はじまりの再会

◆ ジャック視点



 研究員からの言葉は怪しいと思っていた。だが、下手なことをすると実習に響くなんて思わず怯んだ自分を殴り飛ばしたくなった。
 まさか合コンの数合わせだったとは。しかも年齢を詐称されての。勝手な。
 だが、その合コンに見知った人を見たのは驚いた。

 トレイ・クローバー。

 ジャックが1年生のときにハーツラビュル寮の副寮長を務めていた3年生だ。2年であり寮長のリドルだけではなくエースやデュースはてには寮生の世話をよくしていた人。ジャックもハロウィーンイベントで世話になった先輩だ。
 エース、デュースを通じて顔見知りにはなっていたがジャックの中では馴染みが薄い先輩の一人だった。
 レオナやラギーのような同寮の先輩でもなく、ヴィルのような同郷でもない。何かしら絡んでくる先輩でもなかった。
 そんな人がこんなところに。そもそも合コンなんて場違いにも思えた。というか、トレイなら合コンに行かずとも普通にモテそうな気がするが。
 なんて考えていたがすぐにこの不自然な状況を理解した。そして、その答え合わせのようなことを合コン参加者の一人だと思われる男が告げた。
 そのあとは、ジャックの言葉とトレイの補足で合コンは崩れたと思う。その様を見る前にジャックはトレイに連れられて店を出たから分からない。

 トレイとはあの後に食事を共にしてからなんだかんだ連絡を取っている。

 ジャック自身でも意外だった。レオナやラギーとも違う関係だから。そもそもジャックはあの後、輝石の国の首都で就職した。
 レオナやラギーからは遠回しになぜ夕焼けの草原に来なかったのか言われたが――。

「暑いんすよ。あの国」
「ああ。ジャックはこの国だと北部よりの出身だったか?」
「っす。それに俺がやりたいことはこっちにあったんで」
「そうか」

 先ほどまでマジマジと目の前のケーキを見ていたトレイの視線がこちらに向けられる。ジャックと似た瞳の色をしているが彩度が少し違うイエローの瞳。
 随分と見慣れた、と思うほどにジャックはトレイに会っている気がする。いや、気がするではなく会っている。
 トレイは今ケーキ修行とかで輝石の国のケーキ屋で働いているらしい。そのケーキ屋がジャックの住んでいるアパートメントの近くと来た。
 偶然だろうがなんかすごいと思いながらよく会うことになった。
 ナイトレイブンカレッジのときの距離感を思い出すと不思議な巡り合わせだと思う。

「ジャックは将来やっぱり夕焼けの草原に行きたいのか」

 なんてことないようなトレイの声は硬さを帯びている。いや、緊張しているというのだろうか。そう感じるのはジャックが狼の獣人属だからだろうか。
 彼の声の変化を察しながら言われたことを考える。

「どうっすかね。もし次のステップに進みたいと思ったときに夕焼けの草原だったらそこに行くと思います。今のトレイ先輩みたいに」

 レンズ越しに見える目が見開く。それから嬉しそうに目を細め「そうか」と静かに囁いた。その声音は先ほどの硬さはなく柔らかかった。
 トレイの変化が分かるほどの付き合いになったのだとしみじみする。しみじみとすると同時に〝嬉しい〟という気持ちが湧く。
 この感情の答えが分からないほどの年齢ではない。それに何となく上手くいく予感がジャックはあった。

「あの、トレイ先輩――」



2025.07.28 リメイク作品発表

★ リメイク元作品 ★
不思議な再会』発表期間2020~2021
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