刻々と変わりゆくもの
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
◆ 竜胆視点
橙子の体調は良くなるまでは見舞い程度で済ませている。最初は以前のようにクラブ、バー、時にはキャバクラにも足を向け夜の街を渡り歩いていた。ときには、気に入った女を持ち帰って抱いた。
だから性欲処理は出来ていたはずなのに不完全燃焼が続いた。そんなことが何人も続いて今は女を抱くことをやめた。その代り、酒を飲むことが増えた。一人で酒を飲むこともあれば、気に入っている部下を連れていったり、昔馴染みの人間を誘って飲んだ。で、今日は久々に兄貴を誘うことにした。
「兄貴、今日の夜空いてる?」
横でスマホを弄る兄貴に訊く。こっちを見ることなくスマホを弄りながら「空いてるけど」と素っ気なく返された。もしかして女に振られたのかな。
「なら、久々に飲もうぜ」
「お。いいね」
兄貴の視線がようやくスマホからこっちに向いた。機嫌は悪くさなそうでよかった。安心しながらどっちの家で飲むか聞く。
今、オレと兄貴は別々に住んでいる。一緒だと仕事の関係上楽だけれど、家を選ぶときにお互い提示する条件の物件がなかった。二十代に入ってまで自分ばっかり妥協したくないとオレは引かなかった。兄貴も勿論引かずお互い別々に住むことになった。まぁ、いい歳になっていたから丁度よかったけれど。それに何だかんだお互いにすぐに行き来できる距離だし。
「どっちでもいいけど」
「じゃ、オレんちに」
「いーよ。泊まってもいいっしょ?」
「いいぜ」
それから「メシは?」「デリでよくね」「酒はどうする?」「チューハイならあるよ」とポンポン会話が弾む。なんか、こうして兄貴と一緒に宅飲みするのも久々だ。けど、なんか、兄貴だけだと物足りない。そんなこと今まで考えたことがないのになんでだ。
「つまみは買って帰るか?」
「あ、でも、オレ、あれ食べたい」
「あれ?」
見当がつかないという兄貴にオレの方も「あれ?」ってなる。瞬間、思い出した。オレが食べたいって想像していたやつは橙子が作ってくれたやつだ。
あーやべと口を覆って兄貴を見る。するとすっげぇ面白いもん見っけたときの顔をした。
「なになに? 何が食べたいの?」
「その顔、わかってんだろ」
「えー。なんのこと?」
こんにゃろ。人の失態楽しみやがって。でも、オレも兄貴が同じ失態をしたら今の兄貴みたいにニヤニヤして突く気がする。いや、ぜってぇやってんな。クソ。血は争えないってやつかよ。
「橙子が作ったつまみなぁ。流石ヤクザ育ちだけあって色んな種類あったよな」
「そう! どんな酒でも合うんだよなぁ」
あいつの作るもんって正直今どき感はない。なんか全体的に茶色で和食が中心。元から脂質のあるもんは好んでなかったし、今なんかもう舌に馴染んだくらいだ。けど、最初はあまりの茶色にそのまんま叫んだっけ。半年前なのに懐かしく思う。
「またあの一面茶色のメシ食いてぇな」
「ぶはっ! それ、また拗ねんじゃねぇの?」
「あ~」
そういや、茶色って言った後に用意されたメシが今どきっぽいもんになったんだよなぁ。不味くはなかったけれど茶色いメシ食べたかったら微妙だったな。それ言ったらなんかすっげぇ不服って顔してたけど。
「茶色いメシって言うとまた今どき風なの用意されっかな?」
「流石にねぇだろ。ま、あれも不味くはねぇけど外で食えるからな」
「そう、そう! だから、茶色メシがいい」
「ま、それ言うとなんか微妙な顔すっけどな」
「何でだろうな」
首を傾げれば兄貴が「複雑な乙女心じゃね?」と笑いながら言う。強ち間違ってねぇかもなと笑うとスマホが振動した。なんだよ、とディスプレイを見れば三途だった。
「だれ?」
「三途」
「うわぁ。夜まで仕事かもな」
この歳で深夜までやると響くんだよ。年下とはいえ三途もそうだろうに。
「ナンバー2も大変だな」
「だな。じゃ、行くか」
