レオナ
Name Change
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我が儘になって甘えて
許嫁から婚約者へと肩書が変わり、さらに恋人という関係も付与されたレオナ様と私の関係。何か大きく変わったことはないけれど以前よりも接触が増えたように思える。さらに以前はホリーデーの長期休暇しか会うことができなかったのが今は休みの日に会うように予定を調節してくださるようになった。
今日も私のため、と学園の休みに態々帰って下さった。
私のためという名目にだいぶ嬉しい。とはいえ、あまりはしゃぎ過ぎてもはしたない。何とかあまり尻尾に感情を出さないようにランチを終え王宮の庭園を散策しているときだった。
「名前」
「え」
足を止めたと思ったら突然の脈略のない言葉に反応に困ってしまった。〝名前〟一体何のことでしょうか。そもそも私の名前を指しているのか、レオナ様自身のことを指しているか判別がつかない。とりあえず「レオナ様?」と呼んでみるとギュッと眉間に皺が刻まれてしまった。
「私の名前のことでしたか?」
「ちげぇ」
「なら……」
どういう、と言う前にレオナ様が手を握って歩き出してしまった。何か言うべきかと歩く横顔を見ても不機嫌であることしか分からない。
「レオナ様の意図を汲むことができず申し訳ありません」
「それだ」
「え」
足を止めて大きな手が離れたと思うとレオナ様が私の目の前に立った。それから不機嫌といか拗ねたときの顔をしながら「名前の呼び方」と言う。私は小さく「呼び方」と聞き返す。
「いつまで俺のことを様付けで呼ぶつもりだ」
「え。ですが、私は」
「学園じゃ俺のことを呼び捨ての奴もいる」
学園内は学び場ですもの。王族だの貴族だの関係はない。じゃあ、私とレオナ様が平等じゃないといえばそうだ。レオナ様は夕焼けの草原の第二王子殿下。私は有力家門の令嬢とはいえ王族ではない。王族の血は流れているけれど。
「人前ならそれでもいい。けど、二人きりのときくらい呼び捨てでも構わねぇ。つか、ガキの頃から何遍も言ってんだろ」
確かに幼い頃から呼び捨てしてよいと本人に言われている。とはいえ、幼い頃はいつ引引き離されるか分からなかったからできなかった。許嫁となってもいつ解消されるか分からなかった。そんな曖昧な期間を経て今ようやく婚約者であり恋人となった。それでもやはり昔からの習慣が直すのは難しい。
「その、このように幼い頃から呼んでいますし」
「人前では構わねぇつったろ……二人きりのときくらいレオナって呼べよ」
「っ」
再び手を取られて甲が指で擦られる。これも変化のひとつだ。レオナ様が私に甘えるようになったのだ。べったりという訳ではないそれでもこうして命令ではなく強請るのも甘えの一種。だが、呼び捨ては流石に躊躇してしまう。
「呼び捨てはご勘弁を」
「……なら、どう呼んでくれんだよ」
そんなの。もう呼び捨てではなく。それでも気軽に呼んでほしいとなるとひとつしかないではないでしょうか。
「レオナさん……」
一気に親しみが出て距離が縮んだ気がする。じわっと頬に熱が集まっていくのを感じながら様子を窺う。そこにはじっとサマーグリーンの瞳で見て来るレオナ様がいた。
「お気に召しませんか?」
「ふぅ。まぁ、及第点だ」
「あ」
握られた手が引かれてそのままレオナ様の腕の中に飛び込む。ヒールの分さらに近く鳴る頬の触れ合う近さに心臓が爆ぜそうになる。気恥ずかしさに逃げようとする身体は瞬く間に逞しい腕に拘束されてしまった。より濃く鼻を擽るレオン様の香りにまだ慣れずに頭がクラクラしてくる。
「そろそろ慣れろよ」
「ぁ、そ、そんな難しいことを言わないでくださいませ」
私の首筋に顔を埋めて来るレオナ様に身をよじるけれど逃げられない。家で武術を習っていてもこうされるとひとつ意味をなさないことに悲しくなる。それはそうか。このお方は悪漢ではなく私の婚約者で恋人なのだから。
それに恥ずかしいだけでは嫌ではないのだから。身体に入っていた力が抜けて私もレオナ様の背中に腕を伸ばす。ついでに少し大胆に尻尾も伸ばしてみるとあっさりあちらの尻尾に捕まってしまった。
