星に煌めきを戻す方法

星に煌めきを戻す方法・4



 ぴちょん、ぴちょん、と水滴が垂れる音が部屋に木霊する。そこはまるで地下実験室のようなところだった。そんな場所がナイトレイブンカレッジのどこに――なんてここは悪知恵の働く学生が多く在籍し卒業していっている。こうした禁忌めいた部屋など探せば山ほど出て来る。それを学園が把握しているか否かはわからないが。

 さて、その部屋にいるのは丸い耳を持つ高身長の男、大きくて丸い耳を持つ細身の男、さらに蛇のようなしなやかさを持つ男がいた。いや、一人は男というにはちょうどいい年齢だが他はまだ幼さを色残す青少年と言っていい年頃だ。
 ただ、哀れな程ずぶ濡れになって縛られている男からしたら大人だろうが子どもだろうがこの三人に恐怖を抱いていた。




「ジャミルくん、ご迷惑をおかけしましたッス」
「いや、俺たちにも関係することだったからな」

 ラギーは項を手で押さえながらジャミルに頭を下げる。ジャミルは首を緩く振って気にするなと言う。男の制服についている鈍く曇るスカラビア寮の寮章を忌々しく睨む。
 レオナは二人のやり取りを気にする気もなく美しい玲瓏双眼を男に向けていた。

「まさかこんなところにドブネズミがいるなんてなぁ。ここの警備もざるだな」
「そうですね。というか、退学時に制服を確認しなかったのでしょうか」
「してねぇからこうなったんだろう」

 ジャミルの言葉にレオナの美しい瞳が獰猛になっていく。それを相棒たるラギーが怖い、怖いと思いながらも男に同情することはなく冷ややかに静観する。さらに、レオナとラギーの様子を見てあのまだ幼さを残す狼を思い出す。

 存外可愛がられていたんだな、と。自分たちがあのとき手を差し伸べなければもう少し早く解決していたのかもしれないとさえ思った。ただ、あのとき、ジャックと仲のいい寮生が助けてくださいと泣いて懇願してきたから。だから、寮生の願いならと彼に手を伸ばした。でも、今は寮生と同等というわけではないけれど可愛い後輩だ。

「呪いまで使って随分なことだ」

 レオナはブレスレット放り投げる。カンと無機質な音を立てる輪っか。それはかつて呪いを宿せる魔道具だったそれはもうただのガラクタとなっていた。

「で、あいつに手を出してどうするつもりだったんだ?」

 ジャミルはレオナから発せられる狂暴と言える空気に鳥肌が立った。初めて会った後に調べたがこの人は王族で夕焼けの草原の当代国王の王弟。こんなものを飼おうとしている彼の国に眩暈さえ覚える。

「ぁ、あの、狼さえいなければ! 貴様を失脚させる口実が出来たのにッ!」

 ラギーは男の発言に「あ~あ」と諦めに似た愉快な声を出した。ジャミルは男の終わりに目を伏せる。

「ハッ。そうか、そうか、じゃあ、もういいよな」

 時間の無駄だ、と言わんばかりに彼の手のひらに高密度の魔力が集まっていく。それを見たラギーは顔を歪めて退散するような足取りで扉に向かう。ジャミルも同じく扉に向かって歩き出す。

「あのネズミ、馬鹿っすねぇ~」
「同感だ」

 というか頭が悪い。ラギーはあの計画が成功したか否かでレオナを失脚など馬鹿らしい。あれ程度の頭しか頭が回らない奴の頭なんざきっともう国で生きていないだろう。

「ちいせぇ奴ら」

 あの国もう駄目なんじゃねぇかと古い慣習に縛られる故郷を頭に浮かべた。


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