雷光のような少年

◆ エルサ視点



 ようやく声をかけてきたと思ったら食事について注意された。でも、どうやら本来の目的はそれではないというか、それもあったようだけれど。
 もともと吊り上がった眦をより吊り上げながら至近距離だというように大声で彼は話始めた。話し始めたというか叫び始めたというか……いや、そんなことよりも。

 ――わ、わたし、もしかして年下にお説教されている?

 彼は滔々とわたしに危機感がないことを注意して来た。同時にわたしの両隣にいるケイトやトレイにまで。

 ――1年生にしては肝が据わっているけれど……これどういう意味なのかしら。

 延々と終わらない説教に思わずケイトとトレイを見る。
 二人は眉を下げているけれど、ところどころで「あー……」、「まぁな」と何だかところどころ理解を示している。え、わたしだけ説教と感じているだけなのかしら。

「エルサ先輩ッッッ! 聞いているのかッッ!」
「ひゃぃッ!」

 まるで雷のような声に驚いて返事を噛んでしまったが、それがいけなかったらしい。彼の威圧感が上がった気がする。
 ひぇ、と思っていると流石にケイトとトレイの仲裁が入る。

「まぁまぁ。セベクちゃんの言いたいことは分かったから」
「せ、セベクちゃん、だと! な、貴様、慣れ慣れしいぞッッ!」

 おお。ちゃん付けになるのね。ケイトのコミュニケーション能力はやっぱり羨望の眼差しを向けてしまう。とはいえ、このままだとわたしたちも、セベクくんもお昼に間に合わない。

「あの、セベクくん、そのわざわざ心配してくれたのは嬉しいわ」
「心配ではなく貴様への忠告だッッッ!」
「え、ええ?」

 カッと両目を見開くセベクくんにわたしは勢い負けしそうになる。何とかそれに耐えてわたしはジャケットの内側からあるものを取り出す。

「でもね。わたしもずっと誰かといるのは難しくてね。もちろん、単独行動は学園側からもしないようにって言われているわ。あと、これをイデアに貰ったの」
「ん? なんだ懐中時計か?」
「ふふ」

 ジャケットの内側から取り出したのはセベクくんが言った通りただの小さな懐中時計に見えるようなものだ。でも、これはイデアが開発した――。

「防犯ブザーよ」
「防犯ブザー?」

 あら。あまりピンと来ないみたい。一瞬にしてあどけない表情を見せる彼が何だか可愛らしく見える。微笑ましい気分が込み上げながら防犯ブザーを見せる。

「この紐を引っ張ると大きな音が鳴るの。他にもイデアが機能を着けてくれたおかげでわたしも少しの時間なら単独行動できるようになったのよ」
「ふむ。とはいえ、やはり一国の姫が単独行動とは――」

 防犯ブザーのことは理解した見たいだけれどまだ何か思うところがあるよう。
 そういえばマレウスに対して結構過保護な感じがあったから同じ王族であるわたしにも思うところがあるのかもしれない。

「心配ありがとう。でも、なんだかんだ誰かが一緒に行動してくれているから大丈夫よ」
「そうか……いやッッ! 別に貴様のことを心配したわけではないッッッッ!」

 再び凄まじい大声で反論されてしまった。けれど、何だかこの態度が今ではなんだが可愛らしく微笑ましい。

「とはいえ――わたしってそんなに危機感ないのかしら」
「うーん。ないときはないよ♪」
「たまにだが、心配にはなるな」
「ないッッッ!」

 一斉に「ない」と言われかつ、道すがら他の生徒にも頷かれてしまった。


2024.12.22 ピクシブと同日公開
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