名探偵のお気に入り
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「おばあさんのお耳はどうしてそんなに大きいの?」
捜査本部に似つかわしくないメルヘンな問いが部屋に響く。
ニュースを流すためだけにあるようなテレビがちょうど子供向けの時間帯だったために童話の番組を垂れ流していた。
「……集中出来ないだろ、消してくれ」
「すっすみません!」
誤ってテレビのリモコンを押してしまった松田がアワアワとリモコンを操作する。
テレビはすぐ消えたが、行き詰まった捜査状況に嫌気がさしていた竜崎の集中を乱すには充分だったらしかった。
「……ナマエの目はどうしてそんなに大きいの?」
「………………そっくりそのままお返ししますけども」
「ナマエの顔をよく見るためです」
「お返ししなきゃ良かった」
くだらないやり取りを始めてしまった隣のバカップルを見ずに大きな溜息を吐いた夜神月は立っているのも馬鹿らしくなって近くの椅子に深々と沈んだ。
こうなってしまっては少し休憩を挟まないとこの奇人たちは戻ってこない。
それを悟ったのは他のメンバーも同じなようで、溜息を吐きながら煙草を吸いに部屋を出たり書類を置いてソファに沈んだりした。
「ライトくんはどうしてそんなに顔が良いの?」
「………………それはどう返せば正解なんだ竜崎」
呆れた眼差しで見返すもビクともしないギョロ目でこちらを貫いてくる真顔の男は月の質問に返さず「私の口が大きいのはナマエを食べるためです」と続けて「お菓子を食べるためにして」と隣の少女に苦言を呈されていた。
「そういえばずっと気になっていたんですよね、竜崎はなんでそんなに猫背なんですか?」
赤ずきんちゃんごっこに参戦してきた松田がこちらへ歩み寄りながら心底不思議そうに聞いてきた。
それは気になるといえば気になるけど理由なんかあるのか。月がそう思いながら見れば少女も確かに、と呟いた。
「ずっと昔はもう少し背筋が伸びていた気もする」
「えっそうなのキティちゃん?じゃあいつからこんなに猫背になっちゃったんだろう」
「………………ナマエの身長に合わせていたからこうなったのかもしれませんね」
「えっ私のせい?」
目を瞬かせる少女にずいと顔を近づける竜崎。
「今でも背は低いですが、幼い頃はもっと小さかったですから。目線を合わせるためにかがんでいた名残かもしれません」
「確かに!竜崎、背筋伸ばせばライトくんくらいあるのに猫背だから顔の位置キティちゃんと変わらないですもんね!」
納得した!という風に手を打つ松田から2人に目を移す。
ちょうど並んで立っている男と少女は勿論男の方が背が高いものの折れた膝と酷い猫背のせいで小柄な少女とほとんど顔の高さが一緒だった。
丸いくりくりした目で男の顔を見ている少女の後ろへ回りその腹に後ろから手を回して抱き寄せると肩に顎を乗せた竜崎は「この姿勢だとこうするのにちょうど良いですし」とそのままの体勢で言うものだから耳元で喋られた少女は肩をすぼめて身をよじった。
「あとキスもしやすいですし」
「あーはいはい」
いつもの惚気が始まってしまったことに辟易しているとそういう話が好きな松田がワクワクした顔で「でもキスしやすい身長差って12cmって言うよね!」とか言い出した。
それを聞いた竜崎は今迄見たことがないくらいスッと背筋を伸ばしたものだから今迄少女の肩に乗っていた顎は少女の頭頂部まで上がった。
なるほど確かに僕と変わらないくらいの身長だと座ったまま見上げていれば、憮然とした顔の竜崎はすぐに猫背に戻って少女の肩に顎を戻すと少女の頰に自分の頰を押し付けながら「ナマエと私の身長差はちょうど12cmですがやはりこの姿勢の方がキスしやすいですね」と言った。
ぐいぐい頰を押し付けられている少女は嫌そうな顔をしながらしばらく身をよじっていたが諦めたのか溜息一つ落として松田を見た。
「何センチ差だろうと寝っ転がってたら関係なくないですか?」
心からそう思っているという風に言い放った少女に場が凍る。
顔を赤らめてそ、そうだね…なんて言いながら目線を彷徨わせる松田を訝しげに見る少女の耳元で竜崎のねっとりした声が響く。
「……全くその通りですね。お望み通り、寝転がった状態で思う存分全身にキスして差し上げます」
私の口は赤ずきんを食べるためにあるので。
耳元に吹き込まれた恐ろしい宣言に自分が何を言ってしまったのか理解した少女は真っ青になって助けを求めるように月を見た。
少女に肩入れする気はないけれどあまりに可哀想なのと自分と手錠で繋がっていることを忘れがちなオオカミに今日何度目かわからない溜息をつきながら苦言を呈す。
「同じベッドに僕がいるんだから赤ずきんちゃんを連れ込むのは遠慮してもらいたいね」
「ありがとうございます猟師さん…!」
「………僕が猟師なのか…」
「猟師は赤ずきんを食べた後に登場するんですよ。食べ終わるまで待っててください」
「どこで待ってろっていうんだよ」
