シグナル・シグナル
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煌めくシグナル
「はぁ~い、トレイくん、いま行くよぉ~」
高い少年らしいが声が同行者らしい子に返事をしたのが聞こえた。雑踏の中どうしてだろう。耳に届いたその声に反射的に顔を向けて見えたのはナイトレイブンカレッジの制服の二人。一人は紙袋を抱えていたたぶん緑の髪で眼鏡をかけている子。そして、もう一人は鮮やかなオレンジ色の髪をした子が駆け寄っていた。
「あらあら可愛いこと」
遠目から見ても入学したばかりのピカピカの新入生なのが分かる。まだ九月の半ばだ。この狭い街でさえキラキラ物珍しいのかもしれない。そういう時期が自分にもあったな。感慨深くなりながら私はフードを深くかぶり直しフレッシュな子から背を向ける。
このときのことを私は感謝する日が来るなんてこれっぽっちも思っていなかった。
* * *
認識阻害の魔法が付与されたパーカーのフードが頭からするりと落ちてしまった。これもさっきから髪のセットを崩しに来ている強い風のせい。こんなときに輪っかの大きなピアスなんかしてくるんじゃなかった。輪っかを通る風の音が喧しくてしょうがない。でも、このお蔭で目の前の男の言葉を半分以上聞かずに済んでいる。
目の前の男を見れば私の太々しい態度が気に入らないのか眉をギュッと中心に寄せている。なによ、と腕を組み直しながら片脚に重心をかける。
「ねぇ。もう私たち終わっているのよ。今さらなんの話があるっていうの?」
私は全くないのだけれど。言外にそう伝えるのだけれど男には一切伝わらない。あからさまな溜息をついて心の中では舌を打ち鳴らす。
この男は付き合っているときも一方的なところがあった。それが嫌で早々に別れたのにこうも未練がましくされると適わない。
サッサと次の男を作っておけばよかった。でも。別れたのがちょうど年度切り替えで私自身忙しくてそれどころじゃなかった。
「君は恋人と別れたら三ヶ月以内には次の男を見つけるだろ?」
「あんたのこと好きだからとか言わないでちょうだい」
期待に満ちた言葉にうげっと顔を歪めながら食い気味に否定する。外見が良くて付き合う前の擬態が良すぎたせいか根っこが気づけなかったのは痛恨のミス。まさか進級して実習に忙しい四年生になってもメッセはウザいし、それに会いにまで来るなんてねっちこい男。
「ねぇ。もう私はあんたのこと好きじゃないの」
「僕は好きだ」
「知らないんだけど」
強風も相まって苛々してくる。さっさとこの場から去りたい。私は表通りの方を見る。
今いるのは人通りがない裏通りの入り口。ここに来るのは余程の〝通〟か〝住民〟くらいだから人通りがない。立ち止まって世間話をするのはちょうどいいけれど私には全くいい場所ではない。
「なぁ。アリア」
「気安く呼ばない――あっ」
鬱陶し気に名前を呼んで手を伸ばしてくる男から距離を取った瞬間だった。ちょうど表通りからこちらを覗いていた人が視界の端に入った。視界の端にかかったのは鮮やかなオレンジにくせのある髪だった。
パッと視線をしっかり向ける。そこにいたのはまだ少年らしく丸みのある顔をした男の子。男の子は私と目が合うと青ざめさせた。逃げようとする男の子に私は頭に過った名前を叫ぶ。
「ケイトッ! どこに行くのよ!」
逃げようとしていた男の子が「ええ!」と驚いた顔を上げた。呼んだ名前は間違っていなかったみたい。それに男の子の顔に「どーして名前知ってんの?」とデカデカと書いてあるし。可愛い反応に笑みを浮かべながら大股でケイトという少年くんに近寄る。
少年くんは私に名前を呼ばれたのにとっても驚いたのか。ありがたくその場に縫い付けられたように止まっていてくれた。
これも日頃の行いかしらと笑みを深めながら私は傍まで来ると腕を引っ張る。驚く少年くんを無視して私は男を見やる。男は目を見開いて「その子は?」と訊ねて来る。
