名探偵のお気に入り
はじめにお名前変換してください
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
彼女は「S」だった。
なにも成績の話をしているわけじゃない。いや、成績も勿論オールSだったが、今話しているのはコードネームの話だ。
ワイミーズハウスというところは表向きはただの孤児院だが、実のところ突如生まれた天才「L」の代替、または後継者を育成する機関だ。
育成といえば聞こえはいいが、ある意味「創造」に等しかった。僕に言わせればあそこは孤児を使った人体実験所だ。入所したての幼い頃は知らされていないが、年を重ねるにつれて「L」の存在を知り、自分たちが何のために生かされ、毎日毎日課題やテストをやっているのか知る。創設当初は「L」の完全なるコピーを創 るため今より過酷な教育方法でもはや洗脳といっていい事をしでかしていたらしい。おかげで自殺者や犯罪者を生み、ようやく今の「それぞれの得意分野を伸ばし「L」の補助となる存在を育てる」方針へと落ち着いた。
それでも僕 やニアのような全てに秀でている者は次のLに成るべく特殊な教育を受けていた。
話を戻そう。
彼女、通称ナマエは「S」だった。
このアルファベットは名前の頭文字ではない。そもそも「メロ」も「ニア」も「ナマエ」も本名ではないのだから。結果論として僕の本名がミハエルであるとか、Wである「ワタリ」がワイミーであるとか、まるでイニシャルであるかのような偶然の一致が続いているから誤解されやすいが、アルファベット一文字やコードネームはワイミーズハウスにおける地位及び役割を示していた。
最高位はご存知「L」。
対してAlternate の「A」、Backup の「B」、Copy の「C」、LのようにMellow 、Marvelous 「M」、Lに最もNear 「N」(この定義は大変不服だが)
「S」は special のS。
文字通り、特別だ。
成績はオールS。なんならS+。たびたび施設から出て大学に通う。外の学校に通っているのなんて彼女だけだった。僕らは許可なく外出禁止、軟禁されているようなものだ。もうonly oneのOで良いんじゃないか。
「…だそうです」
「………」
突然呼び出されたから何かと思えば、目の前でつらつらと紙を朗読された。一体何の紙なのか。まあ内容的にメロの日記か手記か何かのコピーなのだろうが、なんでそんなものをLが持っているのか。そして何故読み上げたのか。わざわざ私の前で。
なんて反応をすればいいのかわからず黙っていると、もう不要だとばかりに紙を後ろに投げ捨てたLは目の前のコーヒーをズズッと啜った。
「彼は勘違いをしていますね」
「勘違い?」
「貴女が何故Sなのか。まぁonly oneのOであるべきという意見には賛同しますが」
貴女は唯一の存在ですから。
そういう彼に、誰だって唯一無二の存在だと言い返そうかと思ったが面倒臭い論争になりそうで口を噤んだ。それに彼の言う「唯一の存在」がそういう意味ではないことくらいわかっている。まんざらでもない気持ちと気恥ずかしい気持ちに挟まれて黙っていると彼が膝を立てた脚を少し広げて股の前の椅子を叩く。来いという意味だ。おとなしく従い、向かい合わせのソファから立ち上がり彼の脚の間に収まる。すっかり定位置になってしまったそこで彼の腹へ背を預ければするりと自身の腹へ彼の手がまわりシートベルトのように私を固定した。肩に彼の顎が乗る。
「なんのSだと思いますか?」
「私もスペシャルだと聞かされていたけど。もしくはsingular 、superb 、superior …とか」
「superior ですね」
「事実なので」
違いますね、と言われてむ、と口をへの字に曲げる。
「事実なので」に対する答えではないとわかっているものの、自分で挙げたSを全否定された気になった。間違いではないと思うんだけど。答えがわからず、顰めっ面のまま無理やり首をひねって自分の顔の真横にある男の顔を見た。彼も肩から顎を浮かせてこちらを向いた。至近距離で目が合う。
「わかりませんか? Supreme のくせに?」
「………」
意地悪を言われて更に唇を尖らせれば、ぱくりと上唇を食まれた。
「sweetのSですよ」
「は?」
アルファベット一文字のコードネームはL基準でついているはずだ。Lと何の関係が。まさかお菓子という意味ではないだろうな。
「私にとって必要不可欠という意味です」
「…冗談でしょう?私のことお菓子扱いしてるの?馬鹿にしてるの?」
「馬鹿になどしてませんよ。sweet でsweet 、sweet 、sweet でsweet 、sweet な私にとってかけがえのないsweetie です、sweetheart」
そう言って私の肋に囲まれた中心をグッと押してきた。普段ならセクハラと跳ね除けるところだが強く押されたせいでLの手のひらの感触と共に脈打つ心臓を感じる。それと同時に前から押さえつけられたせいでより密着した背中からとくとくとLの心音が直接響いてくる。不思議と私の脈拍と合っていて、まるで二人で一つの心臓みたいだった。sweetheartか。
