主従な少年たち
危なっかしいお姫様
「なぁなぁ! ジャミル! エルサってすっげぇ人気なんだな」
「あ?」
多くの生徒が食堂に行く時間。俺とカリムは外に出て俺が用意した昼食を広げていた。そのときカリムが思い出したと言いたげに一枚紙を取り出して広げて見せた。
「ほら見ろよ!」
見せられたチラシに俺は頭を抱えた。お前も貰ったのか。そして、これを見てそんな能天気な考えがでるな。まぁ、カリムだしな。
「エルサにそれを言うなよ。本人は気味悪がってるし」
「ん? ならやめてくれって言えばいいじゃないか?」
首を傾げるカリムに俺は横に振り返す。
「こんな宗教染みている奴らに本人が言いに行ってみろ。ありがたがるだけだ」
「そういうもんなのか?」
「なんでも女神の御言葉ってなるだろうな」
想像つくし、エルサも想像ついたからそっとしておいているんだろう。
――気苦労が絶えないな。
男子校だと言われているナイトレイブンカレッジに入っただけでも随分苦労しただろ。チラシを見て苦々しい気持ちが込み上げる。
「それエルサの目に着く前に捨てとけ」
「おう。あ、噂をすればエルサだ!」
手を振るカリムの代わりにオレは素早く手から引っこ抜く。そしてパタパタ折ってジャケットのポケットに突っ込む。全く目に触れるなって言っただろうが。
チラと見ればエルサもカリムに答えるように手を振ってこっちにくる。その様がまさにお姫様らしく優雅だった。周りの生徒がエルサに見惚れているのが遠目でも分かる。
昔からそう目を引く人だった。容姿が整っているというのもあるけれど彼女は何か惹きつけられる何かがある。
人はそれをカリスマ性というのかもしれないが、それとは違う気もする。でも、違う理由を子どもの頃からはっきりと言えない。
「エルサも今日は外で食べるのか?」
カリムの声で我に返るとエルサは傍まで来ていた。
いつも両脇を固めている騎士と呼ばれる先輩たちがいない。二年生になったとはいえ一人で歩くなんて不用心だ。
俺のそんな心配を他所にエルサは「ええ」とあっさり答える。よく見れば上品に小さなバケットを持っていた。どうやらランチを食べる場所を探していたみたいだ。
「なら一緒に食おうぜ!」
「いいの?」
誘うとエルサの表情が明るくなる。ジャミルはその唇の端が引き攣りそうになった。
――おいおいおい。もしかして一人で食べるつもりだったのか。
ほんと、ほんとに危機管理能力欠如している。あの騎士二人はどういう風に普段接しているんだ。もっと、こう、もっとエルサの危機管理能力を養え。
今はここに居ない二人の先輩に悪態をつきながら一応訊ねてみることにした。
「エルサ。もしかして一人で食べるつもりだったのか」
「ええ。そうよ。ケイトもトレイも新しく寮長になったリドルの補佐で忙しいみたいだったから」
困ったような顔をするエルサに俺はひとりの小柄な少年を思い出す。一年で寮長になるとはと感心していたがまさかその二人が新寮長の補佐でいっぺんに引っ張られるなんて。
「そうだったのか。なら一人になっちまうときはオレたちと一緒に食おうぜ!」
カリムの提案に俺は珍しくいいこと言うなと心の中で褒めた。そして、俺も乗っかることにした。
「それはいいな」
「いいのかしら?」
「もちろん! な、ジャミル!」
「ああ」
頷くがひとつ懸念が出来る俺たちがいなかったときどうするかだ。
「エルサ。お前もあんまり一人でいようとするなよ」
「あ、うん。普段からケイトとトレイにも言われているわ……でも、今日はそのヴィルもルークも他の皆も中々捕まらなくて」
本人も分かっているならいい。よし。あとで先輩方にも根回しておくか。
「でも、そうよね。今度からはカリムもジャミルもいるし――ああ、そうだ。最近同じ寮の後輩のアズールに、ジェイドとフロイドとも仲よくなったの!」
「お! そうなのか! よかったな!」
「ええ。そうだ、今度ランチに誘ってみましょう」
「お! 楽しそうだな!」
破顔するカリムと打って変わり俺は心の中で盛大に顔を顰めた。
アズール、ジェイド、フロイドの三人はすでに色々話題に上がっている生徒だ。正直、関わり合いになりたくない。といっても、フロイドとは同じバスケ部なので避けられないが――できれば関わりたくない。にしても、あいつら絶対エルサの前で猫被ってんな。
じゃなきゃエルサがコロッと――いや? 猫被ってなくてもエルサなら普通に騙されるな。カリムと同じくらいお人よしだしな。
ありえると頷いてしまう。横目で笑い合う二人を見て頭を抱えたくなった。
この状態でよく一年生き抜けたものだ。いや、あの騎士のような先輩方を称賛すべきか。とりあえず、あの先輩方にもやっぱり一度相談した方がいいな。
「なんで俺の回りにはこう世話がかかるやつらしかいないんだ」
ハァと深い溜息をつけば呑気に笑っていた奴らがすぐに「どうした!」「どうしたの?」と声をかけてきた。それにすぐに毒気が抜かれた。
