名探偵のお気に入り
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「えっ?私が捜査本部に?」
ワタリから聞かされて思わず聞き間違いかと振り返る。
元々キラ事件にはICPOに協力要請を出す前から加わっているから今更姿を表す意図がわからない。
危険に晒したくないからとずっと別室で人目に触れないよう囲われ、警察ともFBIともコンタクトを取らず、ワタリの振りして同じパソコンから声をかけながら捜査に協力していた。
本当はエルが姿を晒すのにも反対したくらいだ。しかし晒す必要性を理詰めで説得されてはこちらはもう何も言えない。そこらへんの探偵と比べたら群を抜いている自信はあるけど、エルの頭脳にはとても及ばないから。
建設したての秘密基地ビル(設計からセキュリティ関係もろもろ全て私の監修だ)に捜査本部が移転してまだ数日もたっていない。
世の中の誰にも秘密の存在だった私を、世の中の誰よりも隠しておくべき夜神月と弥海砂の元に晒すなんて。エルは何考えてるんだろう。エルしか連絡の取れないもう1人のLがいたという衝撃の事実をぶつけて揺さぶる?エルと長く共にある存在を教えてどう人質に取ってくるか見る?私はわかりやすい罠なのか。
考え込んでいるとふわりと良い匂いをさせて目の前に紅茶のカップが置かれた。顔をあげれば淹れてくれたワタリが優しい顔で私を見下ろしている。
「捜査本部も本格移転しましたし、ホテルを共に点々とさせるより同じビルに住まわせる方が安全と考えたようです」
「…そうかもしれないけど、今迄通り皆の前に姿は現さず別フロアから一緒にやれば良いじゃん?」
「モニターでご覧になったでしょうけど今Lは夜神月と手錠で繋がれています」
「24時間見張るためだからね。夜神総一郎を釈放する時にしばらく会えなくなるって直接言いに来たよ」
今迄は私のいる部屋にちょくちょくエルが来て直接意見を交わしたり一緒にモニターを見たり、同じ部屋にいない時でも個別に電話連絡が来たりしていた。
しかし私の存在を隠す以上、24時間夜神月が隣にいる状況でそんなことはできない。直接コンタクトが取れるとすれば"他のL"としてPC画面越しに会話するくらいだ。
「私を通して連絡を取るにしても夜神月に不審がられないよう隠語を駆使して指示せねばなりませんし、それでは捜査効率が落ちるので2人が黒からグレーになった今、姿を晒してでも捜査本部で一緒に闘いたいとのことです」
「ワタリを通して暗号や隠語でのやり取りなんてキラ事件にかかわらず今迄もずっとやってきたことだし、そんなことで作業効率を下げたりなんてしないよ」
「…これは、夜神月と繋がった後の指示なので直接そのように仰った訳ではないのですが、」
一瞬言い澱み、あくまで私の憶測ですがとくどいくらい保険をかけるワタリに不思議に思いながら紅茶を啜り目線で続きを促す。
「……ナマエと会えないのが耐えられないのだと思います」
「……!…??………!?」
あまりの予想外発言に理解が遅れ、私はカップに口を付けたまま目を剥いてワタリを見上げた。
「…えっ?………………は?」
「今のLは近年稀にみるほど落ち込んでいます。負けず嫌いですから途中で投げ出すことなどあり得ませんが、もう少しでクリア出来そうだった面で詰んでいる状態なので元気もやる気も萎えていますし、そんな状況で貴女とのコンタクトが潰えることはモチベーション低下に拍車をかけて作業効率の悪化を招きます」
「コンタクトが潰えるって…今迄だって連絡取れなかったり会わなかったことなんて多々あったじゃない」
「今迄とは状況が異なるということです。今朝、彼が何と言ったか…『蜂蜜を、今すぐ』ですよ。私も耳を疑い聞き返してしまいましたら『今すぐ、早く、絶対に、蜂蜜でないとダメだ』と」
今度こそ絶句した。
