叶わない愛のはずだった
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執着的な愛情
幼い頃からキラキラした大きな瞳で自分を見つめていたジェマ・レヴィ。何をするのにも素直な称賛をくれる少女は俺自身にとっても代えがたい存在であった。そこに恋心はなくとも将来この少女と結婚することになってもいいかなと思うくらいには信頼を抱かせてくれた。
王族としての責務として血を残すならジェマと、だとずっと考えていた。それほどまでに彼女はずっと俺の隣にいるものだと思っていた。だから、まさかジェマが婚約解消を言い出すとは思わなかった。そして、それが俺のためになると馬鹿みたいなことを考えた結果だとか。愚かな女だ。いや、愛情深い女と言うべきか。
頑固で思い込みが強いジェマを説得するのに少々骨を折ったがおかげで俺の隣に留めることができた。それにしてもあれほどまで俺の言葉に信用がないとは、だが当たり前か。
ジェマが言っていた通り俺は彼女に異性として恋愛対象として態度を明確に取ったことはない。けど何もしていたわけではない。許嫁としてちゃんと貢物を送っていた俺のなけなしの愛情に気づかないなんて鈍感な女だ。
こう見ると俺自身も十分自分勝手な考えをしている。彼女は俺の隣に居るべき存在だと。故に離れることは許さない、と。
だが、決してジェマへの告白は虚偽ではない。そこは馬鹿を言うな。本心だ――彼女の想いと比べれば砂粒程度だろうが本心は本心に変わりない。
詐欺だ、酷い男だ、と言われるだろう。知ったこっちゃない。そもそもそれに気づく奴がいるか。寧ろ、他の奴らは何て変わったのだろうって驚くじゃないか。
愛することを知らない俺が誰かを〝愛する〟なんて。あとはジェマが俺の情を信じればいい。けど、もし彼女が勘付いたら――さてどうするか。
不穏な夢から意識が浮上した瞬間に涙の香りが鼻を掠める朝。誰が泣いているなんて答えはすぐ傍で寝ているジェマだ。泣くほどに昨夜の出来事を夢幻かと思ったのか全く信用のないことだ。もう少し愛されているかもしれないという希望持ってくれ。といっても、愛することも、愛されることも不得意な俺が言えた義理じゃない。でも、そんな自分以上に不器用な彼女にどうすればいいんだ。
お手上げ状態の俺は目を覚ますことにした。泣いて居たら泣きじゃくるチェカのようにするか。許嫁を甥っ子に置き換えるなよ、と脳内のラギーが突っ込んだ気がするが目を開くと――。
「ぁ、レオナさま……」
泣いていると想像していた彼女は泣いていなかった。厳密に言えば薄らと涙の膜が張っていた。たぶん、瞬きをしたら綺麗な粒が零れるだろう。
「泣きそうだな」
掠れた声で問いかければ彼女が反射的に瞬きをすると涙が弾けた。パッと彼女の目尻から零れてあっと言う間に涙の雫となった。
「泣くほどかよ」
「ん、いぇ」
目尻を指で拭えば昨夜の熱をお思い出させるような声をジェマが出す。思わず指が止まりかけたが何とか動かして離れる。
すると、今度は瞬きし終えた彼女の細い指がレオナの頬に触れた。こそばゆい触れ方に身体が揺れてしまう。途端に「ぁ」と引っ込む彼女の指を掴み絡めとる。
その手を引き寄せて唇に触れる。
「れおな、様、あの」
ぎこちない声に彼女を見れば気恥ずかしそうな顔をしている。昨夜の色濃い情事の方がよっぽどだろうに。でも、恋人らしいこともせずに肌を重ねてしまったから仕方ないのかもしれない。
俺一直線だったから恋人はいねぇのか。この初心さ加減に健気にも学生時代も一途に俺のことだけを愛していたらしい。そのことに喜びを覚えない男はいないだろう。いや、きっといるのだろうな。なんて哀れな展開だ。でも、残念だ。俺はそうじゃない。
「初めてだったんだな」
「当たり前です」
ムッと顔を顰める彼女に怒るなよと許しを請うように指に口づける。
「ン。レオナ様、離してください」
もぞもぞと動き出す彼女が逃げ出そうとしていることに気づく。そうはいくかともう片方の腕を彼女の身体に伸ばすと後ろに下がって逃げられる。
「お前はどうして逃げる」
「あの、何も着ていないので」
