シグナル・シグナル
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貴方への、君への、シグナル
ケイト相手に言い逃げできるなんてどうして思ったのかしら。そもそもどうして勢いに任せて言ってしまったのか。
自分の浅はかな発言に苛立ちながら大人しく手を引かれる。いや、ここで大人しく付いて行っているのがもはや未練がましい。同時に魔法を使って逃げ出そうとすぐに考えつかなかった自分に腹が立つ。そもそもやっぱり先ほどの自分の告白まがいの発言に今更になって腹が立ってしょうがない。
伯爵令嬢として育った自分としてはありえない過ちに自己嫌悪が増していく。
こうなるならいっそのこと適当に誤魔化してしまえばよかった。何なら自分から何でもないような態度を取って逃げてしまえばよかった。
次々と自分の取るべき行動や言動が浮かんでくる。でも、こうしてケイトから逃げられない今どうすることもできやしない。
――魔法を使ってもいいけれど……。
もう一度魔法の可能性が浮かぶけれどどれもケイトを傷つけてしまいそうできない。相手がどうでもいい男なら攻撃魔法やどんな魔法を使ってもいい。でも、ケイトは違う。どうでもいい人じゃないからできない。
――どうしてこうなっているのかしら。
ケイトも無視してしまえばいいのに。そういえば彼は私のことを「ずるい」と言った。〝ずるい〟ことをしたのは自覚している。けれど、どうしてケイトから見て〝ずるい〟と思うのかしら。
そういえばケイトは「付き合う?」と言ったのかしら。
てっきり無視されると思った。だのに、どうしてそう返したのかしら。考える暇もなくすぐに手を引かれてしまったから冷静に考える暇がなかった。どうしてケイトは「付き合う?」なんて返したのだろう。
年上とはいえ仲が良かった女友達からの告白まがいの言葉。無視して縁を切ればよかったのに。なにせ私はそれをケイトに期待していた。そうすれば自然と縁も切れると思ったから。卑怯な手だったけれど彼ならそう行動してくれると思った。
だのにケイトはこうして私の手を引いて歩いている。そもそもまだ話が終わっていないというのも不思議な話だ。何が、どう終わっていないのかとふと先ほどのケイトの戯れのような言葉が浮かぶ。
「付き合う、オレら?」
ケイトの性格からふざけてでも女の子に「付き合う?」なんて言わないはず。特に自分に気があると好きでもない限り距離を置くはず。
――好きでもない限り?
ひとつ至った考えに身体の熱が上がっていく。だが、すぐに冷静になれと自分自身に言い聞かせていると――。
「アリアちゃん」
「っ」
ケイトに声をかけられた。慌てて足を止めて周りを見渡すと公園らしいところに入っていたのに気づく。
「いつの間に」
「アハ。そんなにたくさん考え事してたの?」
「うっ」
違うとは言えず詰まると「あっち行こう」とまた手を引かれる。
私はまたそれに大人しく引かれてケイトの横を歩く。今度は周りを見ると家族連れに、友達同士に、明らか距離の近さを感じる恋人同士らしい人たちがたくさんいる。さらに木々に目を凝らすと電飾らしいものが絡みついているのが見える。
「ここイルミネーションがあるの?」
「そ! 時間早いけれど午後の3時後半くらいには始まるんだよ」
「ふぅん。マジカメ映えスポットってことね」
「そうだよ♪」と言いながらケイトがベンチに辿り着いたことを告げる。私は導かれるようにそこへ座ると、ケイトも続いて座る。
「さっきはごめんなさい」
「何が?」
「ケイトを困らせたわ」
先ほど思い至った考えをとりあえず横に置く。そして、確認に入る前に一度だけ告白まがいアレをうやむやにしようとする。私のその行動でケイトが察してくれることをまず祈る。
首を傾げるケイトは少しだけ視線を斜めに動かしてすぐに私へと戻した。それから八重歯を見せて「何も困ってないよ」と言った。そして、新緑のように鮮やかな双眸が有無を言わせぬように私を捉えた。
それに私は自分の愚かな行動に後悔しながら両手を上げた。