紅茶やコーヒーに溶けきらない程の角砂糖を入れるのは味覚がどうとかよりもはや彼の趣味だが、そんな習性を利用した隠語の一つが『蜂蜜をここに』。
知らない者が聞けば、今日は砂糖でなく蜂蜜の気分なのか?と思わなくもないそれーーー蜂蜜とは私のことだ。
彼にハニーなんて甘ったれた呼ばれ方はした事がないけれど、つまりそういう事なんだろうなと察してしまうので私はこの隠語が恥ずかしくて好きじゃない、がエルに必要とされて呼び出されることは嬉しいので複雑だ。
それにしたって。
「た、耐えられないって、まだ2週間も経ってないよ…?」
「終わりの見えない制約ですからね。いつまで我慢すればいいかもわからないのは今の彼には問題でしょう」
そんな。そんなことで。
私だって会えないのは寂しいけれど私自身がLの捜査の邪魔になっているということじゃないか。そんな邪念に頭を占拠されている場合じゃないことは彼だってわかっているはず。いやわかっているからこそ早めに手を打とうとしているんだろうけれど。でも。
そばに常に在れば精神安定という意味でも役に立てる。しかし同時に彼の弱点を公表することにもなる。どちらにせよお荷物なことに絶望してシングルソファに沈み込んでいると諭すように「ご準備を」と言われた。私が何を言おうともう決定事項なのだ。
だいたい、彼と四六時中一緒にいられるようになったのはここ一年くらいの話だし、その前は何か事件がないとコンタクトは取れないし年単位で会わなかったことだってあるのに。なんで今この大切な時にたった2週間で根をあげるのか。
そのことを独り言のように零せば「今迄の会っていない時は四六時中モニターで監視カメラ映像を流していましたから。視界には常に入れていたんですよ」繋がれた今の状況じゃそんな映像見れませんからね、と至極当然のことを言ったみたいな顔でさらりと恐ろしいことを言われた。そうだった。つい最近知ったことだけど、彼は私が会いたいな何してるのかな元気かななどと健気に想っていた時にのうのうとワイミーズハウスを盗撮し一方的に私を視ていたのだ。私だってエルの生配信見たかった。一方的にズルイ。
「………これは口止めされていたのですが、キラ事件捜査を開始してからも貴女はずっと見られていました」
「………………!?」
今日のワタリ爆弾発言多すぎる。
えっ、てことは何か、今この部屋にも監視カメラが隠されているのか?捜査開始からかれこれ8ヵ月くらい経つけど、その間会えなかった時も向こうは一方的に見たい時に私を見れていたと?何それズルイ。本部の固定カメラの映像はリアルタイムで貰っていたから私からも好きな時にエルの姿を見れてはいたんだけど。
独りになれないと流石に私的映像チェックが出来ないから、彼は今ここ10年で初めて私の姿を好きに見れない状況にいるんだ。それはストレスかもしれない。
状況はわかった。捜査に私欲私情を持ち込むのは論外とも思うけど、彼はゲームを楽しむように捜査しているのだから最初から私利私欲に塗れた動機なんだ。腹をくくろう。せめて、私が彼の弱点と思われないように在らねば。
私の顔を見たワタリは安心したように笑った。
「本日中にここを引き払って捜査本部ビルのワンフロアへ異動していただきます。捜査本部への加入は明日の予定です」
「わかったよ」
「名前はナマエ・ドヌーヴを名乗るように」
「えっ?」
ドヌーヴ。エルの名前の一つだ。私にだって専用の名前がいくつかあるからそれを使うと思っていたのに。なぜわざわざエルの名前の一つを使わせる?確かに世界三大探偵のうちLとドヌーヴが組んでいたとみせるのは希望になってモチベアップに繋がるかもしれないけど…
「貴女はLの協力者でも後継者でもない。Lの片割れなんですよ」
ワタリが静かに言った。
Lの片割れ。Lの一部。
なるほど、だからドヌーヴ を名乗れと。
私はエルの弱点でもお荷物でもない。
エルの片割れ、エルの一部、彼自身なのか。
ならば早く彼の元へ行かないとね。2人で一つの"L"なのだから。