赤ずきんを抱え込んだ猫背のオオカミが父さんの咳払いに屈するまでくだらない童話問答は続いた。
捜査本部に似つかわしくないメルヘンな問いが部屋に響く。
ニュースを流すためだけにあるようなテレビがちょうど子供向けの時間帯だったために童話の番組を垂れ流していた。
「……集中出来ないだろ、消してくれ」
「すっすみません!」
誤ってテレビのリモコンを押してしまった松田がアワアワとリモコンを操作する。
テレビはすぐ消えたが、行き詰まった捜査状況に嫌気がさしていた竜崎の集中を乱すには充分だったらしかった。
「……ナマエの目はどうしてそんなに大きいの?」
「………………そっくりそのままお返ししますけども」
「ナマエの顔をよく見るためです」
「お返ししなきゃ良かった」
くだらないやり取りを始めてしまった隣のバカップルを見ずに大きな溜息を吐いた夜神月は立っているのも馬鹿らしくなって近くの椅子に深々と沈んだ。
こうなってしまっては少し休憩を挟まないとこの奇人たちは戻ってこない。
それを悟ったのは他のメンバーも同じなようで、溜息を吐きながら煙草を吸いに部屋を出たり書類を置いてソファに沈んだりした。
「ライトくんはどうしてそんなに顔が良いの?」
「………………それはどう返せば正解なんだ竜崎」
呆れた眼差しで見返すもビクともしないギョロ目でこちらを貫いてくる真顔の男は月の質問に返さず「私の口が大きいのはナマエを食べるためです」と続けて「お菓子を食べるためにして」と隣の少女に苦言を呈されていた。
「そういえばずっと気になっていたんですよね、竜崎はなんでそんなに猫背なんですか?」
赤ずきんちゃんごっこに参戦してきた松田がこちらへ歩み寄りながら心底不思議そうに聞いてきた。
それは気になるといえば気になるけど理由なんかあるのか。月がそう思いながら見れば少女も確かに、と呟いた。
「ずっと昔はもう少し背筋が伸びていた気もする」
「えっそうなのキティちゃん?じゃあいつからこんなに猫背になっちゃったんだろう」
「………………ナマエの身長に合わせていたからこうなったのかもしれませんね」
「えっ私のせい?」
目を瞬かせる少女にずいと顔を近づける竜崎。
「今でも背は低いですが、幼い頃はもっと小さかったですから。目線を合わせるためにかがんでいた名残かもしれません」
「確かに!竜崎、背筋伸ばせばライトくんくらいあるのに猫背だから顔の位置キティちゃんと変わらないですもんね!」
納得した!という風に手を打つ松田から2人に目を移す。
ちょうど並んで立っている男と少女は勿論男の方が背が高いものの折れた膝と酷い猫背のせいで小柄な少女とほとんど顔の高さが一緒だった。
丸いくりくりした目で男の顔を見ている少女の後ろへ回りその腹に後ろから手を回して抱き寄せると肩に顎を乗せた竜崎は「この姿勢だとこうするのにちょうど良いですし」とそのままの体勢で言うものだから耳元で喋られた少女は肩をすぼめて身をよじった。
「あとキスもしやすいですし」
「あーはいはい」
いつもの惚気が始まってしまったことに辟易しているとそういう話が好きな松田がワクワクした顔で「でもキスしやすい身長差って12cmって言うよね!」とか言い出した。
それを聞いた竜崎は今迄見たことがないくらいスッと背筋を伸ばしたものだから今迄少女の肩に乗っていた顎は少女の頭頂部まで上がった。
なるほど確かに僕と変わらないくらいの身長だと座ったまま見上げていれば、憮然とした顔の竜崎はすぐに猫背に戻って少女の肩に顎を戻すと少女の頰に自分の頰を押し付けながら「ナマエと私の身長差はちょうど12cmですがやはりこの姿勢の方がキスしやすいですね」と言った。
ぐいぐい頰を押し付けられている少女は嫌そうな顔をしながらしばらく身をよじっていたが諦めたのか溜息一つ落として松田を見た。
「何センチ差だろうと寝っ転がってたら関係なくないですか?」
心からそう思っているという風に言い放った少女に場が凍る。
顔を赤らめてそ、そうだね…なんて言いながら目線を彷徨わせる松田を訝しげに見る少女の耳元で竜崎のねっとりした声が響く。
「……全くその通りですね。お望み通り、寝転がった状態で思う存分全身にキスして差し上げます」
私の口は赤ずきんを食べるためにあるので。
耳元に吹き込まれた恐ろしい宣言に自分が何を言ってしまったのか理解した少女は真っ青になって助けを求めるように月を見た。
少女に肩入れする気はないけれどあまりに可哀想なのと自分と手錠で繋がっていることを忘れがちなオオカミに今日何度目かわからない溜息をつきながら苦言を呈す。
「同じベッドに僕がいるんだから赤ずきんちゃんを連れ込むのは遠慮してもらいたいね」
「ありがとうございます猟師さん…!」
「………僕が猟師なのか…」
「猟師は赤ずきんを食べた後に登場するんですよ。食べ終わるまで待っててください」
「どこで待ってろっていうんだよ」
赤ずきんを抱え込んだ猫背のオオカミが父さんの咳払いに屈するまでくだらない童話問答は続いた。