「新しい彼氏候補よ。可愛いでしょ?」
「ぇ?」
同じ位置くらいから来る「どういう意味」の視線が来るため横を向く。横を向けば爽やかで鮮やかな若々しい緑の瞳があった。その瞳に一瞬ウィンクをしながら小声で「話し合わせて」と言ってまた男を見る。
「まだ彼氏はいないんだけれどこの可愛い子と最近お友達になってね」
「き、君は、年下興味ないだろ!」
「目覚めたのよ」
確かに年下に興味はないけれど可愛いは可愛いのよ。にしても、この状況に巻き込んだ子のことも考えれば長引くのは良くない。サッサとしないと、と腕を抱き込んだときだった。
「あ~。もしかして先輩ちゃんが言ってたしつこい人ってこの人のこと?」
甘ったるいまだ少年特有の高さを残した声。まるで分かっているというような内容に凝視しかけて何とかやめて話しを合わせた。いや、合わせてくれた少年くんの話に乗った。
「そうなの。はぁ、まさかこんなところで会うなんて」
「へぇ。まあ、先輩ちゃんって可愛いからねぇ」
「なによ。その含みのある言い方」
「へへ」
あら垂れ目だから笑うと本当に可愛いこと。にしてもなんだか妙に慣れた子ね。本当にピカピカの一年生なのかしら。世間慣れし過ぎでちょっとお姉さん心配になってくる。
「ま。そういうことよ。私は今この子を落とすのに忙しくなってきたの」
「……ウソじゃないのか」
「ハァ。嘘だろうがなんだろうが関係ないでしょ」
面倒くさい人。疲れるんだけど、と男の子に寄り掛かると隣から「あ」と声があがった。何かしらと見ればいつの間にか少年くんはスマホを弄っていた。それから私の視線を感じたのか可愛らしく八重歯を覗かせながら「見て、見て」とスマホを見せて来た。
なに、なに、と覗き込んで私は口角が上がっていくのを感じた。そのままの顔で私は男を見る。男は私の笑みに怪訝に皺を寄せる。
「ちょっとあんた本命ちゃんとはよろしくやってるみたいじゃない」
「は……あっ」
ザッと青白い顔をさらに青白くあせる男。ふふ。情報管理はもっとしっかりしなさいよ。隣から「わぁ。すごぉいラブラブ」という声が聞こえる。じゃんじゃん言いなさい少年くん。私はそう心の中で高笑いしながら腕から離れて顎を少し上げる。
「可愛い、可愛い、キャンディみたいな恋人とよろしくやっていなさいよ」
ハンと鼻で笑いながらもう一度少年くんの腕を掴む。そして、表の路地へと向かって歩き出す。後ろにいる男から何も声は上がらない。なら、これで完全に終わり。
暫く雑踏を歩き街の中心地まで来てやっと私は少年くんの腕を離す。
「あ~突然巻き込んですっごくごめんなさいね」
「うん。すぅごく面倒くさいことだったけど、お姉さんも随分罪深いんじゃない」
素直なところは何というかナイトレイブンカレッジ生らしい。これはきっと何か要求されるな。でも、それくらいのことをしてくれたもの。何でも驕ってあげる気概でいないと。
「何かご馳走するわよ」
「やった。あ、でも、その前にお姉さんはどうしてオレの名前知ってたの?」
「あ。本当にケイトで合ってたの?」
「なにそれ。もしかして一か八かだった感じ?」
「まぁね」
「なにそれぇ」ケラケラ笑うケイトという少年。何だか年上に対しても物おじしない感じと人懐っこい感じは年上にモテそう。同級生はお友だち止まりかガチで好きな子って別れそうねぇ。
「ケイトってモテるんじゃない?」
「んー。どうだろ? 告白されたことあるけど付き合ったことないかなぁ」
「あら意外」
「ミドルスクールまで引っ越しが多かったからね」
ついっと視線を逸らせてどうやら踏み込んでほしくない様子。あらあら、こういうところがまたモテそうな。これは将来化けるんじゃないかしら。
「で、お姉さんは……」
「アリアよ。アリア・ブラッドベリー」