冷めてしまった紅茶をグイッと飲み干すと勢い良く立ち上がった。
ワタリから聞かされて思わず聞き間違いかと振り返る。
元々キラ事件にはICPOに協力要請を出す前から加わっているから今更姿を表す意図がわからない。
危険に晒したくないからとずっと別室で人目に触れないよう囲われ、警察ともFBIともコンタクトを取らず、ワタリの振りして同じパソコンから声をかけながら捜査に協力していた。
本当はエルが姿を晒すのにも反対したくらいだ。しかし晒す必要性を理詰めで説得されてはこちらはもう何も言えない。そこらへんの探偵と比べたら群を抜いている自信はあるけど、エルの頭脳にはとても及ばないから。
建設したての秘密基地ビル(設計からセキュリティ関係もろもろ全て私の監修だ)に捜査本部が移転してまだ数日もたっていない。
世の中の誰にも秘密の存在だった私を、世の中の誰よりも隠しておくべき夜神月と弥海砂の元に晒すなんて。エルは何考えてるんだろう。エルしか連絡の取れないもう1人のLがいたという衝撃の事実をぶつけて揺さぶる?エルと長く共にある存在を教えてどう人質に取ってくるか見る?私はわかりやすい罠なのか。
考え込んでいるとふわりと良い匂いをさせて目の前に紅茶のカップが置かれた。顔をあげれば淹れてくれたワタリが優しい顔で私を見下ろしている。
「捜査本部も本格移転しましたし、ホテルを共に点々とさせるより同じビルに住まわせる方が安全と考えたようです」
「…そうかもしれないけど、今迄通り皆の前に姿は現さず別フロアから一緒にやれば良いじゃん?」
「モニターでご覧になったでしょうけど今Lは夜神月と手錠で繋がれています」
「24時間見張るためだからね。夜神総一郎を釈放する時にしばらく会えなくなるって直接言いに来たよ」
今迄は私のいる部屋にちょくちょくエルが来て直接意見を交わしたり一緒にモニターを見たり、同じ部屋にいない時でも個別に電話連絡が来たりしていた。
しかし私の存在を隠す以上、24時間夜神月が隣にいる状況でそんなことはできない。直接コンタクトが取れるとすれば"他のL"としてPC画面越しに会話するくらいだ。
「私を通して連絡を取るにしても夜神月に不審がられないよう隠語を駆使して指示せねばなりませんし、それでは捜査効率が落ちるので2人が黒からグレーになった今、姿を晒してでも捜査本部で一緒に闘いたいとのことです」
「ワタリを通して暗号や隠語でのやり取りなんてキラ事件にかかわらず今迄もずっとやってきたことだし、そんなことで作業効率を下げたりなんてしないよ」
「…これは、夜神月と繋がった後の指示なので直接そのように仰った訳ではないのですが、」
一瞬言い澱み、あくまで私の憶測ですがとくどいくらい保険をかけるワタリに不思議に思いながら紅茶を啜り目線で続きを促す。
「……ナマエと会えないのが耐えられないのだと思います」
「……!…??………!?」
あまりの予想外発言に理解が遅れ、私はカップに口を付けたまま目を剥いてワタリを見上げた。
「…えっ?………………は?」
「今のLは近年稀にみるほど落ち込んでいます。負けず嫌いですから途中で投げ出すことなどあり得ませんが、もう少しでクリア出来そうだった面で詰んでいる状態なので元気もやる気も萎えていますし、そんな状況で貴女とのコンタクトが潰えることはモチベーション低下に拍車をかけて作業効率の悪化を招きます」
「コンタクトが潰えるって…今迄だって連絡取れなかったり会わなかったことなんて多々あったじゃない」
「今迄とは状況が異なるということです。今朝、彼が何と言ったか…『蜂蜜を、今すぐ』ですよ。私も耳を疑い聞き返してしまいましたら『今すぐ、早く、絶対に、蜂蜜でないとダメだ』と」
今度こそ絶句した。
紅茶やコーヒーに溶けきらない程の角砂糖を入れるのは味覚がどうとかよりもはや彼の趣味だが、そんな習性を利用した隠語の一つが『蜂蜜をここに』。
