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紅の王子様
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氷帝に入ってから一ヶ月ちょっと。
こんなに早く最悪な事が起こるとは思ってもいなかった。
GWが始まり、(やけに豪華で正レギュ・準レギュ・平部員で豪華度が違うと言う学校らしからぬ)バスで都外の氷帝合宿舎へ向かったテニス部一同。
バスの豪華さにビビっていた自分は宿舎の凄さに度肝を抜かれることになる。
並大抵の事では驚かないと思っていたのだが、まいった。この学校に来てからはどうも調子が崩される。驚きの連続だ。全く妙な学校だよ。
合宿舎は、それはもう「宿舎」というより「高級ホテル」で、広大な草原の中にいきなり取って付けたようにそびえていた。
基本的には寮と同じ造りらしく、食堂や大浴場があり、メインの建物の近くにテニスコートや野球場、サッカーコートに中規模なホールなど、いろんな部活に適した施設が並んでいて、部活人間には天国だろう。
嬉しいのは個室という事で(もしごろ寝だったら本気で帰る所だった)詩菜が部屋を割り振ってくれたおかげで角部屋というなんとも安心できそうな部屋で過ごすこととなった。
他の部活の連中も来ているらしく、宿舎内は人だらけだったが、空いている部屋の番号と宿舎内地図を詩菜に貰い、おまけに他部活のスケジュールまで教えてもらったので(本当に頼りになるよ詩菜!)なんとか男子にも女子ににも見つからず風呂に入ったりできそうだった。
午前中はバスの中、午後はオリエンテーションと、一日目は特に何もせずに終わった為、夕食の後軽く外をランニングしていた所を捕まった。女子に。
このあとすぐに風呂に入るつもりだったのにこの子達は「黙る」という事を知らないらしくさっきから息継ぎもしないくらいのテンションでずっと喋っている。
自分も女だし、女の子は嫌いじゃないし、むしろ友達を作りたいくらいだが、こうもあからさまに色目使われると接し方がわからない。
向こうが本気で恋する乙女だと本当に困る所なのが、幸い、今目の前で上目遣いで話している子達はどうやらミーハーで顔を好きになるタイプらしい。
この手の女子の扱いは慣れているつもり。(何で、とかは聞くなよお嬢さん☆人生知らないほうが幸せなことだってあるんだぜ!)
爽やかに笑んで適度に口説き撒いた所でスマホが震える。
何事かとLINEをチェックすれば「バスケ部が風呂時間延長して入ってる」と画面に映し出される。
一瞬、だから何?と思ってしまったがすぐに「はぁ?!」と声に出してしまい。
せっかく撒いた女の子達に気付かれたらしく足音を背にとりあえず走り、逃げるように自室へ戻ると再びスマホに眼を通す。
そこで、さっきは気付かなかった文を発見。思わず涙が出そうになる。
そこには「今年はテニス部マネが私1人で、個室が風呂付だから、入りに来なよ」と書かれていた。
差出人は勿論詩菜。
本当にこの子の幼馴染で良かった。この子が氷帝の男子テニス部のマネージャーで良かった。
改めて詩菜への愛が募ったところで急いで着替えを引っ掴み、詩菜の部屋へと向かう。
ひやひやしながら大浴場でひとり風呂に入るより、個室の風呂でのんびりできたほうが全然良い。
欲を言えば詩菜と自分の部屋を変えて欲しいくらいだが、マネージャーは部員より扱いが良いのが氷帝のお決まりらしい。
他の部活もマネージャー達だけ相部屋な代わりに個室に風呂が付いてるらしい。
そんな、さっき教えて貰った事をぐるぐる考えているうちに詩菜の部屋に着き、ドアをノックしようと手を伸ばした。
まさか、その手が捕まれるとは思わない。
