よく似たオレたち兄弟
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◆ 蘭視点
躾けのなってねぇ弟のペットを躾けし直すために一日時間を無駄にした。今日オフ取っておいてよかったぜ。それでも蓄積した苛立ちが直るわけではない。何かで発散するにも誰かを殴るのもだりぃし、キープの女を呼ぶのもだりぃ。
ふと、浮かぶのがあの女だということに舌打ちをして車に乗り込む。車に乗り込んで家に帰って寝るかと思ったが手にした紙袋が入った。
「――に行け」
オレの口は自然とあいつが住みついたセーフハウスを口にしていた。運転手は「はい」と言って静かに車を出した。すぐに自宅と言い直そうかと思ったがそれも出来ず結局オレはあいつがいるセーフハウスに行くことになった。
さっきまでいたセーフハウスは竜胆所有しているセーフハウス。そこからあいつがいるセーフハウスは遠くない。車で1時間もしないで到着してしまった。
早ぇな、と思いながら乱れた髪を後ろに撫でつけてジャケットを小脇に抱えてついでに紙袋を持って降りる。それからエントランスを通過し、エレベーターに乗り込む。途中止まることのなかったエレベーターはぐんぐんと上へと昇りあっさりと部屋のある階に到着した。
そのまま降りればこの階に部屋はひとつしかない。そのひとつの扉を開くが――誰も来ない。普段ならすぐにやってくるあいつが来ない。
「ま。竜胆がいたんだからな」
あいつに何があったかなんて予想できている。予想できるのに少しイラついた。きっと、これもできの悪い竜胆のペットの所為だ。
舌打ちをしてそのままズンズンと進んでリビングダイニングに入る。そして、ソファに横になっている女を見つけた。
「寝てんのかよ」
暢気だな。紙袋をテーブルに置いてソファまで近づいても起きもしない。余程竜胆とのセックスで体力を使っただろう。肘掛けに座って反対側にある女の顔を見つめる。化粧っ気もない顔になんとも思わない。ありえないとか、ブスとか全然何も思わない。綺麗な寝顔だなとさえ思った。
なんて不思議な変化だ。最初の頃なんて化粧崩れした寝起きの顔を見て馬鹿笑いしていたのに。
「つっても3ヶ月前なんだよな」
短い歳月でここまで絆されている自分が嫌になる。なんか別ベクトルで苛々して来たから起こすことにした。オレは肘掛けから立って顔のところまで移動して薄い肩を揺らす。
「おい。起きろ」
「んっ、んぅ」
なんてエロい声出すんだと思いながら揺らす。すると、ようやく瞼がピクピク動く。そして、ゆっくりと瞼が上がる。視界に映ったオレを確認するように何回か瞼が上がったり下がったりする。
「ら、ん、さま?」
「おう。上司の蘭様だ」
「やだ。ごめなさい……」
ゆっくり覚醒しながら身体を起すので何歩か下がる。まだ寝起きの顔をしながらも身支度をしてく。それにさっきまで思い出していたことが頭に過ってそれに女は「なんですか」と眠そうな目で見て来る。
「いや、オマエ、結構初めての頃の寝起きの顔のこと結構気にしてんだろ」
「……当たり前です」
むすっとした顔に気分が上がってオレが髪を梳いて直してやる。それにトロンとするからすぐに手を引っ込めると名残惜しそうな目でオレを見上げて来る。なんて女だと思って最後に一度だけ梳き直してやった。
「ありがとうございます」
「いいよ」
「で、蘭様一体何か御用で? 竜胆様なら先ほどお帰りなりましたよ」
ようやくシャキッとしたのかそういう女に竜胆のペットを思い出して苛立ちが蘇る。オレはそのままソファに座り直した女の隣に座る。
「蘭様?」
「ねみぃ」
「ならお部屋で横に――」
「ここで寝る。枕になれ」
女の言葉を遮ってオレはぐいぐいと端に行かせる。オレは足が長ぇからこれだと横に慣れねぇんだよ。女も承知というように端まで大人しく行く。それを見て満足したオレは女の柔らかい膝というか太腿に頭を乗せる。
「昨日一日、躾けし直していたのでしょう。お疲れ様です」
「もうめっちゃ疲れた」
柔らかい太腿に擦り寄ると頭を撫でられる。いや、撫でられるというより髪を梳かれているのだろう。それがどうにも心地が良くて瞼が重くなる。なるほどさっきこいつが気持ち良さそうにしていたのが分かる。
「少しお休みください」
「……ん」