知らない者が聞けば、今日は砂糖でなく蜂蜜の気分なのか?と思わなくもないそれーーー蜂蜜とは私のことだ。
彼にハニーなんて甘ったれた呼ばれ方はした事がないけれど、つまりそういう事なんだろうなと察してしまうので私はこの隠語が恥ずかしくて好きじゃない、がエルに必要とされて呼び出されることは嬉しいので複雑だ。
それにしたって。
「た、耐えられないって、まだ2週間も経ってないよ…?」
「終わりの見えない制約ですからね。いつまで我慢すればいいかもわからないのは今の彼には問題でしょう」
そんな。そんなことで。
私だって会えないのは寂しいけれど私自身がLの捜査の邪魔になっているということじゃないか。そんな邪念に頭を占拠されている場合じゃないことは彼だってわかっているはず。いやわかっているからこそ早めに手を打とうとしているんだろうけれど。でも。
そばに常に在れば精神安定という意味でも役に立てる。しかし同時に彼の弱点を公表することにもなる。どちらにせよお荷物なことに絶望してシングルソファに沈み込んでいると諭すように「ご準備を」と言われた。私が何を言おうともう決定事項なのだ。
だいたい、彼と四六時中一緒にいられるようになったのはここ一年くらいの話だし、その前は何か事件がないとコンタクトは取れないし年単位で会わなかったことだってあるのに。なんで今この大切な時にたった2週間で根をあげるのか。
そのことを独り言のように零せば「今迄の会っていない時は四六時中モニターで監視カメラ映像を流していましたから。視界には常に入れていたんですよ」繋がれた今の状況じゃそんな映像見れませんからね、と至極当然のことを言ったみたいな顔でさらりと恐ろしいことを言われた。そうだった。つい最近知ったことだけど、彼は私が会いたいな何してるのかな元気かななどと健気に想っていた時にのうのうとワイミーズハウスを盗撮し一方的に私を視ていたのだ。私だってエルの生配信見たかった。一方的にズルイ。
「………これは口止めされていたのですが、キラ事件捜査を開始してからも貴女はずっと見られていました」
「………………!?」
今日のワタリ爆弾発言多すぎる。
えっ、てことは何か、今この部屋にも監視カメラが隠されているのか?捜査開始からかれこれ8ヵ月くらい経つけど、その間会えなかった時も向こうは一方的に見たい時に私を見れていたと?何それズルイ。本部の固定カメラの映像はリアルタイムで貰っていたから私からも好きな時にエルの姿を見れてはいたんだけど。
独りになれないと流石に私的映像チェックが出来ないから、彼は今ここ10年で初めて私の姿を好きに見れない状況にいるんだ。それはストレスかもしれない。
状況はわかった。捜査に私欲私情を持ち込むのは論外とも思うけど、彼はゲームを楽しむように捜査しているのだから最初から私利私欲に塗れた動機なんだ。腹をくくろう。せめて、私が彼の弱点と思われないように在らねば。
私の顔を見たワタリは安心したように笑った。
「本日中にここを引き払って捜査本部ビルのワンフロアへ異動していただきます。捜査本部への加入は明日の予定です」
「わかったよ」
「名前はナマエ・ドヌーヴを名乗るように」
「えっ?」
ドヌーヴ。エルの名前の一つだ。私にだって専用の名前がいくつかあるからそれを使うと思っていたのに。なぜわざわざエルの名前の一つを使わせる?確かに世界三大探偵のうちLとドヌーヴが組んでいたとみせるのは希望になってモチベアップに繋がるかもしれないけど…
「貴女はLの協力者でも後継者でもない。Lの片割れなんですよ」
ワタリが静かに言った。
Lの片割れ。Lの一部。
なるほど、だから
私はエルの弱点でもお荷物でもない。
エルの片割れ、エルの一部、彼自身なのか。
ならば早く彼の元へ行かないとね。2人で一つの"L"なのだから。
冷めてしまった紅茶をグイッと飲み干すと勢い良く立ち上がった。