満ち溢れた少年
◆ オルト視点
伝統ある名門魔法士養成学校ナイトレイブンカレッジ。長い歴史の中で初めて女子生徒が誕生した。
入学式、上級生の一人が新入生の中に飛び込み「なんで女のお前がいる!」と叫んだのを聞いた兄さんは「え、イヤ、普通に幻覚では?」とフードを深くかぶって言った。その後「ま、拙者には関係ないことでござるな。つか、はよここから退散したいんだが」と付け足したのを今でも覚えている。
対岸の火事。他人事。自分には無関係なこと、と兄さんは女子生徒さんに見向きもしなかった。というか同じ年ごろの女子生徒さんに――エルサさんに関わり合いになりたくないという感じだった。
入学して分かったことだけれど厄介ごとが日常茶飯事のナイトレイブンカレッジ。その発端にもなりそうなエルサさんに兄さんは絶対に絡みたくなかった。みたい。実際、クラスが違ったことにも安心していたし。
――兄さん、明るい人以外にも異性も苦手だからなぁ。
でもね。僕はちょっと興味があった。だって、男子校だと謳われていた学校になぜ女の子が突然選ばれたのか。しかも複数人ではなくてたった一人。しかも、なんとエルサさんは雪と緑の国のお姫様。将来女王にもなるヒトが一般的な学校に入学するのは何となく分かるけれど、それが男子校なんてよく許しが出たなと思う。
――ご両親もエルサさんも不安じゃないのかな。
データ収集して分かったことだけれどエルサさんの魔力は兄さんたちや寮長クラスに匹敵するほど大きい。エルサさんの入学で少し霞んでしまったが妖精族の末裔かつ世界で5本指に入ると言われるマレウス・ドラコニアさんに匹敵するのではと思う。
――んー。もっと近くでデータ収集したいんだけれど。
友達でもないし。仲良くなるにしても僕は兄さんと一緒にいないといけないし。
――兄さん、エルサさんと仲良くなってくれないかな。
チラと隣とぶつくさ言いながら対面授業に参加するために歩く兄さんを見る。そして、前を歩くプラチナブロンドの三つ編みを揺らす背中を見る。
もう一度兄さんを見れば「うわっ。女神も一緒の授業だっけ。ムリ。マジムリ」と距離を取るように足を止めてしまった。
これじゃ、きっと仲良くなるのは難しいに違いない。兄さんの性格やエルサさんの性格など諸々の要素をもとにシュミレーションしても芳しい結果もでないし。
ハァとため息をついて兄さんに「早くいかないと遅刻しちゃうよ」と告げた。
兄さんがエルサさんと仲良くなるのは難しいと入学当初は考えていたけれど、僕が打ち出したシュミレーションした結果の予想が外れた。というか、僕もまだまだだなと改めて考えながらエルサさんとチェス盤を挟んだ兄さんを見る。
「エルサ氏。何だか狡猾な手を使ってくるようになりましたな。誰かの入れ知恵? 可愛くありませんぞ」
「ふふ。ちょっと手ほどきを受けてね」
「手ほどき……その言い方やめた方がいいよ」
「え? 何かダメだったかしら?」
「いや、なんか、その――ぇ、えっと、じゃあ。これで」
兄さん、たぶんその言い方「ちょっとアレがアレなんで」とか考えていそう。その「アレ」が何なのか僕にはちょっと分からないけれど。
きっと兄さんが設定したNGワードや検索フィルターで分からないところ。
――僕だってそういうの知っていてもいいと思うんだけれどなぁ。
兄さんのためにも。
なんて思いながらチェス盤を見下ろす。そのデータを見てシュミレーションするとこの後の一手で――。
「フヒヒ。エルサ氏もまだまだですな。ほい」
「ん? ぁ、あ! ああ!」
嬉々とした兄さんの言葉にエルサさんが頭を抱えた。エルサさんは頭の回転が速いからきっとこの後の盤面の予想がついたのだろう。薄くて小さな肩をがっくりと落とした。
「負けたわ」
「んじゃ、感想戦にでも参りますかぁ」
「はぁい」
楽し気な二人を僕はしっかりと記録した。
