狼独り占め日
ラギー×ジャック
「レオナさん、来月の四月十八日の日曜日休んでも構いまわないッスよね」
「あァ?」
決定事項のように休暇を告げるラギーはレオナを見ることなくキーボードを叩いていた。さらに、すぐにタブレットを手に取ってトントンと何かを開いてまた気ボードを打ち始める。その傍らでは魔法によって自動で動く羽ペンが小刻みに動いている。
彼の完璧な仕事力を見ながらレオナは柳眉な片眉をあげて「何だいきなり」と返す。レオナの返しに垂れ目の灰色がかった青い瞳を一瞬こちらに向けてまたディスプレイに戻した。
「オレの誕生日ッス。だからジャックくんと一日過ごそうかと思って」
「却下」
「はぁ? なんでッスか」
目を細めて不服を申すラギーにレオナは手元の資料に目を向けて「ジャックは置いてけ」と告げる。
「補佐官が二人もいなくちゃ話にもならねぇ」
「あのね。レオナさん、オレは誕生日なんスよ。しかも、誕生日は日曜日」
「別にかまわねぇでしょ」と告げるラギーはどうやらジャックと誕生日を過ごしたいようだ。つまり、誕生日プレゼントにジャック本人を寄越せという意味だ。だが、レオナは断固拒否の姿勢を貫く。
「駄目だ。それにプレゼントならもうやっただろ」
「報酬含めたバイクのことはプレゼントって言わないッス! そもそも! 誕生日に恋人と過ごしたいって思うの考えればわかるっしょ!」
グルと生意気に唸るラギーに同じくレオナも唸り返す。
「テメェだけの恋人じゃねぇこと忘れんなよ」
「だから! 毎年あんたにプレゼントしてるっしょ!」
これにレオナは鼻を鳴らして「で?」と煽るように返す。ラギーの唇の端が引き攣り始めた。昔より気が短くなったんじゃねぇかと思いながらレオナは座り心地のいい椅子にもたれかかる。
ジャック・ハウルというのはレオナの四つ年下の後輩で、ラギーのひとつ年下の後輩だ。現在はレオナの警備部門を担っている優秀な狼の獣人属の補佐官だ。ついでに、レオナの恋人でもあって、ラギーの恋人でもある可愛い狼だ。
三人の関係を諭す理観なんてものは学生時代にとっくのとうに捨てている。ちなみに、生涯に一人を望むジャックの固定概念も時間をかけて捨てさせた。いや、捨てるように追い込んだが正しいが今はどうでもいい話だ。
とはいっても、この三人の恋人関係は非常に脆い。なにせレオナもラギーもジャックの唯一になりたくて抜け駆けのし合いをするくらいだ。でも、その中でこの関係に落ち着いているのは可愛いジャックが選べないと嘆くから仕方なく共有しているのだ。だから、といって引くレオナでもラギーでもないこうした自分にとって特別な日はお互いジャックを独占したくてたまらない。いや、嘘だ。本当は自分だけのモノにしたくてたまらないのだ。その欲望がこうした日に強くなってしまう。
ラギーの強い視線にふぅとレオナは息をついて耳の根元を掻く。
「しかたねぇな」
「いや、しかたなくねぇんで」
半眼のラギーを見てレオナは背もたれから背中をはがし取り机に肘をついて口角を上げる。途端にラギーの顔が歪めたがどうでもいい。
「おい。見返りはなんだ」
「んなの、あんたの誕生日にッスよ」
「バカ言え。俺の誕生日は国を挙げての宴だ」
堪能できるのは夜だけだと言えばラギーは舌打ちをして「次の日休暇にさせますよ」と言う。でも、それだけじゃ足りない。レオナは顎を擦って口を開く。
「どうせハメどうすんだろ? そろそろ新作が欲しくてな」
「うわっ。絶対にヤダ」
露骨に顔を顰めるラギーにレオナは「ふぅん、いいのかよ」と言って傍らに置いたスマホを手に取る。それは公用ではなくレオナがプライベートで使っているスマホだ。そして、お宝ファイルもとい動画や静止画があるスマホだ。