「私にはデザート しか必要ないので」
そう言って口付けられる。
うそつき。そんなものより難解な謎の方がよっぽど好きなくせに。やっぱり馬鹿にされている気がする。
上手いこと言ったみたいな甘い雰囲気を醸し出してくる背後の男に呆れと愛しさと嬉しさと幸せとほんのちょっとの苛立ちを込めてもっと密着してやった。
なにも成績の話をしているわけじゃない。いや、成績も勿論オールSだったが、今話しているのはコードネームの話だ。
ワイミーズハウスというところは表向きはただの孤児院だが、実のところ突如生まれた天才「L」の代替、または後継者を育成する機関だ。
育成といえば聞こえはいいが、ある意味「創造」に等しかった。僕に言わせればあそこは孤児を使った人体実験所だ。入所したての幼い頃は知らされていないが、年を重ねるにつれて「L」の存在を知り、自分たちが何のために生かされ、毎日毎日課題やテストをやっているのか知る。創設当初は「L」の完全なるコピーを
それでも
話を戻そう。
彼女、通称ナマエは「S」だった。
このアルファベットは名前の頭文字ではない。そもそも「メロ」も「ニア」も「ナマエ」も本名ではないのだから。結果論として僕の本名がミハエルであるとか、Wである「ワタリ」がワイミーであるとか、まるでイニシャルであるかのような偶然の一致が続いているから誤解されやすいが、アルファベット一文字やコードネームはワイミーズハウスにおける地位及び役割を示していた。
最高位はご存知「L」。
対して
「S」は special のS。
文字通り、特別だ。
成績はオールS。なんならS+。たびたび施設から出て大学に通う。外の学校に通っているのなんて彼女だけだった。僕らは許可なく外出禁止、軟禁されているようなものだ。もうonly oneのOで良いんじゃないか。
「…だそうです」
「………」
突然呼び出されたから何かと思えば、目の前でつらつらと紙を朗読された。一体何の紙なのか。まあ内容的にメロの日記か手記か何かのコピーなのだろうが、なんでそんなものをLが持っているのか。そして何故読み上げたのか。わざわざ私の前で。
なんて反応をすればいいのかわからず黙っていると、もう不要だとばかりに紙を後ろに投げ捨てたLは目の前のコーヒーをズズッと啜った。
「彼は勘違いをしていますね」
「勘違い?」
「貴女が何故Sなのか。まぁonly oneのOであるべきという意見には賛同しますが」
貴女は唯一の存在ですから。
そういう彼に、誰だって唯一無二の存在だと言い返そうかと思ったが面倒臭い論争になりそうで口を噤んだ。それに彼の言う「唯一の存在」がそういう意味ではないことくらいわかっている。まんざらでもない気持ちと気恥ずかしい気持ちに挟まれて黙っていると彼が膝を立てた脚を少し広げて股の前の椅子を叩く。来いという意味だ。おとなしく従い、向かい合わせのソファから立ち上がり彼の脚の間に収まる。すっかり定位置になってしまったそこで彼の腹へ背を預ければするりと自身の腹へ彼の手がまわりシートベルトのように私を固定した。肩に彼の顎が乗る。
「なんのSだと思いますか?」
「私もスペシャルだと聞かされていたけど。もしくは
「
「事実なので」
違いますね、と言われてむ、と口をへの字に曲げる。
「事実なので」に対する答えではないとわかっているものの、自分で挙げたSを全否定された気になった。間違いではないと思うんだけど。答えがわからず、顰めっ面のまま無理やり首をひねって自分の顔の真横にある男の顔を見た。彼も肩から顎を浮かせてこちらを向いた。至近距離で目が合う。
「わかりませんか?
「………」
意地悪を言われて更に唇を尖らせれば、ぱくりと上唇を食まれた。
「sweetのSですよ」
「は?」
アルファベット一文字のコードネームはL基準でついているはずだ。Lと何の関係が。まさかお菓子という意味ではないだろうな。
「私にとって必要不可欠という意味です」
「…冗談でしょう?私のことお菓子扱いしてるの?馬鹿にしてるの?」
「馬鹿になどしてませんよ。
そう言って私の肋に囲まれた中心をグッと押してきた。普段ならセクハラと跳ね除けるところだが強く押されたせいでLの手のひらの感触と共に脈打つ心臓を感じる。それと同時に前から押さえつけられたせいでより密着した背中からとくとくとLの心音が直接響いてくる。不思議と私の脈拍と合っていて、まるで二人で一つの心臓みたいだった。sweetheartか。
「私には
そう言って口付けられる。
うそつき。そんなものより難解な謎の方がよっぽど好きなくせに。やっぱり馬鹿にされている気がする。
上手いこと言ったみたいな甘い雰囲気を醸し出してくる背後の男に呆れと愛しさと嬉しさと幸せとほんのちょっとの苛立ちを込めてもっと密着してやった。