レオナ
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愛おしい生命の誕生、とお前は言う
「殿下。誕生日プレゼントで何か欲しいものはありますか?」
あいつと出会って始めの誕生日を迎える二月前のことだ。一国の第二王子である俺に対して何か欲しいものとは大層なことだ。
何でもくれるのか、と返してみると困った顔をした。それはそうだ。いくら何でも名家の令嬢でも無理だろう。それでも彼女は「何でも無理ですが頑張って用意いたします」とはにかみながら言うのだ。
「なら何が欲しいか聞くんじゃねぇよ」
「一応希望がありますでしょう」
隣から顔を覗き込んできた大きな丸い目。その目に見られるとむず痒い。だから、早く逸らしてほしくて口早に「お前が選んだもんなら何でもいい」と答えた。
俺の返答に困った顔をする彼女は中々に面白かったのを覚えている。
「困りました……何でもいいということですよね」
「構わねぇよ」
うぅんと唸る彼女が俺は面白くて笑った。
そんな遠い日の一幕は今も尚続いていた。
* * *
あと数時間で自分自身の誕生を祝う宴が始まる。その前に贈物を贈りたいというので彼女に与えられている宮殿に足を向けた。
彼女の贈物のセンスは中々好みで今年はどんなものかと楽しみにしていたが――。
「俺は何でもいいって言ったがよぉ……」
目の前に現れた白い衣装には見覚えがあった。その途端身体の節々の痛みを思い出す。そして、衣装を誕生日プレゼントだという彼女を半眼で睨む。
「お前が見てぇだけだろ」
「うっ。はい、ですけど、殿下は何でもいいと仰っていたでしょう」
「言ったけどなぁ……はぁ」
去年は古代呪文語の貴重書だ。あれは中々に面白かったが今年は苦々しい思い出しかない。思わず深い溜息をついて彼女を見る。見れば申し訳なさそうな顔をしている。
「申し訳ありません。これは確かに私の完全に個人的な感情の贈物です。本命は別に用意してありますので」
「こちらはついでです」と言う彼女。そして、どこからともなく手のひら大の箱を取り出した。綺麗にラッピングされているそれを彼女が差し出す。
「レオナ殿下。お誕生日おめでとうございます。これから一年貴方様にさらなる祝福があらんことを」
聞き慣れた口上は誰よりも心に響く。そして目を伏せて言う彼女は誰よりも美しく見えた。
「ありがとよ」
とはいえ、受け取る俺の言葉はいつもこれ一つだ。差し出された箱を受け取ってリボンを解く。すると、ラッピングはあっさりと崩れた。
「へぇ。取りやすいな」
「はい。こうラッピングってまどろっこしくありませんか?」
ぐしゃぐしゃになって中々綺麗に取って置けないという彼女。それは自分には理解が出来なかったが適当に頷いておく。
「分からんでもないな」
綺麗に外れたラッピングと、リボンをテーブルの上に無造作に置く。そして、箱を開けるとなるほど確かにこちらの方が本命だ。
「バングルか……」
箱を開けるとそこには金色のバングルが収められていた。装飾は赤みを帯びた宝石がトップにあるだけのシンプルなものだった。
「殿下。バングルを持ってこちらに来てみてください」
いつの間にか彼女は太陽の日が当たる場所に立っていた。そして、珍しくはしゃいだ様子で手招いていた。レオナは招かるままにバングルを持っていく。
太陽の日は七月ということから少しだけ強い。思わず目を眇める。
「少し我慢してください……殿下。そのバングルの宝石を見てくださいませ」
「ん?」
言われてバングルに埋め込まれている宝石を見る。見下ろしてその宝石の輝きに目を瞠る。
「色が違うな」
先ほど見たときこの宝石はバイオレットだった。だが、今は違う。深い夜空を想わすナイトブルーに変わっている。太陽の光りを受けながら夜空の煌めきを閉じ込めた宝石今まで見たどの宝石と違っていた。
「この宝石、日の光の下ではこのようですと夜空のようなナイトブルーになるんですよ。で、白熱灯などのもとでは艶やかなバイオレットになるんです」
「へぇ。面白いな」
錬金術で使ったら大層なものが生まれそうだ。使わないが。
「お。角度でも色味が変わるのか?」
「はい! 少し青みが納まって中心に緑が見えますでしょう」
楽しげに話す彼女は実に可愛らしいの。だが、少し複雑な気持ちが沸き上がる。
「お前、青が嫌いなくせになんでこれ選んだ?」
「え……」
目を丸くさせる彼女は首を傾げる。
「何故ってわたくしは確かに青を好みません。けれど殿下は違いますでしょ」
「いや。そうだけど別段好きでもねぇ」
「あら。そうだったのですか。わたくしはてっきり殿下は青がお好きだからと……」
何だか素っ気ない態度になり始めた彼女に焦る。普段自分を恋い慕ってくれているだけこういう態度は慣れない。
