雷光のような少年
◆セベク視点
マレウス様にリリア様に、あのシルバーが気にかける学園唯一の女子生徒。雪と緑の国の第一王女。将来国を統べる女王。
立ち居振る舞いや気品はマレウス様と似たようなものを感じる。とはいえ、マレウス様にはとうてい及ばないが!
入学当初、マレウス様やリリア様が紹介したいと言って来たが僕はそれを断った。お二人から聞く話は友人としての彼女。そして癪だがシルバー聞く、後輩を導く先輩としての彼女の姿。それらはすべて第三者からに過ぎない。
「まずは僕の目で見たいのです」
そういって紹介を断って僕は僕の目で彼女を見定めようと思ったのだが――。
――えぇえいっ! なんなんだッッ! あの危機感のなさはッッ!
数日とも観察しなくとも唯一の女子ということへの危機感が薄いのが分かった。いや、基本的に単独行動をしないだけましなのかもしれない。ただ、ふいに彼女は一人になるときがある。
たまたま、たまッたまッッ! 僕が彼女を観察対象と見ていたからよかったが何があってからでは遅いのが分からないのかッッ! そもそも未来の女王となる彼女が護衛も付けずにいるのは問題ではないかッッ!
苛立ちが込み上げる。だが、彼女も周りの気遣いに気づかないほどの愚か者ではない。聡明さがあるのは分かる。だが、それでもどうしてあのように無防備で居られるのだろうか。
理解に苦しむ。同時に彼女の〝騎士〟と呼ばれている二人もたやすく傍を離れるのだろうか。騎士というならばずっと彼女が寮に戻るまで傍にいればいいものを。
「あの二人は騎士と周りから呼ばれているだけじゃよ」
「ですが、あの二人が一番共に時間を過ごし牽制しているように見えましたが」
「うん。1年の頃からの仲良しだからのぉ」
リリア様に途中経過を答えるとそうおっしゃられた。何だか腑に落ちずにいればリリア様に肩を叩かれる。
「で、そろそろエルサに声をかけたらどうだ?」
「いえ。まだですッッ!」
まだまだ判断材料が足りない。もっと、もっとよく見なければいけない。
今度は、彼女の寮での観察をすることにした。幸いなことに彼女が所属する寮はオクタヴィネル寮。寮内に寮長を支配人としたモストロ・ラウンジというカフェがあり、彼女もそこでアルバイトをしていると言う。
未来の女王がアルバイトなどと思うが、きっと社会経験の一環なのだろう。そういうところは感心すべきところだ。
とはいえ――。
――ぇええいッッ! ここは指名制ではないだろうがッッ!
給仕にでればここぞとばかり彼女に声をかけようとする輩の多いこと、多いこと。
彼女も慣れているのかさらりと躱し、他の寮生もすぐに対処する。しつこい客には上級生やオクタヴィネル寮の中でも明らかに力のある生徒が対応するという感じだった。
そんな数日を見ると彼女はパッタリと給仕に出てこなくなった。どうやら裏方に回ったらしい。
妥当だろうが意外に対応が遅い。もしかして寮長もなんだかんだ彼女に甘いのか。
そう。彼女に甘い者たちが多い。それは彼女のためにならない絶対にッッ!
後日、食堂へ向かう生徒の中で目立つ存在に声をかけた。
「エルサ先輩ッッ!」
「は、はいっ!」
遠目から見ても華奢な身体は目の前に立つとより目立つ。両脇に同年代の男子がいるから余計に華奢に見えるのか。そういえば、食べているものもあまり多くはなかったな。
「も少し食事を増やしたらどうだッッ!」
「ぇ、ええ?」
王女らしい背筋の良さが台無しになるくらい身体を縮こませる姿に眉が自然と寄る。
いや、そうじゃない。今は食事の話でもなく、姿勢の話でもない。
「僕は1年D組33番セベク・ジグボルトだ。貴様に言いたいことがあるッッ!」
マレウス様にリリア様に、あのシルバーが気にかける学園唯一の女子生徒。雪と緑の国の第一王女。将来国を統べる女王。
立ち居振る舞いや気品はマレウス様と似たようなものを感じる。とはいえ、マレウス様にはとうてい及ばないが!
