名探偵のお気に入り
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捜査本部が竜崎の建てた秘密基地もとい高層ビルに移転して2日目。
竜崎との本気の殴り合いも松田さんのボケにより一時中断、その後気の済むまで殴り合った僕らはミサの部屋を出て捜査ルームへと戻った。他の人はモニタールームにいただろうから誰もいないはずの部屋の中に目をやれば、捜査資料を摘んで眺めている女の子がいた。
まさか人がいるとは思っていなかったため、視界に入った白い長袖Tシャツにゆるゆるのジーンズ姿のその子が見えてはならないモノかと一瞬心臓が跳ねる。
「えっこども!?」
一泊置いて、彼女が幽霊なんかではなく生きている人間だと理解した僕は思った通りのことを口に出していた。
小学生…いや、ギリ中学生か…?
10歳かそこらに見える正真正銘の「女の子」は声をあげた僕の方をチラリと見た。
ジャラ、と金属音を立てながら鎖に引っ張られるように遅れて部屋に踏み入った男に振り向いてこれが誰なのか問い質す。セキュリティ万全のこのビルの、しかもこの部屋にいるということはそういうことなんだろうけど、何も聞かされていないし、何より、こどもだ。
「竜崎!こどもが…!」
「ああ、待っていましたよナマエ」
僕のことを半ば無視して女の子にそう声をかけたこの男に、無表情だった女の子は花が咲くように笑いかけた。
捜査本部の皆も部屋に戻ってきて突然の女の子出現にギョッとしている。
「竜崎、なんでこんな小さな子が…」
「月くんが思ってるよりずっと年上ですから安心してください」
「お酒も飲めますから」
「えっ…僕より年上ってこと?」
それはどうでしょう、と濁されて、10代で飲酒出来る国の方が多いことを思い出す。イギリスなんて親の同意があれば家で5歳から飲めるはずだ。
日本人ならではの思い込みのせいであてにならない情報に踊らせられたと気付く。簡単に素性を明かす筈がないのだから歳なんて教えてくれるわけがないか。
「皆さん、紹介します。"もう1人のL "です」
「初めまして、ナマエ・ドヌーヴです」
さらりととんでもない事を言う竜崎と、その隣でさらにとんでもない自己紹介をする少女に部屋がざわめく。
「ドヌーヴってあの!?」
「Lと並んで世界三大探偵と言われる…!Lと繋がってたのか」
どこにも顔を出さない伝説の探偵だ。
名前からしてフランス人だろうとは思っていたがまさかこんな幼い少女だったとは。僕が中学生くらいの頃からその名は知られていたから、この少女は本当に僕より年上かもしれない。
少女特有のひょろりとした長い手脚に成長途中の胴体、幼い顔立ち、やはり何度見ても10歳かそこらに見える…。年齢不詳な少女をまじまじと観察しているとその弾けるようなハリのある肌が柔らかく笑んだ。
「勿論、探偵としてのコードネームというか、偽名ですから気になさらずナマエでもドヌーヴでも呼びやすい方で呼んでください」
ニコリと微笑んで小首を傾げる様は可憐な少女そのもので、とても世界に名を轟かす探偵とは思えない。まぁ、竜崎だってL像には程遠いのだから見た目とイメージは合わないものなのかもしれないが。
「念には念をおして今迄隠れてもらっていましたが、実は夜神さんたちとの対策本部を設立してからずっと一緒に捜査して貰っていました。ここに越してきたこともあり、皆さんのこともあの頃より信頼していますので姿を現して貰うことにしました。彼女がドヌーヴだというのは私とワタリ以外全世界で誰も知らないことですし、彼女の本名や素性は私レベルに秘匿されてます。勿論写真なども一切残さず生きてきていますから、万が一近日中に彼女に何かあればこの中にキラがいるということになります」
淡々とまたしても爆弾を落としながら説明する男にこちら側もおぉ…とかえぇ…とかなんとも言えない声を漏らす。部屋にいないが捜査協力している"別のL"はワタリのことだと思っていたが、本当に『Lという複数捜査団』だったとは。
「よろしくお願いします」
丁寧に深々と頭を下げた彼女につられてこちらも皆で会釈を返す。
赤毛に翠眼、抜けるような白い肌と典型的な白人だけど日本語も流暢だしもしかして日本育ちなのだろうか。
観察しながら考えごとをしていたらこちらに一歩近付いてきた彼女が僕を見上げて口を開いた。