「ちなみに貴方よりも二つ年上」指を二本立てれば目を瞬かせて「え。学生」なんて失礼な感じで驚いた。やぁね。今日は化粧も薄めだから年相応な気がするんだけれど。
「まだ誕生日も迎えていないので未成年よ」
「そうなんだぁ。へぇ。じゃ、アリアちゃん先輩って呼ぶね」
パチンとウィンクするケイトに苦笑が浮かぶ。何だか憎めない子。それからケイトが改めて自己紹介してくれた。すると、やっぱりナイトレイブンカレッジの一年生だった。
「やっぱり。まだまだ若々しいなって思ったのよ」
「ふふ。アリアちゃん先輩なにその言い方」
「だって、本当のことだ――ん?」
ポケットに入れていたスマホが振動した。何かしらと取り出して見て見れば私はあちゃったぁとケイトを見る。ケイトは目を瞬かせてどうしたのと訊いて来る。
「ちょっと戻らないと」
「ええ! 奢ってくれないのぉ?」
「お、奢る、奢るってば!」
ムスっとしたケイトを宥めながら「後日改めて」と言う。そして、私はケイトと連絡先を交換する。いつなら空いているか連絡して、と言えばケイトが「もうすぐハロウィンだね」と言う。
「確かに。なに? その日がいいの?」
「んー。いや、学校でワイワイしたいからその前で!」
「前?」
「そ! カフェとかでハロウィンの特別メニューとかあるじゃん」
それとってマジカメで上げたいなぁって可愛いことを言う。何だか本当に可愛いわ。私はわかったと頷いてスケジュールの調整に入る。
「じゃ、私からでもいいし、貴方も何か予定が悪い日は連絡ちょうだい」
「わかった! じゃ、アリアちゃん先輩、またねぇ」
「ええ。またね」
手を振って来るケイトに手を振り返して私はフードを深くかぶる。すると、さっきまで私に向けられていた視線が一瞬で迷い出す。たぶん、私のことを認識できなくなってきたのだろう。
そういえば。強風もいつの間にかなくなっている。先ほどまで気分が最悪だったけれど今はとても清々しい気分になっている。
「ふふ。いい出会いもあったからかしら」
これが私とケイトの始まり。
「はぁ~い、トレイくん、いま行くよぉ~」
高い少年らしいが声が同行者らしい子に返事をしたのが聞こえた。雑踏の中どうしてだろう。耳に届いたその声に反射的に顔を向けて見えたのはナイトレイブンカレッジの制服の二人。一人は紙袋を抱えていたたぶん緑の髪で眼鏡をかけている子。そして、もう一人は鮮やかなオレンジ色の髪をした子が駆け寄っていた。
「あらあら可愛いこと」
遠目から見ても入学したばかりのピカピカの新入生なのが分かる。まだ九月の半ばだ。この狭い街でさえキラキラ物珍しいのかもしれない。そういう時期が自分にもあったな。感慨深くなりながら私はフードを深くかぶり直しフレッシュな子から背を向ける。
このときのことを私は感謝する日が来るなんてこれっぽっちも思っていなかった。
* * *
認識阻害の魔法が付与されたパーカーのフードが頭からするりと落ちてしまった。これもさっきから髪のセットを崩しに来ている強い風のせい。こんなときに輪っかの大きなピアスなんかしてくるんじゃなかった。輪っかを通る風の音が喧しくてしょうがない。でも、このお蔭で目の前の男の言葉を半分以上聞かずに済んでいる。
目の前の男を見れば私の太々しい態度が気に入らないのか眉をギュッと中心に寄せている。なによ、と腕を組み直しながら片脚に重心をかける。
「ねぇ。もう私たち終わっているのよ。今さらなんの話があるっていうの?」
私は全くないのだけれど。言外にそう伝えるのだけれど男には一切伝わらない。あからさまな溜息をついて心の中では舌を打ち鳴らす。
この男は付き合っているときも一方的なところがあった。それが嫌で早々に別れたのにこうも未練がましくされると適わない。
サッサと次の男を作っておけばよかった。でも。別れたのがちょうど年度切り替えで私自身忙しくてそれどころじゃなかった。
