レオナ
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焼け落ちる夜の生命
貴方様は夜を落としこんだような人。きっと夜が形作っているに違いありません。ああ。もしかして彼の夜の化身様でしょうか。
「なに馬鹿なこと言ってんだ」
夜の化身のような方は宝石をはめ込んだような瞳で私を見下ろすのです。その拍子に柔らかく触り心地のいい甘いチョコレートのような髪の毛が私を囲うように落ちて来る。いい香りがする。でも、チョコレートのように甘くない。どんな香りと言われたらこの夜の化身のようなお方の香りとしか答えられない。
「レオナ殿下。どうかなさいましたの」
「何が」
棘のあるような声。でも、それは私に向かっているのではないということはもうよく知っている。でなければ、後宮のマナーに則 りやって来るお方が魔法を駆使してまで忍んでやって来るはずがない。
私はじっと美しくも影を宿す瞳を見つめる。すると見るなと言うように視界から消える。代わりにレオナ殿下の香りに包まれた。僅かに浮いた背中に回された腕に絡まる脚。首筋を擽る熱の籠る吐息。僅かに吐息に含まれるアルコールの香りがする。
「呑まれたのですか?」
「少しだ」
「学生でしょうに」
「うるせぇな」
成人済みだと言って首筋に柔らかく熱のあるものが押し付けられる。「ん」と反射的に零れる艶を帯びた自分の声。殿下はそれが気に入ったのか肌を食むように吸い付いて来る。
「ぁっ」
逃げるように顔を横に向ける。でも、それはただレオナ殿下にとって有利な体勢になるだけなのは知っている。知っているけれどそう動いてしまうのはこの身体が殿下に従順に躾けられてしまったに他ならない。
背中に回っていた腕が解かれて大きな手が薄い寝間着で包まれた私の身体を撫でる。身体の線を撫でるその艶めかしい手つきに嬌声が零れる。必死に口を引き結んで耐えるけれどその唇さえもいとも簡単に突破されてしまう。
「抑えるんじゃねぇよ」
「ですが、今日は」
後宮に渡ることを告げていない。そもそも私たちは結婚する前の歳若い雌雄の獅子だ。何度か肌を重ねているとはいえそれは恥ずかしながら許可済み。後宮の女官が把握しているからだ。私が結婚する前に妊娠しないように見守れている。その条件の元肌を重ねていた。でも、今日は違う。夜の化身のように闇夜に紛れて殿下が忍び込んで来たのだ。
「は、ぁ、ん、殿下なりません」
「うるせぇ」
簡単に解ける寝間着の紐が解かれた音がした。身体を纏っていた薄い寝間着がいともたやすく剥ぎ取られてしまった。さらにシュルと音がして見上げればレオナ殿下もまた寝間着を脱いでいるところだった。
獅子の遺伝子を持つが故に利く夜目。はっきりと見える細身ながら逞しい美しい身体。惚れ惚れするような美しさはやはり神々しさを感じてしまう。何故なのだろうか。
「やはり夜の化身様なのでしょうか」
幼い頃に聞いた母の寝物語に出て来る独りぼっちの夜の化身様の御話。
長い時を一人で過ごした夜の化身様は友が沢山いる朝の化身様を羨んだ。朝の化身のように共にある友人が欲しかったが夜の化身様が生きる世界では皆寝静まり誰一人起きている者がいなかった。とうとう孤独に耐えきれなくなった夜の化身様が涙を流すと細やかな雫は星々となり、ひと際大きな雫が月となった。さらにそこから星々の化身が誕生し、月の化身が誕生し、こうして夜の化身様はようやく孤独から脱したのだった。夕焼けの草原に昔から伝わる御伽噺。
レオナ殿下もナイトレイブンカレッジに入学してかけがえない方々を得たと聞く。それはとてもいいことだ。ここではこのお方を理解してくれる方など一握りしかいないのだから。その方々が友人にもなるとは限らない。
そもそもこのお方は夜の化身様のように泣き暮れることはないだろう。危うさを失くしながらどこかまだ危うい殿下。御伽噺とは異なり闇夜に溶けて空に消えていきそう。儚くとはいかなくとも消滅することをあっさりと受け入れてしまいそうで恐ろしい。
どうしたらこの方を化身のままにしておけるのか。この地上に留めて置けるのだろうか。そんなことを考えていたときだった。美しい唇が動いたのは。
「……お前は月の化身のようだな」
ふっと笑う声がした。意外というのは失礼だろうか。それでも彼と御伽噺が結びつかなかった。それが伝わったのだろうか陰った瞳が淡く綻んだ気がした。
「子どもの頃だ。母が一度読んでくれたことがあったな」
