砂嵐の王と春風の女神
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まだ愛している
十六歳を迎える年、俺は春風のような女に出会った。女といっても自分と同い年だが。その女は夕焼けの草原と親交深い公国の公女で、王族によく似た独特の雰囲気を持っていた。独特の雰囲気というのは結局同族でなければわからない。でも、同族だからって居心地がいいわけではない。けれど彼女の隣は息がしやすかった。
それを彼女に伝える。彼女は目を瞬かせてから薄くて綺麗な形をした唇で大人びた笑みを作る。
「ふふ。私がまるで植物のような言い方をするのね」
言われればそうだ。でも、彼女は植物のように大人しく傍にいることはない。現にこうして俺と会話をしているし――キスもしているしな。
身を屈めて笑みを描く唇にキスをする。触れるだけの戯れるようなキスしていると肩を押された。
「ん。誰か来るわ、」
胸を押されて唇から離れるけれどお互いの額が触れる距離にいる。年頃の少年少女が物陰で寄り添い合っているのを見れば大抵の人間は避けるだろうに。しかも、それが王子と公女ならば色々察するだろうに。
「大丈夫じゃねぇか?」
「ぁ、もう、レオナさん、」
もう一度啄む様にキスをする。まだ足りないだと言葉でなく行動で訴える。ついでに強請るように細い尻尾に自分の尻尾を絡ませるがスルリと逃げられてしまった。
「はっ、だめ、おしまい」
「おい、ジェマ」
不満を訴えるように名前を呼べば彼女は「これ以上は駄目よ」と長い睫を伏せて告げる。そのときの彼女は困惑を滲ませ俺の身体を優しく押し戻す。
息をついて「わかった」と身を引く。それでもジェマの柳のような腰に腕を回したままにする。これくらいは許せと思うし、彼女もこれ以上離れとは言わなかった。
だから、甘えるように抱き寄せると今度はジェマが甘える仕草を見せる。肩に頭を寄せてすり寄って来るのだ。
言動に似合わず可愛い女だ。キスしたくなるのを我慢して抱きしめると。
「明日夕焼けの草原に帰るって聞いたのだけど」
空気を換えるように話しを振ってきた。嫌な内容に顔が思わず歪む。ついでに声に不機嫌を乗せて答える。
「ああ。兄貴共がうるせぇからな」
「もう邪険にしないの」
言って寂しさの欠片も見せない彼女に不安になる。何がとは言わないが。
「ジェマ、次のサマーホリデーも来ていいか」
「お兄様は忙しいけれど」
「寮長に会いにくんじゃねぇよ。お前に会いに来る」
「それは……嬉しいわ」
緩やかに微笑みを浮かべる様が大人びた顔立ちながら可愛かった。我慢できないと伝えるようなキスをすると「もう駄目」とクスクス笑いながら顔を押されてしまった。
柄にもなくこの他愛もないやり取りが愛おしかった。何よりも。
「会いに来る」
「ええ……もし来られなくなったら今度は私が行くわ」
「お。それはいいな」
寧ろ、俺が行くよりもいいかもしれねぇ。あ、でもダメだ。俺は故郷のあの薄暗い王宮に帰りたくねぇんだ。
だからやっぱり何が何でも会いに来よう。
* * *
「ジェマ……」
不意に夢に見た甘酸っぱい少年時代の恋物語と思い出す愛おしい女。
すっかり冴えた頭に身体を起して枕元のスマホを見ればまだ明け方でもない。深夜だった。眩しい画面を消して放り投げで瞼を伏せる。
あれからジェマと会えたのは片手で数えるほどだった。そして、あの十八歳を境に連絡を取ることもなく会うこともなく今日この日まで来た。
「もう少しだ」
あと少ししたら〝計画〟は実行される。そして、成功したら――成功したらもう一度会いに行く。この足で会いに行く。だから、もう少し待っていてほしい。
