雌の生態
名前変換
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◇ 夢主視点
「惚れ込んでいる」というのは裏社会の女としての意味かと一瞬頭を過る。けれど、蘭様から注がれる眼差しにそういう意味ではなさそうだ。けど、では、そういうそのままの意味として受け取ると――。
「ぇ、あ」
言葉を形作ることはできなかった。そもそも〝オレら〟ということは蘭様だけではなく竜胆様もということではないか。つまり、お二人の変化はそういう意味ということだったというのか。
あれだけ深刻に考えていた自分がバカバカしくなる。でも、あれらすべてが純粋アプローチとは想像がつくか。つかない。というか、今も非現実的で地に足がついている心地がしない。
「だから、大人しくしていろ。機会を見てちゃんとしたセーフハウスは用意するし、仕事もしばらくは休みになるけどすぐに復帰させてやるから少しだけ大人しくしていてくれ」
蘭様は私の頬を両手で包んで話を進めていく。まだ頭の中も感情も整理できない。けれど間近にまで迫った端正な顔が苦悶に歪んでいるのを見て現実に戻る。
今まで見たことがない蘭様の表情にとりあえず混乱している思考と感情は横に置いて答える。
「……はい。蘭様のおっしゃるとおりにさせていただきます……」
想像よりも弱い返事だったけれど、蘭様は満足そうに柔らかく微笑んだ。あまりにも優しくて甘さの含む微笑みは心臓に悪い。
ドキドキして身体が熱くなって足元がもっとふわふわしていく。地面から足がほんとうに離れていきそうだ。
「橙子」
「っ」
ふわふわしているときに名前を呼ばれると同時に目元にキスされる。こそばゆさに目を瞑ると蘭様の唇が顔中にふってくる。普段からされていることなのに告白を聞いた後だからなのか身体がより熱くなって吐息が零れる。
「は…ぁ……らんさま」
「ん。悪ぃ、悪ぃ。今日一緒にいられなくなったからな」
最後に唇に軽く触れて離れようとしたけれど、私はその身体に手を伸ばし掴む。
「ま、まってっ」
「どうしたよ?」
「あ、あの、こし、こしが、」
不思議そうにしながら腰に腕を回す蘭様に私は情けなさと羞恥心で小さな声が出た。
足に力が入らない。たぶん、腰が抜けた。
蘭様は目を丸くさせるけれどすぐに唇の両端を引き上げ、目尻を下げて笑いだした。
「くっ、はははっ! ぇ? マジ? マジで?」
「だ、だって、蘭様がいきなり、あんなこと、言うからっ」
「いや、だからってっ!」
告白らしい言葉の後のキスだったから。でも、さすがに初心な少女でもないんだか情けない。そうだ。蘭様も言う通り今さらだ。
「ふっ、ふふ、かぁわいいなぁ」
「ぁっ」
蘭様が甘い声と同時に力の入らない足が地面から離れる。そのまま身体が浮いて私はすぐに抱き着く。
「仕方ねぇからとりあえず部屋まで運んでやるよ」
「それが終わったら駐車場までな」と楽しそうに笑う蘭様。それにその通りになりそうで少し唇の端が引き攣った。
ホテルに着くと蘭様は颯爽と去って行ってしまった。どうやら他にやることができたとのこと。もしかしたら別件で動いている竜胆様のところに行ったのかもしれない。
「本当に忙しいのね」
やっぱり今回の報告はまずかったかしらと少し後悔する。けれど、やっぱりあの薄気味悪さは報告しないのも後悔しそうだ。これはこれでよし、としよう。
にしても、梵天の息がかかっているホテルがこんな東京のど真ん中にあるとは。いや、このホテルはある階層に入ると警察すら手に出せないと聞いたことがあるところだ。そことも懇意とは。
「でも、ここで大人しくしているのも……」
いや、裏社会で伝手がほぼ消滅している私に何ができる。けれど大人しくしているのも――けど、今は大人しくしよう。
「仕事に復帰したあかつきには絶対に役に立ってみせるわ」