その言葉に甘えるようにあっさりと意識を落とした。意識を手放す瞬間にはもうオレはもうこの女を手放せそうだと思った。
* * *
「あーせいせいした」
「ったく、次はねぇからな」
「はい、はい」
分かってんのかと竜胆の頭を思わず叩く。バシという音に涙目になりながら「いてぇ!」と叫ぶ竜胆の頬を一回抓る。それに「にいふぁん!」とブサイクな顔を見せてくれたので一先ず満足する。
「橙子のやつめっちゃ怒ってたな」
「ったりめーだろ。オマエどんな躾けしてたんだよ、マジで」
竜胆と離れたくないと喚くペット。挙句の果て橙子の頬を殴る暴挙まで来た。それに流石にとオレも竜胆も手が出そうになったときだった。
「くくっ。あいつの平手すげぇいい音すんな」
「パンッ! だもんな」
兄弟二人でその光景を思い出して声を上げて笑う。
「真顔、真顔だったぜ、あいつ」
「姿勢も、腕の振りもめちゃ綺麗だったな」
真顔で切れのいい平手をかました女の姿に拍手喝采だった。綺麗、綺麗、と褒めたが本人は頬も痛いし教育が面倒だと目が据わっていたが。
「はぁ。で、もう飼わねぇんだろ?」
目尻に涙を浮かべる竜胆に訊ねれば「ん」と返した。それから獣が鳴りを潜めるようににんまりと口角を上げた。
「だって、あいつがいればいいだろ?」
「お。オマエもそこに行きついた感じ?」
「兄ちゃんもだろ?」
「フハッ。オレたちやっぱよく似てんな」
「ハハッ。そうだな」
声を顰めて肩を揺らすオレたちはきっと傍から見てもよく似た兄弟なんだろう。それよりももっと深いところでオレたちはよく似た兄弟だった。
「んじゃ、囲うか?」
早速と提案してみたが竜胆は「ちょっと待った」と言う。「なんでだよ」とオレが聞き返せば眉をキュッと寄せてこう叫んだ。
「あいつオレのこと年下扱いすっから暫く様子見!」
やっと年下扱いに気づいたのかよ。でも、それきっと女からしたら大人の男に垣間見えるギャップにときめいてんじゃねぇとオレは思う。けど、それ言ったとして竜胆は納得するかどうかは別だ。それにここ宣言までしてんだ。面白れぇし暫く見物しよ。
「オマエも面白くしてくれよ、橙子」
気を引き締める竜胆を横目にオレは一人囁いた。
躾けのなってねぇ弟のペットを躾けし直すために一日時間を無駄にした。今日オフ取っておいてよかったぜ。それでも蓄積した苛立ちが直るわけではない。何かで発散するにも誰かを殴るのもだりぃし、キープの女を呼ぶのもだりぃ。
ふと、浮かぶのがあの女だということに舌打ちをして車に乗り込む。車に乗り込んで家に帰って寝るかと思ったが手にした紙袋が入った。
「――に行け」
オレの口は自然とあいつが住みついたセーフハウスを口にしていた。運転手は「はい」と言って静かに車を出した。すぐに自宅と言い直そうかと思ったがそれも出来ず結局オレはあいつがいるセーフハウスに行くことになった。
さっきまでいたセーフハウスは竜胆所有しているセーフハウス。そこからあいつがいるセーフハウスは遠くない。車で1時間もしないで到着してしまった。
早ぇな、と思いながら乱れた髪を後ろに撫でつけてジャケットを小脇に抱えてついでに紙袋を持って降りる。それからエントランスを通過し、エレベーターに乗り込む。途中止まることのなかったエレベーターはぐんぐんと上へと昇りあっさりと部屋のある階に到着した。
そのまま降りればこの階に部屋はひとつしかない。そのひとつの扉を開くが――誰も来ない。普段ならすぐにやってくるあいつが来ない。
「ま。竜胆がいたんだからな」
あいつに何があったかなんて予想できている。予想できるのに少しイラついた。きっと、これもできの悪い竜胆のペットの所為だ。
舌打ちをしてそのままズンズンと進んでリビングダイニングに入る。そして、ソファに横になっている女を見つけた。
「寝てんのかよ」
暢気だな。紙袋をテーブルに置いてソファまで近づいても起きもしない。余程竜胆とのセックスで体力を使っただろう。肘掛けに座って反対側にある女の顔を見つめる。化粧っ気もない顔になんとも思わない。ありえないとか、ブスとか全然何も思わない。綺麗な寝顔だなとさえ思った。
なんて不思議な変化だ。最初の頃なんて化粧崩れした寝起きの顔を見て馬鹿笑いしていたのに。
「つっても3ヶ月前なんだよな」