長い指でトントンと画面を打ちラギーの同じくプライベート用のスマホにある静止画を送る。ラギーは怪訝な顔のままプライベート用のスマホを開いて送られたモノを見て舌を打った。
「サイアク」
「でも、見ただろ?」
くくと喉を震わせて笑えばラギーは「あーくそっ」と前髪を掻き乱してからレオナを睨む。
「わかったッス。でも、レオナさんの誕生日のときもくださいよ」
「そんときはテメェもだかんな」
「……ハーイ、ハイ! わかりましたッス!」
ラギーはやけくそ気味に返事をしながらも器用に指を動かしていた。どうせレオナが送った静止画を保存しているのだろう。
レオナは再び背もたれによりかかり新作が増えるだろう日を待ち望んだ。ついでに、ちょっとラギーとジャックへの仕事を増やしてやった。
◆ ◆ ◆
四月十八日。ラギーは二十数回目の誕生日を迎えた。そして、この日を迎える日まで仕事を押し付けてきたレオナから受けた傷をジャックの耳と尻尾で癒されていた。
「あの、ラギー先輩?」
遠慮がちの声は初めて出会った頃よりもひとつ、ふたつくらいは低くなった気がする。それもそうだ。ジャックはレオナとラギーを追いかけて故郷を捨てこの国にやって来たのだ。レオナのお気に入りだけの男と舐められないようにジャックは寮長時代よりも苦労しただろう。でも、おかげで今はジャックの性格もあるが誰よりも慕われているし狙われている。獣人属は人魚や妖精程ではないが性に大らかな方だ。故に性別なんて気にしていない部分もある。男にも女にも狙われてラギーの番いは大変なのだ。
牽制するためにべったりと匂いを今日も着ける。でも、その匂いに興味をそそられて図太く粉をかける奴らもいるのだから気が抜けない。
「ラギー先輩。今日は一日中屋敷で過ごすんですか?」
「うん。その予定だったけど……どこか行きたいところあった?」
身体を上げて精悍な顔を覗き込む。相変わらず綺麗な透き通った瞳をしているジャックの瞳。宝石のようだなと思いながらこの間自分が作ったブローチを思い出す。デザインは全然別で規模も違うがレオナも同じ宝石で作っていたから笑った。だが、本当に美しいのだ。ジャックの瞳はいつでも何時でも。
「ラギー先輩が行きたいならと色々考えていただけっす」
「マジで~ありがとう。でも、ごめんね。今日は一日屋敷がいいかな」
「いえ。構いません」
気にしないでください、と大きな手でラギーの頭を撫でるジャック。以前よりも厚くなりゴツゴツした手。その大きな手は誰かを守るために存在し、慰めるために存在し、縋るために存在する。
いつが最後だったろうか。この大きな手に背中を傷つけられたのは。
「ジャックくんが調べてくれたところは今度デートで行こうね」
絶対にレオナさんは抜きで。お互い抜け駆けし合うのがこの脆い関係だ。だから、お互い邪魔し合うのだ。でも、レオナもラギーも――たぶんジャックもこの関係を愉しんでいる。傍から見ればなんて酷い関係だと思われても三人が愉しんでいるだから誰も何も言わせない。
「今日は一日屋敷に居て――つーか、ベッドでシようね」
「ぁ、あ~、やっぱりそっちっすか」
「そーだけど。え、なにイヤなの」
恋人からの拒否は流石に鋼の心を持ったラギーでも傷付く。けど、それは杞憂のようでジャックはブンブン頭を振った。
「違うっす。どっちかわからなかったんで、あの、あー、その、準備は一応しておいたんで」
気はずしげに目元を染めるジャックに込み上げる感情は愛情か。そうだ。間違いない。
「もー、ジャックくんったら本当にいい仔だねぇ~~」
ぐしゃぐしゃに髪を掻き乱す。それにジャックはわかりやすく反応する。
「ちょ、ガキ扱いはやめてくださいっ!」
「してないって~」