入学当初、マレウス様やリリア様が紹介したいと言って来たが僕はそれを断った。お二人から聞く話は友人としての彼女。そして癪だがシルバー聞く、後輩を導く先輩としての彼女の姿。それらはすべて第三者からに過ぎない。
「まずは僕の目で見たいのです」
そういって紹介を断って僕は僕の目で彼女を見定めようと思ったのだが――。
――えぇえいっ! なんなんだッッ! あの危機感のなさはッッ!
数日とも観察しなくとも唯一の女子ということへの危機感が薄いのが分かった。いや、基本的に単独行動をしないだけましなのかもしれない。ただ、ふいに彼女は一人になるときがある。
たまたま、たまッたまッッ! 僕が彼女を観察対象と見ていたからよかったが何があってからでは遅いのが分からないのかッッ! そもそも未来の女王となる彼女が護衛も付けずにいるのは問題ではないかッッ!
苛立ちが込み上げる。だが、彼女も周りの気遣いに気づかないほどの愚か者ではない。聡明さがあるのは分かる。だが、それでもどうしてあのように無防備で居られるのだろうか。
理解に苦しむ。同時に彼女の〝騎士〟と呼ばれている二人もたやすく傍を離れるのだろうか。騎士というならばずっと彼女が寮に戻るまで傍にいればいいものを。
「あの二人は騎士と周りから呼ばれているだけじゃよ」
「ですが、あの二人が一番共に時間を過ごし牽制しているように見えましたが」
「うん。1年の頃からの仲良しだからのぉ」
リリア様に途中経過を答えるとそうおっしゃられた。何だか腑に落ちずにいればリリア様に肩を叩かれる。
「で、そろそろエルサに声をかけたらどうだ?」
「いえ。まだですッッ!」
まだまだ判断材料が足りない。もっと、もっとよく見なければいけない。
今度は、彼女の寮での観察をすることにした。幸いなことに彼女が所属する寮はオクタヴィネル寮。寮内に寮長を支配人としたモストロ・ラウンジというカフェがあり、彼女もそこでアルバイトをしていると言う。
未来の女王がアルバイトなどと思うが、きっと社会経験の一環なのだろう。そういうところは感心すべきところだ。
とはいえ――。
――ぇええいッッ! ここは指名制ではないだろうがッッ!
給仕にでればここぞとばかり彼女に声をかけようとする輩の多いこと、多いこと。
彼女も慣れているのかさらりと躱し、他の寮生もすぐに対処する。しつこい客には上級生やオクタヴィネル寮の中でも明らかに力のある生徒が対応するという感じだった。
そんな数日を見ると彼女はパッタリと給仕に出てこなくなった。どうやら裏方に回ったらしい。
妥当だろうが意外に対応が遅い。もしかして寮長もなんだかんだ彼女に甘いのか。
そう。彼女に甘い者たちが多い。それは彼女のためにならない絶対にッッ!
後日、食堂へ向かう生徒の中で目立つ存在に声をかけた。
「エルサ先輩ッッ!」
「は、はいっ!」
遠目から見ても華奢な身体は目の前に立つとより目立つ。両脇に同年代の男子がいるから余計に華奢に見えるのか。そういえば、食べているものもあまり多くはなかったな。
「も少し食事を増やしたらどうだッッ!」
「ぇ、ええ?」
王女らしい背筋の良さが台無しになるくらい身体を縮こませる姿に眉が自然と寄る。
いや、そうじゃない。今は食事の話でもなく、姿勢の話でもない。
「僕は1年D組33番セベク・ジグボルトだ。貴様に言いたいことがあるッッ!」