「降参よ。うやむやにしようとしてごめんなさい」
「いいよぉ。ま、分かるよ。アリアちゃんがそう考えるのも」
「なら」
「でもさ、やっぱり忘れられないよ」
真剣なほど真っすぐな視線に私は逸らしたくなった。でも、伯爵令嬢としての矜持がそれを許さなかった。ただまっすぐ見つめながら私は観念したように口を開く。
「ケイト。さっき言いかけてきたけれど私これでも伯爵家の一人娘よ」
「うん。わかってるけど……そんなに年下はダメ?」
真剣だった瞳が悲しそうに揺れているように見える。そんな瞳にぐらぐら何かが揺れている気がする。なんて意思の弱さ。
がんばりなさい、と自分自身に言い聞かせながら「大変でしょ」と返す。
「でも、アリアちゃんとオレの年の差って二つだよ」
「そうだけれど」
「もしかして一般家庭出身だから?」
「そ、それな」
思わず言い淀む。別に一般家庭の人を馬鹿にしているわけではない。ただ貴族制度がいまだに残り社交界という特殊な世界を渡り歩くには大変だ。ほんとうに普通のお家出身の人にとってはあの世界で渡り歩くための教養を身に着けるのは大変なのだ。
さらに言えばやっぱり私の家のことを考えれば絶対にパパラッチ的なものが付きまとう。
「ケイト。貴方が大変なだけよ」
今までの人は年上で薔薇の王国の貴族の末端だったから平気だった。最後に付き合ってあの男だって男爵家の血縁者だった。バカだったけれど。
その人たちと比べればケイトは年下だ。それも二つ。さらに一般家庭出身でもう貴族制度が廃れて等しい輝石の国の出身。付き合うだけでも大変なことは目に見えている。
「とっても大変だから付き合ってみたら嫌になるに決まってるわ」
「まぁ。大変そうだよね」
そんな軽く言うもんじゃない。もう、と私は見るとまた八重歯を覗かせて笑う。可愛らしい笑い方に彼が本気で付き合いたいのか分からなくなってくる。
「でも、そこまで深刻にならないで気軽に付き合ってみたら?」
首を傾げてなんとも気軽なケイトの言葉に私は苦笑する。
気軽って簡単に言うけれど私はきっと気軽になんて付き合えない。だって、考えて私はさっきの女の子のことを笑えなくなる。だって、私もあの子に負けず劣らずケイトのことが好きだと気付いてしまったから。
やたら自分の思考回路で将来が付きまとっていたのはそういう相手に見てしまっているから。この年齢で将来のことを考えているなんて自分でもドン引き案件。
「気軽には付き合えないわ」
「じゃあ、他の人とも真剣交際だったの?」
「そんなわけないでしょ」
ちょっと不貞腐気味なケイトに笑いながら頭を左右に振る。なら、と言いたげな双眸に私は困ったと首を傾げる。
ケイトは意外に引く気配がない。彼の性格的にありえない行動に私はどんどん困っていく。すると、それを察したようにケイトが「意外?」と話しかけてきた。
「そうね。意外。そもそも、引かないってことは……その私のこと好きってことでしょ」
「うん。好きだよ。じゃないとここまでしつこく言わないよ」
ちょっと視線を逸らしながら「好き」と言ってくれたことに嬉しくなる。
でも、とブレーキが心の中でかかる。ケイトは気軽にって言うほどからそこまでじゃないのかな。少ししたらイヤになるのかもしれない。ぐちゃぐちゃ考える自分の思考回路がもう嫌になって来る。それに自分の気持ちも重すぎるし。
仕方ないと引かれる覚悟で言うことにした。
「ケイト。あんたと気軽には付き合えないわ」
「どうして」
再び真剣な瞳に変わる。その瞳に緊張しながら口を開く。
「あんたが想像している以上に好きだから。だから気軽になんてムリよ」
これだけで伝わってくれるかなと新緑の瞳を見つめ続ける。
真剣みを帯びていた瞳がふっと緩む。それから目尻が柔いだ。
「いいんじゃない」
「い、いいんじゃないって、あんたはそういうのイヤでしょ」
「そりゃ気がない子とかは勘弁ってじゃん。アリアちゃんもそうでしょ」
それはそうでしょうけど。私はあまりにも彼らしくないことに戸惑いが生れる。でもケイトはそんなこと気にした様子がない。どうしたことか。
