第五の精霊その後の転生物語
初めての距離感
トレイはいつの間にか仲良くなっていた気がする。いつの間にかするりと。ケイトに紹介されたことは覚えている。でも、どうしてこんな自然に仲良くなれたのかわたしは不思議でならなかった。
「トレイって社交的な方?」
「突然どうしたんだ?」
ハーツラビュル寮の調理場。わたしはケーキの作り方を教わりながら隣のトレイを見上げる。トレイはいつも通り困ったように片眉を上げて片方の眉を下げている。その顔をじっと見ていると苦笑いされた。
「社交的かぁ。考えたことなかったな。でも、小さい子どもの頃から店の手伝いをしているからなぁ」
「ああ! それね!」
点と線が結びついたような感覚にスッキリしながらクリームを掻き混ぜる。その上でトレイが笑っている声が聞こえた。
「ははっ。なんだ、こんな答えでいいのか?」
「ええ。わたしの中ではスッキリ解決よ」
「それはなにより。で、クリームの状態はどうだ?」
「……あと、少しよ」
「それさっき聞いたぞ」
「そうね」
はぁと息をつく。クリームが中々泡立たない。いや、泡だて器を使うとか魔法を使えばいいのだけれど一度は体験してみたいじゃない。だから、頑張っているのだけれど上手くいかない。肩を落としているとトレイがまた声をあげて笑った後「ちょっと待ってろ」と言われる。何かな、と待っていると――背中から身体が包まれた気がする。
え、と声を出すより早く泡だて器を待つ手に別の熱が触れる。ボウルを持つ手の傍にも別の熱の気配がする。
「エルサみたいな女性はやっぱりハンドミキサー使う方がいいな」
すぐ近くで声がする声に自分の意志とは異なる動きをする腕。「こうするといいぞ」という声にようやくトレイがいる場所を理解し自分と彼の体勢を理解する。経験したことがない男の子の距離に身体中が凄まじい勢いで熱くなる。頬が、首筋が、手のひらが熱い。
「ん? エルサ、どうした顔が――あっ! ああっ!」
トレイらしかぬ慌てた声に彼も状況を悟った様子。いや、これは流石にわたしも恥ずかしかったから顔を見られない。
「あ~悪かった。弟や妹もたまに出来ていなくてつい癖で悪い」
「い、いいのよ」
それは仕方ない。たまにわたしも最近仲良くなったオルトにアナに接するみたいにしてしまうから。分からなくはないけれどびっくりした。
「エルサ。大丈夫か?」
「ええ。もう大丈夫。でも、男の子とあんなに近づいたの初めてだったから」
驚いてしまったわ。そう素直に告げると「あ゛~」と何だかルチウスの声によく似た声が聞こえた。なにかしらと見上げれば顔を大きな手で隠しているトレイがいた。よく見れば短い髪から見える耳が真っ赤。
「トレイ、大丈夫?」
「うん。まぁ、しばらくしたら大丈夫だ」
「そう。じゃ、もう少し頑張ってクリーム作るわ」
「そうしてくれ」
その日、食べたケーキは忘れられないほどぶきっちょなケーキだった。トレイもここまで失敗するはずじゃと言うような落ち込み具合だった。
トレイはいつの間にか仲良くなっていた気がする。いつの間にかするりと。ケイトに紹介されたことは覚えている。でも、どうしてこんな自然に仲良くなれたのかわたしは不思議でならなかった。
「トレイって社交的な方?」
「突然どうしたんだ?」
ハーツラビュル寮の調理場。わたしはケーキの作り方を教わりながら隣のトレイを見上げる。トレイはいつも通り困ったように片眉を上げて片方の眉を下げている。その顔をじっと見ていると苦笑いされた。
「社交的かぁ。考えたことなかったな。でも、小さい子どもの頃から店の手伝いをしているからなぁ」
「ああ! それね!」
点と線が結びついたような感覚にスッキリしながらクリームを掻き混ぜる。その上でトレイが笑っている声が聞こえた。
「ははっ。なんだ、こんな答えでいいのか?」
「ええ。わたしの中ではスッキリ解決よ」
「それはなにより。で、クリームの状態はどうだ?」
「……あと、少しよ」
「それさっき聞いたぞ」
「そうね」
はぁと息をつく。クリームが中々泡立たない。いや、泡だて器を使うとか魔法を使えばいいのだけれど一度は体験してみたいじゃない。だから、頑張っているのだけれど上手くいかない。肩を落としているとトレイがまた声をあげて笑った後「ちょっと待ってろ」と言われる。何かな、と待っていると――背中から身体が包まれた気がする。
え、と声を出すより早く泡だて器を待つ手に別の熱が触れる。ボウルを持つ手の傍にも別の熱の気配がする。
「エルサみたいな女性はやっぱりハンドミキサー使う方がいいな」
すぐ近くで声がする声に自分の意志とは異なる動きをする腕。「こうするといいぞ」という声にようやくトレイがいる場所を理解し自分と彼の体勢を理解する。経験したことがない男の子の距離に身体中が凄まじい勢いで熱くなる。頬が、首筋が、手のひらが熱い。
「ん? エルサ、どうした顔が――あっ! ああっ!」
トレイらしかぬ慌てた声に彼も状況を悟った様子。いや、これは流石にわたしも恥ずかしかったから顔を見られない。
「あ~悪かった。弟や妹もたまに出来ていなくてつい癖で悪い」
「い、いいのよ」
それは仕方ない。たまにわたしも最近仲良くなったオルトにアナに接するみたいにしてしまうから。分からなくはないけれどびっくりした。
「エルサ。大丈夫か?」
「ええ。もう大丈夫。でも、男の子とあんなに近づいたの初めてだったから」
驚いてしまったわ。そう素直に告げると「あ゛~」と何だかルチウスの声によく似た声が聞こえた。なにかしらと見上げれば顔を大きな手で隠しているトレイがいた。よく見れば短い髪から見える耳が真っ赤。
「トレイ、大丈夫?」
「うん。まぁ、しばらくしたら大丈夫だ」
「そう。じゃ、もう少し頑張ってクリーム作るわ」
「そうしてくれ」
その日、食べたケーキは忘れられないほどぶきっちょなケーキだった。トレイもここまで失敗するはずじゃと言うような落ち込み具合だった。