「君は恋人と別れたら三ヶ月以内には次の男を見つけるだろ?」
「あんたのこと好きだからとか言わないでちょうだい」
期待に満ちた言葉にうげっと顔を歪めながら食い気味に否定する。外見が良くて付き合う前の擬態が良すぎたせいか根っこが気づけなかったのは痛恨のミス。まさか進級して実習に忙しい四年生になってもメッセはウザいし、それに会いにまで来るなんてねっちこい男。
「ねぇ。もう私はあんたのこと好きじゃないの」
「僕は好きだ」
「知らないんだけど」
強風も相まって苛々してくる。さっさとこの場から去りたい。私は表通りの方を見る。
今いるのは人通りがない裏通りの入り口。ここに来るのは余程の〝通〟か〝住民〟くらいだから人通りがない。立ち止まって世間話をするのはちょうどいいけれど私には全くいい場所ではない。
「なぁ。アリア」
「気安く呼ばない――あっ」
鬱陶し気に名前を呼んで手を伸ばしてくる男から距離を取った瞬間だった。ちょうど表通りからこちらを覗いていた人が視界の端に入った。視界の端にかかったのは鮮やかなオレンジにくせのある髪だった。
パッと視線をしっかり向ける。そこにいたのはまだ少年らしく丸みのある顔をした男の子。男の子は私と目が合うと青ざめさせた。逃げようとする男の子に私は頭に過った名前を叫ぶ。
「ケイトッ! どこに行くのよ!」
逃げようとしていた男の子が「ええ!」と驚いた顔を上げた。呼んだ名前は間違っていなかったみたい。それに男の子の顔に「どーして名前知ってんの?」とデカデカと書いてあるし。可愛い反応に笑みを浮かべながら大股でケイトという少年くんに近寄る。
少年くんは私に名前を呼ばれたのにとっても驚いたのか。ありがたくその場に縫い付けられたように止まっていてくれた。
これも日頃の行いかしらと笑みを深めながら私は傍まで来ると腕を引っ張る。驚く少年くんを無視して私は男を見やる。男は目を見開いて「その子は?」と訊ねて来る。
「新しい彼氏候補よ。可愛いでしょ?」
「ぇ?」
同じ位置くらいから来る「どういう意味」の視線が来るため横を向く。横を向けば爽やかで鮮やかな若々しい緑の瞳があった。その瞳に一瞬ウィンクをしながら小声で「話し合わせて」と言ってまた男を見る。
「まだ彼氏はいないんだけれどこの可愛い子と最近お友達になってね」
「き、君は、年下興味ないだろ!」
「目覚めたのよ」
確かに年下に興味はないけれど可愛いは可愛いのよ。にしても、この状況に巻き込んだ子のことも考えれば長引くのは良くない。サッサとしないと、と腕を抱き込んだときだった。
「あ~。もしかして先輩ちゃんが言ってたしつこい人ってこの人のこと?」
甘ったるいまだ少年特有の高さを残した声。まるで分かっているというような内容に凝視しかけて何とかやめて話しを合わせた。いや、合わせてくれた少年くんの話に乗った。
「そうなの。はぁ、まさかこんなところで会うなんて」
「へぇ。まあ、先輩ちゃんって可愛いからねぇ」
「なによ。その含みのある言い方」
「へへ」
あら垂れ目だから笑うと本当に可愛いこと。にしてもなんだか妙に慣れた子ね。本当にピカピカの一年生なのかしら。世間慣れし過ぎでちょっとお姉さん心配になってくる。
「ま。そういうことよ。私は今この子を落とすのに忙しくなってきたの」
「……ウソじゃないのか」
「ハァ。嘘だろうがなんだろうが関係ないでしょ」
面倒くさい人。疲れるんだけど、と男の子に寄り掛かると隣から「あ」と声があがった。何かしらと見ればいつの間にか少年くんはスマホを弄っていた。それから私の視線を感じたのか可愛らしく八重歯を覗かせながら「見て、見て」とスマホを見せて来た。
なに、なに、と覗き込んで私は口角が上がっていくのを感じた。そのままの顔で私は男を見る。男は私の笑みに怪訝に皺を寄せる。
「ちょっとあんた本命ちゃんとはよろしくやってるみたいじゃない」
「は……あっ」