ガキ扱いしていたらこんなことしないっしょ、と心の中で囁き照れて頬を赤く染める顔を掴んで薄い唇に唇を重ねた。
ジャックの身体がビクッとわかりやすく跳ねるけど拒否することはない。許されているのだと思うと込み上げるのは優越感。誰に対してといえばジャックを手に入れられないのに粉をかけ続ける奴らだ。
唇を食んで角度を変えてキスを深くしていく。本当に随分慣れたけれどこれが自分だけの作品ではないのが腹立たしい。あの百戦錬磨の獅子の力もあってこそなのがありがたいようなありがたくないような話だ。
ムカつく獅子のドヤ顔を思い出していると挿しこんだ舌がぐりっと押し返された。
なにと目の前の狼を見れば真っ直ぐにこちらを見ていた。透き通った金の瞳は僅かに苛立ちを立ち込めていた。
忘れていた。ジャックもまたラギーたちのように独占欲と嫉妬深さを持ち合わせていたのを。だから、今このとき自分以外を考えるなと言うのだろう。なんて可愛いことやら。
ごめんね、と思うように機嫌を損ねた可愛い番いの舌を撫でる。すると逃げていた舌はあっさりと絡み始めるから安心する。
可愛い、可愛いワンコくんは結構チョロい。でも、それに胡坐をかいているとすぐに噛みついていくから狼なのだ。
だからしつけは慎重に且つねちっこくしなければいけない。いまだに気の抜けない狼を相手にしているのが面倒臭いとは思わないほどには惚れこんでいた。
今日はその狼を独り占めできるのだから。じっくりと堪能しなければ。
心の中で舌なめずりをして食べ応えバッチリのジャックに噛みついた。
「おい。新作寄越せよ」
「いや、送ったじゃないッスか」
「これはジャックの寝顔だろうが!」
「事後直後の寝顔っすよ!」
後日こんなくだらないやり取りがレオナとラギーの間で行われたのだった。ちなみに三か月後にも似たようなやり取りが起こってジャックに絞られるのだった。
「レオナさん、来月の四月十八日の日曜日休んでも構いまわないッスよね」
「あァ?」
決定事項のように休暇を告げるラギーはレオナを見ることなくキーボードを叩いていた。さらに、すぐにタブレットを手に取ってトントンと何かを開いてまた気ボードを打ち始める。その傍らでは魔法によって自動で動く羽ペンが小刻みに動いている。
彼の完璧な仕事力を見ながらレオナは柳眉な片眉をあげて「何だいきなり」と返す。レオナの返しに垂れ目の灰色がかった青い瞳を一瞬こちらに向けてまたディスプレイに戻した。
「オレの誕生日ッス。だからジャックくんと一日過ごそうかと思って」
「却下」
「はぁ? なんでッスか」
目を細めて不服を申すラギーにレオナは手元の資料に目を向けて「ジャックは置いてけ」と告げる。
「補佐官が二人もいなくちゃ話にもならねぇ」
「あのね。レオナさん、オレは誕生日なんスよ。しかも、誕生日は日曜日」
「別にかまわねぇでしょ」と告げるラギーはどうやらジャックと誕生日を過ごしたいようだ。つまり、誕生日プレゼントにジャック本人を寄越せという意味だ。だが、レオナは断固拒否の姿勢を貫く。
「駄目だ。それにプレゼントならもうやっただろ」
「報酬含めたバイクのことはプレゼントって言わないッス! そもそも! 誕生日に恋人と過ごしたいって思うの考えればわかるっしょ!」
グルと生意気に唸るラギーに同じくレオナも唸り返す。
「テメェだけの恋人じゃねぇこと忘れんなよ」
「だから! 毎年あんたにプレゼントしてるっしょ!」
これにレオナは鼻を鳴らして「で?」と煽るように返す。ラギーの唇の端が引き攣り始めた。昔より気が短くなったんじゃねぇかと思いながらレオナは座り心地のいい椅子にもたれかかる。