短い歳月でここまで絆されている自分が嫌になる。なんか別ベクトルで苛々して来たから起こすことにした。オレは肘掛けから立って顔のところまで移動して薄い肩を揺らす。
「おい。起きろ」
「んっ、んぅ」
なんてエロい声出すんだと思いながら揺らす。すると、ようやく瞼がピクピク動く。そして、ゆっくりと瞼が上がる。視界に映ったオレを確認するように何回か瞼が上がったり下がったりする。
「ら、ん、さま?」
「おう。上司の蘭様だ」
「やだ。ごめなさい……」
ゆっくり覚醒しながら身体を起すので何歩か下がる。まだ寝起きの顔をしながらも身支度をしてく。それにさっきまで思い出していたことが頭に過ってそれに女は「なんですか」と眠そうな目で見て来る。
「いや、オマエ、結構初めての頃の寝起きの顔のこと結構気にしてんだろ」
「……当たり前です」
むすっとした顔に気分が上がってオレが髪を梳いて直してやる。それにトロンとするからすぐに手を引っ込めると名残惜しそうな目でオレを見上げて来る。なんて女だと思って最後に一度だけ梳き直してやった。
「ありがとうございます」
「いいよ」
「で、蘭様一体何か御用で? 竜胆様なら先ほどお帰りなりましたよ」
ようやくシャキッとしたのかそういう女に竜胆のペットを思い出して苛立ちが蘇る。オレはそのままソファに座り直した女の隣に座る。
「蘭様?」
「ねみぃ」
「ならお部屋で横に――」
「ここで寝る。枕になれ」
女の言葉を遮ってオレはぐいぐいと端に行かせる。オレは足が長ぇからこれだと横に慣れねぇんだよ。女も承知というように端まで大人しく行く。それを見て満足したオレは女の柔らかい膝というか太腿に頭を乗せる。
「昨日一日、躾けし直していたのでしょう。お疲れ様です」
「もうめっちゃ疲れた」
柔らかい太腿に擦り寄ると頭を撫でられる。いや、撫でられるというより髪を梳かれているのだろう。それがどうにも心地が良くて瞼が重くなる。なるほどさっきこいつが気持ち良さそうにしていたのが分かる。
「少しお休みください」
「……ん」
その言葉に甘えるようにあっさりと意識を落とした。意識を手放す瞬間にはもうオレはもうこの女を手放せそうだと思った。
* * *
「あーせいせいした」
「ったく、次はねぇからな」
「はい、はい」
分かってんのかと竜胆の頭を思わず叩く。バシという音に涙目になりながら「いてぇ!」と叫ぶ竜胆の頬を一回抓る。それに「にいふぁん!」とブサイクな顔を見せてくれたので一先ず満足する。
「橙子のやつめっちゃ怒ってたな」
「ったりめーだろ。オマエどんな躾けしてたんだよ、マジで」
竜胆と離れたくないと喚くペット。挙句の果て橙子の頬を殴る暴挙まで来た。それに流石にとオレも竜胆も手が出そうになったときだった。
「くくっ。あいつの平手すげぇいい音すんな」
「パンッ! だもんな」
兄弟二人でその光景を思い出して声を上げて笑う。
「真顔、真顔だったぜ、あいつ」
「姿勢も、腕の振りもめちゃ綺麗だったな」
真顔で切れのいい平手をかました女の姿に拍手喝采だった。綺麗、綺麗、と褒めたが本人は頬も痛いし教育が面倒だと目が据わっていたが。
「はぁ。で、もう飼わねぇんだろ?」
目尻に涙を浮かべる竜胆に訊ねれば「ん」と返した。それから獣が鳴りを潜めるようににんまりと口角を上げた。
「だって、あいつがいればいいだろ?」
「お。オマエもそこに行きついた感じ?」
「兄ちゃんもだろ?」
「フハッ。オレたちやっぱよく似てんな」
「ハハッ。そうだな」
声を顰めて肩を揺らすオレたちはきっと傍から見てもよく似た兄弟なんだろう。それよりももっと深いところでオレたちはよく似た兄弟だった。
「んじゃ、囲うか?」
早速と提案してみたが竜胆は「ちょっと待った」と言う。「なんでだよ」とオレが聞き返せば眉をキュッと寄せてこう叫んだ。
「あいつオレのこと年下扱いすっから暫く様子見!」
やっと年下扱いに気づいたのかよ。でも、それきっと女からしたら大人の男に垣間見えるギャップにときめいてんじゃねぇとオレは思う。けど、それ言ったとして竜胆は納得するかどうかは別だ。それにここ宣言までしてんだ。面白れぇし暫く見物しよ。
「オマエも面白くしてくれよ、橙子」
気を引き締める竜胆を横目にオレは一人囁いた。
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