純潔の喪失
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◆ 蘭視点
「次これな」
「これもですか?」
困惑気味に見上げて来る女に竜胆はサッサと着ろと顎をしゃくる。女は何も言い返すことはせずまたカーテンで仕切られた試着室へと吸い込まれるように戻って行った。
軽い朝食を食べた後、オレたち兄弟と女は服を買い来ていた。
よく愛人を連れて来るブティック。ここなら一通りそろうだろうと連れて来たが、女は絶賛竜胆の着せ替え人形になっていた。次から、次へと服を渡され女は一人ファッションショー状態だ。
にしても、洋服を着るとまた印象の変わる女だった。出会った時が着物だったせいか着物の印象が強い女も洋服を着ると年相応に見える。いや、オレが上げたスウェットを着ている時点で結構年相応に見えたが。化粧も厚化粧からシンプルなものに変えたからだろうが。
極妻も貫禄出すのに大変だな、と感想を抱きながら女と竜胆のやり取りを見続ける。
試着室に入ったのを見届けた竜胆はまた服を物色し出す。オレも最初は楽しくてやったけれどもう流石に見ているのも疲れてくる。
「おい。竜胆、まだ着せんのか?」
「兄貴こそ、もういいのか?」
質問で返すなと思いながら近くにある服をバラバラ見る。別に今のところこれといって興味を引く服はない。
「オレはもういい。つか、時間ねぇんだから。今着てるので終わりにしろ」
「えー」
「竜胆」
睨めば竜胆は渋々と「わぁった」と頷いて服を戻す。
全くもう入れ込み始めたのかと疑ってしまう。あの女が面白いというのは分かる。だが、どうせ一過性だというのは竜胆も分かっているだろう。だのに、ここまで気に入った様子を見せるなんて思わなかった。
釘を刺すか迷ったが竜胆も二十代後半だ。いちいちオレが言うもんでもない。分かっているとは思うが――どうにも詰めが甘いから不安だ。
「おい。兄貴、オレ大丈夫だからな」
オレの怪しむ視線に気づいたのか眉を顰める竜胆。そう口では言うことはできるが本当かと顎を擦りながら「ほんとかよ」訊けばさらに眉間の皺が深くなる。
「疑うのか」
「ここまで着せ替え人形する様子見せられたらな」
「兄貴だってよく愛人とするじゃねぇか」
「気に入っているヤツとしかしねぇよ」
つっても、こういうことすると付けあがったからここ1年、2年してねぇけど。竜胆はまだこんなことをして女と面倒くさいことを起しているけど。そろそろ学んでくれや。
「最近はしてねぇぞ」
「ふーん。んじゃ、おきにのセフレに何してんの?」
「美味いもんとかアクセサリーとかそんくらい買ってやってる」
賢い女はそれさえ求めないから楽なんだが。そろそろ若い女から手を引くかと最近考えると自分の年齢に悲しくなって来るぜ。
「なんか兄貴老けたか?」
「まだ三十路前だし」
「もう三十路だろ」
「テメェも一歳違いだろうがぁ」
「オレはまだ若い女とも遊べる」
「若作り」
「兄貴に言われたかねぇよ」
ベッと舌を出す弟に鉄拳制裁をしてやろうかと思ったがそれは遮られた。
「竜胆様。着替え終わりました」
「おーう」
女に呼ばれて竜胆が背を向けて歩き出す。逃げたなと思いながら溜息をついて腕時計を見れば一時間以上この店にいることになる。こういう買い物は時間がかかるとは言うけれど本当に長い。
「ま、夜までに着けばいいだろ」
三途にはグチグチ言われたがちゃんと処分できるいいだろ。それにあの場にあの女もいた方が絶対に面白い。想像してみて口角が自然と上がる。あの女の化けの皮が剥がれるかもしれないと思うと二重面白い。
自然と漏れそうになら笑いを抑えるために口を手で覆うと同時に名前を呼ばれた。振り返れば竜胆が最後に選んだ胸元が開いたニットワンピースを着ていた。しっかりと胸に谷間が出来ているところを見るとここで買ったランジェリーもサイズがあったらしい。
「サイズとか大丈夫だったんだな」
「はい。サイズがあって本当によかったです」
胸を撫で下ろす女を見ればその胸なら確かに不安だろうな。目測でもD以上はあるだろう胸を見るが女は恥じらう素振りはない。気にしないのか。
「次は呉服屋行くか」
「え。呉服って着物も、ですか」
「戦闘服がねぇと締まらねぇだろ」
「ですが、ここで沢山買ってしまいました」
眉を下げる女にオレは朝の台詞を思い出して口角を上げる。
「オマエ、朝全額返すって宣言したじゃねぇか」
「ええ」
「なら出世払いでいいぜ」
「しっかりと働けよ」と言えば神妙に女が頷いた。極道の女の癖に真面目だな。それとも身体を売る仕事をさせられると考えているのか。外見からしていけないわけではないが、年齢が難しいか。というか、寧ろ身体を使わせるなら適当に後妻とか情婦にさせた方がいいか。それくらいは出来そう――いや、処女だしな。そういうのができるか分からねぇ。
「兄貴、支払も終わったし行こうぜ」
「おう。行くぞ」
「はい」
しずしずと着いてくる様は奥ゆかしい昔の女のようだ。任侠の女なのかと疑いたくなる様だ。だが、昨日のあの場で見た女は確かに極道の女だった。
