第五の精霊その後の転生物語

旅経つ前の家族との団欒



 精霊としての役目を終えてわたしはアナたちよりだいぶ後に静かな眠りについた。ようやくアナたちのもとへ逝けると思うと重く沈む意識の中でも少し楽しみだった。徐々にぼやけていく視界にわたしは抗うことなくそのままそっと瞼を降ろした。
 これでわたしの長い人生が終わったと思っていた。ええ。何も間違いじゃないはずだったの。けれど――不思議わたしまた〝エルサ〟として誕生した。




「エルサーー! 迎えの馬車がきたよーー!」

 眼前に広がる城下町とフィヨルドから視線を外して振り返る。その際に黒、紫、それに金の刺繍が特徴的なローブのフードが外れる。慌てて被り直して手を振る妹に手をあげる。

「今行くわーーーー!」

 同じように返事を返せば今度はピョンピョン跳ねて両手を上げて振る妹アナ。以前よりも歳がだいぶ離れた可愛い妹の姿に頬が緩む。
 わたしは――雪と緑の国の国王と王妃の間に再び第一王女として誕生した。しかも、何故か生れる前の記憶を持って生れた。わたしは生れる前も生れたあともエルサだった。そして、再び魔力を持って生れたのだが――なんと両親も魔力を持って生れた魔法使いだった。厳密には魔法士らしいけど。さらに驚いたことに以前よりも歳の離れて生れたアナも魔力があり魔法が使えた。

 今度はわたし一人ではない。皆魔法が使える。それに嬉しさを覚えたけれど、わたしの力はやはり誰よりも強い。以前の氷と雪の魔法はわたしのユニーク魔法として生まれ変わっていた。どうやらこの力は生れ変わってわたしの力でありたいらしい。
 とはいえ、以前よりもこの力を使いこなせるようになっている。何せ何百年も精霊をしていたのだ。成長するほど以前のように使いこなせるようになった頃だった。

 わたしのところに一通の入学通知書がやって来た。


  * * *



「ほんとーにナイトレイブンカレッジの馬車なのねぇ」

 検分するように場所の周りをうろちょろするアナを捕まえて抱きしめる。そして、両親を見上げればやはり不安げな表情をしている。わたしも不安になりそうだ。
 わたしの心配を悟ったのか両親はアナごとわたしを抱きしめた。

「なに心配らないさ。女の子のエルサに入学許可証が来たということは他に同じ子がいるかもしれない」
「ええ。今年度から男子校から男女共学になったのかもしれないわ」
「……うん」

 それならいいのだけれど、とわたしは真っ黒な馬を見る。
 わたしが今からいくナイトレイブンカレッジは魔法士養成学校の名門校。闇の鏡が入学するに相応しい者を選ぶという中々面白い入学方法を採用している。そして、入学式当日に馬車の迎えが来るらしい――いや、それどころではない。そのナイトレイブンカレッジは由緒正しき男子校なのだ。女子生徒がいるなんて話は聞いたことがない。

 ――なんで、わたしに入学許可書が来たのかしら。

 入学前に連絡を取る術もなくわたしは入学の日を迎えた。

「ねぇねぇ。エルサ、お手紙書いていい?」

 丸々としたどんぐりのような可愛らしい瞳がわたしの腕の中で見上げてくる。
 なんて可愛らしいわたしの可愛い妹とぎゅっと抱きしめて「もちろんよ! わたしも書くわ」と言って丸い額にキスを贈る。
 アナはくすぐったそうにしながら「あたしもする!」と言った。わたしはアナのために身を屈めると可愛らしい唇がほほにむちゅっと押しつけられた。

「ありがとう、アナ。勇気が出たわ」

 もう一度頭にキスをしてアナを離す。それから両親に振り返って「いってきます」と言う。すると両親はわたしをきつく抱きしめて母、父の順で頬にキスされた。

「何かあったらすぐに連絡しなさい」
「すぐに戻って来てもいいからな」
「わかった」

 心配そうな両親に笑いかけてわたしは馬車に向き直り乗り込んだ。


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