第五の精霊その後の転生物語

茨の谷の王子様と出会う



「ほぉ。珍しい人の子だな」
「え?」

 植物園で授業に使う材料を採取しているときだった。大きな影に覆われたと顔を上げるとわたしを覗き込む浮世離れした人がいた。その人は大きな角を持っていた。
 その立派な大きな角に見覚えがあった。そして、各国の王侯貴族の名簿に同じ顔があったことを思い出す。

「マレウス・ドラコニア様?」
「僕のことを知っているのか?」
「はい」

 頷くと目を細めて薄い唇の口角をくっと上げた。その顔立ちの美しさの相乗効果が上がるなと思うとその人が退く。合わせてわたしも立ち上がってスカートの裾を掴み膝を折る。

「お初にお目にかかります。エルサと申します」

 挨拶をするとマレウス様は「楽にしていい」と言う。
 わたしは頭を上げると彼は楽しそうに笑みを浮かべていた。

「今は同じ学び舎に通う者同士。楽にしてくれかまわない」
「ありがとうございます。あの、ところでマレウス様」
「呼び捨てでいいぞ。ああ、口調ももっと砕けいい」
「なら……マレウス、でいいのかしら?」

 答えるとマレウス様、マレウスは満足げに頷いた。わたしもやっと肩の力が抜けて一息つく。続いて、わたしはこのまま材料採取に戻ってもいいのかしらと戸惑うと。

「それは魔法薬草学に使うのか?」
「ええ。グループの分まであと少しなの」
「グループ? 他の者は集めないのか?」
「何か用事があるって言っていたわ」

 何だかちょっとボロボロになって用事があると同じグループの三人は言っていた。それをケイトや最近仲良くなったトレイに話すと何だか苦い顔をした。手伝おうかと言われたけれどトレイは部活の先輩に呼ばれ、ケイトはお茶会の準備に引っ張られてしまった。だから、頑張って一人でわたしが採取しているところだった。

「ほう。押し付けられたのか?」
「いいえ! そんなことないわ!」

 ちょっとそうかもと感じたけれどなんか三人ともそれともなんか違う雰囲気がした。

「違うとは思うわ。それに材料はそう多くないから平気よ」
「そうか? ふぅん。だが、もうすぐ昼休みも終わるぞ」
「え。あら、そんな時間かしら?」

 懐中時計を取り出して言うマレウス。わたしは急がないと頭を下げた。

「ごめんなさいね。急が、ない、と、え?」
「これくらいなら魔法を使っても材料の効果に影響はないだろう」

 フワフワと材料として採取していた魔法植物が籠に溜まっていく。おかげであっという間に必要な分の材料が集まった。

「これでいいだろう」
「あ、ありがとう。助かったわ」
「別に礼はいらない」

 ふっと微笑むマレウスにエルサは戸惑う。そもそも声をかけてきたときの内容も。

「あの、そういえばさっき」
「おい。エルサ」
「え」

 突然入って来た別の声に顔を動かす。

「レオナ、あ、レオナ先輩」
「チッ。おい、そろそろ授業だろ」

 先輩と言い直した瞬間にレオナは眉をギュッと寄せた。以前にも話したときに不愉快そうに「やめろ」とは言ったけれど一応やっぱり。そういう思いで「先輩」と呼んだけれどやっぱり不愉快みたい。なるべく二人のときはレオナと呼ぼう。

「エルサ。急いだ方がいい」
「はい。えっと、マレウス、ありがとう。レオナ先輩失礼します」
「ああ、行くといい」
「サッサと行け」

 何だか険悪なというか重い空気を纏う二人が気になる。けれど、もう授業が始まる。わたしは二人を気にしながら魔法薬学室へと向かった。

 その後、二人の仲は悪いのだと知った。ついでにその日同じグループだった生徒と今後同じグループになることはなかった。

「何があったのかしらね?」
「さぁ。エルサちゃんが気にすることはないんじゃない?」
「そうだな。エルサが気にすることないさ」
「そう?」

 そうそうと頷くケイトとトレイ。その二人に言われたらわたしはそうなのかなと思うことにした。それに何だか深堀してもいいことがなさそうだなぁって思った。


 エルサの一学年は他にも多くの知人を得てスタートしていく。それはまた別の機会に。



2023/07/02 ピクシブも作品を一部修正
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