デートの約束はしっかりと

デートの約束はしっかりと・4



「あの先輩、アズール先輩とフロイド先輩がどっかいっちまったんすけど」
「構いませんよ」

 上品に微笑むジェイドにジャックは「まぁ確かに」と思う。ジェイドが立ち止まった大きな花屋にジャックも興味があったため入ることになったが二人とすっかりはぐれてしまった。はぐれるほどではないと思ったがどうやら魔法で拡張されているらしい。

「実はジャックくんにかねがねお聞きしたいことがありましてね」
「なんすか」
「サボテンです」

 周りがほぼグリーンの世界になったフロアでジェイドが長い指でちょこんと指した。サボテンコーナーといってもいい場所にジャックも目が輝く。

「すげぇな。俺もこれだけ揃ったサボテンコーナー初めてだ」
「ふふ。よかった。実は僕もジャックくんのサボテンを見ていて興味が湧きまして」
「へぇ。でも、あんたなら自分で選べそうだけどな」
「有識者の意見も欲しくて」

 有識者と言われてジャックは素人であることは変わらない。寧ろ、一学年上で山を愛する会という同好会を作っているジェイドの方が有識者のような気もする。だが、態々頼られたのだから、と展示されているサボテンを見ていると懐かしい品種を見つけた。思わずその懐かしさに手に取ると――。

「何かありました」
「あ、っと」

 ぬるりと隣に立ったジェイドに驚きながら手に取ったサボテンを見せる。「おやこれは」という言葉にジャックはやっぱりと苦笑する。

「知ってるみたいっすね」
「ええ。サボテンを育てる初心者におすすめとありました」
「っす。俺もこれから育ててみたんです」

 「懐かしい」と零せば手元にあったサボテンが視界から消える。パッと消えた方を見ればやはりジェイドが手にしていた。しげしげと見つめながらこっちを見て切れ長の目尻を下げて「これにします」と告げる。

「え。そんな簡単にいいのかよ。先輩ならもう少し上級者向けのできそうじゃないか?」
「ふふ。僕のことそのように見てもらえるのは嬉しいですが初心者であることは変わりませんし」
「けど」
「いいんですよ、ジャックくん。それにあなたが育てたサボテンを僕も育ててみたいんです」

 そう言ってジェイドがサボテンを見つめる。その姿を見てジャックは少し擽ったくなった。



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