恥ずかしいです、と素直に告げるのは見た目の華やかさからは中々想像できないほど愛らしさがあった。本当にこの整った顔立ちに、艶めかしい線を描く体つきで未経験であれたものだ。年上の男に目を着けられたら即日パックリと食べられて開発されていたに違いない。
これも彼女の実家の教育の賜物かもしれない。あの家は王族としても一人の人間としてもこから頭が下がる思いだ。まぁ、俺自身の立場から容易に頭を下げることは難しいが。
恥じらうジェマを見ていようかと思うが今は熱い夜を過ごした後の朝だ。素直に触れ合いたい。
一度引っ込めた腕を伸ばして逃げる前に腰に絡ませて抱き寄せる。それでも拒もうとする彼女だったが初めての名残で身体が痛むのか最終的には大人しく腕の中に納まった。とはいっても、大人しく肩を縮こませているジェマの身体は僅かに熱を帯びて緊張しているのが伝わってくる。
「緊張しすぎじゃねぇか?」
「それは……レオナ様にはわからないでしょう」
お、意外な反論。彼女を見れば緊張しているはずなのに真っ直ぐと俺を見ていた。涙に濡れていたからかこちらを見つめる瞳は瞬く星のようであった。
自分らしくない考えを振り払うように視線を外し「確かにわからねぇな」と返す。
「でしょう……きっと一生わかりません」
「あァ? そこまで言うかよ」
「言います」
はっきりと告げるジェマに頭に来る。初夜の翌朝に早々に喧嘩を吹っかける奴がいるか。でも、彼女の俺に対する想いはきっと珊瑚の海よりも深いところから湧き出ている。だから、わからないのも当たり前なのかもしれない。
「そうかよ」
ならそうしておく、と言って身体を動かして僅かに出ている彼女の額に口づけた。僅かに跳ねる身体に面白いなぁという感想を抱きながら身体を起す。
「もうそんな時間ですか」
僅かに掠れた顔で同じように起きようとするジェマ。だが、身体が痛むのか顔を顰めてそのままベッドに吸い込まれるように崩れ落ちる。
「ムリすんな」
「いえ、でも、水浴びに朝食だって」
「……お前馬鹿か?」
「ぇ?」
真面目に考える彼女の髪の毛を梳いて俺と同じ丸く小さな耳の根元を掻く。
「ん、レオナ様、どぅいことです?」
こそばゆそうに肩をすくめるジェマに「誰も来ねぇよ」と告げる。それでも彼女は意味が掴めないのか、はたまた頭が動かないのか。ふぅと息とついて説明してやる。
「俺は王子、ジェマは俺の許嫁。その二人が昨日の夜部屋になだれ込むようにして戻って来た」
「ぁ」
ここまで着てようやく理解したジェマは声を零した。そもそも宮殿に使える侍女や召使が昨晩の様子を見てナニをしていたのかわからないはずがない。
「呼ばない限り来ねぇからな」
「さようで」
それに安心したような逆に恥ずかしいような顔をするジェマに告げる。
「これからこんなことはたくさんある」
いくら名家の令嬢であるジェマでも王族のような生活はしていなかったはずだ。慣れなければいけないことはたくさんある。
「王族にとってプライバシーはあってないようなもんだ」
王宮では常に護衛に始まり侍従や侍女に召使まで常についている。宮殿の外を出れば国民がSNSを使って生活を切り取っていく。どこにいても常に人の目がある。個人的に言えば学生時代が一番ハメを外せる時間だ。すでにダブって久しい俺はまだその自由がある学生ではないジェマにはもうない。ついでに言えば妃教育の彼女に自由という自由はない。
「お前も苦労するな」
「なんてことありませんよ」
僅かに下がって柔らかく溶ける。今までにない彼女の反応に心が擽られるような気がした。ジェマが代わっていくように自分も変わっていくのだろう。それを嫌と思わないのが俺自身も不思議ではならない。ああ、でも、やっぱり思うことはある。
ジェマが抱く愛情はすべて俺に捧げてほしい。この愛情深い女を茨で作られた道を共に歩いてほしい。だから、また罠をかけなければいけない。彼女自身が俺でさらにがんじがらめになるように。不穏な考えを抱く俺に罪悪感はない。寧ろ、念には念を入れよ、と囁くのは俺自身の中に巣食う不安の塊のような存在だった。
「ジェマ」
「はい。なんでしょうか」
身を屈めて反射的に顔をあげた彼女に顔を近づけ軽い口づけを送る。不意打ちのキスで目を見開くジェマに喉を震わせて笑いながら――言葉にしたのは〝呪い〟の言葉。
