感謝以外の意味はなし
◆エース視点
「あーらら」
目当てのモノを買い終えて二人がいる本屋に向かうと――エルサ先輩が絡まれていた。
デュースの野郎はどうやら忘れているらしい。エルサ先輩は原則的に一人で行動しないことを言いつけられている。同時に外で待ち合わせするときも一人でいることを好まれない。それはお姫様だからってのもあるけれど――実際はこれが一番の理由。
――ナンパしたくはなるよなぁ。
エルサ先輩はヴィル先輩も納得の美人だ。美女に問題なしにカテゴライズされるヒト。だから、一人でいると必ず男に声をかけられる。たまにエルサ先輩のファンという女性もいるが十中八九下心を抱えた野郎共だ。
だから、一人にしてはいけないとトレイ先輩やケイト先輩に頭に刻まれるほど言い聞かされていた。それをデュースは忘れてしまったらしい。ついでにエルサ先輩も。
――いや、エルサ先輩も少しの時間なら、とか考えたんだろうな。
でも、その少しの時間でも声をかける奴はいる。実際にいるし。
ハァ、とため息をつきながら大股でエルサ先輩と先輩に絡む男二人組に近づく。
「せーんぱい、お待たせ♪」
男二人組の視線がオレに向かうと「うっ」というような顔つきになる。それはそうだろ。オレが来ているのはナイトレイブンカレッジの制服だし。VDCでちょっと顔は売れたしな。
「先輩、デュースのやつは?」
「今お会計よ」
慣れたように会話してくれる先輩。これもしかしてオレらが入学する前からチョイチョイあった可能性あんな。
寮の先輩らが心配性とか過保護になるのが何となく分かってしまった。
二人だけで会話を続ければ男二人組がすぅっと引いていく。それを目の端に捉えて本屋の出入り口を見れば見慣れた顔が。
「おい! デュースおせーぞ!」
「な、エース!」
一瞬だけ視線を後ろにいるだろう男共に向けるとデュースの顔つきが変わる。
ちょいとイケナイ顔になりかけるが、エルサ先輩がいるのを思い出してか眉を吊り上げるだけにとどまった。
「先輩! お待たせしましたッ!」
「いいのよ。ちょっと込んでいたものね」
「っす!」
オレとデュースが現れたからか男二人組が音もなく去って行く。年下だと分かって食って掛かってこなくてよかった。これはナイトレイブンカレッジの制服の効果かもしれない。
「エース。ごめんなさいね」
「や、いいっすよ。つか、トレイ先輩とケイト先輩が先輩をひとりきりにさせないでっていうのが分かった気がします。つーか、デュースお前ねぇ」
「うっ。すぐに終わると思ったんだよ!」
どうやらデュースも思い出したらしい。しょんもりとするデュースにエルサ先輩は「きにしないで」と言う。言うけれど。
「エルサ先輩だって、口酸っぱく言われてんだから店内にいるとかできたでしょ」
「うっ、そ、そうね。わたしも悪かったというか。わたしの対応が悪かったわね」
「迷惑かけたわ。ごめんなさいね」と頭を下げるエルサ先輩。それにさすがにデュースが慌てるがオレは別に気にしない。
「いいっすよ。んで、これで貸しひとつっすけど」
「ふふ。もちろん。分かっているわよ」
「やった♪」と喜んだ声を上げるオレに呆れた眼差しを向けてくるデュースは無視した。
麓の街に今月からオープンした期間限定のカフェ。オレもちょうど来たかったと同時になるほど最初に来る予定だったのがトレイ先輩とケイト先輩だったのが分かる。分かるけれど――。
「ここならアズール先輩たちも来たがりそうですよね」
「そうね。でも、モストロ・ラウンジもあるし中々頼めないのよ」
「あ~」
三人一緒は確かに難しい。とはいえ、誰か一人っていうのも難しいのだろう。それになんでも仕事に繋げちゃって楽しくないかもね。
