばかりだからそこにいけなかったか。
「そういうこと」
まるでオレの思考を読んだような返事に小さく息をつく。にしても、このタイミングに怪しい男はやっぱり調べた方がいいな。
「もう指示出した?」
「出した。あと、今日の役立たずの再教育も」
「再教育? 処分でいーいんじゃねぇの?」
「今は人手がねぇからな」
「あぁ。なるほど」
じゃ、リサイクルするしかねぇな。それでもあんまりにも役立たずだから会ったら殴って置こう。絶対、兄貴も同じことすんだろうけど。
さて、橙子がホテルに移った話が終わったところで――。
「告ったってなに?」
兄貴を半眼で見る。目を細め薄く微笑んだ兄貴は「そのまんまの意味だけど」と答えた。その要領が得ない。飲みほしたコーヒーカップをテーブルに置いて身体ごと向き直す。
「兄貴だけ告白したん?」
「オマエの分も」
あっけからんと答える兄貴。オレはその答えにひとつ「最悪」と零して髪を掻き乱す。
でも、そこまでしないと今回の橙子が駄目だったのも目に浮かぶ。仕方ねぇと割り切るしかねぇ、と自分の中で何とか折り合いを着けて立ち上がる。
「あいつのいるホテルどこ?」
「行くならオレも行っていい?」
「だめ」
「やだ」
口角を綺麗にあげて微笑む兄貴の美しさは兄弟贔屓だとしても異常だ。そして、その笑みは有無を言わせないものだった。
「ハァ。わかった。行こうぜ」
「そうこなくっちゃ」
機嫌良さそうに立ち上がる兄貴。オレはやっぱりそんな兄貴に溜息しか出ないし頭痛がしてきた。
けど、もうホテルに着いた頃は夜も遅い時間。流石の橙子も寝ていた。結局、オレからの告白は翌日に持ち越しになった。