「あいしている、」
2021.04.11
幼い頃からキラキラした大きな瞳で自分を見つめていたジェマ・レヴィ。何をするのにも素直な称賛をくれる少女は俺自身にとっても代えがたい存在であった。そこに恋心はなくとも将来この少女と結婚することになってもいいかなと思うくらいには信頼を抱かせてくれた。
王族としての責務として血を残すならジェマと、だとずっと考えていた。それほどまでに彼女はずっと俺の隣にいるものだと思っていた。だから、まさかジェマが婚約解消を言い出すとは思わなかった。そして、それが俺のためになると馬鹿みたいなことを考えた結果だとか。愚かな女だ。いや、愛情深い女と言うべきか。
頑固で思い込みが強いジェマを説得するのに少々骨を折ったがおかげで俺の隣に留めることができた。それにしてもあれほどまで俺の言葉に信用がないとは、だが当たり前か。
ジェマが言っていた通り俺は彼女に異性として恋愛対象として態度を明確に取ったことはない。けど何もしていたわけではない。許嫁としてちゃんと貢物を送っていた俺のなけなしの愛情に気づかないなんて鈍感な女だ。
こう見ると俺自身も十分自分勝手な考えをしている。彼女は俺の隣に居るべき存在だと。故に離れることは許さない、と。
だが、決してジェマへの告白は虚偽ではない。そこは馬鹿を言うな。本心だ――彼女の想いと比べれば砂粒程度だろうが本心は本心に変わりない。
詐欺だ、酷い男だ、と言われるだろう。知ったこっちゃない。そもそもそれに気づく奴がいるか。寧ろ、他の奴らは何て変わったのだろうって驚くじゃないか。
愛することを知らない俺が誰かを〝愛する〟なんて。あとはジェマが俺の情を信じればいい。けど、もし彼女が勘付いたら――さてどうするか。
不穏な夢から意識が浮上した瞬間に涙の香りが鼻を掠める朝。誰が泣いているなんて答えはすぐ傍で寝ているジェマだ。泣くほどに昨夜の出来事を夢幻かと思ったのか全く信用のないことだ。もう少し愛されているかもしれないという希望持ってくれ。といっても、愛することも、愛されることも不得意な俺が言えた義理じゃない。でも、そんな自分以上に不器用な彼女にどうすればいいんだ。
お手上げ状態の俺は目を覚ますことにした。泣いて居たら泣きじゃくるチェカのようにするか。許嫁を甥っ子に置き換えるなよ、と脳内のラギーが突っ込んだ気がするが目を開くと――。
「ぁ、レオナさま……」
泣いていると想像していた彼女は泣いていなかった。厳密に言えば薄らと涙の膜が張っていた。たぶん、瞬きをしたら綺麗な粒が零れるだろう。
「泣きそうだな」
掠れた声で問いかければ彼女が反射的に瞬きをすると涙が弾けた。パッと彼女の目尻から零れてあっと言う間に涙の雫となった。
「泣くほどかよ」
「ん、いぇ」
目尻を指で拭えば昨夜の熱をお思い出させるような声をジェマが出す。思わず指が止まりかけたが何とか動かして離れる。
すると、今度は瞬きし終えた彼女の細い指がレオナの頬に触れた。こそばゆい触れ方に身体が揺れてしまう。途端に「ぁ」と引っ込む彼女の指を掴み絡めとる。
その手を引き寄せて唇に触れる。
「れおな、様、あの」
ぎこちない声に彼女を見れば気恥ずかしそうな顔をしている。昨夜の色濃い情事の方がよっぽどだろうに。でも、恋人らしいこともせずに肌を重ねてしまったから仕方ないのかもしれない。
俺一直線だったから恋人はいねぇのか。この初心さ加減に健気にも学生時代も一途に俺のことだけを愛していたらしい。そのことに喜びを覚えない男はいないだろう。いや、きっといるのだろうな。なんて哀れな展開だ。でも、残念だ。俺はそうじゃない。
「初めてだったんだな」
「当たり前です」
ムッと顔を顰める彼女に怒るなよと許しを請うように指に口づける。
「ン。レオナ様、離してください」
もぞもぞと動き出す彼女が逃げ出そうとしていることに気づく。そうはいくかともう片方の腕を彼女の身体に伸ばすと後ろに下がって逃げられる。
「お前はどうして逃げる」
「あの、何も着ていないので」
恥ずかしいです、と素直に告げるのは見た目の華やかさからは中々想像できないほど愛らしさがあった。本当にこの整った顔立ちに、艶めかしい線を描く体つきで未経験であれたものだ。年上の男に目を着けられたら即日パックリと食べられて開発されていたに違いない。
