さぁ、戦いの火蓋が切られました!

さぁ、戦いの火蓋が切られました!・4



 レオナがラギーと共にジャックに復習をした日の翌日からジャックが見当たらない。たまに、オンボロ寮の監督生のところで休んでいることがあるからそうだと思った。だが、次の日、ラギーが監督生に聞けば知らないと首を横に振った。あの草食動物もだいぶこの学園に染まったものだ。
 今回だけは見逃すことにした。だが、これ以上茶々は居られたくない。
 レオナはここ最近のジャックの周辺のことを考えて足を踏み入れたのは海の中だった。
 目の前には胡散臭い笑みを浮かべたいけ好かないタコの人魚。海の魔女と同じ種族だというのに敬う気持ちはこれっぽちもレオナにはなかった。

「おい。俺は客だぞ。茶の一つでもだしたらどうだ?」
「おやおや。アポイメントもなしにいきなりやって来たと思えばとんだ言いがかりだ」

 アズールの飄々とした態度にレオナはソファに寄りかかる。
 だが、レオナが何を言いに来たのかは分かっているんだろう。そして、今回監督生が強気になったのはきっとこの男の入れ知恵に違いない。

「あいつはサバナクロー寮生だ。テメェの寮に転寮した記憶はないんだがなぁ」
「僕もありませんよ。ですが、そろそろ愛想をつかす頃合いでは?」

 アズールの可愛らしい挑発に思わずレオナは嗤った。
 ジャックが愛想をつくなんて「それはない」と断言できる。あのジャックは絶対にレオナからもラギーからも離れない。それが憧れから畏怖に変わって絶対に離れない。

「ねぇな」
「……随分な自信ですね」

 アズールの苛立った眼差しにレオナは悠然と足を組みなおす。

「で、ジャックをどうするつもりだ」
「さぁ」
「おいおい。この期に及んで白を切るつもりかよ」

 面倒くさい男だと舌を打つ。だが、この男は頭が切れる方だ。とはいえ、所詮2学年。17、18歳の子ども。ハーツラビュル寮の赤毛の坊ちゃんと変わらない。

「自分ならジャックを上手く使えるとか思ってんのか?」
「は?」

 目の色が変わる。レオナは「よしよし」とゆっくりと獲物に狙いを定める。

「あいつはそう簡単に御せる犬じゃねぇのはお前だって知ってんだろ」

 ただアズールの生き方に共感し好ましく思う部分はあるだろう。だが、アズールの生き物として生き抜く方法はきっとジャックには合わない。

「お前に振り向くことなんざないだろ」

 チクりと、チクりと、アズールの心臓に針を刺していく。
 アズールは一瞬薄い唇を噛むがすぐにこちらを見て嗤う。その笑みにレオナは反射的に眉を跳ね上げる。

「んだ」
「いえ。まるで自分なら違うと言うようで」

 その言葉に含まれている意味が分からないほどレオナは愚か者ではない。こいつ、と思いながらレオナは余裕な態度は崩さない。
 この男の覚悟を甘く見ていたか。それはそれで面白い。この際、完膚なきまで叩き潰してやる。レオナは牙を剥き出し獲物に噛みついた。



4/6ページ