「どうしたの?」
「あんたらしくなくて戸惑ってるわ」
「だろうね。オレだってそうだし。けど、そうさせてるのがアリアちゃんなんだよねぇ」
目元を赤らめてちょっと恥ずかしそうなケイトに私もつられて頬が熱くなる。
なんてほんとうらしくない。こんならしくないとあっさり別れが来たっておかしくない。でも、そのあっさりとした別れもいつか今は見当もつかないけれど。
「……私は重いわ。たぶん簡単に別れてなんてあげないかも」
「いいよ」
「ほんとらしくなくて不安だわ。大丈夫?」
思わず不安になればケイトが「大丈夫だってばぁ」とへらへら笑う。
ほんとうに、ほんとうに、これで恋人になっていいのか不安過ぎて答えられない。どうしようと思ったときだった。
ケイトの新緑の瞳がキラキラと光るのが見えた。なに、と思って周りを見ればイルミネーションが点灯していた。
カラフルなイルミネーションを想像していたら黄金色の光ひとつだった。それでもキラキラと点滅も相まって美しかった。きっと夜に近づくほどにより美しさが増すんだろう。でも、その時間まで残っていられるか。
「ねぇ。アリアちゃんの門限ってまで平気?」
「19時までに帰れば平気」
「なら、まだいい?」
それはまだ一緒に過ごしたいという遠まわしのお誘い。それに縦に頭を動かして返事をすればケイトは嬉しそうに破顔する。それに私は心の中で降参した。
「ケイト。今度改めてデートしましょうね」
「え。それって」
新緑の瞳がイルミネーションの点灯以上に煌めいている気がする。見開く双眸に私は笑いかけて「よろしくね」と声をかける。それにはじけた笑みを向ける彼がより一層愛おしく感じた。
ケイト相手に言い逃げできるなんてどうして思ったのかしら。そもそもどうして勢いに任せて言ってしまったのか。
自分の浅はかな発言に苛立ちながら大人しく手を引かれる。いや、ここで大人しく付いて行っているのがもはや未練がましい。同時に魔法を使って逃げ出そうとすぐに考えつかなかった自分に腹が立つ。そもそもやっぱり先ほどの自分の告白まがいの発言に今更になって腹が立ってしょうがない。
伯爵令嬢として育った自分としてはありえない過ちに自己嫌悪が増していく。
こうなるならいっそのこと適当に誤魔化してしまえばよかった。何なら自分から何でもないような態度を取って逃げてしまえばよかった。
次々と自分の取るべき行動や言動が浮かんでくる。でも、こうしてケイトから逃げられない今どうすることもできやしない。
――魔法を使ってもいいけれど……。
もう一度魔法の可能性が浮かぶけれどどれもケイトを傷つけてしまいそうできない。相手がどうでもいい男なら攻撃魔法やどんな魔法を使ってもいい。でも、ケイトは違う。どうでもいい人じゃないからできない。
――どうしてこうなっているのかしら。
ケイトも無視してしまえばいいのに。そういえば彼は私のことを「ずるい」と言った。〝ずるい〟ことをしたのは自覚している。けれど、どうしてケイトから見て〝ずるい〟と思うのかしら。
そういえばケイトは「付き合う?」と言ったのかしら。
てっきり無視されると思った。だのに、どうしてそう返したのかしら。考える暇もなくすぐに手を引かれてしまったから冷静に考える暇がなかった。どうしてケイトは「付き合う?」なんて返したのだろう。
年上とはいえ仲が良かった女友達からの告白まがいの言葉。無視して縁を切ればよかったのに。なにせ私はそれをケイトに期待していた。そうすれば自然と縁も切れると思ったから。卑怯な手だったけれど彼ならそう行動してくれると思った。
だのにケイトはこうして私の手を引いて歩いている。そもそもまだ話が終わっていないというのも不思議な話だ。何が、どう終わっていないのかとふと先ほどのケイトの戯れのような言葉が浮かぶ。
「付き合う、オレら?」
ケイトの性格からふざけてでも女の子に「付き合う?」なんて言わないはず。特に自分に気があると好きでもない限り距離を置くはず。
――好きでもない限り?
