短編
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「そろそろ離れてくんないかなぁ?」
「いや」
困ったように息を漏らす貴方のその眉の下がった笑顔も全て愛しいの。
「他の子のとこなんか行っちゃダメ」
「そんな事言われてもなぁ…他の子はみんなちっちゃい子だよ?ホントは小学校低学年くらいまでにしか配らないんだから」
ぎゅ、としがみつくあたしの頭をあやす様に撫でる彼の手は残酷なくらい優しくて。
そんなことはわかってる。もう来てくれない歳になったのに我侭を言って来て貰ってるんだ。だからこうして一年に一度会えるのだって幸せで滅多にない特別な事なんだ、そんなことはわかってる。でも、人間は欲深いから、毎日だって会いたいの。ここで貴方を離したらまた一年会えないんでしょう?嗚呼、織姫、あたし、貴女の気持ち痛いほどわかるわ。
「あたしも行く、お手伝いくらいできるから、」
「…人間は来ちゃダメだって教えたよね?これは約束事だから、絶対なんだよ」
「じゃ、あたし、もう人間じゃなくっていい」
貴方を困らせたいんじゃない、でも、そうすることであたしといる時間が延びるならもっと我侭を言って困らせたい。(絶対離れないんだから、)腕の力を強めて胸に顔を擦り付ければ、困ったような声で「外で皆待ってるから」と諭される。トナカイが何よ、待たしておけばいいんだわ、そしてこのまま夜が明けてしまえば良い、クリスマスの朝になってしまえば良い、世界中の子供がプレゼントがないって泣き喚いたってあたしはそんなの構わないんだから。
「…ね、お願い、キヨ、怒られちゃうよ」
まだまだランクの下なサンタのキヨスミは、サンタの長は子供には優しいけれど約束を守らない者にはとても恐いんだと教えてくれた。(それも何年前のクリスマスだったか、あたし、ちゃんと言えるんだよ)
そんな縋る様な声を出さないで、悲しませたくないっていう気持ちが溢れてしまう、腕が緩んでしまう、(貴方が、行ってしまう)ダメ、見ちゃ、ダメ、わかっているのに、声につられてあたしの顔は持ち上がって、下を向いたキヨスミと対面して視線が絡まって(嗚呼、このまま溶けてしまいたい)吸い込まれて、なんてこと、腕の力が、ああ、緩んで、やんわりと解かれて、(ダメ、行かないで、)ゆっくりと体温が離れて、くしゃりと切なそうに笑って(そんな顔するならいかないで、)バイバイって、また来年って、伸ばした手は空しく宙を掴んで、静かに窓が閉まった音が部屋に響いて、あたしはそのまま崩れ落ちた。
執着は契約違反 (千石*庭球)(「これは恋なんかじゃない」のキヨ&ヒロインと同一)
「いや」
困ったように息を漏らす貴方のその眉の下がった笑顔も全て愛しいの。
「他の子のとこなんか行っちゃダメ」
「そんな事言われてもなぁ…他の子はみんなちっちゃい子だよ?ホントは小学校低学年くらいまでにしか配らないんだから」
ぎゅ、としがみつくあたしの頭をあやす様に撫でる彼の手は残酷なくらい優しくて。
そんなことはわかってる。もう来てくれない歳になったのに我侭を言って来て貰ってるんだ。だからこうして一年に一度会えるのだって幸せで滅多にない特別な事なんだ、そんなことはわかってる。でも、人間は欲深いから、毎日だって会いたいの。ここで貴方を離したらまた一年会えないんでしょう?嗚呼、織姫、あたし、貴女の気持ち痛いほどわかるわ。
「あたしも行く、お手伝いくらいできるから、」
「…人間は来ちゃダメだって教えたよね?これは約束事だから、絶対なんだよ」
「じゃ、あたし、もう人間じゃなくっていい」
貴方を困らせたいんじゃない、でも、そうすることであたしといる時間が延びるならもっと我侭を言って困らせたい。(絶対離れないんだから、)腕の力を強めて胸に顔を擦り付ければ、困ったような声で「外で皆待ってるから」と諭される。トナカイが何よ、待たしておけばいいんだわ、そしてこのまま夜が明けてしまえば良い、クリスマスの朝になってしまえば良い、世界中の子供がプレゼントがないって泣き喚いたってあたしはそんなの構わないんだから。
「…ね、お願い、キヨ、怒られちゃうよ」
まだまだランクの下なサンタのキヨスミは、サンタの長は子供には優しいけれど約束を守らない者にはとても恐いんだと教えてくれた。(それも何年前のクリスマスだったか、あたし、ちゃんと言えるんだよ)
そんな縋る様な声を出さないで、悲しませたくないっていう気持ちが溢れてしまう、腕が緩んでしまう、(貴方が、行ってしまう)ダメ、見ちゃ、ダメ、わかっているのに、声につられてあたしの顔は持ち上がって、下を向いたキヨスミと対面して視線が絡まって(嗚呼、このまま溶けてしまいたい)吸い込まれて、なんてこと、腕の力が、ああ、緩んで、やんわりと解かれて、(ダメ、行かないで、)ゆっくりと体温が離れて、くしゃりと切なそうに笑って(そんな顔するならいかないで、)バイバイって、また来年って、伸ばした手は空しく宙を掴んで、静かに窓が閉まった音が部屋に響いて、あたしはそのまま崩れ落ちた。
執着は契約違反 (千石*庭球)(「これは恋なんかじゃない」のキヨ&ヒロインと同一)