「こーら、夜這いはいけないよ」
「…っ?!」
穏やかな声に少し茶目っ気を含ませたような軽い口調。
しかし、自分の手首を握っているその手はがっしりとしていて。
声の方をぎょっとして見るとそこにいたのはさらさらの髪の読めない笑顔の―…
「初めて喋るね、俺は滝だよ、大石クン?」
「凌でいい…ぜ」
「じゃあ凌、風呂道具片手に女の子の部屋訪ねるだなんてやるねー。」
「あは、は」
「でも合宿中は控えたほうが懸命だと思うよ。」
相変わらずにこにことしているが口調は冷たい。
穏やかだけど、どことなく、冷たい。
違う、冷たいんじゃなくて、なんていうか、威圧的で絶対的。
「俺も大勢で入るの好きじゃなくてさ。バスケ部出たみたいだから行こう。」
何か反論しようと思うけれど、動揺と焦りがぶつかってぐるぐるして口から言葉が出てこない。
そのままずるずると大浴場まで引っ張られていき、「男」と書かれた暖簾をくぐり、脱衣所に到達してしまった。
やっと手を離し、籠が並んだ棚の前(何でこういうところだけ銭湯とか温泉みたいな庶民的造りなんだろう)で服を脱ぎ始めた滝に本格的に焦った自分はとりあえず嘘を並べることに成功した。
「やっぱ俺今日は入るのやめとくわ!滝、人と入るの嫌いなんだろ?一人で入って良いよ!!俺も早朝にこっそり1人で入るしさ!今日はもう疲れたし寝るわ!」
じっと服を脱ぎかけた姿勢のまま止まってこっちを見ていた滝が「そっか」と言って脱ぐのをまた再開したのを見てほっと一息つき、じゃまた明日、と立ち去ろうとした俺の耳にとんでもない言葉。
「俺はシャワールーム使うから、大浴場使いなよ。」
いや、違う。これじゃない。
とんでもないのはこの後に続けて出てきた言葉。
「女の子だってわかってるから。風呂には誰も近付けさせないから安心して良いよ。」
服を脱ぎながらさらりと言われ。
頭の中が真っ白になると言うのはこういう事なのか。
あんまりびっくりして、というかびっくりだけではないのだけども、あまりの事に仰天して凝視していると「あんまり見ないでよ」と苦笑され、思わず「肌白いな」と感想を述べてしまう。
違う、そんなこと言ってる場合じゃない!
滝もなんでそんな普通に服脱いでるんだ!
伏し目がちだった滝がふと顔を上げこっちをまっすぐ見つめているのを、あんまり動揺していて気付くのが遅れて「なんなら一緒に入る?」との問いかけに「そうだね」と返してしまい、(だってあんまりナチュラルに聞くから!)我に返って慌てて否定する。
そんな自分を面白そうにくすくす笑って小首を傾げながらまた滝が口を開く。
「だいたい、最初に見た時になんでみんな気付かないのかって思ったけどさ。皆、『滝みたいに華奢なラインだ』って言ってたけど、俺はちゃんと男の体付きで華奢なんであって、君は明らかに女の体型だろ?」
なんで監督気付かないんだろうね?と言われ、そんなん知るかと心の中でしか返せずに。
やっぱり明らかに女の身体なんだ。
だったら滝以外にもきっと気付かれてる。
どうしよう、どうしよう、とそればかりがぐるぐる頭をめぐり、ガラにもなく涙腺が緩む。
めったなことでは泣かないのがポリシーなのに。
「…まぁ、大丈夫、うちは頭良くてもアホが多いから、今のとこバレてないと思うよ。」
優しく微笑み安心させる声色で言う滝だが、オーラが安心させないもので、そのやわらかさが逆に不安にさせる。
根が生えたように突っ立っている自分に囁くように「俺は口外しないよ」と言って脱いだ服をまた着て「今日は一人にしてあげるよ、お風呂、抜かれちゃう前に入りなね?」と脱衣所を後にしてしまった。
どうしよう。
こんなに早く、しかも、こんな形でバレるだなんて。
口外しないと言われても「そうかありがとう」と鵜呑みにできるはずもなく。
