悪趣味な黙祷
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□ 夢主視点
スマホを見て私はほくそ笑む。
「ん。なかなか上出来だったようね」
あれだけのやり取りでも効果てきめんとは。
スマホをローテブルに置いて代わりにティーカップとソーサーを持って、キッチンに持っていく。料理をしないという家主には勿体ないキッチンで食器を洗いながら紅茶を飲んだ時の彼女を思い出す。驚いた横顔は年相応で可愛らしく勿体ないなぁと思った。
「あの方に恋情を抱かなければ〝表〟で可愛らしく花開いたのに」
彼女がこちらの世界で艶 やかに花開くには毒が足りない。恋情という可愛らしい毒は持っているがそれだけではこの世界やっていけない。毒不足だからこそ彼女は今枯れようとしている。
「この世界で〝恋〟なんてするもんじゃないのよ」
彼女は知らないのかしら。それとも好きだから、愛しているから。それらの恋情というのはそれほどまでに尊いのかしら。正当性があるのかしら。ずっと幼い頃からこっちの世界を見て来た私には分からない。何度か堅気の人間のように恋の真似事したことはあったけれど裏社会の私がすべて足を引っ張った。
「夢幻 」
表社会で可愛く恋をしていればよかったのに。裏社会での恋は碌なことにならない。男女の愛はこっちの世界では夢幻よ。
バカな人。でも、バカだからきっと毒もなにもないのにこっちの世界に飛び込めたのよね。バカだからずっと好きな人のために時には女と武器にしてこられたのよね。バカだから盲目にもなれるのよね。
「好きっていう気持ちはすごいわ」
私も家族愛だけであそこまで頑張れたんですもの。そういう「愛」ってやつは一種魔法のような力があるに違いない。けれど、その魔法も解けてしまえば何が残るのかしら。
「そういえば、何が私の中に残ったのかしら……」
家族愛を根底に私はあのクソ野郎に復讐した。奇跡的に最後に残ったのは自分の命はこの世から消えていった家族に使っているわけでもない。だって、他の家族が私に託した想いはひとつもない。皆、私を横切ってこの世から去って行った。誰も組を残してほしい、その血を残してほしいとも願っていなかった。だから私はいま――私のためだけに生きている?
「それは違うような」
私は命拾いしたことに感謝している。やっぱり、死ぬのは怖いから。でも、だからって今自分のために生きているかっていったら違う。どちらかといえば恩人である蘭様と竜胆様のために生きている。ストンと腑に落ちたけれど自分の重さに引いた。
「言わないでおこう」
絶対ドン引きしそうだし。重い女としてせっかく昇進した愛人の契約を解消したくない。そもそも愛人まで昇りつめて落ちたらそれこそこの世界での転落を意味する。頑張らないといけない。
「この仕事も頑張らないとね」
三途様の覚えがめでたくなればお二人のお役にも立ちやすくなる。他にもこう調査するときとか伝手が出来て動きやすくなるんじゃないかしら。色々いいことがあるのは間違いなし。
「うんうん。いいことはあるわよねぇ……」
キュッとレバーを上げて泡だらけになった食器たちをぬるま湯で洗い流す。それから一通りの家事を終えて出勤する準備に取り掛かった。
スマホを見て私はほくそ笑む。
「ん。なかなか上出来だったようね」
あれだけのやり取りでも効果てきめんとは。
スマホをローテブルに置いて代わりにティーカップとソーサーを持って、キッチンに持っていく。料理をしないという家主には勿体ないキッチンで食器を洗いながら紅茶を飲んだ時の彼女を思い出す。驚いた横顔は年相応で可愛らしく勿体ないなぁと思った。
「あの方に恋情を抱かなければ〝表〟で可愛らしく花開いたのに」
彼女がこちらの世界で
「この世界で〝恋〟なんてするもんじゃないのよ」
彼女は知らないのかしら。それとも好きだから、愛しているから。それらの恋情というのはそれほどまでに尊いのかしら。正当性があるのかしら。ずっと幼い頃からこっちの世界を見て来た私には分からない。何度か堅気の人間のように恋の真似事したことはあったけれど裏社会の私がすべて足を引っ張った。
「
表社会で可愛く恋をしていればよかったのに。裏社会での恋は碌なことにならない。男女の愛はこっちの世界では夢幻よ。
バカな人。でも、バカだからきっと毒もなにもないのにこっちの世界に飛び込めたのよね。バカだからずっと好きな人のために時には女と武器にしてこられたのよね。バカだから盲目にもなれるのよね。
「好きっていう気持ちはすごいわ」
私も家族愛だけであそこまで頑張れたんですもの。そういう「愛」ってやつは一種魔法のような力があるに違いない。けれど、その魔法も解けてしまえば何が残るのかしら。
「そういえば、何が私の中に残ったのかしら……」
家族愛を根底に私はあのクソ野郎に復讐した。奇跡的に最後に残ったのは自分の命はこの世から消えていった家族に使っているわけでもない。だって、他の家族が私に託した想いはひとつもない。皆、私を横切ってこの世から去って行った。誰も組を残してほしい、その血を残してほしいとも願っていなかった。だから私はいま――私のためだけに生きている?
「それは違うような」
私は命拾いしたことに感謝している。やっぱり、死ぬのは怖いから。でも、だからって今自分のために生きているかっていったら違う。どちらかといえば恩人である蘭様と竜胆様のために生きている。ストンと腑に落ちたけれど自分の重さに引いた。
「言わないでおこう」
絶対ドン引きしそうだし。重い女としてせっかく昇進した愛人の契約を解消したくない。そもそも愛人まで昇りつめて落ちたらそれこそこの世界での転落を意味する。頑張らないといけない。
「この仕事も頑張らないとね」
三途様の覚えがめでたくなればお二人のお役にも立ちやすくなる。他にもこう調査するときとか伝手が出来て動きやすくなるんじゃないかしら。色々いいことがあるのは間違いなし。
「うんうん。いいことはあるわよねぇ……」
キュッとレバーを上げて泡だらけになった食器たちをぬるま湯で洗い流す。それから一通りの家事を終えて出勤する準備に取り掛かった。