俺は冴えた目を閉じて再び眠りにつく。意識が落とす瞬間に浮かんだジェマの顔はまだ少女のままだった。
2021.06.06
十六歳を迎える年、俺は春風のような女に出会った。女といっても自分と同い年だが。その女は夕焼けの草原と親交深い公国の公女で、王族によく似た独特の雰囲気を持っていた。独特の雰囲気というのは結局同族でなければわからない。でも、同族だからって居心地がいいわけではない。けれど彼女の隣は息がしやすかった。
それを彼女に伝える。彼女は目を瞬かせてから薄くて綺麗な形をした唇で大人びた笑みを作る。
「ふふ。私がまるで植物のような言い方をするのね」
言われればそうだ。でも、彼女は植物のように大人しく傍にいることはない。現にこうして俺と会話をしているし――キスもしているしな。
身を屈めて笑みを描く唇にキスをする。触れるだけの戯れるようなキスしていると肩を押された。
「ん。誰か来るわ、」
胸を押されて唇から離れるけれどお互いの額が触れる距離にいる。年頃の少年少女が物陰で寄り添い合っているのを見れば大抵の人間は避けるだろうに。しかも、それが王子と公女ならば色々察するだろうに。
「大丈夫じゃねぇか?」
「ぁ、もう、レオナさん、」
もう一度啄む様にキスをする。まだ足りないだと言葉でなく行動で訴える。ついでに強請るように細い尻尾に自分の尻尾を絡ませるがスルリと逃げられてしまった。
「はっ、だめ、おしまい」
「おい、ジェマ」
不満を訴えるように名前を呼べば彼女は「これ以上は駄目よ」と長い睫を伏せて告げる。そのときの彼女は困惑を滲ませ俺の身体を優しく押し戻す。
息をついて「わかった」と身を引く。それでもジェマの柳のような腰に腕を回したままにする。これくらいは許せと思うし、彼女もこれ以上離れとは言わなかった。
だから、甘えるように抱き寄せると今度はジェマが甘える仕草を見せる。肩に頭を寄せてすり寄って来るのだ。
言動に似合わず可愛い女だ。キスしたくなるのを我慢して抱きしめると。
「明日夕焼けの草原に帰るって聞いたのだけど」
空気を換えるように話しを振ってきた。嫌な内容に顔が思わず歪む。ついでに声に不機嫌を乗せて答える。
「ああ。兄貴共がうるせぇからな」
「もう邪険にしないの」
言って寂しさの欠片も見せない彼女に不安になる。何がとは言わないが。
「ジェマ、次のサマーホリデーも来ていいか」
「お兄様は忙しいけれど」
「寮長に会いにくんじゃねぇよ。お前に会いに来る」
「それは……嬉しいわ」
緩やかに微笑みを浮かべる様が大人びた顔立ちながら可愛かった。我慢できないと伝えるようなキスをすると「もう駄目」とクスクス笑いながら顔を押されてしまった。
柄にもなくこの他愛もないやり取りが愛おしかった。何よりも。
「会いに来る」
「ええ……もし来られなくなったら今度は私が行くわ」
「お。それはいいな」
寧ろ、俺が行くよりもいいかもしれねぇ。あ、でもダメだ。俺は故郷のあの薄暗い王宮に帰りたくねぇんだ。
だからやっぱり何が何でも会いに来よう。
* * *
「ジェマ……」
不意に夢に見た甘酸っぱい少年時代の恋物語と思い出す愛おしい女。
すっかり冴えた頭に身体を起して枕元のスマホを見ればまだ明け方でもない。深夜だった。眩しい画面を消して放り投げで瞼を伏せる。
あれからジェマと会えたのは片手で数えるほどだった。そして、あの十八歳を境に連絡を取ることもなく会うこともなく今日この日まで来た。
「もう少しだ」
あと少ししたら〝計画〟は実行される。そして、成功したら――成功したらもう一度会いに行く。この足で会いに行く。だから、もう少し待っていてほしい。
俺は冴えた目を閉じて再び眠りにつく。意識が落とす瞬間に浮かんだジェマの顔はまだ少女のままだった。
2021.06.06