するり、するりと絡まる尻尾に付け根からぞくぞく背中に得も言えぬものが伝う。これは流石に行けない。
「ぁの、レオナさん、その」
「なんだよ」
くくっと喉を鳴らして笑うレオナ様はどうやら確信犯のご様子で。いくら人払いされているだろうとはいえお人が悪い。
「意地の悪いお方ですわ」
「怒んなよ。続きは別のところでする」
「別のところ?」
顔を上げて頬を撫でられた。何をなさいますのと意地悪く笑うレオナ様の顔を見る。というより、そもそも今の行為に続きなど――あ。
辿り着いた答えにまた顔が熱くなる。まったく。最近最終的にその流れになることが多い。とはいえ、私も拒まない故に致すのだから文句など言えまい。
「ちゃんと誰も来ませんの?」
「来ねぇよ」
「ならよろしいです」
「ん」
耳元にキスをされてくすぐったくて耳を伏せる。
何だかんだ言って私もレオナ様としたいから。婚前交渉なんてと王族関係者や高官は言うかもしれない。けれどやっぱり好きな人とは深くつながりたいものだ。
「私も随分と欲深くなったものです」
「フン。今まであまり欲がなかったんだ。別に構わねぇだろ」
そういうこの方もあまり欲がないお方だ。だからこそ、きっとこの方に甘えられるのも求められるのも嬉しく特別に思うのだろう。
「レオナさま、ぁ、えっとレオナさんも、も、もっと欲深くても構いませんよ」
「……へぇ。面白れぇこと言うな」
「面白くもなんもありませんわ」
「いや。面白れぇよ。第二王子にそんなこと言うなんて」
面白れぇとまた高らかに笑うレオナ様。けれどそう清々しく笑うレオナ様に私も自然と頬が緩む。
「レオナさんもそのように太陽の下がお似合いです」
「ハッ。よく言うぜ」
前は皮肉ったようなその言い方も今では楽し気で私は嬉しい。これならば部屋に籠るのも惜しいのだけれど――。
「じゃ、行くぞ」
「ぁ、はい」
ぐいっと腰を抱き寄せられて艶やかに囁かれた。やっぱりこれから部屋で籠りなさるようで。とはいえ、私はそれを断ることも、断るつもりもないので頷いた。
許嫁から婚約者へと肩書が変わり、さらに恋人という関係も付与されたレオナ様と私の関係。何か大きく変わったことはないけれど以前よりも接触が増えたように思える。さらに以前はホリーデーの長期休暇しか会うことができなかったのが今は休みの日に会うように予定を調節してくださるようになった。
今日も私のため、と学園の休みに態々帰って下さった。
私のためという名目にだいぶ嬉しい。とはいえ、あまりはしゃぎ過ぎてもはしたない。何とかあまり尻尾に感情を出さないようにランチを終え王宮の庭園を散策しているときだった。
「名前」
「え」
足を止めたと思ったら突然の脈略のない言葉に反応に困ってしまった。〝名前〟一体何のことでしょうか。そもそも私の名前を指しているのか、レオナ様自身のことを指しているか判別がつかない。とりあえず「レオナ様?」と呼んでみるとギュッと眉間に皺が刻まれてしまった。
「私の名前のことでしたか?」
「ちげぇ」
「なら……」
どういう、と言う前にレオナ様が手を握って歩き出してしまった。何か言うべきかと歩く横顔を見ても不機嫌であることしか分からない。
「レオナ様の意図を汲むことができず申し訳ありません」
「それだ」
「え」
足を止めて大きな手が離れたと思うとレオナ様が私の目の前に立った。それから不機嫌といか拗ねたときの顔をしながら「名前の呼び方」と言う。私は小さく「呼び方」と聞き返す。
「いつまで俺のことを様付けで呼ぶつもりだ」
「え。ですが、私は」
「学園じゃ俺のことを呼び捨ての奴もいる」
学園内は学び場ですもの。王族だの貴族だの関係はない。じゃあ、私とレオナ様が平等じゃないといえばそうだ。レオナ様は夕焼けの草原の第二王子殿下。私は有力家門の令嬢とはいえ王族ではない。王族の血は流れているけれど。
「人前ならそれでもいい。けど、二人きりのときくらい呼び捨てでも構わねぇ。つか、ガキの頃から何遍も言ってんだろ」