「なぁなぁ! ジャミル! エルサってすっげぇ人気なんだな」
「あ?」
多くの生徒が食堂に行く時間。俺とカリムは外に出て俺が用意した昼食を広げていた。そのときカリムが思い出したと言いたげに一枚紙を取り出して広げて見せた。
「ほら見ろよ!」
見せられたチラシに俺は頭を抱えた。お前も貰ったのか。そして、これを見てそんな能天気な考えがでるな。まぁ、カリムだしな。
「エルサにそれを言うなよ。本人は気味悪がってるし」
「ん? ならやめてくれって言えばいいじゃないか?」
首を傾げるカリムに俺は横に振り返す。
「こんな宗教染みている奴らに本人が言いに行ってみろ。ありがたがるだけだ」
「そういうもんなのか?」
「なんでも女神の御言葉ってなるだろうな」
想像つくし、エルサも想像ついたからそっとしておいているんだろう。
――気苦労が絶えないな。
男子校だと言われているナイトレイブンカレッジに入っただけでも随分苦労しただろ。チラシを見て苦々しい気持ちが込み上げる。
「それエルサの目に着く前に捨てとけ」
「おう。あ、噂をすればエルサだ!」
手を振るカリムの代わりにオレは素早く手から引っこ抜く。そしてパタパタ折ってジャケットのポケットに突っ込む。全く目に触れるなって言っただろうが。
チラと見ればエルサもカリムに答えるように手を振ってこっちにくる。その様がまさにお姫様らしく優雅だった。周りの生徒がエルサに見惚れているのが遠目でも分かる。
昔からそう目を引く人だった。容姿が整っているというのもあるけれど彼女は何か惹きつけられる何かがある。
人はそれをカリスマ性というのかもしれないが、それとは違う気もする。でも、違う理由を子どもの頃からはっきりと言えない。
「エルサも今日は外で食べるのか?」
カリムの声で我に返るとエルサは傍まで来ていた。
いつも両脇を固めている騎士と呼ばれる先輩たちがいない。二年生になったとはいえ一人で歩くなんて不用心だ。
俺のそんな心配を他所にエルサは「ええ」とあっさり答える。よく見れば上品に小さなバケットを持っていた。どうやらランチを食べる場所を探していたみたいだ。
「なら一緒に食おうぜ!」
「いいの?」
誘うとエルサの表情が明るくなる。ジャミルはその唇の端が引き攣りそうになった。
――おいおいおい。もしかして一人で食べるつもりだったのか。
ほんと、ほんとに危機管理能力欠如している。あの騎士二人はどういう風に普段接しているんだ。もっと、こう、もっとエルサの危機管理能力を養え。
今はここに居ない二人の先輩に悪態をつきながら一応訊ねてみることにした。
「エルサ。もしかして一人で食べるつもりだったのか」
「ええ。そうよ。ケイトもトレイも新しく寮長になったリドルの補佐で忙しいみたいだったから」
困ったような顔をするエルサに俺はひとりの小柄な少年を思い出す。一年で寮長になるとはと感心していたがまさかその二人が新寮長の補佐でいっぺんに引っ張られるなんて。
「そうだったのか。なら一人になっちまうときはオレたちと一緒に食おうぜ!」
カリムの提案に俺は珍しくいいこと言うなと心の中で褒めた。そして、俺も乗っかることにした。
「それはいいな」
「いいのかしら?」
「もちろん! な、ジャミル!」
「ああ」
頷くがひとつ懸念が出来る俺たちがいなかったときどうするかだ。
「エルサ。お前もあんまり一人でいようとするなよ」
「あ、うん。普段からケイトとトレイにも言われているわ……でも、今日はそのヴィルもルークも他の皆も中々捕まらなくて」
本人も分かっているならいい。よし。あとで先輩方にも根回しておくか。
「でも、そうよね。今度からはカリムもジャミルもいるし――ああ、そうだ。最近同じ寮の後輩のアズールに、ジェイドとフロイドとも仲よくなったの!」
「お! そうなのか! よかったな!」
「ええ。そうだ、今度ランチに誘ってみましょう」
「お! 楽しそうだな!」
破顔するカリムと打って変わり俺は心の中で盛大に顔を顰めた。
アズール、ジェイド、フロイドの三人はすでに色々話題に上がっている生徒だ。正直、関わり合いになりたくない。といっても、フロイドとは同じバスケ部なので避けられないが――できれば関わりたくない。にしても、あいつら絶対エルサの前で猫被ってんな。
じゃなきゃエルサがコロッと――いや? 猫被ってなくてもエルサなら普通に騙されるな。カリムと同じくらいお人よしだしな。
ありえると頷いてしまう。横目で笑い合う二人を見て頭を抱えたくなった。
この状態でよく一年生き抜けたものだ。いや、あの騎士のような先輩方を称賛すべきか。とりあえず、あの先輩方にもやっぱり一度相談した方がいいな。
「なんで俺の回りにはこう世話がかかるやつらしかいないんだ」
ハァと深い溜息をつけば呑気に笑っていた奴らがすぐに「どうした!」「どうしたの?」と声をかけてきた。それにすぐに毒気が抜かれた。