人魚の少年三人組

テツギョちゃん先輩



 遠く離れもうテツギョちゃん先輩が見えないところで一度止まる。
 それからゆっくりと歩く。その方向は魔法薬学の授業を行う場所とは反対方向。もう今日は授業を受けるつもりもねぇから適当にふらふらすることに決めた。
 ふらふらと歩きながら頭ん中にあるのはさっきまでのテツギョちゃん先輩。いつもみたいに無防備かと思ったらここではない別の場所にいるみたいになった。

 ――話してくれればいいのに。

 あの雪だるまはたぶんテツギョちゃん先輩にとってとっても、とっても大切な何か。大切な思い出の一部分なんだと思う。それを見せてくれたことは嬉しかったのに、彼女の反応にイライラが募る。よくあの場で八つ当たりしなかったよ、オレ。

「めっちゃえらいじゃーん」

 むしろ、慰めてあげたんだからテツギョちゃん先輩は感謝して欲しい――いや、別にいいや。
 感謝してくれなくていいからまたいつもみたいに戻ってほしい。どこか遠くにいるような姿をしないでいつもみたいにお姫様のように守られて笑っていればいい。

「変なの」

 珊瑚の海では暢気な人魚をたくさん見て来た。バカみたいな人魚も見て来た。人魚の世界は人間の世界とは別のベクトルで生きるのが大変なのだ。
 とくにオレの周りはそうだった。だから、ほんとはあんな無防備なお姫様なんて興味なんて沸かないはずなのに。

「なんでなんだろ……」

 オレ自身でも反吐が出そうなセリフをよく言えたと思う。けれど、そうしないと泣きだしてしまいそうな気がした。それに遠くに行ってしまいそうだった。

「……はっ。バカバカしっ」

 考えてなんか軟弱な考えのような気がした。そもそもどこか遠くにいくなら追いかけて捕まえればいいだけじゃん。来るなって言ったオレには関係ねぇし。

「うん。どっか行っても平気っしょ」

 絶対捕まえるし。
 どうしてこんな思考回路になっているか正直まだ分かんねぇ。でも、オレが納得でいたからいいや。
 そうなると授業にも出ていい気持ちになって来た。

「よし。いこ~っと!」

 オレはそのまま反対方向に向かって歩き出した。ふと遠くから吹く風が少し冷たくてなんだかテツギョちゃん先輩の気配がして気分が上がった。

「あとで、また会いにいこ♪」


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