ジャック・ハウルというのはレオナの四つ年下の後輩で、ラギーのひとつ年下の後輩だ。現在はレオナの警備部門を担っている優秀な狼の獣人属の補佐官だ。ついでに、レオナの恋人でもあって、ラギーの恋人でもある可愛い狼だ。
三人の関係を諭す理観なんてものは学生時代にとっくのとうに捨てている。ちなみに、生涯に一人を望むジャックの固定概念も時間をかけて捨てさせた。いや、捨てるように追い込んだが正しいが今はどうでもいい話だ。
とはいっても、この三人の恋人関係は非常に脆い。なにせレオナもラギーもジャックの唯一になりたくて抜け駆けのし合いをするくらいだ。でも、その中でこの関係に落ち着いているのは可愛いジャックが選べないと嘆くから仕方なく共有しているのだ。だから、といって引くレオナでもラギーでもないこうした自分にとって特別な日はお互いジャックを独占したくてたまらない。いや、嘘だ。本当は自分だけのモノにしたくてたまらないのだ。その欲望がこうした日に強くなってしまう。
ラギーの強い視線にふぅとレオナは息をついて耳の根元を掻く。
「しかたねぇな」
「いや、しかたなくねぇんで」
半眼のラギーを見てレオナは背もたれから背中をはがし取り机に肘をついて口角を上げる。途端にラギーの顔が歪めたがどうでもいい。
「おい。見返りはなんだ」
「んなの、あんたの誕生日にッスよ」
「バカ言え。俺の誕生日は国を挙げての宴だ」
堪能できるのは夜だけだと言えばラギーは舌打ちをして「次の日休暇にさせますよ」と言う。でも、それだけじゃ足りない。レオナは顎を擦って口を開く。
「どうせハメどうすんだろ? そろそろ新作が欲しくてな」
「うわっ。絶対にヤダ」
露骨に顔を顰めるラギーにレオナは「ふぅん、いいのかよ」と言って傍らに置いたスマホを手に取る。それは公用ではなくレオナがプライベートで使っているスマホだ。そして、お宝ファイルもとい動画や静止画があるスマホだ。
長い指でトントンと画面を打ちラギーの同じくプライベート用のスマホにある静止画を送る。ラギーは怪訝な顔のままプライベート用のスマホを開いて送られたモノを見て舌を打った。
「サイアク」
「でも、見ただろ?」
くくと喉を震わせて笑えばラギーは「あーくそっ」と前髪を掻き乱してからレオナを睨む。
「わかったッス。でも、レオナさんの誕生日のときもくださいよ」
「そんときはテメェもだかんな」
「……ハーイ、ハイ! わかりましたッス!」
ラギーはやけくそ気味に返事をしながらも器用に指を動かしていた。どうせレオナが送った静止画を保存しているのだろう。
レオナは再び背もたれによりかかり新作が増えるだろう日を待ち望んだ。ついでに、ちょっとラギーとジャックへの仕事を増やしてやった。
◆ ◆ ◆
四月十八日。ラギーは二十数回目の誕生日を迎えた。そして、この日を迎える日まで仕事を押し付けてきたレオナから受けた傷をジャックの耳と尻尾で癒されていた。
「あの、ラギー先輩?」
遠慮がちの声は初めて出会った頃よりもひとつ、ふたつくらいは低くなった気がする。それもそうだ。ジャックはレオナとラギーを追いかけて故郷を捨てこの国にやって来たのだ。レオナのお気に入りだけの男と舐められないようにジャックは寮長時代よりも苦労しただろう。でも、おかげで今はジャックの性格もあるが誰よりも慕われているし狙われている。獣人属は人魚や妖精程ではないが性に大らかな方だ。故に性別なんて気にしていない部分もある。男にも女にも狙われてラギーの番いは大変なのだ。
牽制するためにべったりと匂いを今日も着ける。でも、その匂いに興味をそそられて図太く粉をかける奴らもいるのだから気が抜けない。
「ラギー先輩。今日は一日中屋敷で過ごすんですか?」
「うん。その予定だったけど……どこか行きたいところあった?」