「監視も兼ねてになりますが、歳の近い女性がいた方が良いかと思うので弥海砂の世話役もやらせていただきます」
「あ、ああ、よろしく頼むよ」
「ナマエには弥海砂同様ワンフロア割り当ててあります。彼女以外出入り出来ないフロアになってますので変な気は起こさないように」
こんなこども(見た目だけかもしれないが)相手に変な気って…と呆れた空気が流れる中、松田桃太がずいっと近付いて声をかける。
「あ、あのナマエちゃん」
「はい、何でしょう」
「松田!じゃない松田さん、是非ドヌーヴと呼んでください」
「えっ竜崎…でもどちらでも良いって…」
「ドヌーヴと、呼んで、ください」
「竜崎はナマエ呼びなのに…?」
「ごめんなさい、竜崎自身もドヌーヴと名乗ることもあって…『竜崎』『ドヌーヴ』は"L"が共用している名前なので私達はお互いを区別して呼ぶ時には『L』『ナマエ』と呼び合っているんです…けど、ここでは『L=竜崎』ですから私のことは『ドヌーヴ』に統一した方が良いかもしれませんね」
「なるほど…わかりました!じゃあドヌーヴちゃん?て呼んで良いかな?」
「はい、是非」
「すごく若く見えるけど本当はいくつなの?」
「…ナイショです」
「女性に歳を聞くものじゃありませんよ」
不機嫌そうに松田さんをシッシッと追いやった竜崎に、最後の発言だけは同意する。
「ナマエ」
「え、さっきドヌーヴに統一って、」
「皆さんはドヌーヴと呼んでください。私はナマエと呼びます」
「ええ…ちょっと、ワガママ言わないでよL…」
「私はそう呼ばないと推理力が70%落ちますので」
「そんなに!?」
コントのようなやり取りを始めた2人を驚きながら観察する。竜崎が冗談を言う(冗談であってほしい)ことや、彼女が随分フランクに接していること…ーーー今も「暴行を加えられ打ち身に擦り傷…全身ボロボロです手当してください」「喧嘩両成敗、知らないよ自業自得」なんてやり取りをしているーーーそして並ぶとよくわかる同じ服装。ミニチュアの竜崎とでもいうのか。ワタリは竜崎に敬語で竜崎はワタリにタメ口だが、このドヌーヴという少女は竜崎にタメ口で対する竜崎の方が敬語だ。竜崎は捜査本部の人間相手には敬語だし僕らはタメ口で接しているから同じといえばそれまでだけど、見た目が幼い少女とのやり取りを客観的に見ると違和感がある。
だいたい、本当にこの少女があのドヌーヴなのか?僕らを試すハッタリではないのか。今迄ずっと隠してきたというなら今姿を表せてみせた理由は?
僕はまだキラだと疑われているからこそこの手錠を嵌めているわけだし、こんな意味不明なことで何かを見ているのか?真意はなんだ?男所帯に若い少女を投入してミサを懐柔する算段か?
ぐるぐる考え込んでいると元々パーソナルスペースが死に気味の竜崎が異様に彼女に近いことに気付いてハッとする。後ろからおぶさるように抱き込んで、果敢に話しかける松田をシッシッと手で払うせいでその手首から繋がる鎖に僕自身の腕がリズミカルに引っ張られて不愉快だ。
予想外の過保護っぷりに、もしや隠し子とか…?とよぎるが、いやいやまさか、竜崎も年齢不詳だがこんな大きな子がいるほどの歳でもないだろう。というか竜崎が父親というのが想像できない。
騒がしくしたのを相沢さんに叱られ、少し静かになった方を改めて見たらバチリと少女と目が合ってしまった。
「改めて、よろしくお願いしますね、夜神月くん」
「あ、ああ…」
無邪気な笑顔を向けられたが綺麗な緑色の瞳の奥が深海のように深く暗く冷たい碧で、全く笑っていないことに気付いた僕はゾワッと背筋を凍らせたまま、吸い込まれたかのようにその瞳から目が逸らせないでいた。
竜崎との本気の殴り合いも松田さんのボケにより一時中断、その後気の済むまで殴り合った僕らはミサの部屋を出て捜査ルームへと戻った。他の人はモニタールームにいただろうから誰もいないはずの部屋の中に目をやれば、捜査資料を摘んで眺めている女の子がいた。
まさか人がいるとは思っていなかったため、視界に入った白い長袖Tシャツにゆるゆるのジーンズ姿のその子が見えてはならないモノかと一瞬心臓が跳ねる。
「えっこども!?」
一泊置いて、彼女が幽霊なんかではなく生きている人間だと理解した僕は思った通りのことを口に出していた。
小学生…いや、ギリ中学生か…?