「あ。殿下こちらの宝石、月明りでもまた色味が変わるらしいですので今宵ご覧ください」
どうしようかと考えあぐねているときに彼女から空気を換えた。今度この件はもう少し掘り下げて話そう。でなければ何だか居心地が悪いことになるばかりだ。
「あー。じゃあ。お前も一緒に見てみるか?」
一応夜の誘いも兼ねた提案だ。それに彼女は目元を薄らと赤く染める。熟れた色っぽい身体の線に、大人の女の顔立ちで初心な反応をするのだ。しかも、自分だけにしか見せないとなれば男心擽られないわけではない。
彼女のキュッと引き締まった細腰を抱き寄せる。そして、ゆらりと揺れる彼女の尾に自分の尾を絡める。途端に同じように絡めて来るので笑えて来る。
「くっくく。随分と可愛く反応するようになったな」
「な、なにがです!」
声を荒げる彼女は羞恥心で顔を真っ赤に染めている。
「悪ぃ、悪ぃ。ほら、拗ねるな」
ふいっと視線を焦っての方向に向ける彼女。それさえも愛らしくて思わず頬に口づける。だが、それでは騙されませんと言うように彼女が声を上げる。
「拗ねておりません!」
「知りません」と尻尾の逢瀬を止めた彼女が部屋の中に入っていく。
その後をすぐに追うと彼女は予想外にこちらを振り向いた。そして、困ったように微笑んだ。
「殿下。わたくしは確かに青を好みません。ですが、その宝石は殿下に似合うと一目惚れしたものです。わたくしに気になさらず着けてくださいませ」
「それにそのバングルを着ける貴方様が見たいので」と恥ずかしげに言う彼女。これに何とも言えない感情が込み上げて彼女に近づき正面から抱き寄せる。
「あ、あの殿下?」
「今日。宴が終わったら一緒に部屋に戻るぞ」
耳にそう囁けば彼女の耳がピルっと動く。それから僅かに伏せられて小さく「はい」という返事が返って来た。
そっと遠慮がちに回った腕に彼女の身体に回った腕に力を籠める。
「殿下、レオナ殿下」
「なんだ」
密やかな睦事を囁く様な声に同じ声の質で返す。
「貴方様はどうか分かりませんがわたくし――私はこの日が大好きです。私の一番愛している貴方様が生まれてくれた尊い日、特別な日です。生まれて来てくれてありがとうございます」
「愛しています」と添える彼女の綺麗な愛が身体に沁み込んでいく。
俺は今このとき去年の誕生日のときよりも確実に少しは何か満たされたような気がする。
「はぁ。お前の愛は重い」
「ふふ。申し訳ありません」
2021.1.30 一部文章修正
「殿下。誕生日プレゼントで何か欲しいものはありますか?」
あいつと出会って始めの誕生日を迎える二月前のことだ。一国の第二王子である俺に対して何か欲しいものとは大層なことだ。
何でもくれるのか、と返してみると困った顔をした。それはそうだ。いくら何でも名家の令嬢でも無理だろう。それでも彼女は「何でも無理ですが頑張って用意いたします」とはにかみながら言うのだ。
「なら何が欲しいか聞くんじゃねぇよ」
「一応希望がありますでしょう」
隣から顔を覗き込んできた大きな丸い目。その目に見られるとむず痒い。だから、早く逸らしてほしくて口早に「お前が選んだもんなら何でもいい」と答えた。
俺の返答に困った顔をする彼女は中々に面白かったのを覚えている。
「困りました……何でもいいということですよね」
「構わねぇよ」
うぅんと唸る彼女が俺は面白くて笑った。
そんな遠い日の一幕は今も尚続いていた。
* * *
あと数時間で自分自身の誕生を祝う宴が始まる。その前に贈物を贈りたいというので彼女に与えられている宮殿に足を向けた。
彼女の贈物のセンスは中々好みで今年はどんなものかと楽しみにしていたが――。
「俺は何でもいいって言ったがよぉ……」
目の前に現れた白い衣装には見覚えがあった。その途端身体の節々の痛みを思い出す。そして、衣装を誕生日プレゼントだという彼女を半眼で睨む。
「お前が見てぇだけだろ」
「うっ。はい、ですけど、殿下は何でもいいと仰っていたでしょう」
「言ったけどなぁ……はぁ」
去年は古代呪文語の貴重書だ。あれは中々に面白かったが今年は苦々しい思い出しかない。思わず深い溜息をついて彼女を見る。見れば申し訳なさそうな顔をしている。
「申し訳ありません。これは確かに私の完全に個人的な感情の贈物です。本命は別に用意してありますので」
「こちらはついでです」と言う彼女。そして、どこからともなく手のひら大の箱を取り出した。綺麗にラッピングされているそれを彼女が差し出す。
「レオナ殿下。お誕生日おめでとうございます。これから一年貴方様にさらなる祝福があらんことを」
聞き慣れた口上は誰よりも心に響く。そして目を伏せて言う彼女は誰よりも美しく見えた。
「ありがとよ」
とはいえ、受け取る俺の言葉はいつもこれ一つだ。差し出された箱を受け取ってリボンを解く。すると、ラッピングはあっさりと崩れた。
