林檎の少年
◆エペル視点
学園長が育てる赤いリンゴの下でキラキラ星のように輝く髪と宝石のように煌めく瞳を持ったお姫様と僕は並んで座っていた。
「エペルは豊作村の出身なの!」
宝石のようにキラキラした大きな瞳がより大きく煌めいた。
――こいう人こそポムフィオーレ寮なんじゃね゛か?
エルサ先輩を初めて見た時も思ったし、こうして話をする度に思う。なぜ、オクタヴィネル寮なんだろう。絶対にポムフィオーレ寮の方が似合うし、制服だって似合う。
「エペル? 大丈夫?」
「っ!」
ぼんやりとしていたら綺麗な顔が間近まで迫っていた。エルサ先輩はたまに距離感がバグっている。それにヴィル先輩やルーク先輩に、レオナ先輩も。いや、きっとエルサ先輩に仲がいい人は皆危機感を持てと思っているに違いない。
短い付き合いの僕だって思うんだから。
少し身を引いてから「大丈夫です」というとそれでも柳眉な眉は心配げに下がったまま。こういうところがナイトレイブンカレッジらしくない。むしろ、ロイヤルソードアカデミーらしいような気がするけれど……って、違う。
「エルサ先輩はどうして豊作村を?」
輝石の国の北部。高い山々に囲まれた村。リンゴが名産だけれど――ふと思い出したことがあった。
「そういえば昔雪と緑の国に僕らの村の人が行ったとか」
「ふふ。そうなの。昔豊作村の人がうちに来てリンゴの技術提供をしてくれたの」
「へぇ」
「だから、うちのリンゴも美味しいのよ。でも、やっぱり豊作村のリンゴはとっても美味しいわよね」
両頬を細くしなやかな手で押さえる姿は年上なのにとても愛くるしい。
エルサ先輩は大人びた顔立ちだけれど、こうして年相応の少女らしさがある。きっと、こういうギャップにやられている生徒もいるんだろう。実際、学園内にあるエルサ先輩を女神と崇め奉る会という怪しげな集まりに参加するクラスメイトを見たことがあるし。ポムフィオーレ寮にも信奉者のような人もいた。他にも部活――いや、部活はない。あそこはレオナ先輩の睨みが利いているから。にしても――。
――罪作りなお人だな゛ぁ。
豊作村のリンゴを使ったアップルパイを力説し始めるエルサ先輩を横目に見る。
綺麗だけれど可愛らしい。お姫様らしく世間知らず。それでもお茶目なところもあって気高い人。曲者揃いのナイトレイブンカレッジ生を振り回す女神。
「ふふ。エルサ先輩ってすごいですね」
「え?」
さっきのお返しに隣に座る先輩の顔を覗き込んでみる。すると、さっきと同じように長いまつ毛に縁どられた宝石みたいな瞳が見開く。でも、それだけだった。
やっぱり1年生でエルサ先輩よりも小柄な僕では危機感は芽生えないらしい。
「ハァ。エルサ先輩」
「は、はい」
ため息をついて離れる。そしてなぜか居住まいをただすエルサ先輩に思わず笑いが込み上げる。空気が読めないわけではないらしいけれど面白い。
「なんでもありません。でも、エルサ先輩はそろそろ危機感もっと持った方がいいですよ」
「え。持っているつもりよ?」
首を傾げるエルサ先輩に「こりゃ苦労するなぁ」と思った。それが誰かっていうのは先輩を見守っていたり人とか、仄かな思いを寄せている人とか。こんな調子だと僕だってちょっと気にしてしまう。
「エルサ先輩。アンテナ頑張って張ってくださいね」
とりあえず、僕はそういって母さんが送ってくれた「リンゴジュース」の話を始める。それに再び宝石みたいな瞳が輝いた。
学園長が育てる赤いリンゴの下でキラキラ星のように輝く髪と宝石のように煌めく瞳を持ったお姫様と僕は並んで座っていた。
「エペルは豊作村の出身なの!」
宝石のようにキラキラした大きな瞳がより大きく煌めいた。
――こいう人こそポムフィオーレ寮なんじゃね゛か?
エルサ先輩を初めて見た時も思ったし、こうして話をする度に思う。なぜ、オクタヴィネル寮なんだろう。絶対にポムフィオーレ寮の方が似合うし、制服だって似合う。
「エペル? 大丈夫?」
「っ!」
ぼんやりとしていたら綺麗な顔が間近まで迫っていた。エルサ先輩はたまに距離感がバグっている。それにヴィル先輩やルーク先輩に、レオナ先輩も。いや、きっとエルサ先輩に仲がいい人は皆危機感を持てと思っているに違いない。
短い付き合いの僕だって思うんだから。
少し身を引いてから「大丈夫です」というとそれでも柳眉な眉は心配げに下がったまま。こういうところがナイトレイブンカレッジらしくない。むしろ、ロイヤルソードアカデミーらしいような気がするけれど……って、違う。
「エルサ先輩はどうして豊作村を?」
輝石の国の北部。高い山々に囲まれた村。リンゴが名産だけれど――ふと思い出したことがあった。
「そういえば昔雪と緑の国に僕らの村の人が行ったとか」
「ふふ。そうなの。昔豊作村の人がうちに来てリンゴの技術提供をしてくれたの」
「へぇ」
「だから、うちのリンゴも美味しいのよ。でも、やっぱり豊作村のリンゴはとっても美味しいわよね」
両頬を細くしなやかな手で押さえる姿は年上なのにとても愛くるしい。
エルサ先輩は大人びた顔立ちだけれど、こうして年相応の少女らしさがある。きっと、こういうギャップにやられている生徒もいるんだろう。実際、学園内にあるエルサ先輩を女神と崇め奉る会という怪しげな集まりに参加するクラスメイトを見たことがあるし。ポムフィオーレ寮にも信奉者のような人もいた。他にも部活――いや、部活はない。あそこはレオナ先輩の睨みが利いているから。にしても――。
――罪作りなお人だな゛ぁ。
豊作村のリンゴを使ったアップルパイを力説し始めるエルサ先輩を横目に見る。
綺麗だけれど可愛らしい。お姫様らしく世間知らず。それでもお茶目なところもあって気高い人。曲者揃いのナイトレイブンカレッジ生を振り回す女神。
「ふふ。エルサ先輩ってすごいですね」
「え?」
さっきのお返しに隣に座る先輩の顔を覗き込んでみる。すると、さっきと同じように長いまつ毛に縁どられた宝石みたいな瞳が見開く。でも、それだけだった。
やっぱり1年生でエルサ先輩よりも小柄な僕では危機感は芽生えないらしい。
「ハァ。エルサ先輩」
「は、はい」
ため息をついて離れる。そしてなぜか居住まいをただすエルサ先輩に思わず笑いが込み上げる。空気が読めないわけではないらしいけれど面白い。
「なんでもありません。でも、エルサ先輩はそろそろ危機感もっと持った方がいいですよ」
「え。持っているつもりよ?」
首を傾げるエルサ先輩に「こりゃ苦労するなぁ」と思った。それが誰かっていうのは先輩を見守っていたり人とか、仄かな思いを寄せている人とか。こんな調子だと僕だってちょっと気にしてしまう。
「エルサ先輩。アンテナ頑張って張ってくださいね」
とりあえず、僕はそういって母さんが送ってくれた「リンゴジュース」の話を始める。それに再び宝石みたいな瞳が輝いた。