伝統ある名門魔法士養成学校ナイトレイブンカレッジ。長い歴史の中で初めて女子生徒が誕生した。
入学式、上級生の一人が新入生の中に飛び込み「なんで女のお前がいる!」と叫んだのを聞いた兄さんは「え、イヤ、普通に幻覚では?」とフードを深くかぶって言った。その後「ま、拙者には関係ないことでござるな。つか、はよここから退散したいんだが」と付け足したのを今でも覚えている。
対岸の火事。他人事。自分には無関係なこと、と兄さんは女子生徒さんに見向きもしなかった。というか同じ年ごろの女子生徒さんに――エルサさんに関わり合いになりたくないという感じだった。
入学して分かったことだけれど厄介ごとが日常茶飯事のナイトレイブンカレッジ。その発端にもなりそうなエルサさんに兄さんは絶対に絡みたくなかった。みたい。実際、クラスが違ったことにも安心していたし。
――兄さん、明るい人以外にも異性も苦手だからなぁ。
でもね。僕はちょっと興味があった。だって、男子校だと謳われていた学校になぜ女の子が突然選ばれたのか。しかも複数人ではなくてたった一人。しかも、なんとエルサさんは雪と緑の国のお姫様。将来女王にもなるヒトが一般的な学校に入学するのは何となく分かるけれど、それが男子校なんてよく許しが出たなと思う。
――ご両親もエルサさんも不安じゃないのかな。
データ収集して分かったことだけれどエルサさんの魔力は兄さんたちや寮長クラスに匹敵するほど大きい。エルサさんの入学で少し霞んでしまったが妖精族の末裔かつ世界で5本指に入ると言われるマレウス・ドラコニアさんに匹敵するのではと思う。
――んー。もっと近くでデータ収集したいんだけれど。
友達でもないし。仲良くなるにしても僕は兄さんと一緒にいないといけないし。
――兄さん、エルサさんと仲良くなってくれないかな。
チラと隣とぶつくさ言いながら対面授業に参加するために歩く兄さんを見る。そして、前を歩くプラチナブロンドの三つ編みを揺らす背中を見る。
もう一度兄さんを見れば「うわっ。女神も一緒の授業だっけ。ムリ。マジムリ」と距離を取るように足を止めてしまった。
これじゃ、きっと仲良くなるのは難しいに違いない。兄さんの性格やエルサさんの性格など諸々の要素をもとにシュミレーションしても芳しい結果もでないし。
ハァとため息をついて兄さんに「早くいかないと遅刻しちゃうよ」と告げた。
兄さんがエルサさんと仲良くなるのは難しいと入学当初は考えていたけれど、僕が打ち出したシュミレーションした結果の予想が外れた。というか、僕もまだまだだなと改めて考えながらエルサさんとチェス盤を挟んだ兄さんを見る。
「エルサ氏。何だか狡猾な手を使ってくるようになりましたな。誰かの入れ知恵? 可愛くありませんぞ」
「ふふ。ちょっと手ほどきを受けてね」
「手ほどき……その言い方やめた方がいいよ」
「え? 何かダメだったかしら?」
「いや、なんか、その――ぇ、えっと、じゃあ。これで」
兄さん、たぶんその言い方「ちょっとアレがアレなんで」とか考えていそう。その「アレ」が何なのか僕にはちょっと分からないけれど。
きっと兄さんが設定したNGワードや検索フィルターで分からないところ。
――僕だってそういうの知っていてもいいと思うんだけれどなぁ。
兄さんのためにも。
なんて思いながらチェス盤を見下ろす。そのデータを見てシュミレーションするとこの後の一手で――。
「フヒヒ。エルサ氏もまだまだですな。ほい」
「ん? ぁ、あ! ああ!」
嬉々とした兄さんの言葉にエルサさんが頭を抱えた。エルサさんは頭の回転が速いからきっとこの後の盤面の予想がついたのだろう。薄くて小さな肩をがっくりと落とした。
「負けたわ」
「んじゃ、感想戦にでも参りますかぁ」
「はぁい」
楽し気な二人を僕はしっかりと記録した。