「で、二人とも何頼む?」
「僕はこのオムライスを」
「わかったわ。デザートは?」
「え、そんなそこまで」
「いいのよ」
言ってデュースは遠慮がちに「イチゴのタルトを」と言った。デュースが言ったケチャップのオムライスを見る。オレはデミグラスソース派だけれどケチャップのオムライスㇺいいな。
――でも気分じゃないんだよな……ぁ、
「オレはこのポテトグラタンでデザートは季節限定のイチゴのパフェでお願いします」
「ふふ。わかったわ」
微笑ましい眼差しを向けてくるエルサ先輩は定員を読んだ。
綺麗な声でよどみなく頼むメニューを伝えるのは何だか面白い。メニューを訊くとエルサ先輩はパスタとガトーショコラを頼んでいた。
順々と運ばれそれぞれ頼んだものに手を付けていく。
「ほんと、おいしいわね」
パスタのときも美味しそうに食べていたけれど、ガトーショコラを食べるエルサ先輩は何だかすごかった。いや、食べ方はお姫様らしく綺麗なんだけれど、こう頬が落ちそうみたいな。これみたらトレイ先輩が嫉妬しそう――ガトーショコラを作ったヒトに。
チョコが好きなのかー、と思いながらイチゴがおいしいパフェを食べ進めた。
デザートまで綺麗に食べ終えるとエルサ先輩が会計をしに行った。デュースはさっきことがあってかエルサ先輩にぴったりとしている。その姿に若干呆れていると向かい側の店を見て名案が思い付く。
「ちょっと先に出るわ」
「は、ぁ! エース!」
デュースの声を無視して向かい側の店へと駆けよる。
店に到着するとふわっと花の香りがする。寮にある薔薇はあまり香りがしないけれどここは色々な花の香りが混じってする。
店員のおばさんが近寄って来るのを見てオレはひとつの〝花〟を指さす。
「すいません。この花、一輪ください」
一輪だが綺麗にラッピングされたのを手に取って戻った。
「あーらら」
目当てのモノを買い終えて二人がいる本屋に向かうと――エルサ先輩が絡まれていた。
デュースの野郎はどうやら忘れているらしい。エルサ先輩は原則的に一人で行動しないことを言いつけられている。同時に外で待ち合わせするときも一人でいることを好まれない。それはお姫様だからってのもあるけれど――実際はこれが一番の理由。
――ナンパしたくはなるよなぁ。
エルサ先輩はヴィル先輩も納得の美人だ。美女に問題なしにカテゴライズされるヒト。だから、一人でいると必ず男に声をかけられる。たまにエルサ先輩のファンという女性もいるが十中八九下心を抱えた野郎共だ。
だから、一人にしてはいけないとトレイ先輩やケイト先輩に頭に刻まれるほど言い聞かされていた。それをデュースは忘れてしまったらしい。ついでにエルサ先輩も。
――いや、エルサ先輩も少しの時間なら、とか考えたんだろうな。
でも、その少しの時間でも声をかける奴はいる。実際にいるし。
ハァ、とため息をつきながら大股でエルサ先輩と先輩に絡む男二人組に近づく。
「せーんぱい、お待たせ♪」
男二人組の視線がオレに向かうと「うっ」というような顔つきになる。それはそうだろ。オレが来ているのはナイトレイブンカレッジの制服だし。VDCでちょっと顔は売れたしな。
「先輩、デュースのやつは?」
「今お会計よ」
慣れたように会話してくれる先輩。これもしかしてオレらが入学する前からチョイチョイあった可能性あんな。
寮の先輩らが心配性とか過保護になるのが何となく分かってしまった。
二人だけで会話を続ければ男二人組がすぅっと引いていく。それを目の端に捉えて本屋の出入り口を見れば見慣れた顔が。
「おい! デュースおせーぞ!」
「な、エース!」
一瞬だけ視線を後ろにいるだろう男共に向けるとデュースの顔つきが変わる。