確かに幼い頃から呼び捨てしてよいと本人に言われている。とはいえ、幼い頃はいつ引引き離されるか分からなかったからできなかった。許嫁となってもいつ解消されるか分からなかった。そんな曖昧な期間を経て今ようやく婚約者であり恋人となった。それでもやはり昔からの習慣が直すのは難しい。
「その、このように幼い頃から呼んでいますし」
「人前では構わねぇつったろ……二人きりのときくらいレオナって呼べよ」
「っ」
再び手を取られて甲が指で擦られる。これも変化のひとつだ。レオナ様が私に甘えるようになったのだ。べったりという訳ではないそれでもこうして命令ではなく強請るのも甘えの一種。だが、呼び捨ては流石に躊躇してしまう。
「呼び捨てはご勘弁を」
「……なら、どう呼んでくれんだよ」
そんなの。もう呼び捨てではなく。それでも気軽に呼んでほしいとなるとひとつしかないではないでしょうか。
「レオナさん……」
一気に親しみが出て距離が縮んだ気がする。じわっと頬に熱が集まっていくのを感じながら様子を窺う。そこにはじっとサマーグリーンの瞳で見て来るレオナ様がいた。
「お気に召しませんか?」
「ふぅ。まぁ、及第点だ」
「あ」
握られた手が引かれてそのままレオナ様の腕の中に飛び込む。ヒールの分さらに近く鳴る頬の触れ合う近さに心臓が爆ぜそうになる。気恥ずかしさに逃げようとする身体は瞬く間に逞しい腕に拘束されてしまった。より濃く鼻を擽るレオン様の香りにまだ慣れずに頭がクラクラしてくる。
「そろそろ慣れろよ」
「ぁ、そ、そんな難しいことを言わないでくださいませ」
私の首筋に顔を埋めて来るレオナ様に身をよじるけれど逃げられない。家で武術を習っていてもこうされるとひとつ意味をなさないことに悲しくなる。それはそうか。このお方は悪漢ではなく私の婚約者で恋人なのだから。
それに恥ずかしいだけでは嫌ではないのだから。身体に入っていた力が抜けて私もレオナ様の背中に腕を伸ばす。ついでに少し大胆に尻尾も伸ばしてみるとあっさりあちらの尻尾に捕まってしまった。
するり、するりと絡まる尻尾に付け根からぞくぞく背中に得も言えぬものが伝う。これは流石に行けない。
「ぁの、レオナさん、その」
「なんだよ」
くくっと喉を鳴らして笑うレオナ様はどうやら確信犯のご様子で。いくら人払いされているだろうとはいえお人が悪い。
「意地の悪いお方ですわ」
「怒んなよ。続きは別のところでする」
「別のところ?」
顔を上げて頬を撫でられた。何をなさいますのと意地悪く笑うレオナ様の顔を見る。というより、そもそも今の行為に続きなど――あ。
辿り着いた答えにまた顔が熱くなる。まったく。最近最終的にその流れになることが多い。とはいえ、私も拒まない故に致すのだから文句など言えまい。
「ちゃんと誰も来ませんの?」
「来ねぇよ」
「ならよろしいです」
「ん」
耳元にキスをされてくすぐったくて耳を伏せる。
何だかんだ言って私もレオナ様としたいから。婚前交渉なんてと王族関係者や高官は言うかもしれない。けれどやっぱり好きな人とは深くつながりたいものだ。
「私も随分と欲深くなったものです」
「フン。今まであまり欲がなかったんだ。別に構わねぇだろ」
そういうこの方もあまり欲がないお方だ。だからこそ、きっとこの方に甘えられるのも求められるのも嬉しく特別に思うのだろう。
「レオナさま、ぁ、えっとレオナさんも、も、もっと欲深くても構いませんよ」
「……へぇ。面白れぇこと言うな」
「面白くもなんもありませんわ」
「いや。面白れぇよ。第二王子にそんなこと言うなんて」
面白れぇとまた高らかに笑うレオナ様。けれどそう清々しく笑うレオナ様に私も自然と頬が緩む。
「レオナさんもそのように太陽の下がお似合いです」
「ハッ。よく言うぜ」
前は皮肉ったようなその言い方も今では楽し気で私は嬉しい。これならば部屋に籠るのも惜しいのだけれど――。
「じゃ、行くぞ」
「ぁ、はい」
ぐいっと腰を抱き寄せられて艶やかに囁かれた。やっぱりこれから部屋で籠りなさるようで。とはいえ、私はそれを断ることも、断るつもりもないので頷いた。
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