名探偵のお気に入り
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何の変哲も無い白いTシャツにこれまた何の変哲も無いジーパン。
何処にでも売っていて誰もが着た事のあるその服も、私にとっては特別なんです。
「おはよ、エル」
「おはようございます」
どんなに早起きしたってこの人は私より先に起きていて、パソコンやら書類やらを睨んだまま挨拶を返す。
社交辞令なんだなぁ、と今更ながらに思ったり。ホントに今更。
エルとは幼少期から知り合いで、それは私の頭が常人よりもちょっとキレるから、っていう理由があるからで。
ただそれだけ。
だから事件があるたびにその時々の秘密の捜査拠点に招かれて、エルとひとつ同じ屋根の下(って言うのかなホテルでも)に住んでいるのも捜査のお手伝いを頼まれたからだけで。
仕事が終われば事件が解決しなくともバイバイなんだろうなぁと思うと切ない。
ワタリのようにずっとそばにおいてくれれば。
そんな価値、私にはないんだろうけれど。
「朝ご飯は食べましたか」
「あ、ううん、まだ」
目覚めてすぐにエルに会いたくて与えられた自室からエレベーターも使わずに階段かけ上がって来たから。
なんて口が裂けても言えない。
「丁度良かった、一緒にどうですか」
「え、」
「サンドウィッチですが。嫌いですか」
「う、ううん、好き」
細く見えても結構力のあるその腕で机を押し、床に足をつく事無くキャスター付きの椅子でサンドウィッチの乗ったテーブルの前まで移動してくると傍にあった椅子を私に勧めた。
ラップのかかった白い皿には上品なサンドウィッチが数種、綺麗に並べられていた。
向かい合わせになるように椅子を選んで座り、エルがラップをはずすのを見ていた。
白くて細い指。
視線はそのままエル自体に移る。
白いTシャツによれよれのジーパン。髪はくしゃくしゃでその上裸足。
私は髪はきちんと梳かしてきたけれど、服は白いTシャツにジーパンで、裸足、なんだ。
直接会うことはない他の捜査員たちは普段スーツを着ているし、ワタリもきっちりモーニングを着込んでいるし、こんなラフな格好をしているのは私とエルだけ。
ペアルック、なんて、心の中で密かに思っているのも厚かましい事なんだろうか。
勿論偶然なんかじゃない。
同じものを着たい、と思って、勝手に似たものをチョイスして着ているだけ。
似非ペアルックにも、私の気持ちにも、気付いてくれなくて良いから、ただの自己満足だから。
「似合いますね」
「え?」
「そのTシャツ」
心臓が止まったかと思った。
サンドウィッチを取り落としそうになりながらも持ち前の演技力で何とかポーカーフェイスを崩さずにすむ。
「似合うも何も…ただの無地の白いTシャツなんて誰でも似合うよー」
「そんな事無いですよ」
間髪入れず突っ込まれ、視線を上げればいつもどおりの清ました顔でサンドウィッチに齧り付きながら
「似合うのは私と貴女だけです」
と、小さく早く、でも絶対に、そう言った。
どうして欲しいの、気付かれたの?
世紀の探偵だもの、朝飯前か。
なんて返せば良いのか、仕事中ならすらすら出てくる都合のいい言葉たちは肝心なときに役立たずで。
「好きなんですよね」
今度こそ、心臓が止まったと思った。
「その格好」
あ、この格好、あ、そう。
うん、と小さく答えれば、滅多に変わらない彼の顔が心なしか穏やかに微笑んだ気がした。
好きだよ、大好き、この格好。
だって、あなたとおそろいだから。
「好き、だよ、」
「私もです」
いいんだ、その返事が服についてだって事くらいわかってる。
でも、それでも、
「好きなんだ、とっても」
貴方の事が
何処にでも売っていて誰もが着た事のあるその服も、私にとっては特別なんです。
「おはよ、エル」
「おはようございます」
どんなに早起きしたってこの人は私より先に起きていて、パソコンやら書類やらを睨んだまま挨拶を返す。
社交辞令なんだなぁ、と今更ながらに思ったり。ホントに今更。
エルとは幼少期から知り合いで、それは私の頭が常人よりもちょっとキレるから、っていう理由があるからで。
ただそれだけ。
だから事件があるたびにその時々の秘密の捜査拠点に招かれて、エルとひとつ同じ屋根の下(って言うのかなホテルでも)に住んでいるのも捜査のお手伝いを頼まれたからだけで。
仕事が終われば事件が解決しなくともバイバイなんだろうなぁと思うと切ない。
ワタリのようにずっとそばにおいてくれれば。
そんな価値、私にはないんだろうけれど。
「朝ご飯は食べましたか」
「あ、ううん、まだ」
目覚めてすぐにエルに会いたくて与えられた自室からエレベーターも使わずに階段かけ上がって来たから。
なんて口が裂けても言えない。
「丁度良かった、一緒にどうですか」
「え、」
「サンドウィッチですが。嫌いですか」
「う、ううん、好き」
細く見えても結構力のあるその腕で机を押し、床に足をつく事無くキャスター付きの椅子でサンドウィッチの乗ったテーブルの前まで移動してくると傍にあった椅子を私に勧めた。
ラップのかかった白い皿には上品なサンドウィッチが数種、綺麗に並べられていた。
向かい合わせになるように椅子を選んで座り、エルがラップをはずすのを見ていた。
白くて細い指。
視線はそのままエル自体に移る。
白いTシャツによれよれのジーパン。髪はくしゃくしゃでその上裸足。
私は髪はきちんと梳かしてきたけれど、服は白いTシャツにジーパンで、裸足、なんだ。
直接会うことはない他の捜査員たちは普段スーツを着ているし、ワタリもきっちりモーニングを着込んでいるし、こんなラフな格好をしているのは私とエルだけ。
ペアルック、なんて、心の中で密かに思っているのも厚かましい事なんだろうか。
勿論偶然なんかじゃない。
同じものを着たい、と思って、勝手に似たものをチョイスして着ているだけ。
似非ペアルックにも、私の気持ちにも、気付いてくれなくて良いから、ただの自己満足だから。
「似合いますね」
「え?」
「そのTシャツ」
心臓が止まったかと思った。
サンドウィッチを取り落としそうになりながらも持ち前の演技力で何とかポーカーフェイスを崩さずにすむ。
「似合うも何も…ただの無地の白いTシャツなんて誰でも似合うよー」
「そんな事無いですよ」
間髪入れず突っ込まれ、視線を上げればいつもどおりの清ました顔でサンドウィッチに齧り付きながら
「似合うのは私と貴女だけです」
と、小さく早く、でも絶対に、そう言った。
どうして欲しいの、気付かれたの?
世紀の探偵だもの、朝飯前か。
なんて返せば良いのか、仕事中ならすらすら出てくる都合のいい言葉たちは肝心なときに役立たずで。
「好きなんですよね」
今度こそ、心臓が止まったと思った。
「その格好」
あ、この格好、あ、そう。
うん、と小さく答えれば、滅多に変わらない彼の顔が心なしか穏やかに微笑んだ気がした。
好きだよ、大好き、この格好。
だって、あなたとおそろいだから。
「好き、だよ、」
「私もです」
いいんだ、その返事が服についてだって事くらいわかってる。
でも、それでも、
「好きなんだ、とっても」
貴方の事が