ちょいとイケナイ顔になりかけるが、エルサ先輩がいるのを思い出してか眉を吊り上げるだけにとどまった。
「先輩! お待たせしましたッ!」
「いいのよ。ちょっと込んでいたものね」
「っす!」
オレとデュースが現れたからか男二人組が音もなく去って行く。年下だと分かって食って掛かってこなくてよかった。これはナイトレイブンカレッジの制服の効果かもしれない。
「エース。ごめんなさいね」
「や、いいっすよ。つか、トレイ先輩とケイト先輩が先輩をひとりきりにさせないでっていうのが分かった気がします。つーか、デュースお前ねぇ」
「うっ。すぐに終わると思ったんだよ!」
どうやらデュースも思い出したらしい。しょんもりとするデュースにエルサ先輩は「きにしないで」と言う。言うけれど。
「エルサ先輩だって、口酸っぱく言われてんだから店内にいるとかできたでしょ」
「うっ、そ、そうね。わたしも悪かったというか。わたしの対応が悪かったわね」
「迷惑かけたわ。ごめんなさいね」と頭を下げるエルサ先輩。それにさすがにデュースが慌てるがオレは別に気にしない。
「いいっすよ。んで、これで貸しひとつっすけど」
「ふふ。もちろん。分かっているわよ」
「やった♪」と喜んだ声を上げるオレに呆れた眼差しを向けてくるデュースは無視した。
麓の街に今月からオープンした期間限定のカフェ。オレもちょうど来たかったと同時になるほど最初に来る予定だったのがトレイ先輩とケイト先輩だったのが分かる。分かるけれど――。
「ここならアズール先輩たちも来たがりそうですよね」
「そうね。でも、モストロ・ラウンジもあるし中々頼めないのよ」
「あ~」
三人一緒は確かに難しい。とはいえ、誰か一人っていうのも難しいのだろう。それになんでも仕事に繋げちゃって楽しくないかもね。
「で、二人とも何頼む?」
「僕はこのオムライスを」
「わかったわ。デザートは?」
「え、そんなそこまで」
「いいのよ」
言ってデュースは遠慮がちに「イチゴのタルトを」と言った。デュースが言ったケチャップのオムライスを見る。オレはデミグラスソース派だけれどケチャップのオムライスㇺいいな。
――でも気分じゃないんだよな……ぁ、
「オレはこのポテトグラタンでデザートは季節限定のイチゴのパフェでお願いします」
「ふふ。わかったわ」
微笑ましい眼差しを向けてくるエルサ先輩は定員を読んだ。
綺麗な声でよどみなく頼むメニューを伝えるのは何だか面白い。メニューを訊くとエルサ先輩はパスタとガトーショコラを頼んでいた。
順々と運ばれそれぞれ頼んだものに手を付けていく。
「ほんと、おいしいわね」
パスタのときも美味しそうに食べていたけれど、ガトーショコラを食べるエルサ先輩は何だかすごかった。いや、食べ方はお姫様らしく綺麗なんだけれど、こう頬が落ちそうみたいな。これみたらトレイ先輩が嫉妬しそう――ガトーショコラを作ったヒトに。
チョコが好きなのかー、と思いながらイチゴがおいしいパフェを食べ進めた。
デザートまで綺麗に食べ終えるとエルサ先輩が会計をしに行った。デュースはさっきことがあってかエルサ先輩にぴったりとしている。その姿に若干呆れていると向かい側の店を見て名案が思い付く。
「ちょっと先に出るわ」
「は、ぁ! エース!」
デュースの声を無視して向かい側の店へと駆けよる。
店に到着するとふわっと花の香りがする。寮にある薔薇はあまり香りがしないけれどここは色々な花の香りが混じってする。
店員のおばさんが近寄って来るのを見てオレはひとつの〝花〟を指さす。
「すいません。この花、一輪ください」
一輪だが綺麗にラッピングされたのを手に取って戻った。