10歳かそこらに見える正真正銘の「女の子」は声をあげた僕の方をチラリと見た。
ジャラ、と金属音を立てながら鎖に引っ張られるように遅れて部屋に踏み入った男に振り向いてこれが誰なのか問い質す。セキュリティ万全のこのビルの、しかもこの部屋にいるということはそういうことなんだろうけど、何も聞かされていないし、何より、こどもだ。
「竜崎!こどもが…!」
「ああ、待っていましたよナマエ」
僕のことを半ば無視して女の子にそう声をかけたこの男に、無表情だった女の子は花が咲くように笑いかけた。
捜査本部の皆も部屋に戻ってきて突然の女の子出現にギョッとしている。
「竜崎、なんでこんな小さな子が…」
「月くんが思ってるよりずっと年上ですから安心してください」
「お酒も飲めますから」
「えっ…僕より年上ってこと?」
それはどうでしょう、と濁されて、10代で飲酒出来る国の方が多いことを思い出す。イギリスなんて親の同意があれば家で5歳から飲めるはずだ。
日本人ならではの思い込みのせいであてにならない情報に踊らせられたと気付く。簡単に素性を明かす筈がないのだから歳なんて教えてくれるわけがないか。
「皆さん、紹介します。"もう1人のL "です」
「初めまして、ナマエ・ドヌーヴです」
さらりととんでもない事を言う竜崎と、その隣でさらにとんでもない自己紹介をする少女に部屋がざわめく。
「ドヌーヴってあの!?」
「Lと並んで世界三大探偵と言われる…!Lと繋がってたのか」
どこにも顔を出さない伝説の探偵だ。
名前からしてフランス人だろうとは思っていたがまさかこんな幼い少女だったとは。僕が中学生くらいの頃からその名は知られていたから、この少女は本当に僕より年上かもしれない。
少女特有のひょろりとした長い手脚に成長途中の胴体、幼い顔立ち、やはり何度見ても10歳かそこらに見える…。年齢不詳な少女をまじまじと観察しているとその弾けるようなハリのある肌が柔らかく笑んだ。
「勿論、探偵としてのコードネームというか、偽名ですから気になさらずナマエでもドヌーヴでも呼びやすい方で呼んでください」
ニコリと微笑んで小首を傾げる様は可憐な少女そのもので、とても世界に名を轟かす探偵とは思えない。まぁ、竜崎だってL像には程遠いのだから見た目とイメージは合わないものなのかもしれないが。
「念には念をおして今迄隠れてもらっていましたが、実は夜神さんたちとの対策本部を設立してからずっと一緒に捜査して貰っていました。ここに越してきたこともあり、皆さんのこともあの頃より信頼していますので姿を現して貰うことにしました。彼女がドヌーヴだというのは私とワタリ以外全世界で誰も知らないことですし、彼女の本名や素性は私レベルに秘匿されてます。勿論写真なども一切残さず生きてきていますから、万が一近日中に彼女に何かあればこの中にキラがいるということになります」
淡々とまたしても爆弾を落としながら説明する男にこちら側もおぉ…とかえぇ…とかなんとも言えない声を漏らす。部屋にいないが捜査協力している"別のL"はワタリのことだと思っていたが、本当に『Lという複数捜査団』だったとは。
「よろしくお願いします」
丁寧に深々と頭を下げた彼女につられてこちらも皆で会釈を返す。
赤毛に翠眼、抜けるような白い肌と典型的な白人だけど日本語も流暢だしもしかして日本育ちなのだろうか。
観察しながら考えごとをしていたらこちらに一歩近付いてきた彼女が僕を見上げて口を開いた。
「監視も兼ねてになりますが、歳の近い女性がいた方が良いかと思うので弥海砂の世話役もやらせていただきます」
