第五の精霊その後の転生物語
タブレット少年
「あら? これは何かしら?」
ベンチの傍に落ちている青を基調としたタブレット。この時代不思議なことに魔法がしっかりと生活に根付きながら文明がとても発達していた。前世の記憶を持つわたしとしてはとっても発展したんだなと思いながらちょっとやっぱり不思議だった。
だからなのかちょっとこういうデジタル機器とか魔法工学は苦手な分野だった。でも、将来国のことを考えればしっかり学ばないといけない。けれどどこに手を付けていいか全然わからない。レオナに聞いてもよく分らないし。あの人説明はちょっと下手なところあるのよね。
「誰のかし――あ、もしかして」
「あ、あのっ」
「キャァッ!」
「うわぁっごめんなさい!」
持ち主に思い当たった瞬間後ろからのっそりと声をかけられた。驚いて飛び跳ねた瞬間タブレットを落としかける。慌ててしっかりと抱きしめながら後ろを振り返ると、とんでもなく離れたところで青く燃える火を見た。
「あ、えっと、あの、」
「す、すみません、ごめんなさい、陰キャが気安くナイトレイブンカレッジの女神に声をかけてすいません」
「え、えっとぉ」
木の影からブツブツ聞こえる声に驚きも覚めてしまった。そして、彼の正体にひとつ見当がついた。わたしは確信をもって一歩踏み出す。けれど、その瞬間青い炎が不安げに揺れるので踏み出すのをやめることにした。
――タブレットを使うくらいだもの。対人恐怖症かもしれないわ。なら、えっと、どうしましょう。
タブレットをしっかりと片手で抱きながらマジカルペンをだす。それからタブレットに風の魔法と得意な雪の魔法を混ぜる。〝二つ〟の魔法が混ざったのを見てわたしはタブレットを手放す。
「よかった……」
タブレットがふわふわ浮いた。わたしはそのままマジカルペンで操作しながらタブレットを彼のもとへ送り届ける。
「タブレット、貴方のシュラウドくんのでしょう?」
「う、うん」
木の陰から顔を半分だけ覗かせながらまじまじと傍で浮かぶタブレットを見る。その表情は先ほどのしどろもどろした様子はない。ただ随分と真剣にわたしが浮かしているタブレットを見ている。
「なんで雪の魔法を使ったの?」
タブレットを手に取りながらどもることなく訊ねてくる。金色の瞳は相変わらずわたしを見ないけれどなんだか嬉しさが込み上げる。
「雪の魔法が得意だから固定するのについ使っちゃうの」
「……君なら風魔法で十分に見えるけど」
「あら。嬉しいこと言ってくれるのね」
「ぇ、あ、や、その気分を害したのなら、ご、ごめ、ごめん」
ついっと視線が下がる。これはいけないと、わたしはすぐに「大丈夫よ」と返す。
「平気。たぶんだけど、わたしのユニーク魔法って氷雪系で安定感があるから。だからなんだと思うの。でも、たしかにひとつの魔法の方が効率はいいのよね」
くせに何でも雪とか氷魔法を使う癖がある。それじゃこの世界では駄目なのに。長年の癖って治らないのよね。
「……ひとつのときが効率いいかもだけれど……でも、すごい、んじゃない、かな」
視線を左右に動かしながらシュラウドくんが言う。きっと、励ましましてくれているんだと思う。何だか彼の気遣いが嬉しくなる。
「そうかしら」
「うん。そもそも二つ同時に魔法が使える方がすごいことだから」
「え。そうなの?」
「そ、そうだよ!」
少しだけ声を張り上げるシュラウドくん。けれど、すぐに「陰キャがすんません」とまた木に隠れてしまった。ああ。せっかく仲良くなれそうだったのに――あ。
わたしはひとつ名案が浮かぶ。
「シュラウドくん」
「な、なん、なんすか」
木の陰からこそっと出てくるシュラウドくん。わたしは彼に微笑んで仲良くなるきっかけを作ることにした。
「わたしにいい魔法工学の入門書教えてくれないかしら?」
「は?」
唐突なお願いで呆けたシュラウドくんはわたしの大切な思い出のひとつになる気がした。
その後、部活が同じになって〝イデアくん〟と呼ぶ仲にもなったし、彼の弟のオルトとも仲良くなることになった。
「にしても、オルトとお話しているとアナに会いたくなるわ」
「アナさんってエルサさんの妹さんだよね」
「そうよ~。オルトみたいに可愛いのよ」
「あ、また可愛いって言った!」
オルトも年頃なのか可愛いという言葉に少し敏感。でも、可愛いアナ成分を補うのに一番オルトがいいのよ。ほんと、可愛い。たまにイデアくん大好き過ぎて暴走しちゃうけど。まぁ、それはイデアくんもだけどね。
「エルサ氏のシスコンっぷりも大概じゃない? はい」
「あ。貴方も大概よ……んー。はい」
「あ、あ~。そう来ますか」
「さすが。エルサさん、強いね」
「ふふ。これでも負けないように勉強しているのよ」
こうして私は放課後ようやく心を開いてくれたイデアとチェスなどして過ごすことが増えた。
