さぁ、戦いの火蓋が切られました!

さぁ、戦いの火蓋が切られました!・3




 ジャックは授業をサボった。いや、サボらずにはいられなかった。あの後の悲惨さといったらたまらなかった。今日は部活動もできやしない。それほど身体が辛い。
 でも、あのままレオナの部屋に居れば二人が戻って来た後大変なことになるのは経験済みだ。だから、無理して学校に登校した。といっても、教室は言っていないし授業は一つも出ていないが。
 植物園にも行かずに学園の裏手の森でジャックは一人横になる。
 結局、アズールから貰った薬は水に溶けてしまってダメになってしまった。
 せっかく対価云々の話もでなかった薬なのにと思いながら溜息をついて目を閉じると――。

「あ! ウニちゃんじゃん!」

 げっ、と心の中で声を出しながら重い瞼を上げる。すると、想像していた声の持ち主とは別にもう一人いて顔を顰めた。

「おや。起こしてしまいましたか?」

 フロイドとジェイドが覗き込んでいた。
 アズールよりも厄介な男たちの登場にジャックは目尻を吊り上げ勢いよく起き上がるが――。

「ぐぁっ」

 勢いよく起き上がったために身体中至るとところが痛み出す。
 胎を抑えながら呻いていると背中を大きな手で擦られる。だが、そこも傷がたくさんあり思わず身体が跳ねると同時に呻く。

「大丈夫ですか」

 顔を覗き込んできたのはジェイドだった。あのときのアズールと同じでいつもの胡散臭い雰囲気がない。妙に優しく聞こえるのはきっと疲れているせい。

「ウニちゃん、めっちゃ血の匂いすんだよね」

 ジェイドとは反対側からする声にのろのろそちらを見る。するとフロイドがしゃがんでジャックを見ていた。その目は心配とかなく探るようなものだった。
 それに警戒すると本人は気にすることもなく「ま、それ以外もすっけど」と口にする。血以外の匂いには見当がついている。あの二人はこれでもかとジャックに塗りたくるから。でも、そんなの獣人属とかこの二人のように人魚などでなければ意味がないのに。
 少し晴れていた気持ちが重くなりかけたときだった。
 身体が強い力で押し倒された。普段であれば反応できただろうそれもジャックの身体は疲れ切っていた。対抗することもできず再び空を見上げることになった。だが、見上げた先にある空はなかった。
 見上げた先には金色に光る瞳が二つあった。

「ッ」

 光る瞳に思わず昨日の二人が頭を過り喉が引き攣る。

「わ、よっわ」

 「つまんなぁい」と言いながらも右の瞳を光らせるもつフロイド。

「仕方ありませんよ。ジャックくんは今お疲れなんですから」

 「ねぇ」と同意を求めるのは左の瞳を光らせるジェイド。
 獲物を狙っているようでも、そうでもない金色の瞳に妙に安心する自分に少し驚く。むしろ、その瞳を見ていると妙な眠気がやって来る。

「ぇ? ウニちゃん、寝るつもり?」
「まぁ。僕らが声をかける前にひと眠りしそうでしたしね」
「そっかぁ。まぁ、じゃあ。寝たら?」

 言って大きな手が頭を撫でる。きっとフロイドのものだろう。それに瞼が自然と落ちていく。
 一体、二人は何しにきたのだろうか。というか、フロイドがサボるのはジャックも見たことがあるがジェイドと二人というのが珍しい。いや、もしかしてもう放課後なのかもしれない。ならモストロ・ラウンジで働く時間ではないか。
 以前のアズールの行動もよく分からないが今日の双子の行動も意味が分からない。
 分からないがジャックは深く考える前に意識を静かに落とした。それは久々に迎えた穏やかな眠りだったかもしれない。



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