ザッと青白い顔をさらに青白くあせる男。ふふ。情報管理はもっとしっかりしなさいよ。隣から「わぁ。すごぉいラブラブ」という声が聞こえる。じゃんじゃん言いなさい少年くん。私はそう心の中で高笑いしながら腕から離れて顎を少し上げる。
「可愛い、可愛い、キャンディみたいな恋人とよろしくやっていなさいよ」
ハンと鼻で笑いながらもう一度少年くんの腕を掴む。そして、表の路地へと向かって歩き出す。後ろにいる男から何も声は上がらない。なら、これで完全に終わり。
暫く雑踏を歩き街の中心地まで来てやっと私は少年くんの腕を離す。
「あ~突然巻き込んですっごくごめんなさいね」
「うん。すぅごく面倒くさいことだったけど、お姉さんも随分罪深いんじゃない」
素直なところは何というかナイトレイブンカレッジ生らしい。これはきっと何か要求されるな。でも、それくらいのことをしてくれたもの。何でも驕ってあげる気概でいないと。
「何かご馳走するわよ」
「やった。あ、でも、その前にお姉さんはどうしてオレの名前知ってたの?」
「あ。本当にケイトで合ってたの?」
「なにそれ。もしかして一か八かだった感じ?」
「まぁね」
「なにそれぇ」ケラケラ笑うケイトという少年。何だか年上に対しても物おじしない感じと人懐っこい感じは年上にモテそう。同級生はお友だち止まりかガチで好きな子って別れそうねぇ。
「ケイトってモテるんじゃない?」
「んー。どうだろ? 告白されたことあるけど付き合ったことないかなぁ」
「あら意外」
「ミドルスクールまで引っ越しが多かったからね」
ついっと視線を逸らせてどうやら踏み込んでほしくない様子。あらあら、こういうところがまたモテそうな。これは将来化けるんじゃないかしら。
「で、お姉さんは……」
「アリアよ。アリア・ブラッドベリー」
「ちなみに貴方よりも二つ年上」指を二本立てれば目を瞬かせて「え。学生」なんて失礼な感じで驚いた。やぁね。今日は化粧も薄めだから年相応な気がするんだけれど。
「まだ誕生日も迎えていないので未成年よ」
「そうなんだぁ。へぇ。じゃ、アリアちゃん先輩って呼ぶね」
パチンとウィンクするケイトに苦笑が浮かぶ。何だか憎めない子。それからケイトが改めて自己紹介してくれた。すると、やっぱりナイトレイブンカレッジの一年生だった。
「やっぱり。まだまだ若々しいなって思ったのよ」
「ふふ。アリアちゃん先輩なにその言い方」
「だって、本当のことだ――ん?」
ポケットに入れていたスマホが振動した。何かしらと取り出して見て見れば私はあちゃったぁとケイトを見る。ケイトは目を瞬かせてどうしたのと訊いて来る。
「ちょっと戻らないと」
「ええ! 奢ってくれないのぉ?」
「お、奢る、奢るってば!」
ムスっとしたケイトを宥めながら「後日改めて」と言う。そして、私はケイトと連絡先を交換する。いつなら空いているか連絡して、と言えばケイトが「もうすぐハロウィンだね」と言う。
「確かに。なに? その日がいいの?」
「んー。いや、学校でワイワイしたいからその前で!」
「前?」
「そ! カフェとかでハロウィンの特別メニューとかあるじゃん」
それとってマジカメで上げたいなぁって可愛いことを言う。何だか本当に可愛いわ。私はわかったと頷いてスケジュールの調整に入る。
「じゃ、私からでもいいし、貴方も何か予定が悪い日は連絡ちょうだい」
「わかった! じゃ、アリアちゃん先輩、またねぇ」
「ええ。またね」
手を振って来るケイトに手を振り返して私はフードを深くかぶる。すると、さっきまで私に向けられていた視線が一瞬で迷い出す。たぶん、私のことを認識できなくなってきたのだろう。
そういえば。強風もいつの間にかなくなっている。先ほどまで気分が最悪だったけれど今はとても清々しい気分になっている。
「ふふ。いい出会いもあったからかしら」
これが私とケイトの始まり。