迫り来る恐怖と焦りのせいで心臓がおかしいくらいに脈打っていたが、とりあえず風呂に入ろうと服を脱いだ自分は案外、能天気かもしれない。
こんなに早く最悪な事が起こるとは思ってもいなかった。
GWが始まり、(やけに豪華で正レギュ・準レギュ・平部員で豪華度が違うと言う学校らしからぬ)バスで都外の氷帝合宿舎へ向かったテニス部一同。
バスの豪華さにビビっていた自分は宿舎の凄さに度肝を抜かれることになる。
並大抵の事では驚かないと思っていたのだが、まいった。この学校に来てからはどうも調子が崩される。驚きの連続だ。全く妙な学校だよ。
合宿舎は、それはもう「宿舎」というより「高級ホテル」で、広大な草原の中にいきなり取って付けたようにそびえていた。
基本的には寮と同じ造りらしく、食堂や大浴場があり、メインの建物の近くにテニスコートや野球場、サッカーコートに中規模なホールなど、いろんな部活に適した施設が並んでいて、部活人間には天国だろう。
嬉しいのは個室という事で(もしごろ寝だったら本気で帰る所だった)詩菜が部屋を割り振ってくれたおかげで角部屋というなんとも安心できそうな部屋で過ごすこととなった。
他の部活の連中も来ているらしく、宿舎内は人だらけだったが、空いている部屋の番号と宿舎内地図を詩菜に貰い、おまけに他部活のスケジュールまで教えてもらったので(本当に頼りになるよ詩菜!)なんとか男子にも女子ににも見つからず風呂に入ったりできそうだった。
午前中はバスの中、午後はオリエンテーションと、一日目は特に何もせずに終わった為、夕食の後軽く外をランニングしていた所を捕まった。女子に。
このあとすぐに風呂に入るつもりだったのにこの子達は「黙る」という事を知らないらしくさっきから息継ぎもしないくらいのテンションでずっと喋っている。
自分も女だし、女の子は嫌いじゃないし、むしろ友達を作りたいくらいだが、こうもあからさまに色目使われると接し方がわからない。
向こうが本気で恋する乙女だと本当に困る所なのが、幸い、今目の前で上目遣いで話している子達はどうやらミーハーで顔を好きになるタイプらしい。
この手の女子の扱いは慣れているつもり。(何で、とかは聞くなよお嬢さん☆人生知らないほうが幸せなことだってあるんだぜ!)
爽やかに笑んで適度に口説き撒いた所でスマホが震える。
何事かとLINEをチェックすれば「バスケ部が風呂時間延長して入ってる」と画面に映し出される。
一瞬、だから何?と思ってしまったがすぐに「はぁ?!」と声に出してしまい。
せっかく撒いた女の子達に気付かれたらしく足音を背にとりあえず走り、逃げるように自室へ戻ると再びスマホに眼を通す。
そこで、さっきは気付かなかった文を発見。思わず涙が出そうになる。
そこには「今年はテニス部マネが私1人で、個室が風呂付だから、入りに来なよ」と書かれていた。
差出人は勿論詩菜。
本当にこの子の幼馴染で良かった。この子が氷帝の男子テニス部のマネージャーで良かった。
改めて詩菜への愛が募ったところで急いで着替えを引っ掴み、詩菜の部屋へと向かう。
ひやひやしながら大浴場でひとり風呂に入るより、個室の風呂でのんびりできたほうが全然良い。
欲を言えば詩菜と自分の部屋を変えて欲しいくらいだが、マネージャーは部員より扱いが良いのが氷帝のお決まりらしい。
他の部活もマネージャー達だけ相部屋な代わりに個室に風呂が付いてるらしい。
そんな、さっき教えて貰った事をぐるぐる考えているうちに詩菜の部屋に着き、ドアをノックしようと手を伸ばした。
まさか、その手が捕まれるとは思わない。
「こーら、夜這いはいけないよ」
「…っ?!」
穏やかな声に少し茶目っ気を含ませたような軽い口調。
しかし、自分の手首を握っているその手はがっしりとしていて。