ひとつ至った考えに身体の熱が上がっていく。だが、すぐに冷静になれと自分自身に言い聞かせていると――。
「アリアちゃん」
「っ」
ケイトに声をかけられた。慌てて足を止めて周りを見渡すと公園らしいところに入っていたのに気づく。
「いつの間に」
「アハ。そんなにたくさん考え事してたの?」
「うっ」
違うとは言えず詰まると「あっち行こう」とまた手を引かれる。
私はまたそれに大人しく引かれてケイトの横を歩く。今度は周りを見ると家族連れに、友達同士に、明らか距離の近さを感じる恋人同士らしい人たちがたくさんいる。さらに木々に目を凝らすと電飾らしいものが絡みついているのが見える。
「ここイルミネーションがあるの?」
「そ! 時間早いけれど午後の3時後半くらいには始まるんだよ」
「ふぅん。マジカメ映えスポットってことね」
「そうだよ♪」と言いながらケイトがベンチに辿り着いたことを告げる。私は導かれるようにそこへ座ると、ケイトも続いて座る。
「さっきはごめんなさい」
「何が?」
「ケイトを困らせたわ」
先ほど思い至った考えをとりあえず横に置く。そして、確認に入る前に一度だけ告白まがいアレをうやむやにしようとする。私のその行動でケイトが察してくれることをまず祈る。
首を傾げるケイトは少しだけ視線を斜めに動かしてすぐに私へと戻した。それから八重歯を見せて「何も困ってないよ」と言った。そして、新緑のように鮮やかな双眸が有無を言わせぬように私を捉えた。
それに私は自分の愚かな行動に後悔しながら両手を上げた。
「降参よ。うやむやにしようとしてごめんなさい」
「いいよぉ。ま、分かるよ。アリアちゃんがそう考えるのも」
「なら」
「でもさ、やっぱり忘れられないよ」
真剣なほど真っすぐな視線に私は逸らしたくなった。でも、伯爵令嬢としての矜持がそれを許さなかった。ただまっすぐ見つめながら私は観念したように口を開く。
「ケイト。さっき言いかけてきたけれど私これでも伯爵家の一人娘よ」
「うん。わかってるけど……そんなに年下はダメ?」
真剣だった瞳が悲しそうに揺れているように見える。そんな瞳にぐらぐら何かが揺れている気がする。なんて意思の弱さ。
がんばりなさい、と自分自身に言い聞かせながら「大変でしょ」と返す。
「でも、アリアちゃんとオレの年の差って二つだよ」
「そうだけれど」
「もしかして一般家庭出身だから?」
「そ、それな」
思わず言い淀む。別に一般家庭の人を馬鹿にしているわけではない。ただ貴族制度がいまだに残り社交界という特殊な世界を渡り歩くには大変だ。ほんとうに普通のお家出身の人にとってはあの世界で渡り歩くための教養を身に着けるのは大変なのだ。
さらに言えばやっぱり私の家のことを考えれば絶対にパパラッチ的なものが付きまとう。
「ケイト。貴方が大変なだけよ」
今までの人は年上で薔薇の王国の貴族の末端だったから平気だった。最後に付き合ってあの男だって男爵家の血縁者だった。バカだったけれど。
その人たちと比べればケイトは年下だ。それも二つ。さらに一般家庭出身でもう貴族制度が廃れて等しい輝石の国の出身。付き合うだけでも大変なことは目に見えている。
「とっても大変だから付き合ってみたら嫌になるに決まってるわ」
「まぁ。大変そうだよね」
そんな軽く言うもんじゃない。もう、と私は見るとまた八重歯を覗かせて笑う。可愛らしい笑い方に彼が本気で付き合いたいのか分からなくなってくる。
「でも、そこまで深刻にならないで気軽に付き合ってみたら?」
首を傾げてなんとも気軽なケイトの言葉に私は苦笑する。
気軽って簡単に言うけれど私はきっと気軽になんて付き合えない。だって、考えて私はさっきの女の子のことを笑えなくなる。だって、私もあの子に負けず劣らずケイトのことが好きだと気付いてしまったから。