「ん」
今日は部下でもなく兄貴の運転。オレも補助席に乗り込んで電話に出た。
橙子の体調は良くなるまでは見舞い程度で済ませている。最初は以前のようにクラブ、バー、時にはキャバクラにも足を向け夜の街を渡り歩いていた。ときには、気に入った女を持ち帰って抱いた。
だから性欲処理は出来ていたはずなのに不完全燃焼が続いた。そんなことが何人も続いて今は女を抱くことをやめた。その代り、酒を飲むことが増えた。一人で酒を飲むこともあれば、気に入っている部下を連れていったり、昔馴染みの人間を誘って飲んだ。で、今日は久々に兄貴を誘うことにした。
「兄貴、今日の夜空いてる?」
横でスマホを弄る兄貴に訊く。こっちを見ることなくスマホを弄りながら「空いてるけど」と素っ気なく返された。もしかして女に振られたのかな。
「なら、久々に飲もうぜ」
「お。いいね」
兄貴の視線がようやくスマホからこっちに向いた。機嫌は悪くさなそうでよかった。安心しながらどっちの家で飲むか聞く。
今、オレと兄貴は別々に住んでいる。一緒だと仕事の関係上楽だけれど、家を選ぶときにお互い提示する条件の物件がなかった。二十代に入ってまで自分ばっかり妥協したくないとオレは引かなかった。兄貴も勿論引かずお互い別々に住むことになった。まぁ、いい歳になっていたから丁度よかったけれど。それに何だかんだお互いにすぐに行き来できる距離だし。
「どっちでもいいけど」
「じゃ、オレんちに」
「いーよ。泊まってもいいっしょ?」
「いいぜ」
それから「メシは?」「デリでよくね」「酒はどうする?」「チューハイならあるよ」とポンポン会話が弾む。なんか、こうして兄貴と一緒に宅飲みするのも久々だ。けど、なんか、兄貴だけだと物足りない。そんなこと今まで考えたことがないのになんでだ。
「つまみは買って帰るか?」
「あ、でも、オレ、あれ食べたい」
「あれ?」
見当がつかないという兄貴にオレの方も「あれ?」ってなる。瞬間、思い出した。オレが食べたいって想像していたやつは橙子が作ってくれたやつだ。
あーやべと口を覆って兄貴を見る。するとすっげぇ面白いもん見っけたときの顔をした。
「なになに? 何が食べたいの?」
「その顔、わかってんだろ」
「えー。なんのこと?」
こんにゃろ。人の失態楽しみやがって。でも、オレも兄貴が同じ失態をしたら今の兄貴みたいにニヤニヤして突く気がする。いや、ぜってぇやってんな。クソ。血は争えないってやつかよ。
「橙子が作ったつまみなぁ。流石ヤクザ育ちだけあって色んな種類あったよな」
「そう! どんな酒でも合うんだよなぁ」
あいつの作るもんって正直今どき感はない。なんか全体的に茶色で和食が中心。元から脂質のあるもんは好んでなかったし、今なんかもう舌に馴染んだくらいだ。けど、最初はあまりの茶色にそのまんま叫んだっけ。半年前なのに懐かしく思う。
「またあの一面茶色のメシ食いてぇな」
「ぶはっ! それ、また拗ねんじゃねぇの?」
「あ~」
そういや、茶色って言った後に用意されたメシが今どきっぽいもんになったんだよなぁ。不味くはなかったけれど茶色いメシ食べたかったら微妙だったな。それ言ったらなんかすっげぇ不服って顔してたけど。
「茶色いメシって言うとまた今どき風なの用意されっかな?」
「流石にねぇだろ。ま、あれも不味くはねぇけど外で食えるからな」
「そう、そう! だから、茶色メシがいい」
「ま、それ言うとなんか微妙な顔すっけどな」
「何でだろうな」
首を傾げれば兄貴が「複雑な乙女心じゃね?」と笑いながら言う。強ち間違ってねぇかもなと笑うとスマホが振動した。なんだよ、とディスプレイを見れば三途だった。
「だれ?」
「三途」
「うわぁ。夜まで仕事かもな」
この歳で深夜までやると響くんだよ。年下とはいえ三途もそうだろうに。
「ナンバー2も大変だな」
「だな。じゃ、行くか」
「ん」
今日は部下でもなく兄貴の運転。オレも補助席に乗り込んで電話に出た。