「お母上様が」
「おう」
今は亡き先代の王妃様。国王陛下とレオナ殿下が幼い頃に儚く散ってしまった方。殿下の美しいお母上様。資料でしか窺い知ることができないそのお方。殿下にとって大切な思い出をくれたお方。
「お前は月の化身のようだ」
「そんな大層な」
「いやお前は月みたいだ。絶対に」
言ってまた抱きすくめられる。お互い寝間着を脱ぎ去った状態。素肌が重なって熱が溶けるように共有される。今度は私もその背中に腕を回して抱きしめ返す。触れた殿下の肌はいつもより数段熱かった。
「熱いです」
「酒飲んでいるからな」
「あまり深酒なさらないように」
「寮では飲んでない」
飲んでいたら問題ですよ、と返せば軽く笑う声が聞こえた。それからまた深く抱かれると体勢が代わる。コロンと殿下が横になって私も横に身体が動きそのまま深く、深く、胸に抱かれる。足も尻尾も絡み合う。雁字搦めの状態で起きることなど叶わないだろう。
「朝、起きられますの?」
「起きれねぇな」
「侍女が見たら叫びますよ」
「どーだか」
ハッと笑うこの声。どうやら侍女はレオナ殿下の口車に負けてしまったのかもしれない。ついでに夜の化身様のように美しいのだから。その美貌をフル活用されたのかもしれない。それは嫌だったなと思わず喉が低く唸ると「どうした」と訊かれた。
「いえ。どのように侍女を買収したのかと」
「何だ。俺が色仕掛けしたとでも言うのか」
「違うのですか」
「おいおい。ひでぇな」
言いながらも喉が機嫌よくなっているのを私の耳は拾っている。もうなんて意地の悪い方なんでしょう。それでも声音の優しさに私は安心していく。そう夜に抱かれるように浮かぶ月のように。いや、私はその他大勢の星に近い気がするけれど。
「寝るか?」
言いながら髪の毛を梳くレオナ殿下。私はその優しい動きに瞼が重くなっていく。私は何も返せていないのに。
「レオナ殿下も寝ましょう……」
「ん。寝る」
苦しくなるくらい深く抱かれたと思えば早々に寝息が耳を擽る。やだ。本当にお休み三秒のお方。言いながらも私も意識が落ちそうになった。そして、穏やかな寝息に私もすぐに意識をとぷんと闇夜に落っことした。
お題サイト「as far as I know」様より
お題『闇夜のための歌』から抜粋
2021.07.18
貴方様は夜を落としこんだような人。きっと夜が形作っているに違いありません。ああ。もしかして彼の夜の化身様でしょうか。
「なに馬鹿なこと言ってんだ」
夜の化身のような方は宝石をはめ込んだような瞳で私を見下ろすのです。その拍子に柔らかく触り心地のいい甘いチョコレートのような髪の毛が私を囲うように落ちて来る。いい香りがする。でも、チョコレートのように甘くない。どんな香りと言われたらこの夜の化身のようなお方の香りとしか答えられない。
「レオナ殿下。どうかなさいましたの」
「何が」
棘のあるような声。でも、それは私に向かっているのではないということはもうよく知っている。でなければ、後宮のマナーに
私はじっと美しくも影を宿す瞳を見つめる。すると見るなと言うように視界から消える。代わりにレオナ殿下の香りに包まれた。僅かに浮いた背中に回された腕に絡まる脚。首筋を擽る熱の籠る吐息。僅かに吐息に含まれるアルコールの香りがする。
「呑まれたのですか?」
「少しだ」
「学生でしょうに」
「うるせぇな」
成人済みだと言って首筋に柔らかく熱のあるものが押し付けられる。「ん」と反射的に零れる艶を帯びた自分の声。殿下はそれが気に入ったのか肌を食むように吸い付いて来る。
「ぁっ」
逃げるように顔を横に向ける。でも、それはただレオナ殿下にとって有利な体勢になるだけなのは知っている。知っているけれどそう動いてしまうのはこの身体が殿下に従順に躾けられてしまったに他ならない。
背中に回っていた腕が解かれて大きな手が薄い寝間着で包まれた私の身体を撫でる。身体の線を撫でるその艶めかしい手つきに嬌声が零れる。必死に口を引き結んで耐えるけれどその唇さえもいとも簡単に突破されてしまう。
「抑えるんじゃねぇよ」
「ですが、今日は」
後宮に渡ることを告げていない。そもそも私たちは結婚する前の歳若い雌雄の獅子だ。何度か肌を重ねているとはいえそれは恥ずかしながら許可済み。後宮の女官が把握しているからだ。私が結婚する前に妊娠しないように見守れている。その条件の元肌を重ねていた。でも、今日は違う。夜の化身のように闇夜に紛れて殿下が忍び込んで来たのだ。
