人魚の少年三人組

かわいい先輩



「まぁ。想定内ですね」

 周りからのチクチクとした視線を無視しながら野菜を口に入れる。目の前の二人。一人は朝食にしては多すぎないかという量を食べ、もう一人は意外に普通にトーストにジャムを塗って食べている。
 僕と同じように周りの視線などお構いなし。それがいいのか悪いのか。ただ、何か言いたげな視線が何個か混じっているがそれも気にしない。それよりも。

「案外元気でしたね」
「ああ。エルサさんですか」
「はい。一時期、何をやってもダメな感じがしていましたが」

 転ぶ、箒から落ちかける、間違った調合をする。提出物を忘れる。先生たちですら心配するほど調子を崩していたけれど昨夜のパーティーは大分いつも通りに戻っていた。というか、週末に向けて調子を上げていた気がする。

「元気になってよかったです」
「ふぅん。アズールも心配してたんだ」

 ピッとバターナイフを向けるフロイドに眉を上げる。

「こっちに向けるな」
「はいはい。ま、今度はこの記事で慌ててるかもね」

 「ふふ♪」と笑うフロイドはテーブルに置いていたスマホを指しながら楽し気に笑う。その横で咀嚼を終えたジェイドも「そうですねぇ」と呑気に言う。
 僕はブリッジを上げながらため息をつく。

「人の噂も七十五日と言うらしいですから」
「へぇ。そんな言葉があんだ」
「遠い東の国の言葉でしたっけ」

 パンにかじりつくフロイドに、さっそく次の食べ物に手を出すジェイド。よく食べるなと思いながら僕もサラダを食べ進める。にしても、今日は体力育成もあるからそれなりに食べていないと――頭の中で献立を考えていると食堂の入り口が俄かにざわつく。

「あ。噂をすれば♪」

 フロイドの弾んだ声にプレートから顔を上げる。すると、想像していた以上に白い顔を青ざめさせたエルサさんがいた。

「想像の10倍以上の慌てようですね」
「ええ。ですが、」

 少々可哀そうだ、と心の片隅で思う。けれど、と僕は目の前で愉悦の笑みを浮かべるイカレたウツボの人魚たちを見る。すっかり獲物をいたぶるような目をしている。
 なら助けるのかと言えば〝否〟。僕は彼らのような趣味はない。でも、あの人をからかいたいという気持ちは分からないでもない。

 ――同じ穴の狢というのは嫌なんだがな。

 こっちに気づいてやってくるお姫様に僕は二人にバレないようにほくそ笑んだ。




2023/07/09 リメイク版
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