デートの約束はしっかりと

デートの約束はしっかりと・3



「ジャックさん。少しいいですか」
「なんだ、アズール先輩」

 呼ばれてアズールがちょいちょいと手招く本棚へと向かう。こういうときは大きな身体よりも長く豊かな尻尾が本に当たらないようにするのが中々至難だ。尻尾を気にしながらアズールの場所まで行く。

「大変そうですね」
「まぁな」

 くすっと笑うアズールに溜息を尽きながら「なんだ」ともう一度尋ねる。すると、アズールが手にしていた二冊の本をジャックに差し出した。その本はどちらとも目を引くほど煌びやかな装丁をしていた。そして、その煌びやかな本はジャックもよく知っている本だった。

「懐かしいな。それ俺の故郷発祥の童話っすよ。へぇ、この国にもあるのか」
「ええ。僕も偶然見つけましてね」

 キラキラ綺麗だったので、とまるでフロイドのような言い回しに笑いながらジャック自身も覚えがあった。

「俺も子どもの頃そう思って手に取ったっす。そういえばヴィル先輩もそんなこと言っていたな」
「おや。あのヴィルさんも」
「あ」

 にやりと口角をあげるアズールにしまったと思う。でも、彼はすぐに口角を降ろして「弱みなんて思いません」と答えた。それに胸を撫でおろしながら懐かしい二冊の本を見る。

「どの国でも派手な装丁なんだな」
「物語に出て来る呪いの象徴である魔法の薔薇や野獣が住んでいる城が荘厳だったからでしょう」
「へぇ。あんたも知っているのか」

 意外だなと見ればアズールが少し得意げな顔で「様々な言語で読みましたから」と言う。それにまた意外だった。ジャックだっていくら故郷の童話だからといって読んだことはない。

「そんなに好きなんすか?」
「だって、貴方の故郷の本ですから」
「俺の?」
「ええ」

 どういう意味だ。アズールの発言の真意を探るように深海の瞳を見つめているとすぐに逸らされてしまった。そして、よく見なくても分かるほどアズールの白い頬が薄らと赤く染まる。

「薔薇の王国版も購入しようと思いまして、どちらがいいか一緒に見てもらいませんか」
「え、ああ。いいっすよ」

 紛らわされたような雰囲気もしたがそれ以上踏み込まずアズールと一緒に本を選んだ。そして、最中に珊瑚の海で伝わる童話の本を勧められてジャックは購入することになった。



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