声の方をぎょっとして見るとそこにいたのはさらさらの髪の読めない笑顔の―…
「初めて喋るね、俺は滝だよ、大石クン?」
「凌でいい…ぜ」
「じゃあ凌、風呂道具片手に女の子の部屋訪ねるだなんてやるねー。」
「あは、は」
「でも合宿中は控えたほうが懸命だと思うよ。」
相変わらずにこにことしているが口調は冷たい。
穏やかだけど、どことなく、冷たい。
違う、冷たいんじゃなくて、なんていうか、威圧的で絶対的。
「俺も大勢で入るの好きじゃなくてさ。バスケ部出たみたいだから行こう。」
何か反論しようと思うけれど、動揺と焦りがぶつかってぐるぐるして口から言葉が出てこない。
そのままずるずると大浴場まで引っ張られていき、「男」と書かれた暖簾をくぐり、脱衣所に到達してしまった。
やっと手を離し、籠が並んだ棚の前(何でこういうところだけ銭湯とか温泉みたいな庶民的造りなんだろう)で服を脱ぎ始めた滝に本格的に焦った自分はとりあえず嘘を並べることに成功した。
「やっぱ俺今日は入るのやめとくわ!滝、人と入るの嫌いなんだろ?一人で入って良いよ!!俺も早朝にこっそり1人で入るしさ!今日はもう疲れたし寝るわ!」
じっと服を脱ぎかけた姿勢のまま止まってこっちを見ていた滝が「そっか」と言って脱ぐのをまた再開したのを見てほっと一息つき、じゃまた明日、と立ち去ろうとした俺の耳にとんでもない言葉。
「俺はシャワールーム使うから、大浴場使いなよ。」
いや、違う。これじゃない。
とんでもないのはこの後に続けて出てきた言葉。
「女の子だってわかってるから。風呂には誰も近付けさせないから安心して良いよ。」
服を脱ぎながらさらりと言われ。
頭の中が真っ白になると言うのはこういう事なのか。
あんまりびっくりして、というかびっくりだけではないのだけども、あまりの事に仰天して凝視していると「あんまり見ないでよ」と苦笑され、思わず「肌白いな」と感想を述べてしまう。
違う、そんなこと言ってる場合じゃない!
滝もなんでそんな普通に服脱いでるんだ!
伏し目がちだった滝がふと顔を上げこっちをまっすぐ見つめているのを、あんまり動揺していて気付くのが遅れて「なんなら一緒に入る?」との問いかけに「そうだね」と返してしまい、(だってあんまりナチュラルに聞くから!)我に返って慌てて否定する。
そんな自分を面白そうにくすくす笑って小首を傾げながらまた滝が口を開く。
「だいたい、最初に見た時になんでみんな気付かないのかって思ったけどさ。皆、『滝みたいに華奢なラインだ』って言ってたけど、俺はちゃんと男の体付きで華奢なんであって、君は明らかに女の体型だろ?」
なんで監督気付かないんだろうね?と言われ、そんなん知るかと心の中でしか返せずに。
やっぱり明らかに女の身体なんだ。
だったら滝以外にもきっと気付かれてる。
どうしよう、どうしよう、とそればかりがぐるぐる頭をめぐり、ガラにもなく涙腺が緩む。
めったなことでは泣かないのがポリシーなのに。
「…まぁ、大丈夫、うちは頭良くてもアホが多いから、今のとこバレてないと思うよ。」
優しく微笑み安心させる声色で言う滝だが、オーラが安心させないもので、そのやわらかさが逆に不安にさせる。
根が生えたように突っ立っている自分に囁くように「俺は口外しないよ」と言って脱いだ服をまた着て「今日は一人にしてあげるよ、お風呂、抜かれちゃう前に入りなね?」と脱衣所を後にしてしまった。
どうしよう。
こんなに早く、しかも、こんな形でバレるだなんて。
口外しないと言われても「そうかありがとう」と鵜呑みにできるはずもなく。
迫り来る恐怖と焦りのせいで心臓がおかしいくらいに脈打っていたが、とりあえず風呂に入ろうと服を脱いだ自分は案外、能天気かもしれない。