これも彼女の実家の教育の賜物かもしれない。あの家は王族としても一人の人間としてもこから頭が下がる思いだ。まぁ、俺自身の立場から容易に頭を下げることは難しいが。
恥じらうジェマを見ていようかと思うが今は熱い夜を過ごした後の朝だ。素直に触れ合いたい。
一度引っ込めた腕を伸ばして逃げる前に腰に絡ませて抱き寄せる。それでも拒もうとする彼女だったが初めての名残で身体が痛むのか最終的には大人しく腕の中に納まった。とはいっても、大人しく肩を縮こませているジェマの身体は僅かに熱を帯びて緊張しているのが伝わってくる。
「緊張しすぎじゃねぇか?」
「それは……レオナ様にはわからないでしょう」
お、意外な反論。彼女を見れば緊張しているはずなのに真っ直ぐと俺を見ていた。涙に濡れていたからかこちらを見つめる瞳は瞬く星のようであった。
自分らしくない考えを振り払うように視線を外し「確かにわからねぇな」と返す。
「でしょう……きっと一生わかりません」
「あァ? そこまで言うかよ」
「言います」
はっきりと告げるジェマに頭に来る。初夜の翌朝に早々に喧嘩を吹っかける奴がいるか。でも、彼女の俺に対する想いはきっと珊瑚の海よりも深いところから湧き出ている。だから、わからないのも当たり前なのかもしれない。
「そうかよ」
ならそうしておく、と言って身体を動かして僅かに出ている彼女の額に口づけた。僅かに跳ねる身体に面白いなぁという感想を抱きながら身体を起す。
「もうそんな時間ですか」
僅かに掠れた顔で同じように起きようとするジェマ。だが、身体が痛むのか顔を顰めてそのままベッドに吸い込まれるように崩れ落ちる。
「ムリすんな」
「いえ、でも、水浴びに朝食だって」
「……お前馬鹿か?」
「ぇ?」
真面目に考える彼女の髪の毛を梳いて俺と同じ丸く小さな耳の根元を掻く。
「ん、レオナ様、どぅいことです?」
こそばゆそうに肩をすくめるジェマに「誰も来ねぇよ」と告げる。それでも彼女は意味が掴めないのか、はたまた頭が動かないのか。ふぅと息とついて説明してやる。
「俺は王子、ジェマは俺の許嫁。その二人が昨日の夜部屋になだれ込むようにして戻って来た」
「ぁ」
ここまで着てようやく理解したジェマは声を零した。そもそも宮殿に使える侍女や召使が昨晩の様子を見てナニをしていたのかわからないはずがない。
「呼ばない限り来ねぇからな」
「さようで」
それに安心したような逆に恥ずかしいような顔をするジェマに告げる。
「これからこんなことはたくさんある」
いくら名家の令嬢であるジェマでも王族のような生活はしていなかったはずだ。慣れなければいけないことはたくさんある。
「王族にとってプライバシーはあってないようなもんだ」
王宮では常に護衛に始まり侍従や侍女に召使まで常についている。宮殿の外を出れば国民がSNSを使って生活を切り取っていく。どこにいても常に人の目がある。個人的に言えば学生時代が一番ハメを外せる時間だ。すでにダブって久しい俺はまだその自由がある学生ではないジェマにはもうない。ついでに言えば妃教育の彼女に自由という自由はない。
「お前も苦労するな」
「なんてことありませんよ」
僅かに下がって柔らかく溶ける。今までにない彼女の反応に心が擽られるような気がした。ジェマが代わっていくように自分も変わっていくのだろう。それを嫌と思わないのが俺自身も不思議ではならない。ああ、でも、やっぱり思うことはある。
ジェマが抱く愛情はすべて俺に捧げてほしい。この愛情深い女を茨で作られた道を共に歩いてほしい。だから、また罠をかけなければいけない。彼女自身が俺でさらにがんじがらめになるように。不穏な考えを抱く俺に罪悪感はない。寧ろ、念には念を入れよ、と囁くのは俺自身の中に巣食う不安の塊のような存在だった。
「ジェマ」
「はい。なんでしょうか」
身を屈めて反射的に顔をあげた彼女に顔を近づけ軽い口づけを送る。不意打ちのキスで目を見開くジェマに喉を震わせて笑いながら――言葉にしたのは〝呪い〟の言葉。
「あいしている、」
2021.04.11