身体を上げて精悍な顔を覗き込む。相変わらず綺麗な透き通った瞳をしているジャックの瞳。宝石のようだなと思いながらこの間自分が作ったブローチを思い出す。デザインは全然別で規模も違うがレオナも同じ宝石で作っていたから笑った。だが、本当に美しいのだ。ジャックの瞳はいつでも何時でも。
「ラギー先輩が行きたいならと色々考えていただけっす」
「マジで~ありがとう。でも、ごめんね。今日は一日屋敷がいいかな」
「いえ。構いません」
気にしないでください、と大きな手でラギーの頭を撫でるジャック。以前よりも厚くなりゴツゴツした手。その大きな手は誰かを守るために存在し、慰めるために存在し、縋るために存在する。
いつが最後だったろうか。この大きな手に背中を傷つけられたのは。
「ジャックくんが調べてくれたところは今度デートで行こうね」
絶対にレオナさんは抜きで。お互い抜け駆けし合うのがこの脆い関係だ。だから、お互い邪魔し合うのだ。でも、レオナもラギーも――たぶんジャックもこの関係を愉しんでいる。傍から見ればなんて酷い関係だと思われても三人が愉しんでいるだから誰も何も言わせない。
「今日は一日屋敷に居て――つーか、ベッドでシようね」
「ぁ、あ~、やっぱりそっちっすか」
「そーだけど。え、なにイヤなの」
恋人からの拒否は流石に鋼の心を持ったラギーでも傷付く。けど、それは杞憂のようでジャックはブンブン頭を振った。
「違うっす。どっちかわからなかったんで、あの、あー、その、準備は一応しておいたんで」
気はずしげに目元を染めるジャックに込み上げる感情は愛情か。そうだ。間違いない。
「もー、ジャックくんったら本当にいい仔だねぇ~~」
ぐしゃぐしゃに髪を掻き乱す。それにジャックはわかりやすく反応する。
「ちょ、ガキ扱いはやめてくださいっ!」
「してないって~」
ガキ扱いしていたらこんなことしないっしょ、と心の中で囁き照れて頬を赤く染める顔を掴んで薄い唇に唇を重ねた。
ジャックの身体がビクッとわかりやすく跳ねるけど拒否することはない。許されているのだと思うと込み上げるのは優越感。誰に対してといえばジャックを手に入れられないのに粉をかけ続ける奴らだ。
唇を食んで角度を変えてキスを深くしていく。本当に随分慣れたけれどこれが自分だけの作品ではないのが腹立たしい。あの百戦錬磨の獅子の力もあってこそなのがありがたいようなありがたくないような話だ。
ムカつく獅子のドヤ顔を思い出していると挿しこんだ舌がぐりっと押し返された。
なにと目の前の狼を見れば真っ直ぐにこちらを見ていた。透き通った金の瞳は僅かに苛立ちを立ち込めていた。
忘れていた。ジャックもまたラギーたちのように独占欲と嫉妬深さを持ち合わせていたのを。だから、今このとき自分以外を考えるなと言うのだろう。なんて可愛いことやら。
ごめんね、と思うように機嫌を損ねた可愛い番いの舌を撫でる。すると逃げていた舌はあっさりと絡み始めるから安心する。
可愛い、可愛いワンコくんは結構チョロい。でも、それに胡坐をかいているとすぐに噛みついていくから狼なのだ。
だからしつけは慎重に且つねちっこくしなければいけない。いまだに気の抜けない狼を相手にしているのが面倒臭いとは思わないほどには惚れこんでいた。
今日はその狼を独り占めできるのだから。じっくりと堪能しなければ。
心の中で舌なめずりをして食べ応えバッチリのジャックに噛みついた。
「おい。新作寄越せよ」
「いや、送ったじゃないッスか」
「これはジャックの寝顔だろうが!」
「事後直後の寝顔っすよ!」
後日こんなくだらないやり取りがレオナとラギーの間で行われたのだった。ちなみに三か月後にも似たようなやり取りが起こってジャックに絞られるのだった。