「あ、ああ、よろしく頼むよ」
「ナマエには弥海砂同様ワンフロア割り当ててあります。彼女以外出入り出来ないフロアになってますので変な気は起こさないように」
こんなこども(見た目だけかもしれないが)相手に変な気って…と呆れた空気が流れる中、松田桃太がずいっと近付いて声をかける。
「あ、あのナマエちゃん」
「はい、何でしょう」
「松田!じゃない松田さん、是非ドヌーヴと呼んでください」
「えっ竜崎…でもどちらでも良いって…」
「ドヌーヴと、呼んで、ください」
「竜崎はナマエ呼びなのに…?」
「ごめんなさい、竜崎自身もドヌーヴと名乗ることもあって…『竜崎』『ドヌーヴ』は"L"が共用している名前なので私達はお互いを区別して呼ぶ時には『L』『ナマエ』と呼び合っているんです…けど、ここでは『L=竜崎』ですから私のことは『ドヌーヴ』に統一した方が良いかもしれませんね」
「なるほど…わかりました!じゃあドヌーヴちゃん?て呼んで良いかな?」
「はい、是非」
「すごく若く見えるけど本当はいくつなの?」
「…ナイショです」
「女性に歳を聞くものじゃありませんよ」
不機嫌そうに松田さんをシッシッと追いやった竜崎に、最後の発言だけは同意する。
「ナマエ」
「え、さっきドヌーヴに統一って、」
「皆さんはドヌーヴと呼んでください。私はナマエと呼びます」
「ええ…ちょっと、ワガママ言わないでよL…」
「私はそう呼ばないと推理力が70%落ちますので」
「そんなに!?」
コントのようなやり取りを始めた2人を驚きながら観察する。竜崎が冗談を言う(冗談であってほしい)ことや、彼女が随分フランクに接していること…ーーー今も「暴行を加えられ打ち身に擦り傷…全身ボロボロです手当してください」「喧嘩両成敗、知らないよ自業自得」なんてやり取りをしているーーーそして並ぶとよくわかる同じ服装。ミニチュアの竜崎とでもいうのか。ワタリは竜崎に敬語で竜崎はワタリにタメ口だが、このドヌーヴという少女は竜崎にタメ口で対する竜崎の方が敬語だ。竜崎は捜査本部の人間相手には敬語だし僕らはタメ口で接しているから同じといえばそれまでだけど、見た目が幼い少女とのやり取りを客観的に見ると違和感がある。
だいたい、本当にこの少女があのドヌーヴなのか?僕らを試すハッタリではないのか。今迄ずっと隠してきたというなら今姿を表せてみせた理由は?
僕はまだキラだと疑われているからこそこの手錠を嵌めているわけだし、こんな意味不明なことで何かを見ているのか?真意はなんだ?男所帯に若い少女を投入してミサを懐柔する算段か?
ぐるぐる考え込んでいると元々パーソナルスペースが死に気味の竜崎が異様に彼女に近いことに気付いてハッとする。後ろからおぶさるように抱き込んで、果敢に話しかける松田をシッシッと手で払うせいでその手首から繋がる鎖に僕自身の腕がリズミカルに引っ張られて不愉快だ。
予想外の過保護っぷりに、もしや隠し子とか…?とよぎるが、いやいやまさか、竜崎も年齢不詳だがこんな大きな子がいるほどの歳でもないだろう。というか竜崎が父親というのが想像できない。
騒がしくしたのを相沢さんに叱られ、少し静かになった方を改めて見たらバチリと少女と目が合ってしまった。
「改めて、よろしくお願いしますね、夜神月くん」
「あ、ああ…」
無邪気な笑顔を向けられたが綺麗な緑色の瞳の奥が深海のように深く暗く冷たい碧で、全く笑っていないことに気付いた僕はゾワッと背筋を凍らせたまま、吸い込まれたかのようにその瞳から目が逸らせないでいた。