「へぇ。取りやすいな」
「はい。こうラッピングってまどろっこしくありませんか?」
ぐしゃぐしゃになって中々綺麗に取って置けないという彼女。それは自分には理解が出来なかったが適当に頷いておく。
「分からんでもないな」
綺麗に外れたラッピングと、リボンをテーブルの上に無造作に置く。そして、箱を開けるとなるほど確かにこちらの方が本命だ。
「バングルか……」
箱を開けるとそこには金色のバングルが収められていた。装飾は赤みを帯びた宝石がトップにあるだけのシンプルなものだった。
「殿下。バングルを持ってこちらに来てみてください」
いつの間にか彼女は太陽の日が当たる場所に立っていた。そして、珍しくはしゃいだ様子で手招いていた。レオナは招かるままにバングルを持っていく。
太陽の日は七月ということから少しだけ強い。思わず目を眇める。
「少し我慢してください……殿下。そのバングルの宝石を見てくださいませ」
「ん?」
言われてバングルに埋め込まれている宝石を見る。見下ろしてその宝石の輝きに目を瞠る。
「色が違うな」
先ほど見たときこの宝石はバイオレットだった。だが、今は違う。深い夜空を想わすナイトブルーに変わっている。太陽の光りを受けながら夜空の煌めきを閉じ込めた宝石今まで見たどの宝石と違っていた。
「この宝石、日の光の下ではこのようですと夜空のようなナイトブルーになるんですよ。で、白熱灯などのもとでは艶やかなバイオレットになるんです」
「へぇ。面白いな」
錬金術で使ったら大層なものが生まれそうだ。使わないが。
「お。角度でも色味が変わるのか?」
「はい! 少し青みが納まって中心に緑が見えますでしょう」
楽しげに話す彼女は実に可愛らしいの。だが、少し複雑な気持ちが沸き上がる。
「お前、青が嫌いなくせになんでこれ選んだ?」
「え……」
目を丸くさせる彼女は首を傾げる。
「何故ってわたくしは確かに青を好みません。けれど殿下は違いますでしょ」
「いや。そうだけど別段好きでもねぇ」
「あら。そうだったのですか。わたくしはてっきり殿下は青がお好きだからと……」
何だか素っ気ない態度になり始めた彼女に焦る。普段自分を恋い慕ってくれているだけこういう態度は慣れない。
「あ。殿下こちらの宝石、月明りでもまた色味が変わるらしいですので今宵ご覧ください」
どうしようかと考えあぐねているときに彼女から空気を換えた。今度この件はもう少し掘り下げて話そう。でなければ何だか居心地が悪いことになるばかりだ。
「あー。じゃあ。お前も一緒に見てみるか?」
一応夜の誘いも兼ねた提案だ。それに彼女は目元を薄らと赤く染める。熟れた色っぽい身体の線に、大人の女の顔立ちで初心な反応をするのだ。しかも、自分だけにしか見せないとなれば男心擽られないわけではない。
彼女のキュッと引き締まった細腰を抱き寄せる。そして、ゆらりと揺れる彼女の尾に自分の尾を絡める。途端に同じように絡めて来るので笑えて来る。
「くっくく。随分と可愛く反応するようになったな」
「な、なにがです!」
声を荒げる彼女は羞恥心で顔を真っ赤に染めている。
「悪ぃ、悪ぃ。ほら、拗ねるな」
ふいっと視線を焦っての方向に向ける彼女。それさえも愛らしくて思わず頬に口づける。だが、それでは騙されませんと言うように彼女が声を上げる。
「拗ねておりません!」
「知りません」と尻尾の逢瀬を止めた彼女が部屋の中に入っていく。
その後をすぐに追うと彼女は予想外にこちらを振り向いた。そして、困ったように微笑んだ。
「殿下。わたくしは確かに青を好みません。ですが、その宝石は殿下に似合うと一目惚れしたものです。わたくしに気になさらず着けてくださいませ」
「それにそのバングルを着ける貴方様が見たいので」と恥ずかしげに言う彼女。これに何とも言えない感情が込み上げて彼女に近づき正面から抱き寄せる。
「あ、あの殿下?」
「今日。宴が終わったら一緒に部屋に戻るぞ」
耳にそう囁けば彼女の耳がピルっと動く。それから僅かに伏せられて小さく「はい」という返事が返って来た。
そっと遠慮がちに回った腕に彼女の身体に回った腕に力を籠める。
「殿下、レオナ殿下」
「なんだ」
密やかな睦事を囁く様な声に同じ声の質で返す。
「貴方様はどうか分かりませんがわたくし――私はこの日が大好きです。私の一番愛している貴方様が生まれてくれた尊い日、特別な日です。生まれて来てくれてありがとうございます」
「愛しています」と添える彼女の綺麗な愛が身体に沁み込んでいく。
俺は今このとき去年の誕生日のときよりも確実に少しは何か満たされたような気がする。
「はぁ。お前の愛は重い」
「ふふ。申し訳ありません」
2021.1.30 一部文章修正
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