2023/07/02 イデア部分を大幅修正
「あら? これは何かしら?」
ベンチの傍に落ちている青を基調としたタブレット。この時代不思議なことに魔法がしっかりと生活に根付きながら文明がとても発達していた。前世の記憶を持つわたしとしてはとっても発展したんだなと思いながらちょっとやっぱり不思議だった。
だからなのかちょっとこういうデジタル機器とか魔法工学は苦手な分野だった。でも、将来国のことを考えればしっかり学ばないといけない。けれどどこに手を付けていいか全然わからない。レオナに聞いてもよく分らないし。あの人説明はちょっと下手なところあるのよね。
「誰のかし――あ、もしかして」
「あ、あのっ」
「キャァッ!」
「うわぁっごめんなさい!」
持ち主に思い当たった瞬間後ろからのっそりと声をかけられた。驚いて飛び跳ねた瞬間タブレットを落としかける。慌ててしっかりと抱きしめながら後ろを振り返ると、とんでもなく離れたところで青く燃える火を見た。
「あ、えっと、あの、」
「す、すみません、ごめんなさい、陰キャが気安くナイトレイブンカレッジの女神に声をかけてすいません」
「え、えっとぉ」
木の影からブツブツ聞こえる声に驚きも覚めてしまった。そして、彼の正体にひとつ見当がついた。わたしは確信をもって一歩踏み出す。けれど、その瞬間青い炎が不安げに揺れるので踏み出すのをやめることにした。
――タブレットを使うくらいだもの。対人恐怖症かもしれないわ。なら、えっと、どうしましょう。
タブレットをしっかりと片手で抱きながらマジカルペンをだす。それからタブレットに風の魔法と得意な雪の魔法を混ぜる。〝二つ〟の魔法が混ざったのを見てわたしはタブレットを手放す。
「よかった……」
タブレットがふわふわ浮いた。わたしはそのままマジカルペンで操作しながらタブレットを彼のもとへ送り届ける。
「タブレット、貴方のシュラウドくんのでしょう?」
「う、うん」
木の陰から顔を半分だけ覗かせながらまじまじと傍で浮かぶタブレットを見る。その表情は先ほどのしどろもどろした様子はない。ただ随分と真剣にわたしが浮かしているタブレットを見ている。
「なんで雪の魔法を使ったの?」
タブレットを手に取りながらどもることなく訊ねてくる。金色の瞳は相変わらずわたしを見ないけれどなんだか嬉しさが込み上げる。
「雪の魔法が得意だから固定するのについ使っちゃうの」
「……君なら風魔法で十分に見えるけど」
「あら。嬉しいこと言ってくれるのね」
「ぇ、あ、や、その気分を害したのなら、ご、ごめ、ごめん」
ついっと視線が下がる。これはいけないと、わたしはすぐに「大丈夫よ」と返す。
「平気。たぶんだけど、わたしのユニーク魔法って氷雪系で安定感があるから。だからなんだと思うの。でも、たしかにひとつの魔法の方が効率はいいのよね」
くせに何でも雪とか氷魔法を使う癖がある。それじゃこの世界では駄目なのに。長年の癖って治らないのよね。
「……ひとつのときが効率いいかもだけれど……でも、すごい、んじゃない、かな」
視線を左右に動かしながらシュラウドくんが言う。きっと、励ましましてくれているんだと思う。何だか彼の気遣いが嬉しくなる。
「そうかしら」
「うん。そもそも二つ同時に魔法が使える方がすごいことだから」
「え。そうなの?」
「そ、そうだよ!」
少しだけ声を張り上げるシュラウドくん。けれど、すぐに「陰キャがすんません」とまた木に隠れてしまった。ああ。せっかく仲良くなれそうだったのに――あ。
わたしはひとつ名案が浮かぶ。
「シュラウドくん」
「な、なん、なんすか」
木の陰からこそっと出てくるシュラウドくん。わたしは彼に微笑んで仲良くなるきっかけを作ることにした。
「わたしにいい魔法工学の入門書教えてくれないかしら?」
「は?」
唐突なお願いで呆けたシュラウドくんはわたしの大切な思い出のひとつになる気がした。
その後、部活が同じになって〝イデアくん〟と呼ぶ仲にもなったし、彼の弟のオルトとも仲良くなることになった。
「にしても、オルトとお話しているとアナに会いたくなるわ」
「アナさんってエルサさんの妹さんだよね」
「そうよ~。オルトみたいに可愛いのよ」
「あ、また可愛いって言った!」
オルトも年頃なのか可愛いという言葉に少し敏感。でも、可愛いアナ成分を補うのに一番オルトがいいのよ。ほんと、可愛い。たまにイデアくん大好き過ぎて暴走しちゃうけど。まぁ、それはイデアくんもだけどね。
「エルサ氏のシスコンっぷりも大概じゃない? はい」
「あ。貴方も大概よ……んー。はい」
「あ、あ~。そう来ますか」
「さすが。エルサさん、強いね」
「ふふ。これでも負けないように勉強しているのよ」
こうして私は放課後ようやく心を開いてくれたイデアとチェスなどして過ごすことが増えた。
2023/07/02 イデア部分を大幅修正