「は、ぁ、ん、殿下なりません」
「うるせぇ」
簡単に解ける寝間着の紐が解かれた音がした。身体を纏っていた薄い寝間着がいともたやすく剥ぎ取られてしまった。さらにシュルと音がして見上げればレオナ殿下もまた寝間着を脱いでいるところだった。
獅子の遺伝子を持つが故に利く夜目。はっきりと見える細身ながら逞しい美しい身体。惚れ惚れするような美しさはやはり神々しさを感じてしまう。何故なのだろうか。
「やはり夜の化身様なのでしょうか」
幼い頃に聞いた母の寝物語に出て来る独りぼっちの夜の化身様の御話。
長い時を一人で過ごした夜の化身様は友が沢山いる朝の化身様を羨んだ。朝の化身のように共にある友人が欲しかったが夜の化身様が生きる世界では皆寝静まり誰一人起きている者がいなかった。とうとう孤独に耐えきれなくなった夜の化身様が涙を流すと細やかな雫は星々となり、ひと際大きな雫が月となった。さらにそこから星々の化身が誕生し、月の化身が誕生し、こうして夜の化身様はようやく孤独から脱したのだった。夕焼けの草原に昔から伝わる御伽噺。
レオナ殿下もナイトレイブンカレッジに入学してかけがえない方々を得たと聞く。それはとてもいいことだ。ここではこのお方を理解してくれる方など一握りしかいないのだから。その方々が友人にもなるとは限らない。
そもそもこのお方は夜の化身様のように泣き暮れることはないだろう。危うさを失くしながらどこかまだ危うい殿下。御伽噺とは異なり闇夜に溶けて空に消えていきそう。儚くとはいかなくとも消滅することをあっさりと受け入れてしまいそうで恐ろしい。
どうしたらこの方を化身のままにしておけるのか。この地上に留めて置けるのだろうか。そんなことを考えていたときだった。美しい唇が動いたのは。
「……お前は月の化身のようだな」
ふっと笑う声がした。意外というのは失礼だろうか。それでも彼と御伽噺が結びつかなかった。それが伝わったのだろうか陰った瞳が淡く綻んだ気がした。
「子どもの頃だ。母が一度読んでくれたことがあったな」
「お母上様が」
「おう」
今は亡き先代の王妃様。国王陛下とレオナ殿下が幼い頃に儚く散ってしまった方。殿下の美しいお母上様。資料でしか窺い知ることができないそのお方。殿下にとって大切な思い出をくれたお方。
「お前は月の化身のようだ」
「そんな大層な」
「いやお前は月みたいだ。絶対に」
言ってまた抱きすくめられる。お互い寝間着を脱ぎ去った状態。素肌が重なって熱が溶けるように共有される。今度は私もその背中に腕を回して抱きしめ返す。触れた殿下の肌はいつもより数段熱かった。
「熱いです」
「酒飲んでいるからな」
「あまり深酒なさらないように」
「寮では飲んでない」
飲んでいたら問題ですよ、と返せば軽く笑う声が聞こえた。それからまた深く抱かれると体勢が代わる。コロンと殿下が横になって私も横に身体が動きそのまま深く、深く、胸に抱かれる。足も尻尾も絡み合う。雁字搦めの状態で起きることなど叶わないだろう。
「朝、起きられますの?」
「起きれねぇな」
「侍女が見たら叫びますよ」
「どーだか」
ハッと笑うこの声。どうやら侍女はレオナ殿下の口車に負けてしまったのかもしれない。ついでに夜の化身様のように美しいのだから。その美貌をフル活用されたのかもしれない。それは嫌だったなと思わず喉が低く唸ると「どうした」と訊かれた。
「いえ。どのように侍女を買収したのかと」
「何だ。俺が色仕掛けしたとでも言うのか」
「違うのですか」
「おいおい。ひでぇな」
言いながらも喉が機嫌よくなっているのを私の耳は拾っている。もうなんて意地の悪い方なんでしょう。それでも声音の優しさに私は安心していく。そう夜に抱かれるように浮かぶ月のように。いや、私はその他大勢の星に近い気がするけれど。
「寝るか?」
言いながら髪の毛を梳くレオナ殿下。私はその優しい動きに瞼が重くなっていく。私は何も返せていないのに。
「レオナ殿下も寝ましょう……」
「ん。寝る」
苦しくなるくらい深く抱かれたと思えば早々に寝息が耳を擽る。やだ。本当にお休み三秒のお方。言いながらも私も意識が落ちそうになった。そして、穏やかな寝息に私もすぐに意識をとぷんと闇夜に落っことした。
お題サイト「as far as I know」様より
お題『闇夜のための歌』から抜粋
2021.07.18
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