やたら自分の思考回路で将来が付きまとっていたのはそういう相手に見てしまっているから。この年齢で将来のことを考えているなんて自分でもドン引き案件。
「気軽には付き合えないわ」
「じゃあ、他の人とも真剣交際だったの?」
「そんなわけないでしょ」
ちょっと不貞腐気味なケイトに笑いながら頭を左右に振る。なら、と言いたげな双眸に私は困ったと首を傾げる。
ケイトは意外に引く気配がない。彼の性格的にありえない行動に私はどんどん困っていく。すると、それを察したようにケイトが「意外?」と話しかけてきた。
「そうね。意外。そもそも、引かないってことは……その私のこと好きってことでしょ」
「うん。好きだよ。じゃないとここまでしつこく言わないよ」
ちょっと視線を逸らしながら「好き」と言ってくれたことに嬉しくなる。
でも、とブレーキが心の中でかかる。ケイトは気軽にって言うほどからそこまでじゃないのかな。少ししたらイヤになるのかもしれない。ぐちゃぐちゃ考える自分の思考回路がもう嫌になって来る。それに自分の気持ちも重すぎるし。
仕方ないと引かれる覚悟で言うことにした。
「ケイト。あんたと気軽には付き合えないわ」
「どうして」
再び真剣な瞳に変わる。その瞳に緊張しながら口を開く。
「あんたが想像している以上に好きだから。だから気軽になんてムリよ」
これだけで伝わってくれるかなと新緑の瞳を見つめ続ける。
真剣みを帯びていた瞳がふっと緩む。それから目尻が柔いだ。
「いいんじゃない」
「い、いいんじゃないって、あんたはそういうのイヤでしょ」
「そりゃ気がない子とかは勘弁ってじゃん。アリアちゃんもそうでしょ」
それはそうでしょうけど。私はあまりにも彼らしくないことに戸惑いが生れる。でもケイトはそんなこと気にした様子がない。どうしたことか。
「どうしたの?」
「あんたらしくなくて戸惑ってるわ」
「だろうね。オレだってそうだし。けど、そうさせてるのがアリアちゃんなんだよねぇ」
目元を赤らめてちょっと恥ずかしそうなケイトに私もつられて頬が熱くなる。
なんてほんとうらしくない。こんならしくないとあっさり別れが来たっておかしくない。でも、そのあっさりとした別れもいつか今は見当もつかないけれど。
「……私は重いわ。たぶん簡単に別れてなんてあげないかも」
「いいよ」
「ほんとらしくなくて不安だわ。大丈夫?」
思わず不安になればケイトが「大丈夫だってばぁ」とへらへら笑う。
ほんとうに、ほんとうに、これで恋人になっていいのか不安過ぎて答えられない。どうしようと思ったときだった。
ケイトの新緑の瞳がキラキラと光るのが見えた。なに、と思って周りを見ればイルミネーションが点灯していた。
カラフルなイルミネーションを想像していたら黄金色の光ひとつだった。それでもキラキラと点滅も相まって美しかった。きっと夜に近づくほどにより美しさが増すんだろう。でも、その時間まで残っていられるか。
「ねぇ。アリアちゃんの門限ってまで平気?」
「19時までに帰れば平気」
「なら、まだいい?」
それはまだ一緒に過ごしたいという遠まわしのお誘い。それに縦に頭を動かして返事をすればケイトは嬉しそうに破顔する。それに私は心の中で降参した。
「ケイト。今度改めてデートしましょうね」
「え。それって」
新緑の瞳がイルミネーションの点灯以上に煌めいている気がする。見開く双眸に私は笑いかけて「よろしくね」と声をかける。それにはじけた笑みを向ける彼がより一層愛おしく感じた。
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