じゃあ、そうできるようにまずは何をしましょうか。
「惚れ込んでいる」というのは裏社会の女としての意味かと一瞬頭を過る。けれど、蘭様から注がれる眼差しにそういう意味ではなさそうだ。けど、では、そういうそのままの意味として受け取ると――。
「ぇ、あ」
言葉を形作ることはできなかった。そもそも〝オレら〟ということは蘭様だけではなく竜胆様もということではないか。つまり、お二人の変化はそういう意味ということだったというのか。
あれだけ深刻に考えていた自分がバカバカしくなる。でも、あれらすべてが純粋アプローチとは想像がつくか。つかない。というか、今も非現実的で地に足がついている心地がしない。
「だから、大人しくしていろ。機会を見てちゃんとしたセーフハウスは用意するし、仕事もしばらくは休みになるけどすぐに復帰させてやるから少しだけ大人しくしていてくれ」
蘭様は私の頬を両手で包んで話を進めていく。まだ頭の中も感情も整理できない。けれど間近にまで迫った端正な顔が苦悶に歪んでいるのを見て現実に戻る。
今まで見たことがない蘭様の表情にとりあえず混乱している思考と感情は横に置いて答える。
「……はい。蘭様のおっしゃるとおりにさせていただきます……」
想像よりも弱い返事だったけれど、蘭様は満足そうに柔らかく微笑んだ。あまりにも優しくて甘さの含む微笑みは心臓に悪い。
ドキドキして身体が熱くなって足元がもっとふわふわしていく。地面から足がほんとうに離れていきそうだ。
「橙子」
「っ」
ふわふわしているときに名前を呼ばれると同時に目元にキスされる。こそばゆさに目を瞑ると蘭様の唇が顔中にふってくる。普段からされていることなのに告白を聞いた後だからなのか身体がより熱くなって吐息が零れる。
「は…ぁ……らんさま」
「ん。悪ぃ、悪ぃ。今日一緒にいられなくなったからな」
最後に唇に軽く触れて離れようとしたけれど、私はその身体に手を伸ばし掴む。
「ま、まってっ」
「どうしたよ?」
「あ、あの、こし、こしが、」
不思議そうにしながら腰に腕を回す蘭様に私は情けなさと羞恥心で小さな声が出た。
足に力が入らない。たぶん、腰が抜けた。
蘭様は目を丸くさせるけれどすぐに唇の両端を引き上げ、目尻を下げて笑いだした。
「くっ、はははっ! ぇ? マジ? マジで?」
「だ、だって、蘭様がいきなり、あんなこと、言うからっ」
「いや、だからってっ!」
告白らしい言葉の後のキスだったから。でも、さすがに初心な少女でもないんだか情けない。そうだ。蘭様も言う通り今さらだ。
「ふっ、ふふ、かぁわいいなぁ」
「ぁっ」
蘭様が甘い声と同時に力の入らない足が地面から離れる。そのまま身体が浮いて私はすぐに抱き着く。
「仕方ねぇからとりあえず部屋まで運んでやるよ」
「それが終わったら駐車場までな」と楽しそうに笑う蘭様。それにその通りになりそうで少し唇の端が引き攣った。
ホテルに着くと蘭様は颯爽と去って行ってしまった。どうやら他にやることができたとのこと。もしかしたら別件で動いている竜胆様のところに行ったのかもしれない。
「本当に忙しいのね」
やっぱり今回の報告はまずかったかしらと少し後悔する。けれど、やっぱりあの薄気味悪さは報告しないのも後悔しそうだ。これはこれでよし、としよう。
にしても、梵天の息がかかっているホテルがこんな東京のど真ん中にあるとは。いや、このホテルはある階層に入ると警察すら手に出せないと聞いたことがあるところだ。そことも懇意とは。
「でも、ここで大人しくしているのも……」
いや、裏社会で伝手がほぼ消滅している私に何ができる。けれど大人しくしているのも――けど、今は大人しくしよう。
「仕事に復帰したあかつきには絶対に役に立ってみせるわ」
じゃあ、そうできるようにまずは何をしましょうか。