人魚の少年三人組

面白い先輩



 プリーツスカートを翻して去っていく彼女を見送って僕もベンチから立ち上がる。そして、図書館にでも行こうかと思って歩き出すと前からフロイドが現れる。

「フロイド。ちょうどいいところに来てくれました」
「ん……なに」

 そっけない返事をしながらも意識が僕の背の向こう側にあることに笑いそうになる。
 フロイドが「んだよ」と言うからどうやら笑いは我慢できずに洩れてしまったようだ。まだまだだなと思いながら「話しがあります」と言うとようやく目を向ける。

「実はエルサさんから少々お願いごとがありましてね」
「テツギョちゃん先輩から? え? なに、なに?」

 興味なさそうな顔が途端に輝きだす。楽しそうにルンルンとした足取りで近づく兄弟に我慢できず笑ってしまう。

「あ? 何?」
「ふふ。いえ、お前はエルサさんが関わると楽しそうだな、と」
「まぁ。テツギョちゃん先輩の周りは面白いこと結構あるし」
「それは僕も思います」

 フロイドとは違うけれど学内唯一の女子生徒である彼女の周りは愉しいことがたくさんある。だから、あのように調子を落としてしまうのは見過ごせない。

「そういえば、エルサさん、元気戻りそうでしたよ」
「ふぅん」

 興味なさげな返事をしながらも少し安心したようなフロイド。意外にも兄弟はエルサさんに気に入っている。見かけては雛のようについていき絡み離れない。今までにないフロイドの反応もまた僕の少しの楽しみだ。
 さて、そのフロイドが気に入っている彼女も去り際に見せた顔は気分が晴れたような顔をしていた。一体全体何があったのかは伺うことはできなかった。ただ、普段無防備な彼女があからさまに線を引いたことだけは確か。

 ――何を抱え込んでいるんでしょうね。

 暴いてしまいたいようなそっとしておきたいような。
 彼女は愛しまれている。そこを踏み荒らしたくなるような気もするが、逆に護ってやりたくもなる。それが女性だからなのはひとつあるが、それ以上に何かあるのだろう。

 ――でなければ、学園の有力者的生徒が気に掛けることはない。

 アズールもそれを見て何かしかけることがない。
 フロイドも、アズールも、彼女の前にしていつもと違う。もしかしたらそれは自分も同じかもしれない。

 ――面白い。

 やっぱり彼女の周りは面白い。ならばやっぱり踏み荒らすことなくしばらくは愛しむほうに居よう。

「で、ジェイド。テツギョちゃん先輩に何をお願いされたの」
「ああ。実は――」

 ワクワクしているフロイドと並んで僕はとっておきの話をした。



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