「疑うぜ」
どう見定めようか。オレはそんなことばかり考えていた。
「次これな」
「これもですか?」
困惑気味に見上げて来る女に竜胆はサッサと着ろと顎をしゃくる。女は何も言い返すことはせずまたカーテンで仕切られた試着室へと吸い込まれるように戻って行った。
軽い朝食を食べた後、オレたち兄弟と女は服を買い来ていた。
よく愛人を連れて来るブティック。ここなら一通りそろうだろうと連れて来たが、女は絶賛竜胆の着せ替え人形になっていた。次から、次へと服を渡され女は一人ファッションショー状態だ。
にしても、洋服を着るとまた印象の変わる女だった。出会った時が着物だったせいか着物の印象が強い女も洋服を着ると年相応に見える。いや、オレが上げたスウェットを着ている時点で結構年相応に見えたが。化粧も厚化粧からシンプルなものに変えたからだろうが。
極妻も貫禄出すのに大変だな、と感想を抱きながら女と竜胆のやり取りを見続ける。
試着室に入ったのを見届けた竜胆はまた服を物色し出す。オレも最初は楽しくてやったけれどもう流石に見ているのも疲れてくる。
「おい。竜胆、まだ着せんのか?」
「兄貴こそ、もういいのか?」
質問で返すなと思いながら近くにある服をバラバラ見る。別に今のところこれといって興味を引く服はない。
「オレはもういい。つか、時間ねぇんだから。今着てるので終わりにしろ」
「えー」
「竜胆」
睨めば竜胆は渋々と「わぁった」と頷いて服を戻す。
全くもう入れ込み始めたのかと疑ってしまう。あの女が面白いというのは分かる。だが、どうせ一過性だというのは竜胆も分かっているだろう。だのに、ここまで気に入った様子を見せるなんて思わなかった。
釘を刺すか迷ったが竜胆も二十代後半だ。いちいちオレが言うもんでもない。分かっているとは思うが――どうにも詰めが甘いから不安だ。
「おい。兄貴、オレ大丈夫だからな」
オレの怪しむ視線に気づいたのか眉を顰める竜胆。そう口では言うことはできるが本当かと顎を擦りながら「ほんとかよ」訊けばさらに眉間の皺が深くなる。
「疑うのか」
「ここまで着せ替え人形する様子見せられたらな」
「兄貴だってよく愛人とするじゃねぇか」
「気に入っているヤツとしかしねぇよ」
つっても、こういうことすると付けあがったからここ1年、2年してねぇけど。竜胆はまだこんなことをして女と面倒くさいことを起しているけど。そろそろ学んでくれや。
「最近はしてねぇぞ」
「ふーん。んじゃ、おきにのセフレに何してんの?」
「美味いもんとかアクセサリーとかそんくらい買ってやってる」
賢い女はそれさえ求めないから楽なんだが。そろそろ若い女から手を引くかと最近考えると自分の年齢に悲しくなって来るぜ。
「なんか兄貴老けたか?」
「まだ三十路前だし」
「もう三十路だろ」
「テメェも一歳違いだろうがぁ」
「オレはまだ若い女とも遊べる」
「若作り」
「兄貴に言われたかねぇよ」
ベッと舌を出す弟に鉄拳制裁をしてやろうかと思ったがそれは遮られた。
「竜胆様。着替え終わりました」
「おーう」
女に呼ばれて竜胆が背を向けて歩き出す。逃げたなと思いながら溜息をついて腕時計を見れば一時間以上この店にいることになる。こういう買い物は時間がかかるとは言うけれど本当に長い。
「ま、夜までに着けばいいだろ」
三途にはグチグチ言われたがちゃんと処分できるいいだろ。それにあの場にあの女もいた方が絶対に面白い。想像してみて口角が自然と上がる。あの女の化けの皮が剥がれるかもしれないと思うと二重面白い。
自然と漏れそうになら笑いを抑えるために口を手で覆うと同時に名前を呼ばれた。振り返れば竜胆が最後に選んだ胸元が開いたニットワンピースを着ていた。しっかりと胸に谷間が出来ているところを見るとここで買ったランジェリーもサイズがあったらしい。
「サイズとか大丈夫だったんだな」
「はい。サイズがあって本当によかったです」
胸を撫で下ろす女を見ればその胸なら確かに不安だろうな。目測でもD以上はあるだろう胸を見るが女は恥じらう素振りはない。気にしないのか。
「次は呉服屋行くか」
「え。呉服って着物も、ですか」
「戦闘服がねぇと締まらねぇだろ」
「ですが、ここで沢山買ってしまいました」
眉を下げる女にオレは朝の台詞を思い出して口角を上げる。
「オマエ、朝全額返すって宣言したじゃねぇか」
「ええ」
「なら出世払いでいいぜ」
「しっかりと働けよ」と言えば神妙に女が頷いた。極道の女の癖に真面目だな。それとも身体を売る仕事をさせられると考えているのか。外見からしていけないわけではないが、年齢が難しいか。というか、寧ろ身体を使わせるなら適当に後妻とか情婦にさせた方がいいか。それくらいは出来そう――いや、処女だしな。そういうのができるか分からねぇ。
「兄貴、支払も終わったし行こうぜ」
「おう。行くぞ」
「はい」
しずしずと着いてくる様は奥ゆかしい昔の女のようだ。任侠の女なのかと疑いたくなる様だ。だが、昨日のあの場で見た女は確かに極道の女だった。
「疑うぜ」
どう見定めようか。オレはそんなことばかり考えていた。